データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 中曽根総理大臣のプレス・リマークス

[場所] ロスアンジェルス
[年月日] 1985年1月2日
[出典] 外交青書29号,483ー484頁.
[備考] 
[全文]

 レーガン大統領と私は,極めて実り多い会談を行いました。私は,日米関係が,信頼,責任,友好という三つの柱によって構成されていると考えます。大統領と私は,年頭にあたり,このような三つの柱の上に立って,日米両国が世界の平和と繁栄のために相携えて活力ある協力を進めるための枠組みを設定致しました。

 大統領と私は,平和と軍備管理の問題について話し合いました。来週にはジュネーヴにおいてシュルツ長官とグロムイコ外相との間で軍備管理に関する交渉が開始されます。私は,平和を希求する大統領の強固な決意に敬意を表明致しました。私は,この重要な交渉に向けての大統領の努力を完全に支持するものであります。また,大統領と私は,この問題に関する自由主義諸国間の緊密な連絡と結束の維持の重要性につき再確認致しました。私は,後世の歴史家が,1985年を世界平和の構築のための偉大な一歩が踏み出された年として記録できることを祈念するものであります。

 大統領と私は,日米両国が世界経済のインフレなき持続的成長と開放的かつ多角的な国際経済貿易体制の維持発展のために大きな責任を共有していることを改めて確認致しました。このため,両国が,それぞれ適切な経済政策の実施と市場の開放性の維持拡大を図ることが重要であります。また,大統領と私は,両国が本年中に多角的貿易交渉の新ラウンドの準備を本格化させるべく一層緊密に協力していくことを確認致しました。

 大統領と私は,ハイテク,投資・資本交流,サービス等の分野における積極的協力により性格付けられる新時代の到来を歓迎致しました。

 大統領と私は,日米貿易経済関係のより均衡のとれた発展のため,真剣な努力を行っていく決意をわかち合いました。このため,我が国は,国内民間需要主導の経済政策の推進と一層の市場開放努力を行っていく所存であります。このような相互の努力を実効あるものとすべく,今後共同で積極的にフォロー・アップを進めることとなり,この協力の過程を総覧するためにシュルツ長官と安倍外務大臣を指名いたしました。このような作業は日米関係全体を強化していく方向で取り進めていくべきであると考えます。

 大統領と私は,日米諮問委員会の報告が貴重な貢献であり,双方による真剣な検討に値するものである旨意見の一致をみました。

 また,私は,大統領に対し,我が国としては,日米安保体制の信頼性を一層強化しつつ,我が国の自衛力の整備のための自主的な努力を更に進めていく所存である旨表明致しました。

 大統領閣下,

 カリフォルニアは太平洋をはさんでの日米交流の歴史において常に中心的な役割を果たして参りました。また,申すまでもなく,同州は,大統領閣下にとって特別に意味のある州であります。そのカリフォルニアにおいて大統領にお目にかかり,21世紀に向けての方向を設定すべく,かけがえのない日米関係につき意見交換を行い得たことは,私にとって大きな喜びでありました。また,アジア・太平洋地域にみられるダイナミックな発展を一層促進することの重要性につき話し合う場所として,このカリフォルニアほど適した場所はありません。大統領閣下,今後とも引続き貴大統領との緊密なパートナーシップの下に,共通の目的に向かって邁進できることは,誠に心強い限りであります。

 今般の御歓待を感謝いたします。