データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 三木内閣総理大臣とフォード大統領による共同声明

[場所] ワシントン
[年月日] 1975年8月6日
[出典] 外交青書20号,91−92頁.
[備考] 
[全文]

 日本国総理大臣とアメリカ合衆国大統領は,日米両国民が民主主義の基本的価値観を分かちあい,相互信頼と協力によつて結ばれていることを認識し,両国は一層開放的で自由な国際社会を築くために引続きあいたずさえて努力することを確認し,次のとおり声明する。

 一層安定した平和な世界秩序を実現するためには,イデオロギー,伝統及び発展段階の相違を超えて,すべての国々が国際的行動についての一定の原則をうけいれ,創造的な国際的対話を確立することが必要である。

 このような原則には,すべての国家の主権を尊重すること,他国の正当な利益を認めること,国際折衝において相互尊重の態度で臨むこと,平和裡に国家間の相違の解決を求める決意を持つこと,世界における社会的正義と経済的進歩を強く擁護することが含まれなくてはならない。

 日米両国は,このような原則を支持し,これを反映した国家間の対話を育成することを約し,多くの分野にわたり共同して努力するにあたつて,協力関係を拡大強化する。日米両国は,アジアにおける公正かつ永続的平和が全世界の平和にとつて緊要であることを認識し,同地域の国々がこのような平和を確固たるものとするために払う努力に対し,あらゆる支援を与える。

 国際経済社会関係は,諸国民の繁栄並びにすべての個人及び国家の願望と創造性を促進するものでなければならない。開発途上国と先進国の利益,原材料産出国と消費国の利益は,全体の福祉を増進し,社会的経済的正義へ向かつて一層近づくような形で両立がはかられなければならない。

 科学と技術,貿易と通信手段によつて世界は狭くなつており,国家間の相互依存関係が,すべての国民生活と福祉に影響を及ぼすことは今や現実となつている。国際経済機構及び制度は,このような相互依存関係を反映した形で,かつ,経済問題にとりくむにあたり対決よりも協調を促進する形で,機能するものでなければならない。

 病いと飢餓に起因する苦悩は,人道的な国際経済社会秩序の実現を妨げる最も深刻な,かつ,悲しむべき要因である。資金,教育,技術の面で力を有する先進国は,このような状態を改善する特別の責任を負つている。こうした苦悩の種が地上から除去される日が一日も早く来るよう,知識,資源及び組織面の技能をあらゆる国々の間で一層効果的に分かちあうことが至上命題となつている。このような努力においても,日米両国は,全面的な貢献を行うものである。