データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所
機密文書研究会 東京大学・法学部・北岡伸一研究室

[文書名] (官房長官ブリーフ用資料)沖縄返還問題

[場所] 
[年月日] 1971年5月10日
[出典] 外務省,いわゆる「密約」問題に関する調査結果報告対象文書(4.1972年の沖縄返還時の原状回復補償費の肩代わりに関する「密約」問題関連),文書4-2
[備考] いわゆる「密約」問題に関する調査結果報告の際に公開された文書。公開された文書はタイプ(日本語)によるものと手書きによるものが混在。文書。漢字、ふりがなの用法、誤記と思われるものも含めてできるだけ忠実にテキスト化した。欄外の書き込みの記録は、本文の前に記載しオリジナルの記載箇所を<>内に記した。
[全文]

<1ページ目 欄外上>

極秘 無期限 5部の内 5号{前11文字スタンプ、数字は手書き}

<2ページ目 欄外左上>

14{前2文字手書き}

(官房長官ブリーフ用資料)

沖縄返還問題

昭和46.5.10

アメリカ局北米第1課

 4月26日の愛知・マイヤー会談、28日終了の財務交渉等を総合したところ、交渉の現状次のとおり、なお、明11日愛知・マイヤー会談を開き、さらにつめることとしている。

(1)協定前文

 日本側案にて合意の旨確認ずみ。(ただし一部文言につき米側は本国政府に請訓中。)

(2)施政権返還及びその範囲

(1)と同じ。(返還区域の{2文字抹消あり}具体的確認は合意議事録による方針。)

(3)施設、区域

 (イ)P3移駐については米側の反応まち。

(日本側は那覇空港の完全返還を資産交渉妥結の条件としている。)

 (ロ)マチナト住宅区域については復帰後代替施{4文字抹消あり}設提供を条件に将来の返還を約してもよい旨米側は示している。(ただし財政負担過重を理由にわが方国内に異論あり。)

 (ハ)米側は、施設・区域の提供合意手続が復帰時までに完了しない場合にも{13文字抹消あり}現状のまま使用しうるとの趣旨の保証をうることを要望している。日本側は、右は実質的に岡崎・ラスク方式となるのでとりあえず、すべての{1文字抹消あり}提供合意手続は復帰日までに完了するとの建前であると反論している。目下{7文字抹消あり}妥協方式探究中。

(4)請求権

 米側より、問題は講和前形質変更に基づく復元補償要求{1文字抹消あり}につきその妥当性ではなく、財源取得の問題{1文字抹消あり}があり、議会に対してもこれ以上の予算支出は行なわない旨の約束をしているので、困難な立場にあるが、対策を考慮中なる旨述べて{3文字抹消あり}おり、解決していない。

 この点を除いた条文案につき、本明日中位に米側に提示する予定。

(5)資産引継ぎ条項

 3公社、基地外道路、行政用構築物の引き継ぎに関する条文案につき国内協議ほぼ

終了し、本明日中位に米側へ提示する予定。

(6)財政交渉

 種々案件つきで協定明記分は300とすることで一応話しがついているが、米側の最終回答は未だない。

(7)外資系企業、自由業

 愛知大臣よりマイヤー大使あて書簡案に関し、琉球政府のライセンスの効力承認、輸入割当、酪農製品業、自由業者等の問題点につき対米、対内{1文字抹消あり}折衝中。

(8)VOA

米側は無期限存続の立場を変えていないが、強いていえば10年間の存続を要望、わが方は3年以上の暫定期間を考慮することは困難なる旨指摘している。米側は移転費等は日本政府が負担すべき旨主張しており、双方の主張はなお対立している。

(9) 在沖米軍特殊部隊

 第7{1文字抹消あり}心理作戦部隊、第1特殊部隊群、太平洋陸軍情報学校等のいわゆる「特殊な部隊」につき米軍の善処を要望。(たとえばSR‐71機についてはU‐2機の際の如き声明発出等を考慮されたい旨要望。)