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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本繊維産業連盟の対米繊維輸出自主規制に関する宣言

[場所] 
[年月日] 1971年3月8日
[出典] 日米関係資料集 1945−97,817−818頁.日本繊維新聞社提供資料.
[備考] 
[全文]

対米繊維輸出自主規制に関する宣言

昭和46年3月8日

日本繊維産業連盟

 日本繊維産業連盟は,日本の国内法に基づく所要の措置をとり,下記により,全繊維製品の対米輸出を規制することを宣言する。

 連盟は,本宣言の発表に当り,日本の対米輸出繊維製品が,米国において重大な被害又は,市場攪乱を生ぜしめたと認めるが故に,かかる規制を行なうものではないことを特に強調するものである。

 しかしながら,連盟は,日米繊維問題を未解決のまま放置することは,米国の保護主義を助長し,このため,各国において連鎖反応を惹起し,その結果,日米両国にとって好ましからざる事態をもたらし,かつ,世界の自由貿易に重大なる脅威を及ぼすものと判断する。故に,これを未然に防止し,更に政治問題化した本件を解決することにより,日米間の政治並びに経済における友好関係の維持改善をはかるため,大局的見地に立って,あえて本措置をとるものである。

 本件については,政府間において長期にわたり交渉が続けられたが,連盟は,本宣言によって政府間交渉を継続する必要は解消するものと信ずる。

 云うまでもなく,連盟は,かかる措置が日本の繊維製品の他の輸出市場に拡大され,或いは繊維以外の製品の対米輸出の前例となるが如きことがあつてはならないと信ずる。

1.対象範囲

 本規制は,現行日米綿製品取極に定められた綿製品,化合繊製品及び毛製品の合計総量を対象とする。但し,繊維原料を除く。

 本規制は,現時点においては,いかなる糸をも含まないものとする。但し,情勢が変化した場合には,糸の適用除外について再検討することがある。

2.算定基準

 規制の算定は,第3項に定める規制の始期の直前の15ヵ月の始めの12ヵ月間における現時点において第1項で対象とされている綿製品,化合繊製品及び毛製品の対米輸出の合計総量を以って基準とする。

3.期間

 本規制は,宣言の日から3ヵ月経過後の翌月から,36ヵ月間実施する。但し,米国の繊維製品の輸入の相当部分を占める他の諸国が,当該国の国情に応じた類似の規制を実施しない場合は,日本は,当該諸国がかかる規制を実施する日の翌月から始める。

4.規制枠(数量基準)

 (イ)規制の初年度枠は,第2項に定める基準の5%増とする。

 (口)第2年度枠は,初年度枠の6%増とする。

 (ハ)第3年度枠は,第2年度枠の6%増とする。

5.監視

 連盟は,現在の繊維製品の対米輸出のパターンの不当な変動を防止するため,厳重な監視を行ない,かつ,必要ある場合は,修正措置をとる。

6.留保条項

 連盟は,下記の場合には,上記の自主規制措置を変更もしくは撤回する権利を留保する。

 (イ)米国が新たな立法もしくは現行法に基づく繊維の一般的輸入割当,繊維製品に対する一般的な新たな関税の賦課,もしくは関税の引上げ,又は,米国への繊維製品の輸入を一般的に規制するその他の措置をとる場合。但し,米国がガツトの19条もしくはその他の条項に従い,新たな立法もしくは現行の法律によつて特定繊維品に対し,関税の引上げ,もしくは,その他の輸入規制を賦課する場合には,連盟は,上記の自主規制を変更する(但し,撤回は行なわない)権利を留保する。

 (口)国際経済情勢,外国貿易全般もしくは,繊維貿易の情勢に重大な変化が生じた場合。

 (ハ)本規制と類似の規制を実施しない諸国の繊維の対米輸出が著しく増加し,かつ当該諸国が本規制と類似の規制を実施しない場合であつて,日本が著しく不利益となる場合。

7.本宣言は,日本及び米国の国内法に抵触せざるよう実施されるものとする。

8.本規制は,現行日米綿製品取極に影響を及ぼすものではない。