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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] マンスフィールド駐日米国大使著書出版記念会における鈴木内閣総理大臣の挨拶

[場所] 東京,ホテルオークラ
[年月日] 1980年9月18日
[出典] 鈴木演説集,494−495頁.
[備考] 
[全文]

 今般,マンスフィールド大使閣下の著書「日本ほど重要な国はない」が出版される運びとなったことに対し,大使閣下並びに関係者各位に心からの祝福の意を表します。歴代米国駐日大使の中でも,マンスフィールド大使閣下はその偉大な功績により,日米関係史の中に永くその名がきざまれるでありましょう。大使閣下の思想と日米関係の発展に対する情熱が,今回の出版により改めて日本国民の広く知ることとなるのは,誠に意義深いことと考える次第であります。

 約三年前,当時,米連邦議会上院院内総務を引退されたばかりのマンスフィールド氏が,米国駐日大使に指名された時,私たち日本国民は,これをすばらしい選択であると感じ,もろ手をあげて歓迎しました。それは,マンスフィールド大使閣下が,長く米連邦議会の要職にあって,米議会,連邦政府内において多大な信頼と影響力を有する米国有数の指導者であったばかりではなく,米議会随一のアジア及び日本通として我が国においても広く知られていたからであります。

 マンスフィールド大使閣下は,着任以来その様な私たちの期待に大きく応え,かざり気のない率直な話ぶりと静かではありますが力強い行動により,いまや日本官民の絶大なる尊敬と信頼をかち得ておられます。大使閣下は,真の意味での日本の理解者として,また日本の偉大な友人として,日米間のコミュニケーションのまことに太いパイプとなり,日米友好関係の発展に計り知れない貢献をされて来られました。

 そして何よりもマンスフィールド大使閣下は,大使御自身が言っておられる様に「プロ・アメリカン」として深く米国を愛しておられます。その国を愛する真摯な態度には私たちも深い敬意の念を憶えるものであります。日米間の様様な問題を解決するに当たり,大使閣下は,日本の立場をよく理解されると同時に,米国の立場を誤解のないよう率直に説明し,日本側の理解を求める努力をつみ重ねて来られました。そのことは,現在の日米間の緊密なパートナーシップを築き上げる上で大きな力となって来ました。なぜなら,真のパートナーシップは,お互いの利益と立場を率直に見つめ合い理解することを通じ,双方の利益を増進させることによってこそ築かれるものであるからであります。

 今回出版された御著書を読ませて頂き,マンスフィールド大使閣下のアジア及び日本に対する深い知識と鋭い洞察力に対し尊敬の念を新たにすると共に,この様な偉大な大使を日本にお迎えしていることが日本にとり如何に幸運であるかを改めて痛感した次第であります。

 今後とも,マンスフィールド大使閣下が日本の良き理解者として,また我々に対する率直かつ賢明な助言者としてあり続けられることを期待するものであります。