データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 対外経済対策の推進についての中曽根内閣総理大臣談話

[場所] 
[年月日] 1983年1月13日
[出典] 外交青書27号,428頁.
[備考] 
[全文]

 現在,世界経済は,極めて困難な状況に直面しております。世界景気は同時停滞を強めており,失業が増加する中で保護主義の高まりが見られ,戦後の世界経済の発展を支えてきた自由貿易体制の存続が危ぶまれるに至っております。このような事態に対し適切な対応を欠く場合には,西側経済の安定と繁栄の基盤そのものが脅かされるおそれがあります。米欧と並んで世界経済の重要な一翼を担う我が国は,このような困難に当たり,今やその国際的地位にふさわしい積極的な寄与が求められております。

 我が国は,かかる情勢の下で,自由貿易体制の堅持,貿易の拡大均衡による世界経済の再活性化への貢献という大局的見地から,関税の一方的な引下げや輸入検査手続等の改善をはじめ一連の市場開放措置を講じてきたところであります。今般,これら措置に加え,諸外国の関心品目の関税の大幅引下げ,法改正を含む基準・認証制度等の全面的検討,貿易苦情処理体制の充実・強化等を内容とする新たな措置を決定いたしました。

 また,これらの市場開放措置に加え,引き続き,国内民間需要を中心とした景気の着実な回復を図る一方,わが国の調和ある対外経済関係の発展のために諸外国の我が国に対する要請にも十分配慮しつつ,製品輸入を一層拡大し,集中豪雨的輸出の回避を図っていくことが不可欠であります。

 もとより,これらの諸措置を真に実効あらしめるためには,官民挙げての努力が肝要であります。市場の一層の開放は,困難を伴うものでありますが,広く国民各位に外国製品等を差別することなくこれを進んで歓迎するという態度の堅持と「世界に開かれた日本」という立場で御理解と御協力を改めて要請いたしたいと思います。

 また,諸外国に対しても,このような我が国の継続的な努力に対し十分な理解を期待すると共に,協力して自由貿易体制の維持・強化に努められるよう希望するものであります。

 我々は,これまでも多くの困難に直面してきたが,英知と決断をもってこれを克服し,今日の繁栄を築いてまいりました。自由主義社会の活力に信頼をおき,問題に相携えて取り組むことにより,現在の困難な状況を乗り切っていくことは,

十分可能であると確信いたしております。