データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ホワイト・ハウスにおける歓迎式の際の大平内閣総理大臣答辞

[場所] 
[年月日] 1979年5月2日
[出典] 大平内閣総理大臣演説集,258−259頁.
[備考] 
[全文]

 大統領閣下。

 あたたかいご歓迎を感謝します。私は,こうして大統領閣下とお目にかかり,お互いの親交を深める機会をもつことを心待ちにしておりました。

 私は,また,この機会に大統領とともに,日米両国がいかにしてこれまで以上に緊密なパートナーシッブを相協力して作り上げていくことができるか,また,両国民が抱いている平和と世界経済の安定的拡大への願望をいかにして実現していくことができるかにつき,探究したいと考えております。

 最近,日米間には経済的な摩擦が目立ちます。日米間の経済問題は重大であり,日米は,相協力してこの解決にあたっており,私は,今後とも,このため,全力を尽くす決意であります。日米間の経済摩擦の解決にあたり,忘れてならないことは,現在の日米関係が相互信頼により結びつけられており,基本的には,いずれの面においても,全く健全かつ確固たるものであるということであります。

 一九八〇年代を展望いたしますと,人類が直面している複雑な政治的,経済的,そして社会的問題に対して,速効的あるいは安易な解決を見出すことができないことは明らかであります。かかる情況において,世界の先進民主主義諸国,とりわけ日米両国の果たすべき建設的役割は,極めて重要であります。私は,日米両国が,さまざまな試練を克服してこのような建設的役割を果たすことを確信いたします。何故ならば,われわれは,豊かな物質的,技術的資源のみならず,これらの課題に成功裡に対処することのできる精神的な糧をも共有しているからであります。

 大統領閣下。日本は,これらすべての分野における責任を十分に認識しております。われわれにとってかけがえのない友邦であり,同盟国であるアメリカ合衆国との緊密で実り豊かなパートナーシッブを通じて日米両国は,遂行すべき重大な任務を共有しております。私の訪米もまさにこの任務の一環であります。