データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ホワイト・ハウス歓迎式における鈴木内閣総理大臣の挨拶

[場所] ワシントン
[年月日] 1981年5月7日
[出典] 鈴木演説集,191−192頁.
[備考] 
[全文]

 大統領閣下

 暖かい御歓迎を感謝いたします。

 大統領閣下が,さきの不慮の事件の後,まことに目覚しい回復をみせられ,いま,ここにこうしてお元気に笑みをたたえて立っておられることに,私は心からの喜びを憶えております。

 大統領閣下

 世界はいま,かつてない多くの複雑な政治的,経済的,そして社会的試練に直面しております。しかしながら,私は,先進民主主義諸国が協力と連帯を強化し,確固たる決意でこれに対処すれば,この地球上から苦悩や抑圧や暴力をなくし,国際社会に平和と正義と自由,そして繁栄をもたらすことができると確信するものであります。とりわけ日米両国は,合わせて世界の総生産の三分の一を占める大国であり,この両国の緊密な連携は,世界の平和と安全にとって,はかり知れない価値を持つものであります。

 私は,このたびの閣下との会談において,現下の国際情勢のもとで,かかる日米両国の果たすべき責任と役割につき,率直な意見の交換を行うため,ここにまいったわけであります。

 また,私は,日米両国間の友好のきずなを強化し,両国の協力の地平線をさらに広げることを切望いたしております。この意味からしても,この困難な時期に,米国民の信託を受け,新たに大統領に就任された閣下と話合う機会をえたことは,まことに意義深いものといわねばなりません。

 大統領閣下

 私は,このたびの訪問で,米国の地に足をおろした瞬間に,「活力ある社会」を築こうとする米国民の息吹きを感じました。

 日本国民は,大統領閣下の指導の下,「新たな出発」に踏み出した米国に強い敬意の念を抱いており,貴国との協調を一層強化し,平和と活力をめざす日米関係を強化・充実して,国際社会の期待を実現するため,ともに手を携えてまいりたいと考えております。

 私は,これから始まる会談が,正にそのための大きな一歩となることと確信しております。

 ありがとうございました。