[文書名] 佐藤総理大臣とニクソン米大統領の共同発表
1.佐藤総理大臣とニクソン大統領は,1972年1月6日及び7日の両日サン・クレメンテにおいて会談し,日米両国間の緊密かつ友好的な関係を反映した広範囲の実り多い討議を行なつた。この討議は,国際情勢全般,特に中国を含むアジアの情勢及び日米両国関係にわたつた。
2.総理大臣と大統領は,流動しつつある現下の世界情勢において,緊張緩和へ向う動きがみられることを認め,永続的な平和と安定の増進のためにこのような動きを助長すべく一段の努力が必要であることを強調した。このような努力は,日米両国政府間及び他の諸国の政府との緊密な協力を必要とするものである。両者は,また,日米協力関係の維持がアジアの平和と安定にとつて不可欠の要素であることを認めた。よつて,両者は,両国政府がそれぞれのアジア政策について今後とも密接に協議することを確認した。
3.総理大臣と大統領は,過去百年余の永きにわたる日米両国間の修好関係を回想しつつ,日米関係が両国の相互信頼と相互依存の上に築かれることの重要性を強調した。両者は,また,この関連で,日米安保条約が果たして来た重要な役割を高く評価した。
4.総理大臣と大統領は,1969年11月21日の共同声明で予定された沖縄返還に関連する諸問題につき討議した。両者は1971年6月17日に署名された返還協定がそれぞれの立法府の支持をえたことを喜び,本年5月15日を期して沖縄の日本への返還を実施することを決定した。
大統領は,沖縄における核兵器に関する米国政府の確約が完全に履行された旨の確認を返還の際行なうとの米国政府の意向を明らかにした。これに対し総理大臣は,深い謝意を表明した。総理大臣は,大統領に対し,在沖縄米軍施設・区域,特に人口密集地域及び沖縄の産業開発と密接な関係にある地域にある米軍施設・区域が復帰後出来る限り整理縮小されることが必要と考える理由を説明した。
大統領は,双方に受諾しうる施設・区域の調整を安保条約の目的に沿いつつ復帰後行なうに当つてこれらの要素は十分に考慮に入れられるものである旨を答えた。
5.総理大臣と大統領は,現に緊密な日米経済関係の増進が日米関係全般及び世界経済の発展のために重要であると認め,昨年9月の日米貿易経済合同委員会以来,日米間の貿易条件及び経済関係の改善につき大きな進展がみられつつあることに満足の意を表明した。両者は,さらに,昨年12月の国際通貨調整が今後の世界経済の発展の基礎となることを期待し,今後とも他の諸国とともに,通貨制度の改善と世界貿易の拡大のため及び発展途上国の援助のためにさらに努力を重ねる決意を表明した。これに関連し,両者は,公的援助及び民間資本の流れを容易にする条件の重要性を確認した。
6.総理大臣と大統領は,ともに自由と民主主義の理念を信奉する日米両国が,世界の平和と繁栄及び国民の福祉を維持増進するという共通の目的達成のため,政治,文化,経済,科学,技術などあらゆる分野で相互に緊密に協力するとの基本的考え方を再確認した。両者は,両国政府が環境問題,原子力の平和利用及び宇宙空間の平和的探査と利用の分野における協力を拡大すること,さらに,両国の専門家がこの点に関する具体的措置を検討することに意見が一致した。両者は,また,文化交流を増大するための措置をとるべきことに意見が一致し,これに関連して,大統領は,日本が設立を考慮している文化交流計画に関する説明に対し歓迎の意を表した。