データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所
機密文書研究会 東京大学・法学部・北岡伸一研究室

[文書名] アイチ外務大臣、ロジャース国務長官会談

[場所] 
[年月日] 1971年6月9日
[出典] 外務省,いわゆる「密約」問題に関する調査報告対象文書(4.1972年の沖縄返還時の原状回復補償費の肩代わりに関する「密約」問題関連),文書4-8
[備考] いわゆる「密約」問題に関する調査報告の際に公開された文書。公開されたものは外務省電信写用紙にタイプした文書。漢字、送りがなの用法、誤記と思われるものも含めてできるだけ忠実にテキスト化した。欄外の書き込みの記録は本文前に記載しオリジナルの記載箇所を<>内に記した。
[全文]

<1ページ目 欄外上>

*1*

684{前3文字囲み線あり}

( 部の内{前4文字スタンプ}

<1ページ目 欄外左>

ソヒ カヒ

大臣 政務次官 事務次官 外審 外審 官房長

総書

ア長 中東一

米長 参 北一 保

条長 参 条 規

情長

<1ページ目 欄外右>

●●{前2文字人名が記載されているが解読不能}

総番号(TA) 28928

71年6月9日16時42分 フランス発 主管 米局長

71年6月10日00時57分 本省着

外務大臣殿 中山大使

アイチ外務大臣、ロジャーズ国務長官会談

第877号 極秘 大至急

(限定配布)

往電第875号に関し

アイチ大臣より

本大臣とロジャーズ長官との会談は、9日午前9時半より、約2時間にわたり、当地、米大使館の(大使執務室){()は手書き}で行なわれたが、会談中、オキナワ返かん協定関係についての要旨以下のとおり。(同席者、わが方、アカタニ大使、ヨシノ局長、クリヤマ課長、米側、ペタソン大使、エリックソン部長、およびマクロスキー)

1.冒頭、ロジャーズ長官より、(大部分の問題は既に解決を見ているが、){()は手書き}若干の点についてお話したいとして、まづ、せん閣諸島問題につき、国府は、本件に関する一般国民の反応に対し、非常にゆう慮して[おり、(米国政府に対しても、国府から圧力をかけてきて]いるが、){前28文字手書き傍線にて削除}{[]と()は手書き}本件について日本政府がその法的立場を害することなく、何らかの方法で、われわれを助けていただければありがたいと述べ、例えば、本件につきなるべく速やかに話合を行なうというような意思表示を国府に対して行つていただけないかと述べた。

<2ページ目 欄外下>

*2*

これに対し、本大臣より、基本的には米国にめいわくをかけずに処理する自信がある。国府に必要とあらば話をすることは差支えないが、その時期は返かん協定調印前ということではなく、69年のサトウ・ニクソン共同声明の例にならい事後的に説明をするということとなろうと答えた。

2.次に、「ロ」長官より、65の使途につき日本政府のリベラルな解釈を期待する●{前1文字解読不能}の発言があり、これに対し、本大臣よりできる限りのリベラルな解釈をASSURE{UをEに訂正、その下に?あり}する旨述べた。{前75文字下線あり}

3.請求権問題に関連して、「ロ」長官は、本大臣の書簡を必要とする旨述べたので、本大臣より、本書簡は公表されざるものと了解してよろしきや、と念を押したところ、「ロ」長官は、行政府としては、できるだけ不公表にしておくよう努力する所存なるも、議会との関係で、これを発表せざるをえない場合も、{前57文字下線あり}絶無ではないと答えた。{前11文字二重下線あり}よつて本大臣より、本件書簡の表現振りについては、既に東京において一応合意に達した旨連絡を受けているが、これが公表される可能性があるというのであれば、表現も、よりしん重に考えたい{前37文字下線あり}と述べた。「ロ」長官は、日本政府の立場も理解できるので、米側の法的な要件をみたしつつ、{前23文字下線あり}日本側の立場をも配慮した表現を発見することは可能と思うと述べた。

<3ページ目 欄外下>

*3*

4.本大臣より、本日長官の返事をいただく必要はないが、返かん協定の発効日を4月1日とすることをオキナワけん民が一致して強く要求しており、日本政府としても、その事実に大きな関心を有するものであることをお伝えしたい旨述べた。

これに対し、「ロ」長官は、それは全く不可能ではないにしても、極めて困難であり、過早に協定発効日を論ずることは議会の反ぱつをまねくということも考慮しなくてはならない。しかしながら、オキナワけん民、および日本政府の意のあるところを考慮したいと答えた。{前34文字下線あり}

5.次いで、本大臣より、調印日につき、わが方の国内事情を考慮し、一昨日もお話ししたとおり、ぜひとも17日に決めていただきたいと述べたところ、「ロ」長官は、本件については議会との関係上、われわれとしてはしん重にならざるをえず、かかる観点から{前1文字挿入(手書き)}すれば、17日は決して最適の日とは思わない。しかし、日本側の事情を考慮し、17日調印にふみ切ることとした。

本日右を発表することおよび、署名時間は、ワシントン時間午前8時、東京時間午後9時とすることに異議はないと答えた。よつて、本大臣より、本件は、今回の会談において自分が最も重要視していた問題であり、17日調印にふみ切られたことについては感謝する旨述べた。

(了)

(米北1佐藤ア事務官と連絡済0200){前19文字挿入(手書き)}

{*1* 下記の5行が各ページ欄外上に記載}

極秘

電信写

注意

1.本電の取扱いは慎重を期せられたい。

2.本電の主管変更その他については検閲班に連絡ありたい。

{本文の数字、下線、囲み線は手書きによる}

{*2*はページ数を表す‐2‐}

{*3*はページ数を表す‐3‐}