データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 合意された議事録

[場所] 
[年月日] 1971年6月17日
[出典] 外交青書16号,479ー482頁.
[備考] 
[全文]

 日本国政府の代表者及びアメリカ合衆国政府の代表者は,本日署名された琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の交渉において到達した次の了解を記録する。

第1条に関し,

 同条2に定義する領土は,日本国との平和条約第3条の規定に基づくアメリカ合衆国の施政の下にある領土であり,1953年12月25日付けの民政府布告第27号に指定されているとおり,次の座標の各点を順次に結ぶ直線によつて囲まれる区域内にあるすべての島,小島,環礁及び岩礁である。

  北緯28度東経124度40分

  北緯24度東経122度

  北緯24度東経133度

  北緯27度東経131度50分

  北緯27度東経128度18分

  北緯28度東経128度18分

  北緯28度東経124度40分

第4条に関し,

 1.アメリカ合衆国政府が同条2の規定に従つて取り扱いかつ解決する日本国民(琉球諸島及び大東諸島の市町村を含む。)の請求権には,次のものを含む。

  (1) 土地に対する損害に係る請求権及び収用宣告書に係る請求権で,その解決方法が賃借権の取得に関する高等弁務官布令第20号に定められているもの

  (2) 高等弁務官布令第19号によつて設置された琉球列島米国土地裁判所の管轄に属する請求権

  (3) 外国人の請求に関するアメリカ合衆国の法律によつて解決を求めることができる請求権

  (4) 労働災害の補償に関するアメリカ合衆国の法律又は労働者災害補償に関する高等弁務官布令第42号によつて保護されるアメリカ合衆国政府又はその機関の被用者の請求権

  (5) 報酬その他の利益に係るアメリカ合衆国政府又はその機関の被用者の請求権

  (6) その他の請求権

 2.同条2の規定に基づいて定められる手続には,同条3の規定に従つて行なう自発的支払のための適当な措置及びアメリカ合衆国政府又はその機関が日本国民(琉球諸島及び大東諸島の市町村を含む。)に対して負つている債務で協定の効力発生の日に償還されていないものの支払を完了するための措置を含む。

 3.アメリカ合衆国政府は,日本国政府と協議して,2の手続を周知させ及びこれが容易に利用されるようにするため必要な措置をとる。

第5条に関し,

 1.同条1にいう「最終的裁判」には,最終的決定及び最終的命令を含む。

 2.「琉球諸島及び大東諸島におけるいずれかの裁判所」とは,琉球政府の裁判所及び琉球列島米国民政府の裁判所をいう。

 3.合衆国の軍当局は,協定の効力発生の日前に琉球諸島及び大東諸島において犯された罪につき,1960年1月19日に署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第17条の関係規定に従い,合衆国軍隊の構成員に対して刑事裁判権を行使する。日本国は,そのような事件について刑事裁判権を行使しない。

第6条に関し,

 1.琉球諸島及び大東諸島における合衆国軍隊は,日本国本土における合衆国軍隊が1960年1月19日に署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の関係規定に従つて現在享受している条件と同じような条件でのみ,公益事業及び公共の役務を利用する権利を与えられる。

 2.同条2の規定に従つて日本国政府に移転される財産には,次のものを含む。

  (1) 那覇空港施設(三和無指向性無線標識施設を含む。)

  (2) 次のものを含む行政用建築物

   (a) 那覇の裁判所庁舎

   (b) 那覇の英語センター

   (c) 那覇,名護,石川,宮古及び八重山の文化センター

   (d) 那覇の琉球政府庁舎

   (e) 民政府八重山庁舎

   (f) 民政府宮古庁舎

  (3) 次の路線の道路構築物(信号機,道路標識,橋その他道路の附属物を含む。)

     路線名     概算距離

      1号   66キロメートル

      5号   13キロメートル

      6号    7キロメートル

      7号    9キロメートル

      8号   10キロメートル

     13号   62キロメートル

     16号    8キロメートル

     24号   13キロメートル

     44号   12キロメートル

     その他

  (4) 空港に関連する航空保安施設

   (a) 南大東島,久米島,石垣島及び与那国島の無指向性無線標識施設

   (b) (a)の諸島及び宮古島の対空通信施設及び島嶼間航行用通信システム

  (5) 航路標識

   (a) 灯台14,灯浮標17,導灯2組その他の近距離用の航路標識

   (b) 宮古島のロランA送信局

  (6) 那覇ホイール地区並びに那覇空軍・海軍補助施設及び渡嘉敷陸軍補助施設の地区のうち日本国政府による使用のために開放される部分にある設備

 3.アメリカ合衆国政府が引き続き所有する財産には,北谷村浜川の国務省職員用の住宅を含む。

第7条に関し,

 琉球諸島及び大東諸島における合衆国軍隊(歳出外資金による諸機関を含む。)の日本国民である被用者について復帰後に行なわれるべき退職手当の計算及び支払に関し,アメリカ合衆国政府は,日本国本土における基本労務契約,船員契約及び諸機関労務協約に定める計算方式を適用し,1952年4月30日に開始する当該被用者の全勤続期間(復帰前の勤続期間が含まれる。)について算定した金額を支払う。

第8条に関し,

 ヴォイス・オヴ・アメリカの日本国外への移転の場合において,予見されない事情により代替施設が同条にいう5年の期間内に完成されないことが明らかとなつたときは,日本国政府は,その5年の期間の後その代替施設が完成するまでの間沖縄島においてヴォイス・オヴ・アメリカの運営を継続する必要性に対し,十分な認識を払う用意がある。

 1971年6月17日に東京で

   愛知揆一

   アーミン・H・マイヤー