[文書名] 日米安全保障協議委員会(「2+2」)第14回会合について
1 安全保障協議委員会の第14回会合は,昭和48年1月23日に外務省で開かれた。日本側からは大平外務大臣と増原防衛庁長官,米側からはインガソル駐日大使とガイラー太平洋軍総司令官が出席し,また,補佐のため両国の関係者が列席した。
2 委員会は,極東における日本と米国との共通の安全保障上の利害に関連する最近の国際情勢を検討した。
双方は,ヴィエトナム和平の早期達成を希望した。
3 委員会は,日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(安保条約)の運用に関する事項を討議し,また,これに関連して,このほど両国政府の外交及び防衛当局者で構成される安保運用協議会が設置されたことを歓迎した。委員会は,同協議会が安保条約及びその関連取極の円滑,かつ,効果的な運用について協議及び調整を一層促進するのに資するものであること,並びに,その設置がこの主題について両国政府が密接な協議を続けて行く旨の昭和47年9月のハワイにおける田中総理大臣とニクソン大統領との間の合意を実施するのに資するものであるとの,同協議会設置の際に表明された外務大臣及び米国大使の見解と希望を了承した。
4 委員会は,安保条約第六条の実施に関する交換公文に規定されている事前協議制度の運用に関連する事項を討議した。双方は,同制度の運用上の基本的枠組みについての双方の合意を再確認するとともに,その運用は基本的には相互信頼及び現実の状況に即した双方の密接な意思の疎通に依存すべきものであることに意見の一致をみた。委員会は,また,現在の国際情勢の下にあつては米国による事前協議が必要とされる事態は予想されないことに留意した。
5 委員会は,また,在日米軍による施設・区域の使用に関する事項を討議した。日本側は,全国的な急速な都市化にみられるような最近の社会,経済及び環境の変化を指摘するとともに,沖縄における施設・区域について,安保条約の目的に合致し相互に受諾可能な調整を図る旨の昭和47年1月のサン・クレメンテにおける佐藤総理大臣とニクソン大統領との間の合意に言及し,これらの見地から,日本本土及び沖縄の双方において,施設・区域の統合を一層実施すべきであることを強調した。
米側は,日本における施設・区域の数を削減し残余を統合する努力を払う際には,人口稠密地域において深刻化している土地問題及び安保条約の目的上必要でなくなつた施設・区域の返還についての日本政府の要望を考慮に入れていることを説明し,ニクソン・ドクトリン及び地位協定に沿つて,日本の安全に寄与し,並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する施設・区域を日本において維持することが米側の意図であることを再確認するとともに,施設・区域及び人員の削減の多くは日本国内における統合によるものであつて,安保条約の下における米国の義務を遂行する能力はこれによつて影響を受けるものではないことを指摘した。
6 委員会は,過去数カ月間継続した両国政府間の協議を通じてとりまとめられた関東平野地域における施設・区域の整理・統合計画を検討し,このような整理・統合が日米両国の利益と政策に合致するものであることを認め,同計画を了承した。これに関連して,日本側は米国の施設・区域の統合に対する努力を歓迎し,米側は必要な移転及び建設のための日本政府の協力と援助に対して謝意を表明した。
この計画に従つて,米国は,関東平野地域における空軍施設を削減し,その大部分を横田飛行場に統合するとともに,次の施設・区域を日本側に返還することとなつた。
1 府中空軍施設の大部分
2 キャンプ朝霞(南地区)の大部分
3 立川飛行場(大和航空施設を含む。)
4 関東村住宅地区
5 ジョンソン飛行場住宅地区の大部分
6 水戸空対地射爆撃場
右の計画は,日米合同委員会における手続を経て向う3年間に実施されるが,これは昭和51年3月までに相当数の米軍人・軍属及び日本人従業員の削減を伴うこととなる。
双方は,日本人従業員の再就職を援助するためのあらゆる努力を含め,施設・区域の統合によつて影響を受けるすべての人々の困難を軽減するために,最善を尽すとの意図を確認した。
また,米側は,日本側に対し,大部分の場合,解雇の事前通告を九十日前に日本政府に対して行なうことを確約した。
以上の外,米国政府は,昭和49年3月を目途として,日本政府による若干の代替施設の提供をまつてキャンプ淵野辺を日本に返還する。
岩国飛行場における施設につき,日本政府によつてその改善ないし改築がなされるようにとの地位協定に基づく米側の従来からの要請に関し,日本側は,このような改善,改築を実施する旨述べた。
委員会は,また,相模原市の米陸軍医療センター,横浜市内の若干の住宅及び関連施設並びに佐世保米海軍部隊に関連した若干の施設の移転ないし整理の可能性に関して,今後とも協議を継続するとの両国政府の意図に留意した。
7 委員会は,また,沖縄における施設・区域の整理・統合計画について検討した。双方は,日本政府によつてとられる措置をまつて那覇空港を日本に完全返還することに原則的に合意した。この措置は,米海軍及び海兵隊の航空機が那覇空港から移転する先の嘉手納飛行場における代替施設の提供並びに那覇空港の完全返還に関連して必要とされる普天間飛行場における改良措置を含むこととなる。同時に,岩国飛行場の米海軍P3部隊は三沢飛行場へ移転し,三沢飛行場における必要な施設は日本政府により提供されることとなる。
那覇地域から住宅及び補助施設を移転することに関して,双方は,那覇空軍・海軍補助施設の全施設のうち,大部分を嘉手納飛行場へ,一部分を牧港補給地区その他へ移転すること並びに牧港住宅地区の住宅200戸を嘉手納飛行場へ移転することに原則として合意した。これらの移転が完了した際は,那覇空軍・海軍補助施設の全域及び牧港住宅地区の当該区域は,日本に返還されることとなる。
国道331号線の一般交通のための開放は,日本政府による暫定的安全措置の完了次第実現される。
8 委員会は,将来の極東における国際情勢及びこれに関連する在日米軍施設・区域のあり方について更に検討,討議することの重要性を認識し,このような討議を新たに設置された安保運用協議会を含む両国政府間の種々の経路を通じて行なうことに合意した。