データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第7回日米貿易経済合同委員会共同コミュニケ

[場所] 東京
[年月日] 1969年7月31日
[出典] 外交青書14号,391−395頁.
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 第7回日米貿易経済合同委員会は,昭和44年7月29日,30日,31日,東京において愛知撥一外務大臣議長の下に開催された。

 委員会は,日米両国間の貿易および経済関係につき討議した。両国代表団は両国の経済力および両国経済のダイナミックな成長並びに,日米両国を密接に結びつけている広汎な貿易関係について多大の満足の意を表明した。両国代表団は討議の対象とされている現下の事項はこれらの目ざました成功の枠内の問題であるとの見解をとつた。

 会議の冒頭において,日本代表団は,アポロ11号宇宙船による歴史的な月旅行の画期的な成功について米国代表団に祝意を表した。委員会は,この目ざましい功績は人類の無限の可能性を立証するものであると認めた。

 委員会は,平和目的のための宇宙開発における協力についての外務大臣と国務長官との間の交換公文を歓迎した。委員会は,この取り決めが,この心をかき立てる重要な分野における日米協力の新たな前進であると認めた。

                I

 委員会は現在の世界情勢の推移を検討し,アジアにおいて依然として緊張が存在することに留意したが,米国および連合諸国がヴィエトナムにおける戦争を終結させる方途を見出すためにとりつつあるイニシアティヴを是調し歓迎した。

 委員会は,アジアの経済発屋と安定とは世界全体の平和と繁栄にとって重要な開連を有することを認め,同地域にとつての経済的および社会的発展,民主制度の発展ならびに多角的な経済協力の重要性を強調した。

 米国代表団は,日本の国連軍縮委員会加入を歓迎し,軍縮の話し合いにおいて,日本が貴重な貢献をなし得るであろうとの見解を表明した。

 会議の期間中外務大臣および国務長官は,沖繩の施政権の日本への返還の問題を討議した。

                II

 委員会は,日米両国の経済の現状および財政金融政策を検討した。米国代表団は強化された予算措置と金融引き締め政策により,米国経済の冷却効果が生ずるとの確信を表明した。日本代表団は均衡のとれたかつ継続的な経済成長政策を引き続き追求する意図を説明した。委員会は,両国の各々の経済政策は世界経済の成長と進歩とを達成するとの方向に導かれるべきであることに合意した。

                III

 1.委員会は,日米間の貿易経済関係の現状を検討し,1968年には70億ドルを超え,海洋をはさむ二国間貿易としては今までのところ最大である日米貿易の継続的な成長に留意した。

 米国代表団は,日本に有利な日米貿易関係の不均衡が米国において重大な問題をひきおこしており,これらの問題の解決のために具体的な措置がとられるべきであることを強調した。日本代表団は,貿易収支は多角的な観点から考察されるべきであり,また貿易関係の基礎となっている複雑な諸要素に対し十分な考慮が払われるべきであることを指摘したが,両国間の貿易問題に関する相互に受諾可能な解決の探求のため引き続き米国と協議する用意があることを表明した。

 いずれにせよ,両代表団は貿易問題はそれがいかに困難であろうとも,相互理解と共通の利益の精神の下に克服し得ることに意見の一致をみた。

 2.委員会は,より自由な貿易の原則を全世界に貫徹することは両国の利益に合致することに合意した。これに関連して,日本代表団は,米国内における保護主義的見解の増大につき強い懸念を表明した。米国代表団は,特に日本の貿易収支の大幅な黒字にかんがみ,日本の多数の貿易制限につき深い憂慮を表明し,制限撤廃を促進することにより日本が日米貿易関係における完全な相互主義に向かつて前進するよう強い希望を表明した。日本代表団は,日本政府は1971年末までに残存輸入数量制限のかなりの分野を自由化しようと言明した。委員会は,貿易自由化のいつそうの進展につき討議するため,1969年秋に会議を開催することに合意した。これに関連して日本代表団は重大な経済的社会的問題のために農産物の輸入自由化にともなう諸困難にもかかわらず日本政府は前記の会議において貿易自由化および他の農産物貿易問題を討議する用意があることを述べた。

 3.米国代表団は,毛および化合繊製品の米国への急速な輸入増大によつて重大な問題が生じているとの見解を表明し,国際的な解決を見出すことの重要性を強調した。

 日本代表団は国際的な解決の必要性について納得しないところであるが,将来の行動の過程についていかなるコミットメントを行なうことなく討議を継続する用意があることを述べた。

 4.委員会は,非関税障壁について討議し,日米双方から提示されたリストに留意し,相手国から提示されたリストに関するコメントの交換を2カ月以内に行ない,ついで専門家レベルでの討議を行なうことにつき合意した。

 5.米国代表団は日米両国の各々が資本自由化の結果もたらされる資本および技術のより自由な交流の利益を得られるように日本が資本自由化計画を促進することにより投資における完全な相互主義に向かつて前進するよう強い希望を表明した。

 日本代表団は,日本政府は1970年中に第3次自由化を実施し,1972年の早い時期までに日本経済のかなりの分野が自由化されるよう,引き続き自由化計画の見直しを行なう旨述べた。

 6.委員会は,漁業に関する多くの問題について有益な意見の交換を行なつた。

 7.委員会は,航空,海運および旅行に関する最近の推移を検討し,引き続きこれらの事項につき協議することに合意した。委員会は,日米航空協定に関する最近の協議の結果に留意し,9月に東京で再開される協議において満足すべき合意が得られることについての希望を表明した。

                IV

 1.委員会は,相互援助の新たな手段の探求についてのアジア諸国のイニシアティヴを歓迎し,これらの諸国の社会的および経済的進歩を日米両国が支持することを表明した。

 2.日本代表団は,種々の国内的問題にもかかわらず特にアジアに対する経済援助を実質的に拡大するとの日本政府の意図を表明した。

 米国代表団はこの事態を歓迅し,米国も同地域の経済発展を促進すべき諸計画に引き続き参加することを述べた。

 これに関連して,委員会は,ヴィエトナムにおける敵対行為の終息がヴィエトナムおよびその近隣諸国に対する経済援助への幅広い国際的参加をもたらすこととなることを希望した。

 3.また,委員会はアジアの経済開発におけるアジア開発銀行の重要な役割に留意し,この役割をいつそう強化することの重要性につき合意した。委員会は,アジア開発銀行および他の国際的な援助計画における日米両国政府の経験によつて立証されたように援助に関する多角的アプローチの有効性を認めた。

                V

 1.委員会は,国際金融体制の運営を検討し,調整過程を改善することの重要性を強調し,また,この関連で調整過程と両立する方法で運営される国内経済政策の役割を認めた。委員会は特別引出権の早期発動およびIMFクオータの増額の見通しを歓迎した。

 2.委員会は,発展途上国の持続的経済成長と,国際貿易の健全な基盤の設定には,開発援助と並行して発展途上国の貿易機会が引き続き拡大されることが肝要であることにつき合意した。委員会は,発展途上国に対する一般特恵スキームの策定のために現在OECDおよびUNCTADで行なわれている討議につき検討し,この問題について,引き続き両国間の緊密な協議を継続することが合意された。

                VI

 1.委員会は,第6回合同委員会において実施が合意された日米雇用共同研究が成功裡に終了したことに留意し,両国における人的能力の開発に資するため,職業に関する共同研究を行なうことを検討することについての合意に満足の意を表明した。委員会はまた,最近の技術革新に起因する労働政策上の諸問題に関する意見交換は有益であると認めた。

 2.委員会は運輸技術および運輸体系,超高速陸上輸送体系に対する需要とその社会的および経済的価値,ならびに運輸が環境に及ぼす影響を改善するための方法につき研究するための日米運輸問題研究会の設立に合意した。

 3.委員会は共通の環境上の諸問題を検討し,天然資源の開発利用に関する協力についての年次経過報告を了承し,特に本計画の海洋科学および森林管理の分野への拡大に留意した。

 4.日本代表団は,1970年万国博覧会における米国の参加と協力に謝意を表明した。米国代表団は,この有意義な国際博覧会の成功を祈る旨表明した。

                VII

 委員会は,次回会議を外交チャネルを通じて決定される相互に好都合な時期にワシントンにおいて開催することに合意した。

                VIII

 日本側委員は,愛知外務大臣,福田大蔵大臣,長谷川農林大臣,大平通産大臣,原田運輸大臣,原労働大臣および菅野経済企画庁長官であり,下田駐米大使,森外務審議官および関係各省庁の随員が同席した。

 米国側委員は,ロジャース国務次官,ハーディン農務長官,スタンズ商務長官,トレイン内務次官,ホジソン労働次官,ベッグズ運輸次官,マクラッケン大統領府経済諮問委員会委員長およびペティー財務次官補であつた。ギルバート大統領通商交渉特別代表が参加した。マイヤー駐日大使および各省随員が同席した。