[文書名] 第六回日米貿易経済合同委員会共同コミュニケ
一 第六回日米貿易経済合同委員会は,昭和四二年九月一三日,一四日,一五日,ワシントンにおいてディーン・ラスク国務長官議長の下に開催された。
委員会は,アジアにおける継続中の紛争及び中近東における緊張に特に重点を置いて世界情勢一般を検討した。委員会は,アジアの中の地域協力強化についてのアジア人のイニシアティヴ及び具体的な成果を歓迎した。
同委員会は,これらの発展が同地域及び世界にとって有益であり,安定,繁栄及び平和にとり有意義であることにつき合意した。
人類,なかんずく,低開発国の男子,女子,子供にとって負担となる数多くの且つ複雑な困難,危険及び苦悩を認識し,両国政府は,アジア・太平洋協力を強化するための変らざるパートナーシップを誓約した。
二(一) 委員会は,両国が繁栄を享受してはいるが,政府が注視していく必要のある経済調整問題に直面していることに留意した。両国代表団は,一九六六年に五〇億ドルを既に越えた日米貿易の継続的な成長に対しても貢献するであろう両国経済の安定的且つ持続可能な拡大の重要性につき合意した。
(二) 委員会は,世界の経済成長と進歩に副う措置により国際収支ポジションを均衡させる米国の決意とともに,国際収支を強化するため先般執られた日本の措置に留意した。委員会は,近年における各々の国際収支面における諸困難に対処するに当り,両国政府間に非常に有益な協議が行なわれてきたことを認めた。この国際収支に関する協議が継続されるべきことが合意された。
(三) 委員会は,広範囲にわたる日米間の貿易経済関係上の諸問題を,両国の特定産業が直面している個別的な困難を含め,討議した。日米貿易の全般的な成長及び両国間の関係は,その経済関係が両国政府が友好的な雰囲気の中で貿易障害の軽減の可能性を建設的に取扱い得るほど密接なことにつき満足の念が表明された。両国政府は,現在未解決のないしは時折生ずるであろう問題を共同して検討することとした。
(四) 委員会は,国際投資問題を考慮した。日本代表団は,一九六七年七月一日に実施された私的投資の日本への受け入れを自由化する計画につき報告し,且つ一九七二年初め頃には可成り広汎な分野において一層の自由化が行なわれるように一年ないし二年の期間を置いて同計画を再検討することが日本の意向であることを述べた。
米国は,最初の措置としての日本の計画の策定に払われた努力を多としつつも,同措置にはやや失望を禁じえないとし,自由化が出来るだけ早められるよう希望を表明した。同国は,また日本における既存の米国企業の運営に悪影響を及ぼすものと見られる先般の諸措置につき懸念を表明した。米国代表団は,米国における日本の投資が積極的に促進されていることを繰り返して説明し,且つアラスカの開発に貢献する投資に対する日本の関心が昂まっていることに喜びを表明した。
(五) 委員会は,漁業に関する問題を討議し,漁業関係の諸問題のうちあるものについて過去一年間に両国間で相互に受諾し得る取決めが結ばれたことに留意した。
(六) 委員会は,海運,航空及び旅行問題の過去一年間における推移を検討し,密接な協議を継続することにつき合意した。委員会は,特に都市交通問題,海上・航空・陸上輸送技術及び安全性並びに輸送に係る環境汚染に関する発展の研究及び協力につき密接に協議することに合意した。委員会は,両国間の海上,航空旅行及び貨物運送を容易化する方法を研究するための適当な場を設けることにつき合意した。
米国訪問計画とともに,大阪における七〇年の万国博覧会により生ずる必要性に鑑み,旅客を処理するための改良された技術を開発する必要が特に留意された。
三(一) 諸国間の商品及び役務,資本並びに人間の自由な移動に対する制約を縮小させるための多角的な経済機構における日米間の密接な協力を継続することが委員会により強調された。
委員会は,相互の理解と忍耐強い交渉により世界貿易を拡大するために達成され得るものの例としてケネディ・ラウンドの目覚しい成功を歓迎した。世界貿易の拡大に対するケネディ・ラウンドの偉大な貢献を認める一方,委員会は,貿易に対する関税及び非関税障害の軽減と世界の低開発地域がその開発のため必要とする貿易への参加を増進するに当り,ガットを通じて行なわれるべきものが依然多く残されていることを指摘した。両国政府は,これらの目的を達成するため他の諸国と協力して執り得べき今後の貿易上の諸方策を検討するであろう。
(二) 委員会は,低開発国の経済開発を促進するための努力を支持する建設的な措置の重要性を認め,低開発国の貿易問題に特に注意を払った。委員会は,国連貿易開発会議が低開発国の貿易問題を考慮するための重要な場であることに留意した。委員会は,特恵関税問題が明年のニュー・デリーにおける国連貿易開発会議第二回会議の主題となるであろうことにつき意見が一致し,且つ,日本代表団は,特恵関税が供与される場合に日本が直面する諸問題を強調し,日本が問題を真剣に検討していることを述べた。委員会は,この問題につき協議を継続することに合意した。
(三) 両国代表団は,東西貿易関係上の問題及び両国政府の政策を討議した。米国代表団は,東欧諸国及びソ連との非戦略物資に関する貿易政策がこれら諸国との連絡と接触の有益な途を開くための協力の一環として絶えず検討されていることを述べた。同代表団は,中共,北鮮,北ヴィエトナムとの経済関係を持たない理由及び米州機構によるキューバに対する経済禁輸の理由を説明した。日本代表団は,対中共貿易の現状を説明し,ソ連及び他の東欧諸国との貿易関係を一層発展させる意図を有することを述べた。
(四) 委員会は,世界の通貨準備の不足が国際貿易及び投資の成長を制約しないことを確保するため,必要な場合,補足的な通貨準備を供給するための基金の特別引出権創出計画を作成するに当り,十カ国会議及び国際通貨基金においてとられた重要な措置を歓迎した。両国代表団は,この計画が国際通貨基金のリオ・デ・ジャネイロ会議において承認されることを希望した。
四(一) 委員会は,一九六七年四月マニラにおいて開催された第二回東南アジア開発閣僚会議及び他の重要な域内の会議に反映されている自助及び地域協力の必要性がアジアの諸国の間で一層自覚されていることを認めた。
(二) 委員会は,アジア開発銀行がこの地域の経済開発に貢献する機構として現在活動していることに留意した。米国代表団は,日本の同銀行に対する強くかつ一貫した支持及びアジアの開発にとっての農業の重要性を強調する日本の主導的立場に殊に留意した。委員会は,日本がアジア開発銀行により運営される主として農業のための特別基金に対し一億ドルを目途として拠出することを決定したことに留意した。委員会は,また,大統領が米国議会に対して四年間に亘りアジア開発銀行の農業を含む各種目的のための特別基金に対する二億ドルの拠出の授権を要請する意図であることに留意した。
五 委員会は,天然資源の開発及び利用のための日米協力に関する年次報告を受領した。この二国間の協力計画が日米間の科学,技術及び資源保護の分野における広範囲に及ぶ交流に対して行なった貢献を認め,委員会は,北西太平洋岸及びアラスカの木材資源の利用に対する日米相互の関心に係わる資源保護上及び貿易上の利害を調和させるという当面の問題を共同して検討することに合意した。
六 委員会は,雇用共同研究を行なうという二国間の合意に満足の念を表明し,且つ同研究が人間の潜在能力の充分な活用にとって重要な貢献となることが期待されることを認めた。
七 米国代表団は,次回会合を日本において開催するとの日本代表団の招待を受諾した。
八 米国側委員は,ラスク国務長官,ファウラー財務長官,ユードル内務長官,フリーマン農務長官,トローブリッジ商務長官,ワーツ労働長官,ボイド運輸長官及びアクレー大統領府経済諮問委員会委員長であり,ジョンソン駐日大使,ロス通商交渉特別代表とガウド国際開発庁長官の他,関係各省の随員が同席した。
日本側委員は,三木外務大臣,水田大蔵大臣,倉石農林大臣,菅野通商産業大臣,大橋運輸大臣,早川労働大臣及び宮沢経済企画庁長官であり,下田駐米大使と近藤外務審議官の他,関係各省の随員が同席した。