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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 沖縄復帰二十周年記念式典における宮澤内閣総理大臣式辞

[場所] 
[年月日] 1992年5月15日
[出典] 宮沢演説集,223−224頁.
[備考] 
[全文]

 天皇皇后両陛下の御臨席を仰ぎ,クウェイル・アメリカ合衆国副大統領閣下を始め,内外から多数の賓客のご参列を得て,沖縄復帰二十周年記念式典を挙行できますことは,私の大きな喜びであります。

 戦後長きにわたった東西冷戦の時代において,我が国は,平和憲法と日米安保体制の下で,平和と安定を確保してまいりました。沖縄返還は,このような厳しい国際情勢の中で,しかも,戦争の結果米国の施政下におかれた地域が平和理に返還されたものであり,我々はこの歴史的意義に深く思いをいたさなければなりません。私は,この機会に,米国のこの歴史に残る決断に改めて敬意を表したいと存じます。また,沖縄返還の基盤となった揺るぎない日米関係の構築に大きな努力を払われた諸先達に対し,深く感謝するとともに,返還交渉の労をとられた日米双方の方々に心からの賛辞を送りたいと思います。

 沖縄返還から二十年の間に,日米両国を取り巻く国際環境にも,大きな変化が生じました。東西間の冷戦は終焉し,新しい世界平和の秩序が構築される時代を迎えました。その中で,本年一月の「東京宣言」で明らかにした通り,日米両国は,世界の平和と繁栄のために,協力と協調をさらに強化していくことを誓い合いました。今,かえりみれぱ沖縄返還は,自由を守り,平和を確保するとの決意を日米両国が分かち合うことの証でした。そして今日,新たな時代の幕開けに当たり,この決意は,二十一世紀の未来を築く上でも,長く私達の道標となるでありましょう。

 沖縄県民の皆様は,過去において,筆舌に尽くし難いご苦労に耐えてこられました。政府は,そのような県民のご労苦に対し,二次にわたる沖縄振興開発計画に基づき,各分野における本土との格差是正,沖縄の自立的発展の基礎条件の整備を図ってきたところであります。その結果,社会資本の充実や,本土との格差の縮小などにみられるように,沖縄県が目覚ましい発展を遂げつつあることは,誠に喜ばしい限りであります。しかしながら,沖縄の経済社会は,依然として厳しい状況にあり,さらに解決すべき課題が残っております。政府といたしましては,このような現状を踏まえ,今国会において沖縄振興開発特別措置法を十年延長するとともに,新たに第三次沖縄振興開発計画を策定し,これに基づく事業を推進するなど,沖縄の抱える諸問題の解決を図るべく,一層の取り組みを強化してまいりたいと考えております。

 沖縄復帰二十周年という節目を迎えるに当たり,沖縄返還に示された日米間の信頼と友好関係をいよいよ発展させていくとともに,沖縄県の豊かな未来を築くため,今後,さらに努力してまいる決意であります。

 沖縄県民のますますのご発展を祈念して,式辞といたします。