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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米構造問題協議最終報告に関する日本側の措置について(海部内閣総理大臣)

[場所] 
[年月日] 1990年6月28日
[出典] 海部演説集,72−73頁.
[備考] 
[全文]

一,日米両国政府は,昨年七月の両国首脳共同発表を受け,約一年間にわたって構造問題協議に全力で取り組んでまいりました。同協議は,マクロ経済政策協調を補完するものとして日米両国で貿易と国際収支の調整の上で障壁となっていると考えられる構造的問題を互いに指摘し合い,それぞれ自ら改善すべきと考える構造問題に取り組むこととしてきたものであります。

今般東京において開催された第五回会合においてこの構造問題協議の最終報告が成功裡にまとめられましたことは,内閣の当面する最重要課題の一つとして本件に積極的に取り組んでまいりました私にとって感慨深く,大きな喜びであります。

二,私は,この構造問題協議が,国民生活の質の向上,消費者利益の増進,及び世界経済とより調和のとれた我が国経済の実現に大きく貢献するものであると確信しております。このような本協議の意義,及びそれに対する政府の取組姿勢に対しては,これまでも国民の皆様のご理解と暖かなご支援を頂いてきたと確信しております。今般取りまとめられた最終報告は,中間報告に盛り込まれた各々の措置につき更に具体化を図ったものであり, 今後一層の構造改善を進めていくための政策目標を示すものと考えられます。

今次最終報告に盛り込まれた日本側措置の実施は必ずしも容易なものではなく,痛みを伴う場合も予想されますが,消費者利益に配慮した大きな変革を目指すものであり,これらの諸措置を誠実かつ着実に実施していくことこそ,世界経済の安定的発展と日米間のグローバル・パートナーシップの推進のため不可欠であり,また何より我が国の国益増進に貢献する我が国自身の課題であります。さらに,本協議を契機にとられる措置は,日米両国のみならず世界全体に幅広く利益をもたらすものであると確信しております。

このため,これらの措置については,その円滑な実施に向けて十分な配慮をしつつ真剣に取り組んでいく所存でありますので,国民の皆様のより一層のご理解とご協力をお願いいたします。また,このような我が国の姿勢に対して米側を始め世界各国からも高い評価を得ることができると確信しております。

三,もちろん本協議は日米間の双方通行を基本としております。私は,米国がブッシュ大統領のリーダーシップの下,今回の最終報告において確認された財政赤字の削減や競争力強化に向けて真剣な努力を行うことを強く期待しております。この関連で,私は一昨日発表された税収増加を含む財政赤字削減に関する大統領声明を高く評価するものであります。

四,なお,本件構造問題協議においても話し合われました直接投資政策に関しましては,我が国と海外との間の投資交流の一層の活発化を強く期待する旨をここに明言し,その声明を併せて公表したいと思います。