[文書名] 繊維問題に関する官房長官談話
昨年スタンズ長官来日以来1年余にわたり討議を続けてきた繊維問題の解決をこれ以上長びかせることは日米両国にとつて好ましくないという佐藤総理の判断により,宮沢通産大臣,愛知外務大臣を米国に派遣し交渉にあたらしめたが双方ともそれぞれその背景に国会その他困難な諸事情があつて今回のワシントンにおける双方懸命の努力にもかかわらず一致点を見出すことができなかつたことは甚だ残念である。最終の4者会談でも明らかにされているように,本問題は他日あらためて討議される機会が残されているようであり,政府は今後とも問題の解決に最善の努力を傾ける方針である。
今回の討議を通して日米双方の主張とそれぞれの諸事情が深く理解されたことは問題妥結の成否にかかわらず,極めて有意義であつたのみならず,日米安保体制の相互認識,沖繩返還準備交渉,アジア地域の平和促進等今後両国の提携協力を友好と親善の精神の上から,一層強力に推進すべきことが確認されたことを多としたい。
政府は,来月7日来日を予定される国務長官を迎え,さらに十分懇談を重ね沖繩返還問題,日米貿易問題等いささかも国民に不安を与えないよう最善を期する考えである。