データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] フォード大統領主催晩餐会における三木内閣総理大臣挨拶

[場所] 
[年月日] 1975年8月5日
[出典] 三木内閣総理大臣演説集,88−89頁.
[備考] 
[全文]

 大統領閣下,御列席の皆様

 貴大統領の暖かい歓迎と米国朝野の方々より私共に寄せられました御配慮に対し,心から感謝の意を表したいと思います。

 貴大統領と昨年一月初めてお会いしました当時は,貴大統領は副大統領,私は副総理の地位にあり,一年半後にわれわれの会談が首脳会談になるとは,正直に申しまして予想しておりませんでした。

 初めてお話しした時から,貴大統領の対決よりも協調を重んずる態度に,長い議会歴を有する者として深い共感を覚えたものであります。私自身,総理大臣就任前から一貫して暴力と無法を排し,対話と協調の精神に立って物心を進めるとの信念を貫いて参りましたが,未だに暴力により自分の主義を押し通そうとする動きが絶えないことは誠に遺憾なことであります。一日も早くかかる動きがなくなり,人間同志の相互理解と信頼に立って平和裡に意見の違いが調整される日を心待ちにしております。

 大統領閣下,日米両国民の友情とゆるぎなき相互信頼,そして両国の共通の目的意識は,世界全体の利益にとって大きな力となっております。貴大統領も私も,国政の街にあたる者として,それぞれ自国民の利益を保護し,これに奉仕し,さらにこれを増進することを責務としております。と同時に,私達は,共通の目標を追求しているのであります。世界の平和と安定,秩序ある経済発展,人間の尊厳と寛容の精神の増進は,他の諸国民も等しく願い求めているものであります。

 私は,このことを深く心に銘じて,全人類のために平和でより良い将来を築き上げて行くため,日米両国がこの偉大なる課題に永遠の友として取組んで行かんとしていることに,大きな喜びとその責任の重みを覚えるものであります。

 大統領閣下,私はここに,御列席のすべての皆様と共に,閣下の御健康とアメリカ合衆国の偉大な活力と繁栄を祝して乾杯いたしたいと思います。