[文書名] 共同声明第8項に関する経緯
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極秘{前2文字太字で囲み線あり}
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次官※{※は花押}
条約局長※{※は花押}
米参※{※は花押}
北米一長※{※は花押}
共同声明第8項に関する経緯
44・11・24 米局長
1.11月17日午前総理ワシントンに到着。同日夕、並びに翌18日夜、総理主宰の下に、大臣、副長官、下田大使、森審議官、田中大使、米局長等の種々最終的打合を行つた。核については(イ)米側よりは依然何等のindicationなきこと、(ロ)返還時撤去までは行くと判断されるが爾後の非常時持込について問題があり得ること、(ハ)従つてこの問題について何等かの記録を作成せざるを得ないこととなる可能性あること、(ニ)假にそこまで行く場合には使用の問題が出て来るが何の途今回はそこ迄発展するとは思はれないこと、等につき従来総理にも具申して来たところを改めて繰返し結論として大臣より本件解決のためには我方共同声明案のみを以てすることが最善なる所以を説得するの他なしとの趣旨を強調された。かくして総理は本件に対する米側の出方に対する具体的見透しなきまゝ19日の大統領会談に臨まれることとなつた。
2.19日の総理大統領会談に於て(会談記録別途)、総理は先ず別添1第1案を示されたところ、大統領は別添2米案を示し,討議の末大統領は右第1案を以ては足らずとしたので総理より別添3第2案を示し、これにより両首脳間に話合が成立した旨、総理より会談終了後Blair Houseに於て大臣以下に話された。(会談録によれば両首脳の間に具体的に返還時撤去とか有事の際に如何と云う言葉は取交されていないが、大統領の側に於ても我方第八項案文を仔細に研究しており、前記第2案を採つたものと見られる。)
3.総理が大統領に手渡された英文は一部のみなりしものの如く、会談終了後写し下渡しがなかつたので、同日午後米局長よりスナイダー公使を通じ写し手交方を申入れ、同夜大統領晩餐会の席上米局長はスナイダー公使より受領した。(別添4)。その際同公使は「自分は本件文書の存在を承知し居らざる建前なるも兎も角ジョンソン次官に頼んで今お渡しするものなり」と述べていた。
4.大統領晩餐会後右英文を検討せるところ、日本文第2案と内容に於て相違する点あるのみならず、英文としても意味を成さざる点あることを発見した。即ち(イ)日本文は「返還に当つて・・・・・処置する」との表現であつて明白に返還時「撤去」の意味が出ているに反し、英文は「返還が・・・・実施される」となつており、この日英文を以てそれゞ正文とすることは到底不可能であり、(ロ)英文自身もwithout prejudice to its positionのitsは、我方第8項案文にあるUnited States Governmentが同英文中にはないため意味を成さず、従つて、総理と大統領の間で合意された英文の実質を変へることなく最少限の修文を施して日本文をこれに則して改訂するの他なきこととなつた。
5.19日深更、繊維並びに貿易自由化問題についての総理との打合の後、以上の事実を大臣に報告、下田大使も交えて英文修正、日本文改訂に付了解を得、條約課長を交えて具体案を作成した。即ち英文(第2文)は別添5のとおり、日本文は「処置」を「実施」とすることとして改訂(結局共同声明第8項となつたもの)する案である。
6.20日朝、総理着換え中に米局長より事情を説明、改訂日本文案を朗読してその御諒承を得た。米側に対しては同日午前の総理大統領会談を別室に於て待つ間に米局長よりジョンソン次官及びスナイダー公使に説明した。ジョンソン次官は英文原案の非を直ちに了解し、別添4案中のthatを”Prime Minister,”の後に上げることを提案したので、我方之を容れて英文案に合意した。
(註)別添4は11月7日総理私案第2案として小杉秘書官より受領せるものであつたが、その英文案は誰が起案したか不明である。
(註)核問題の扱については或る段階において米側において原則的決定があつた筈である。然るに我方は結局総理大統領会談までこの問題について米側責任者より何等の具体的手懸りをつかむことが出来なかつたことは事務当局として甚だ残念の次第であつた。
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極秘{前2文字囲み線あり} 別添1
共同声明(第一案)
七、総理大臣は、核兵器に対する日本国民の特殊な感情及びこれを背景とする日本政府の政策について詳細に説明した。これに対し、大統領は、深い理解を示し、沖縄の返還に当つては、右の日本政府の政策に背馳しないよう処置する旨を確約した。
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(米案)別添二{前5文字手書き}
TOP SECRET{前9文字手書き二重傍線にて削除}
7{前1文字手書き二重傍線にて削除}. "The Prime Minister described in detail the particular sentiment of the Japanese people against nuclear weapons and the policy of the Japanese Government reflecting such sentiment. The President assured the Prime Minister that the reversion of Okinawa will be carried out in a manner consistent with the policy of the Japanese Government as described by the Prime Minister, and without prejudice to the position of the United States Government with respect to the prior consultation formula under the Treaty of Mutual Cooperation and Security. In this latter connection the President noted that, if required by circumstances, the United States would, in accordance with the provisions of the Mutual Security Treaty, consult the Government of Japan with respect to any proposed major changes in the equipment of U. S. forces in Japan. The Prime Minister stated that the position of the Japanese Government with respect to the prior consultation formula under the Treaty of Mutual Cooperation and Security is the same as that of the United States."
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極秘{前2文字囲み線あり} 別添三
共同声明(第二案)
七、総理大臣は、核兵器に対する日本国民の特殊な感情及びこれを背景とする日本政府の政策について詳細に説明した。これに対し、大統領は、深い理解を示し、沖縄の返還に当つては、日米安保条約の事前協議制度に関するその立場を害することなく、右の日本政府の政策に背馳しないよう処置する旨を確約した。
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別添四{前3文字手書き}
The Prime Minister described in detail the particular sentiment of the Japanese people against nuclear weapons and the policy of the Japanese Government reflecting such sentiment. The President expressed his deep understanding and assured the Prime Minister that without prejudice to the position of the United States Government with respect to the prior consultation system under the Treaty of Mutual Cooperation and Security{前1語下線あり(手書き)}, the reversion of Okinawa would be carried out, in a manner consistent with the policy of the Japanese Government as described by the Prime Minister.
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別添5
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別添五
The Prime Minister described in detail the particular sentiment of the Japanese people against nuclear weapons and the policy of the Japanese Government reflecting such sentiment, The President expressed his deep understanding and assured the Prime Minister that, without prejudice to the position of the United States Government with respect to the prior consultation system under the Treaty of Mutual Cooperation and Security, the reversion of Okinawa would be carried out in a manner consistent with the policy of the Japanese Government as described by the Prime Minister.