データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 佐藤内閣総理大臣の帰国ステートメント

[場所] 
[年月日] 1969年11月26日
[出典] 佐藤内閣総理大臣演説集(1),301ー302頁.
[備考] 
[全文]

 私は,只今十日間にわたる米国訪問を終えて帰つてまいりました。

 私はなによりもまず,全国民の皆様に対し,今回の私とニクソン大統領との会談の結果,われわれ全国民の待望する沖縄の祖国復帰が,一九七二年中に,核抜き,本土並みという国民の総意にそつた形で実現することとなつたことを御報告申し上げます。

 沖縄返還に対する初心を貫徹しえて,この羽田の土を踏んだ今,私の胸中には,サン・フランシスコ講和会議以来続けられてきたわが国の政府,国民を挙げての沖縄返還のための努力,また祖国復帰の日の一日も早からんことを願いつつ,日本国民としての誇を失わず,二十余年の長きにわたり米国の施政権下に営々として努力してこられた沖縄県民の御苦労等々が去来し,ただただ,感慨無量であります。

 と同時に,今日,かような喜ばしい報告を申し上げうるに至りましたのも,国民各位の深い御理解と御支援の賜物であり,直接対米交渉の任にあたりました者として,深い感謝の念を禁じえません。

 これから,いよいよ,本土と沖縄の双方において,沖縄の本土復帰のための具体的な準備にとりかかるわけであります。私は,沖縄の本土復帰は施政権返還の時点で終るものとは考えておりません。沖縄が豊かな県となり,また本土復帰が沖縄県民一人一人にとり物質的にのみならず,精神的にも真に意味あるものとなつたときに,はじめて沖縄の本土復帰は完成するのであります。われわれ日本国民は,かかる信念の下に,全力をあげて,この歴史的事業に取組んで行こうではありませんか。沖縄県民はじめ国民各位の御理解と御協力を心からお願いするものであります。

 さて,今回の訪米におきまして,私は,ニクンン大統領との間で一九七〇年代の世界において,日米両国が果すべき役割りにつき腹蔵なき話合いを行なつてまいりました。沖縄返還をもって,日米友好関係は今後,一層強固なものとなることが期待されます。私は,この見地から,ニクソン大統領との間で,日米安全保障条約の堅持を確認し合うとともに,一九七〇年代の世界,特に,アジアの平和と繁栄のために,日米両国が今後一層の協力を行なうことにつき合意したのであります。

 私は,沖縄返還問題の解決は,わが国が国内的にも国際的にも,真の平和国家として新たな飛躍をとげるための重要な契機となると確信しております。かかる重大な意義を持つ使命を果して帰国した只今,自由にして豊かな社会を国の内外に築くために,今後一層の努力を尽す決意を新たにするとともに,国民各位の一層の御支援を念願する次第であります。

 出発の際のお見送り,また本日のかくも盛大なお出迎えに心から感謝いたします。