データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] フォード前アメリカ合衆国大統領歓迎午餐会における鈴木内閣総理大臣の挨拶

[場所] 東京,首相官邸
[年月日] 1980年8月28日
[出典] 鈴木演説集,240−241頁.
[備考] 
[全文]

 フォード前大統領閣下並びに御列席の皆様

 本日ここに,米国の指導的な立場におられるフォード前大統領閣下並びにマンスフィールド大使閣下ほかの皆様をお招きして歓迎の宴を開くことができましたことは,総理就任以来できる限り早い機会に米国の各界指導者の方々とお会いしたいと考えておりました私にとり,とりわけ深く喜びとするところであります。

 フォード前大統領閣下

 閣下が約六年前,米国現職大統領として初めてわが国を訪問され,日米関係の発展のために計り知れないほどの貢献をされたことは,今もなお私どもすべての日本国民の記憶に印象深く残っております。また,閣下は,大統領の職を去られた後も,日本の理解ある友人として,日米関係に多大の貢献をなされてこられました。閣下が日本との友好信頼関係の発展に特別の意を用いられていることに対し,私は,深い感銘を受けると同時に,まことに心強く思っている次第であります。

 申すまでもなく,現在,日米関係はかつてないほど緊密かつ堅固なものとなっており,その重要性は,単に二国間の枠を越え,広くアジア地域の平和と安定,ひいては世界平和のために必要欠くべからざるものとなってまいっております。殊に,厳しいものが予想される一九八〇年代の国際情勢において,自由主義諸国は,自由と民主主義の基本的価値を守るため,一致協力して,生起する諸問題に対処していく必要があります。そのために,政治・経済上の理念を共有する日米両国間の堅固な連帯と緊密なパートナーシップが益々重要となってきていることは多言を要さないところでありましょう。

 このような意味からも,フォード前大統領ほか米国で指導的立場にあられる皆様方が訪日され,一九八〇年代の日米協力関係のあり方につき,日本の各界指導者と直接意見交換を行う機会を持たれることは,まことに意義深いことと考えます。

 皆様は,今回,日米安全保障条約締結二十周年記念シンポジウムに出席のため訪日されたのでありますが,同シンポジウムにおいても実り多い討議が行われることを期待しております。

 私といたしましても,わが国外交の基軸である日米関係の発展のためにことのほか意を用いられた故大平総理の遺志を引継ぎ,できる限りの努力を行ってまいる所存であり,今後ともフォード前大統領閣下の御協力と賢明なる御助言をえられることを切に希望するものであります。

 ここに杯をあげて,これまでフォード前大統領閣下がわが国に寄せられた御友情に感謝するとともに,フォード前大統領ほか御在席の各位の御健康を祈念し,日米関係の一層の発展のために乾杯いたしたいと思います。