[文書名] フォード米大統領の訪ソに際しての米・ソ共同コミュニケ
先に発表された取決めに従い,ジェラルド・R・フォード米合衆国大統領とソヴィエト連邦共産党中央委員会書記長L・I・ブレジネフの実務会談が1974年11月23日及び24日,ウラジオストック地区で行われた。会談にはヘンリー・A・キッシンジャー米合衆国国務長官・国家安全保障問題担当大統領補佐官とA・A・グロムイコ・ソ連邦共産党中央委員会政治局員・外務大臣が参加した。
双方は米ソ関係と国際情勢の現状に関する広範な諸問題を討議した。
会談にはほかに,米側からウォルター・J・ストーセルJr駐ソ・米大使,ヘルムート・ゾンネンフェルト国務省審議官,アーサー・A・ハルトマン欧州担当国務次官補,ブレント・スコウクロフト陸軍中将・国家安全保障担当大統領補佐官及びウィリアム・ハイランド国務省員が参加,ソ側からはA・F・ドブルイニン駐米・ソ連大使,A・M・アレクサンドロフ・ソ連邦共産党中央委員会書記長補佐官,及びG・M・コルニエンコ・ソ連邦外務省参与が参加した。
I 米合衆国及びソ連邦は,共同の原則的諸決定と最近の数年間に両国間で締結された基本的な諸条約及び諸協定によつて律せられる方向に,両国の関係を一層発展させる決意を再確認した。
双方は,世界平和の強化をめざし,国際緊張の緩和を深め,社会体制を異にする諸国家の互恵の協力を拡大するという米ソ関係の方向が両国の国民と他の諸国民の最も重要な利益に合致するものであることを確信している。
双方は,両国間で締結された諸協定に基づき,平和的共存と平等な安全保障を基礎として米ソ関係を根本から新たに築き上げることを通じて重要な成果が達成されたと考えている。これらの成果は米ソ関係を新たに築く上で前進のための強固な基礎となるものである。
したがつて,双方は,米ソ間の関係改善の過程が中断せずに継続しまた逆行することのないよう,署名された諸協定に定められたすべての領域において双方の協力の規模と強さをモメンタムを失うことなく拡大しつづける意図を有する。
両国間に締結された諸条約と諸協定に従つて米ソが負つた相互の義務を厳格かつ全面的に遂行するとの共通の決意が表明された。
II 会談において,米ソ関係の中心的側面,すなわち戦争の脅威を排除し,軍備競争を停止するための措置について特別の考慮が払われた。
双方は,米ソ間で到達された核戦争の防止と戦略兵器の制限に関する合意が核紛争及び戦争全般の勃発を阻止する保障を作る過程での良き端緒であることを再確認した。双方はこの過程を促進する必要性に対し深い信念を表明し,また他の諸国も同様にこれに貢献するであろうとの期待を表明した。米国及びソ連としては,この歴史的課題を達成するために真摯な努力を払いつづけよう。
戦略的攻撃兵器制限の問題についての共同声明は別に公表される。
双方は,世界中に核兵器が拡散されることにともなう危険を防止することを目的とする真剣な努力が重要であり,かつ必要であることをあらためて強調した。これに関連して,双方は,核兵器拡散防止条約の有効性を高めることの重要性を強調した。
先に達成された諸協定にしたがい,平和目的のための地下核爆発,軍事目的のための環境変造技術が使用される危険を除去するための諸措置,かつまた化学戦という最も危険で破滅的な手段に対処する諸措置に関連した諸問題について,米・ソ両国代表間の最初の接触が行われたことが指摘された。これらの諸問題について相互に受け入れ得る解決のための積極的な探求を継続することが合意された。
III 会談の過程において,多くの国際問題についての意見交換が行われた。すなわち,現存する緊張の源を除去し,国際安全保障及び世界平和の強化をもたらすことを目指し,双方が参加して行われている継続中の交渉に特別の決意が払われた。
欧州安全保障・協力会議の状況を検討し,双方はこの会議を早期に成功裏に終らせる可能性があるとの結論に達した。双方はこの会議で達成された成果が最高レベルでの会議の終了を可能とし,そうすることにより欧州の平和な未来を確保する上で会議がもつ重要性に合致するものであるとの仮定から出発している。
米ソ両国はまた,中部欧州における兵力・軍備及び関連手段の相互削減についての交渉に高い重要性を付している。双方は,当事国のいずれの安全をも損なわないこと及び一方的な軍事的優位を予防するという原則の基礎の上に,相互に受容可能な解決を探求することに積極的に貢献することに合意した。
東部地中海の現状を討議して,双方はサイプラスの独立,主権及び領土の保全に対する確固たる支持を表明した。双方はこの方向であらゆる努力をするであろう。双方は,サイプラス問題の公正な解決はサイプラスに関する国連安全保障理事会並びに総会によつて採択された決議の厳格な履行を基礎にしなければならないと考えている。
中東に関する意見交換の過程で,双方はこの地域の危険な状況に関して憂慮を表明した。パレスチナ人民を含むこの地域のすべての人々の合法的な利益とこの地域のすべての諸国家の存立の権利に対する尊重を考慮に入れつつ,国連決議338号に基づきこの地域における公正かつ永続的平和についての基本的諸問題の解決を推進するためあらゆる努力を行うことの意図を再確認した。
双方は,ジュネーブ会議が中東における公正かつ永続的平和を確立する上で重要な役割を演じ,またできるだけ早く会議の作業が再開されるべきであると信じている。
IV 商務,経済,科学及び技術の分野における米ソ両国関係の状況が検討された。双方は,これらの分野における一層の進展が米ソ関係にとつて大きな重要性を有することを確認し,互恵的協力を引続き拡大し深めていくとの確固たる意図を表明した。
双方は,相互に利益となる大規模プロジェクトを含め,商務,経済面での協力の長期的な発展が特に重要であることを強調した。双方は,かかる商務,経済面での協力が米ソ関係の安定を増す要因になると信じている。
双方は,科学,技術及び文化の分野における米ソ間協定の実施の進展と両国間の関係と協力の発展を満足の念をもつて指摘した。双方は,かかる協力の継続的拡大が両国民の利益となり,また全世界的な科学・技術問題の解決に重要な寄与をなすものであると確信している。
米ソ間の平和的協力関係を一層強化・発展させ,又,平和の維持・強化のために,主要な国際問題の解決への進展を確保するとの双方の建設的な願望を反映して,会談は率直かつ相互理解の雰囲気の中で行われた。会談の結果は,米ソ首脳会談の実務的価値と米ソ間の新しい関係を形づくる上で果している首脳会談の重要性を明確に示すものであつた。
フォード大統領は,1975年に米国を公式訪問するようにとのブレジネフ書記長に対する招待を再確認した。訪問の正確な日取りはおつて合意される。
アメリカ合衆国のために ソヴィエト社会主義共和国連邦のために
ジェラルド・R・フォード L.I.ブレジネフ
アメリカ合衆国大統領 ソ連邦共産党中央委員会書記長
1974年11月24日