データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 佐藤総理大臣訪米に際し沖縄の施政権返還を要求する決議案

[場所] 
[年月日] 1967年11月4日
[出典] 日本外交主要文書・年表(2),730−731頁.琉球立法院事務局「会議録」.
[備考] 
[全文]

 日本国憲法の下に日本の一県として,また日本国民として等しく政治の恩恵を享受すベき沖縄県民が実に二十ニケ年余の長期にわたり祖国から分離され,異民族の統治の下,特殊な制約を受け,犠牲と負担を強いられていることは,百万県民にとって堪え難い苦痛である。このような統治の継続はもはや容認できるものではない。

 当院は,県民の総意を代表してこれまで幾たびとなく祖国復帰の要請を議決して訴え,また国会及び各地方議会も同趣旨の決議を行ない,全国民の意思は表明し尽されているにもかかわらず政府としてその実現に関し積極的な措置がなされていないことは,誠に遺憾であり,われわれの強く不満とするところである。

 佐藤総理大臣は,一九六五年八月沖縄訪問の際「沖縄の復帰なくして日本の戦後は終わらない」と発表したが,ニケ年余の今日,国民世論は高まりながらも政府としての態度は依然として低迷し,何等の具体的進展をみないことにわれわれは強い不信とふんまんを感ずるものであり,政府のこのような態度に対し訪米の成果を危ぶみ,阻止の意見の出るのも当然なことである。

 戦争の結果不合理不自然な地位におかれた沖縄を正常に戻すことを米国に強く要求し,国連憲章の基本原則である主権平等国際正義の理念に徹し,国際道義に立脚して沖縄の施政権返還を実現することは,政府にとってもっとも緊急を要する重要課題であるとわれわれは確信する。

 よって佐藤総理大臣は,訪米の機会に沖縄の施政権返還に関し次の基本線に立って対米折衝に当たられるよう強く要求するものである。

 一 施政権返還の時期を明確にすること。いかなる理由があるにせよ,これ以上米国による沖縄統治を継続させてはならない。従って施政権の返還はおそくとも一九七○年四月までに完全になされるよう確約づけられるべきである。

 二 沖縄の施政権返還の意味するものは民主的平和憲法の下に他の都道府県と差別なき平等の地位に沖縄を回復する全面返還である。従って核つき返還,基地の自由使用を認める等沖縄が他の府県と異なる特殊の負担や制約を受けるものであってはならない。

 三 施政権返還に際し,基地の現状を是認し,或はその代償条件として新たな禍根をつくる措置があってはならない。

 われわれは,安全保障に名をかりて返還を遅延し,或は国民の当然にして至当の要求をゆがめ,又は何等かの拘束や負担を新たに加えることを強く排撃するものである。

 軍事目的のために沖縄を分離しているという不当な現実は正義と秩序を基調として国際平和を希求する日本国憲法の精神にもとることを佐藤総理大臣は自覚し,その是正こそ国政上最優先的問題として処理すぺき最高の責任であるとの確信の下に,国民世論にこたえ,われわれの要求する基本線に立って具体化の道を開き,国家の名誉と総理大臣の政治生命にかけて沖縄の施政権返還を実現するよう強く要求するものである。

 右決議する。

  一九六七年十一月四日

琉球政府立法院

内閣総理大臣 あて