データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 沖縄返還協定署名に際してのロジャーズ米国務長官のあいさつ

[場所] 
[年月日] 1971年6月17日
[出典] 外交青書16号,498−499頁.
[備考] 
[全文]

 総理大臣閣下,外務大臣閣下

 本日,両閣下ならびに日本の国民のみな様にお話しすることは私の光栄とするところであります。われわれは,外交史上誇るべき瞬間をともにわかち合うために,太平洋上のインテルサット通信衛星によつて地球の反対側にそれぞれ結ばれているのであります。われわれはまもなく,わが両国の英知と優れたステーツマンシップとを立証する文書に調印するのであります。現代の宇宙技術によつて,われわれが代表する3億人の両国民の目の前で調印を行なうのであります。これはまさしく歴史的なことであり,その行ない方というよりは,何が行なわれようとしているか,という点において,前例のないことであります。米国は,これから行なおうとする行為によつて,日本に対して沖縄の完全な施政権の返還を協定するのであります。

 きようの調印は,もちろんまだ道程の終わりではありません。両国の交渉者が作り出したこの取決めは,ニクソン大統領と佐藤総理大臣が1969年11月に留意した通り,それぞれの立法府の承認を必要とします。しかし,アメリカの国民は,その選出した代表者を通じて,この取決めが賢明であることに同意すると確信しています。

 ここで二つの個人的なコメントをしたいと思います。一つは,総理大臣や大統領は大きな決定は行なえるが,これら決定の成否は,彼等の代表がその決定に形式と実質的内容を与える能力にかかつています。ここで,わが両国それぞれの国家的利益のために大いに役立つこの協力を作り上げるために長い間懸命に努力された交渉当事者に対して,日本国民もアメリカ国民も厚く感謝すべきであると思います。彼らの成果は,知性と善意と勇気によつて日本と米国が当面する共通の問題に対して健全な解決を作り出すことが可能であり,太平洋地域の平和と繁栄の維持のために両国は今後も続けて貢献することを実証しているのであります。

 米国にとつては,きようの調印は実際の返還より以上の意義をもつものであります。われわれアメリカ人は,この4分の1世紀にわたつて,この島じまとその住民のために誠意をもつて建設的に諸事とりしきるよう努めてきましたが,これを誇りに思うものであります。しかし,それ以上に,沖縄の住民と日本国民に対して約束したことばを実行することを,一層の誇りに思うのであります。

 ここに,沖縄の方々に一言申し述べさせていただきたいと思います。きようの調印は,みなさまの日本への復帰を達成する一歩手前まできたことを示すものであります。われわれも,みなさまとともにその復帰の日を期待しています。この26年間の関係にしるされている友情と協力をわれわれは感謝し,今後もそれが続くことを切に願うものであります。

 終わりにアメリカ国民に代つて日本国民に一言申し上げたいと思います。日本のみなさまに敬意を表し,この歴史的な日,それはみなさまにとつて大きな喜びであり,われわれにとつては大きな満足であるこの日に,ご幸福をお祈りします。