データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ホワイトハウス歓迎式における佐藤内閣総理大臣の挨拶

[場所] 
[年月日] 1969年11月19日
[出典] 佐藤内閣総理大臣演説集(1),277‐278頁.
[備考] 
[全文]

大統領閣下,令夫人,御列席の皆様

 歴代合衆国大統領の中で,六回も日本を訪問され,日本のありのままの姿をもつともよく理解されているニクソン大統領閣下を,ここホワイト・ハウスに訪問する機会をえましたことは,私の心から喜びとするところであります。

 ときあたかも,アポロ十二号が十一号に続いて輝やかしい成功をおさめた直後であり,この壇上から大統領閣下をはじめ,米国国民の皆様に深甚なる敬意を表するとともに,お祝いの言葉を申し述べることは,欣快の至りであります。

 日米関係は,近来とみに緊密さを増しつつありますが,私は,今回の大統領閣下との会談を通じて,両国の信頼と友好関係を,さらに一層強固なものにしたいと念願しております。

 すでに御承知のように,私のこの度の訪問は,日米間の最大の懸案である沖縄問題を解決し,これによつて一九七〇年代の新しい日米関係の基を築くことにあります。私は,日米両国民がその固い信頼と友好のきずなにより,この問題について相互に納得の行く解決に到達しうるほど堅く結び合わされていると信じて疑いません。

 また流動する国際情勢の中にあつて,その秩序を維持するために,日米の協力関係はますます重要となつてきておりますが,特に,発展途上国の多いアジアにおいては,その経済的自立と民生安定のために,両国は,それぞれ協調しつつ独自の役割りを果すことを期待されております。私はこの機会に大統領閣下はじめ米国政府の指導者と両国が共通の関心を有する諸般の問題について隔意なき意見の交換を行ないたいと思います。

 やがて一九七○年代を迎えんとするこの時に当り,社会体制を同じくし,共通の価値観を有する両国間の話し合いは,必ずや世界の平和と発展にとって十分な成果をもたらすことを確信するものであります。

 ありがとうございました。