[文書名] ブッシュ米国大統領との共同記者会見における宮澤内閣総理大臣の冒頭発言
ブッシュ大統領閣下
過密なアジア・太平洋地域訪問にかかわりもせず,こうして大統領閣下のお元気な姿を拝見することができ,私のみならず日本国民を代表して大変嬉しく思います。
八年振りに米国大統領を国賓としてお迎えし,三回に亘る首脳会談で,日米二国間の問題から,世界の諸情勢,地球的規模の課題まで,幅広く,突っ込んだ,率直な意見交換を行うことができ,私は大変満足しております。
昨年末のソ連邦の解体が示しているように,冷戦後の世界は今,間違いなく平和と民主主義の構築に向かって新たな動きを見せております。このような歴史的な動きを作り出すに当たり,STARTの合意や核軍縮提案に見られたブッシュ大統領の卓越した先見性と指導力に私は改めて敬意を表したいと思います。
これまで日米両国は,自由,民主主義,基本的人権,そして市場経済を堅持し,世界のGNPの四割を併せもつまでの比類ない繁栄を築いてきました。今こそ,両国が力を併せて,この新しい世界の構築を進めていかなければなりません。その際,アメリカが引続きリーダーシップを発揮していくことが重要であり,日本は,米国の努力を支援し,日本としてなすべきことを積極的に行っていきたいと思います。今回の首脳会談は,このような日米グローバル・パートナーシップの構築への具体的一歩をしるしたと思います。
大統領と私は,貿易・経済上の諸問題についても率直に話し合いました。昨日発表した共同声明の通り我々の経済政策を今後着実に実施していくことに加え,日米貿易の中心的な分野である自動車及び自動車部品における装置についても実質的な話合いができたと思います。日米経済関係の緊密さに鑑み,時折の摩擦は不可避ですし,また,我々が今回合意したことですべてが解決する訳ではありません。しかし,大統領も私も会談の成果に満足しています。
また,今回の首脳会談での議論をも踏まえ,大統領と私は,皆さんのお手元にお配りした東京宣言と呼ばれる文書とその付属の行動計画を発表しました。これは日米両国が,二十一世紀を念頭に,今後の両国関係のあり方や,両国が果たすべき責任と役割,さらには両国が協力して取り組むべき課題を明らかにした画期的なものであり,これに基づき今後の日米のグローバル・パートナーシップを強力に進めていく決意です。
人類の歴史上,文化や歴史を異にする二つの国がこれほどまで相互依存と協力の関係を深めたことは,かつてなかったと思います。これだけ異なった文化的歴史的背景をもった我々両国がお互いの将来をともに分ちあいつつ,世界のために一体となって協力していくことは,歴史上例のなかった試みとも言えるでしょう。内外の目が,期待をもってその成果に注目しています。私は,全力を尽くしてその期待に応えていく所存です。