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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米安全保障協議委員会(「2+2」)第12回会合について

[場所] 
[年月日] 1970年12月21日
[出典] 外交青書15号,421−423頁.
[備考] 情報文化局発表
[全文]

 1. 安全保障協議委員会の第12回会合は,昭和45年12月21日に外務省で開かれた。

 日本側からは,愛知外務大臣と中曾根防衛庁長官,米国側からは,マイヤー駐日大使とマッケイン太平洋軍総司令官が出席し,また,補佐のため両国の関係者が列席した。

 2. 委員会は,在日米陸海空軍及び関連在日施設・区域の若干の整理,統合につき全般的検討を行なつた。これらの問題については,従来より継続的に協議が行なわれていたが,今般正式に本委員会に提出されたものである。

 3. 米側は,次のとおり説明した。これらの計画は,ニクソン・ドクトリンに沿つて,日本及び他の極東地域に対する安全保障上の約束を果すための米国の能力に大きな影響を与えることなくその作戦能力を効率化し,かつ,現存する資源の最大限の利用を可能ならしめる目的で行なわれた米軍基地及び施設の徹底的再検討の結果である。この整理は,一面において予算上の制約に基づくものではあるが,日本を含め米国の極東における同盟諸国の自衛能力の増大と同地域における安全保障の全般的な改善も,その策定には大きな影響をもつた。

 関係する米軍部隊のうち,若干は米国に移動するが,その大部分は,日本国内又は極東地域内に移駐される。少数の部隊は沖繩に移動するが,沖繩においては兵力水準に大きな影響を与えることなく,若干の削減を含め米軍部隊の配置上の変更が行なわれる。

 かくして,米国の抑止及び防衛体制の主要な要素は,重大な影響を受けないであろう。

 4. 委員会は,次いで,これら米軍の整理計画が日本の防衛及び極東における平和と安全に及ぼす影響について討議した。

 米側は,1970年代を通ずる太平洋軍の基地態勢に関して考慮されている計画を述べ,日本側は,変動しつつある国際情勢及びニクソン・ドクトリンの展開の見とおしをふまえた1970年代における日本の防衛についての見解を示した。

 5. 委員会は,日本の防衛及び日本を含む極東における平和と安全にとつての日米安全保障条約の重要性並びにこれらの問題と同条約の実施に関する緊密な両政府間の接触の必要性を再確認するとともに,安全保障条約及び地位協定の枠内における施設・区域の共同使用を含む次のような整理,統合計画を了承した。

 (1) 三沢飛行場

  航空自衛隊による使用度の増大が予想されるが,米国は,飛行活動を減少させつつも,本施設を航空基地として引き続き使用する。すべてのF−4機は移動するが,うち一個中隊は昭和46年3月末までに米国へ,また,残余は同年6月末までに韓国に移駐される。

 (2) 横田飛行場

  昭和46年6月末までに,すべてのF−4機は沖繩に,また,偵察部隊は米国に移駐する。その他の活動は,現状どおり継続される。

 (3) 板付飛行場

  米国は,昭和46年6月末までに現在の活動を米空軍及び海軍による限定的な航空機運航に縮小し,その専用する区域を大幅に縮減するとともに,主として同地域内の他の米軍施設に対する支援を内容とする米軍の運航上の必要を充たすため,本飛行場につき然るべき共同使用の取決めが行なわれる。

  本飛行場が第一義的に民間航空のために利用されることとなることに鑑み,日本政府は,昭和46年7月1日以降本飛行場の運営及び維持にかかる経費をその使用度に応じて米国と分担する。

  日本政府は,準備が整い次第,遅くとも昭和47年4月1日までに,本飛行場の運営及び維持上の責任を負う。

 (4) 厚木飛行場

  米軍機及び米側要員の大部分は,昭和46年6月末までに移駐するが,艦隊航空部隊西太平洋修理部を含む若干の米軍施設は,小規模な専用区域として存続する。日本政府は,昭和46年6月30日までに本飛行場の運営及び維持上の責任を負い,また,前記の米軍区域への出入を可能とし,かつ,その他の米軍の運航上の必要を充たすため,然るべき共同使用の取決めが行なわれる。

 (5) 横須賀及び横浜地域

  米国は,昭和46年6月末までにその活動を縮小し,横須賀には大幅に縮小された規模の在日海軍司令部並びに小規模の海軍兵站及び通信支援部隊を,また,横浜地区には大幅に縮小された(極東)海上輸送部隊司令部及び若干の兵站支援活動のみを存続させる。第七艦隊の旗艦及び第七潜水艦群の兵站補給活動の一部は,佐世保海軍基地に移動する。

  横須賀地区における海上自衛隊の施設の統合のため,艦船修理部を除く当該地区の米海軍施設の一部返還の可能性につき両政府間で引き続き協議が行なわれる。

  米国は,港湾及び管理・住宅施設の一部を引き続き保持するが,その他の若干の施設,特に,六号乾ドックを除く艦船修理部を日本政府に返還する。米側は,同修理部の返還後も米海軍艦船の修理のため同施設の利用が可能となるようにとの希望を表明し,日本側は,米国が必要に応じ当該施設を利用しうるような然るべき契約による取決めを結びうるように援助するため最善の努力を払う旨述べた。

 6. 委員会は,了承された前述の整理,統合計画の細目実施は,地位協定に基づく合同委員会を通じて行なわれることに留意した。

 7. 了承された整理措置は,約12,000名の米軍人,3600名の米軍属及び多数の米国人家族に影響を与えるとともに,米軍雇用の日本人従業員約10,000名の解雇を伴う見込みである。米側は,かかる忠実かつ献身的な従業員を失なうことを避けえなかつたのはまことに遺憾である旨述べた。日米双方とも,これら従業員の苦境をやわらげるため最善を尽すとともに,その再就職を援助するためあらゆる努力を払うとの意図を確認した。日本側が十分な事前通告を行なうよう重ねて要請したのに対し,米側は,大部分の場合雇用終了前に90日の期間が置かれるよう所要の措置をとる旨再び確約した。

 8. 委員会は,また,前記第五項に掲げる主要施設に付随する関連施設の返還又は移転を含む在日米軍施設・区域に関する諸問題につき,関係地元住民の福祉に妥当な考慮を払いつつ,両政府間で引き続き一層の検討及び協議を行なうことに合意した。