[文書名]　ニューヨーク市長主催レセプションにおける三木内閣総理大臣挨拶

　市長閣下，同令夫人並びに各位

　本日はかくも盛大な歓迎レセブションにお招きにあずかり，その席上，ビーム市長より偉大な都市ニューヨークの名誉市民の称号をさずかり，まことに光栄に思うとともに深く感謝する次第であります。特に私は，ただいま市長が日本及び私自身に関し述べられました心あたたまるお言葉に対し深く感銘を受けた次第であります。私に与えられました名誉市民の称号は私個人に対するものというよりは，ニューヨーク市民から日本国民に対して寄せられた信頼と友情を象徴するものとして受けとめます。　ニューヨーク市と東京郡とは姉妹都市であります。私は，今日から東京都民であると同時にニューヨーク市民となりました。私は東京のみならずニューヨークをよく知らなければならない新しい責任を負った感じがいたします。

　ニューョーク市は二十一世紀を迎える人間が無限の可能性と機会を求めて行動し，作り出した近代都市として現代文明を象徴し，歴史の最先端に立つ世界のキャピタルともいえる都市であります。

　現在二ューヨーク市は高度に発達した福祉社会に特有ともいうべき諸問題をかかえておりますが，これは，ニューヨーク市だけでなく，われわれ文明の共通の問題であるといえます。私もまた，治安，環境，財政，交通，住宅，学校，病院等々ニューヨーク市が持つさまざまな問題の解決のため日々努力しております。その意味で私は，ビーム市長がその卓越した政治的英知と非凡な能力を傾注して諸懸案の解決のため精力的な努力を行っておられることに対し，深い敬意を表するとともに，その成果をわれわれ自身の問題の解決の手がかりを示すものとして大きな関心と期待をもって見守っている次第であります。

　本年十月には天皇・皇后両陛下が初めて当地を御訪問されますが，ビーム市長はじめ市当局の皆様の心のこもった準備ぶりに対し，日本国民に代り衷心より感謝いたします。

　最後に私は再び，今回ニューヨーク市より受けた栄誉とあたたかい御歓迎に感謝するとともに，ニューヨークの全市民に対し，日本国民よりの友情のメッセージをお伝えし，お礼の挨拶に代えたいと思います。