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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 沖縄返還協定署名に際してのマイヤー駐日米大使の声明

[場所] 
[年月日] 1971年6月17日
[出典] 外交青書16号,501−502頁.
[備考] 仮訳
[全文]

 1 本日は,日米関係の上できわめて意義深い日であります。ニクソン大統領と佐藤総理は,1969年11月の共同声明で,沖縄の施政権を円滑に日本に返還する目的のために協議を開始することに合意しました。共同声明は,具体的取決めが締結され,かつ,立法府の必要な支持をえることを条件に,1972年中に復帰を達成するよう,話合いが行なわれることを規定しました。本日の返還協定の署名によつて,具体的取決めをつくるという了解がここに達成され,われわれは,返還が1972年に行なわれることを一心に期待し,立法府による審議の期待にはいるわけであります。

 2 日米両国政府は,戦争の結果取得され,4分の1世紀間米国の施政下にあつた沖縄を,平和的な話合いを通じて返還することに合意しました。これは,歴史的な壮挙であります。

 3 米国の施政期間中,米国は,沖縄住民の福祉を増進するために大きな努力を払つてきました。そして,多大の進展がなしとげられました。いまや終了した交渉を通じて,終始,沖縄住民の願望に考慮が払われてきました。

 4 共同声明と本協定は,核兵器に関する日本政府の政策と日本国民の感情を米国が十分に認めていることを明らかにしています。沖縄の返還は,完全に本土並みで行なわれます。日米安保条約,及び地位協定並びに関連の諸取決めは,復帰後,日本本土の場合と全く同様に沖縄に適用されます。

 5 米国は,在沖縄米軍事施設の一部はごく近いうちに,また他の一部は復帰時もしくはその後間もなく返還できるという決定をいたしました。これまで日本本土においてそうであつたように,米国は,復帰後も,在沖縄米軍が使用する施設及び区域の必要性を引き続き検討し,日米安保条約の諸目的のためにもはや必要とされないものは日本に返還する意向であります。

 6 地位協定が返還と同時に沖縄に適用され,同協定には日本における第3国人の軍事訓練を許可するいかなる規定もないことにかんがみ,米国政府は,米陸軍太平洋情報学校を沖縄から撤去します。在沖縄米軍の活動は,日本本土におけると同様,地位協定の定めるところに完全に従うことになります。

 7 沖縄に効果的な米国軍隊を維持する目的は,日本を含む極東の安全に資することにあります。従つて,沖縄における米軍基地は,日米安保条約上の約束を履行するのに適切な水準に維持されます。沖縄自体の防衛の責務は,もちろん日本が負うことになります。

 8 きようは,沖縄の皆様,日本本土の皆様,そして米国人のすべてにとつて誇り高い日であります。当該地域及び世界の平和がわれわれに共通の願望であります。この目標のために,本日の一歩は重要な貢献であり,われわれはなおいつそう緊密な調和を保ちつつ平和という目標に向つて進むものであります。