データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定署名にあたつての佐藤内閣総理大臣談話

[場所] 
[年月日] 1971年6月17日
[出典] 外交青書16号,495−496頁.
[備考] 
[全文]

 本日,国民多年の念願であつた沖縄返還協定が署名されたことは,まことに喜びにたえません。私は沖縄県民の心情に思いをいたすときまことに感慨無量なものがあります。この偉業を可能ならしめた日米両国民の英知に深く敬意を表するものであります。

 日米間における多年の懸案であつた沖縄返還問題は,昭和44年秋の日米共同声明によつて核抜き,本土並み,1972年返還の基本的合意をみて以来,両国政府間でその具体化に全力をあげて取り組んでまいりました。その結果,協定の発効をまつて祖国復帰が実現する運びとなつたのであります。

 返還協定は新しい沖縄県への出発点となるものであります。政府は沖縄経済の振興をはかり,県民の福祉を達成するため,多くの国内施策の準備を着々と進めております。協定の批准手続きとともに,国会の審議をへてこれらをすみやかに実施に移し,豊かな沖縄県建設に最善をつくす所存であります。また沖縄県民の米国に対する請求の問題については復帰後国内的にも適切な措置を講ずる方針であります。

 私はかつて「沖縄の祖国復帰が実現しない限りわが国にとつて戦後は終らない」と述べましたが,いまや返還協定署名によつて日本が真の意味で戦後を脱し,1970年代の新しい世界,とくに太平洋新時代に向つて進むべき時がきたことを確信するものであります。

 私はこのような新しい時代に向つて進むわが国の前途に思いをいたし,ここに決意を新たにして,内外にわたる国民的課題解決のため最善をつくす所存であります。国民各位のいつそうのご協力を念願してやみません。