データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所
機密文書研究会 東京大学・法学部・北岡伸一研究室

[文書名] 米局長スナイダー公使会議の件

[場所] 
[年月日] 1969年11月4日
[出典] 外務省,いわゆる「密約」問題に関する調査結果報告対象文書(1.1960年1月の安保条約改定時の核持込みに関する「密約」問題関連),文書1-8
[備考] いわゆる「密約」問題に関する調査結果報告の際に公開された文書。公開された文書は外務省罫紙に手書き。漢字、ふりがなの用法、誤記と思われるものも含めてできるだけ忠実にテキスト化した。欄外の書き込みの記録は、本文の前に記載しオリジナルの記載箇所を<>内に記した。
[全文]

<1ページ目 欄外上>

大臣 報告済

次官※{※は花押}

条約局長※{※は花押}

米参

北米一長※{※は花押}

極秘{前2文字スタンプ}

極秘{二重線の囲み線あり}



米局長スナイダー公使会議の件

44.11.4 米局長

 11月4日午前米局長・スナイダー公使会談要旨次のとおり。

米局長 - 度々申す通り核問題に付見透しなき儘総理が出発されるようなことになつては困る。自分の見るところ、米政府首脳が本件を現状通りと云うことでは日本側が受諾出来ないと云うことは承知していると思うし、先般来のリロケイション5千万弗の話も思い併せ、沖縄返還時核撤去と云うことになると考へるが、そうなれば非常時持込の問題が出て来ざるを得ないと思う。大統領が総理にこの点を質問すれば自分の見るところ総理はイエスと言はれると思うがそうだとしても之を記録に止めようと云うことは別問題で、若し米側が之を強く要望するのであれば総理にせよ大臣にせよ相当時間をかけて考へなければならない。従つて最早や一定の假定を置いて準備をしなければならぬ時期である。偶々ワシントンで下田大使とジョンソン次官が事件に付話をしたが(米来電第3458号の関係部分紹介)、時期を失せざるよう致し度し。尚右ワシントンの話で在京米大使より総理へ直接話す趣旨が述べられているが、今まで総理米大使の間で直接問題に深入りしたことがなく、事件についていきなり直接やられることに若干の危惧なき疑はず。

公使 - 総理御出発前に核問題の見透しを立てねばならぬとの点は同感である。自分も今週末までに訓令を期待しているので、その上で8日の土曜は無理としても次週月曜に米大使より、外務大臣も御同席願った上で総理に御話することは如何かと考へる。大統領は総理と直接お話した上で核問題は最終的に決めると云うことであるが、右の機会に輪廓は明らかに出来るのではないかと思う。非常時持込の問題については小笠原の場合よりは、より明確な話を期待すると思う。米局長先発を示唆したのもその為である。

米局長 - 今迄核の話を掘下げたことはないが、{2文字抹消あり}非常時持込について若し総理が使用の問題を持出されたら米側は応える用意ありや。

公使 - 一般的に米側は第2発を問題にしているのであるから、使用は日本なり与国なりに核攻撃があつてのことであるとすれば余り議論の余地のない場合ではないか。

米局長 - 朝鮮半島の場合の如きは第1発が問題となり得よう。

公使 - 最{1文字抹消あり}初の使用を米国外から行うと云うような場合は当該国の同意を得なければやらないと云うのは当然であると思う。

米局長 - 何れにせよ そこ迄入ることは{2文字抹消あり}時間的にも到底無理であり、話は非常事態におけるstorageについてであらうが、どこに落着するにせよ、簡単には行かない。他の二点に触れ度し。transit問題は何とも手の触れ様がない。

公使 - 今のまゝと云うことか。

米局長 - 手の触れ様がないので双方何も言はぬと云うことである。

朝鮮半島の件は、私見によれば、我方はreconfirmationは絶対に困ると云うことである。

公使 - 実はreconfirm方訓令有り。之を押返して、{米政府のを抹消あり}現在の国務省の考は米側からはこの問題に触れないと云うことである。