データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米繊維問題に関する大統領声明

[場所] 
[年月日] 1971年3月11日
[出典] 外交青書15号,417−418頁.
[備考] 仮訳
[全文]

 2年間,当政府は日本からの過大な毛及び化合繊製品の輸入を削減するため,日本政府と自主規制取決めを交渉することに努めてきた。米国は,これら過大な輸入を抑制する目的をもつたいかなる取決めにとつても不可欠と考える幾つかの基本的原則は一貫して堅持しつつも,取決めの細部については出来るだけ柔軟な態度をとるよう努めてきた。これらの原則は,本年1月までの会談において,米国の交渉当事者から日本大使に提示された次の諸条件に反映されている。

○輸入の約半分を占めるとりわけセンシティブな製品の限定された数の品目について,特定の輸入規制枠を設ける。規制枠は1969年における対日輸入に妥当な伸び率を加えたものとする。米国の市場状況の変化を反映するよう,これら品目間のシフトが認められるが,これらセンシティブな品目のいずれかに過度の集中が生じないよう制限を設ける。

○その他の品目の対日輸入が1970年の輸入量を基準として,それに,より寛大な伸び率を加えた水準を越えた場合は,米国は日本に協議を申し入れることが出来ることとし,双方にとつて満足のいく解決が得られない場合には特定の制限を課する。

 月曜日(注:3月8日)に,日本繊維産業連盟は,その在ワシントン代表者と下院歳入委員会委員長との話合いののち,日本の繊維業界は繊維製品の今後の対米輸出を制限する一方的計画を実施する旨発表した。同時に,日本政府は日本の一民間団体によるこのオーソドックスでない措置を是認し,米国政府との交渉を終了するとの声明を発表した。一見したところでは,この一方的計画は,次の重要な諸点で米国の主要な諸条件を充していない。

○すべての綿,毛及び化合繊の織物ならびに衣類に対して一つの総枠が設けられているのみであり,「現在の対米輸出のパターンの不当な変動を防止する」との日本の業界による一般的な保証が付せられているのみである。これは,特定の品目への集中を可能ならしめるものであり,それらの品目は総枠よりも何倍も大きな率で伸びる結果となりうる。

○総枠は1971年3月31日に終る1年間の対日輸入を基準として,これに伸び率を加えたものである。日本政府との交渉を行なつてきた過去2年間において,化合繊製品の輸入は大幅に増加し,1971年1月には記録的水準に達した。しかも,この規制案は,すでに取決により規制を受け,輸出が減少している綿製品をも基準輸出量に含めることにより,センシティブ品目の輸出増大の可能性を拡大するものである。

 かかる欠陥を有する日本の業界案は受諾可能な解決をもたらすものではないことは明らかである。私が,交渉による取決によつて本問題を解決することを希望していることはよく知られている。日本業界の措置は,今や日本政府の承認を得たもののようであり,米国としては有意義な政府間交渉の再開を歓迎するが,この措置はかかる交渉の途を実際上とざしてしまつた。

 従つて,私は,昨年下院を通過し,本年ミルズ下院歳入委員長及びバーンズ同委員会委員によつて議会に再提出され,懸案となつている法案,H.R.20の繊維に関する輸入割当条項を強力に支持するであろう。

 同時に,私は,商務長官に対し,毛及び化合繊製品の対日輸入を月間ベースで監視するよう指示している。この監視は直ちに開始することとし,その結果については,われわれが指示した条件のもとで規制を実施した場合に生じたであろう結果との相違に関する分析を含めて,議会に対して明らかにするよう指示している。

 かかる状況のもとで,米国の繊維労働者及び企業に必要な救済措置を施すために,当政府は,今や繊維問題の他の解決策につき最大限の考慮を払わなければならない。