データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 宮澤内閣総理大臣とクリントン米国大統領との共同記者会見

[場所] 
[年月日] 1993年7月10日
[出典] 宮沢内閣総理大臣演説集,174ー175頁.
[備考] 
[全文]

 今般、クリントン大統領と私は、冷戦後の国際社会における主要先進諸国間の協力・協調の在り方を象徴する東京サミットと時を同じくして日米間の協議の枠組みの設置について合意に達することができました。これは、本年四月の日米首脳会談でクリントン大統領と私との間で創設することに合意していたものであります。

 クリントン大統領と私は、このような協議の枠組みを新たに構築し、日米緒済関係を中・長期的観点から安定化させ、建設的にその運営を図っていくことこそが、両国の国民生活の向上にとってのみならず、世界の自由貿易体制の維持と強化のためにも極めて重要であるとの考えを共有しております。両国の交渉団はそのような観点から、ワシントンと東京において真剣な交渉を行った後、今回大統領訪日の機会にさらに交渉を進め、合意に達することができたものであります。

 今回のこの協議の枠組みの概要について私から簡単に一言申し上げます。

 今回の日米間の協議の枠組みは、日米間で率直かつ幅広い意見交換を進め、世界の二大自由市場経済たる日米両国が「共同作業」の精神に基づき、二国間の経済問題の解決を図るとともに、環境やテクノロジーなどの地球的意味合いを有する問題についても協力していくことを目的としております。

 具体的には、日米双方通行及び政府による対応が可能な範囲の問題に限定するとの原則の下、マクロ経済分野では、我が国の経常収支黒字の削減のための努力や米国財政赤字の削減、セクター別・構造分野では、政府調達、規制緩和等、地球的展望に立った協力のための共通の課題では、環境、テクノロジーを取り扱うこととしております。また、年二回の首脳会談でこれらの問題についての成果を発表することとしております。

 なお、今回の枠組みの下での協議に加え、我が国としては一層の市場アクセス拡大、透明性の向上、規制緩和の推進等、「生活大国」構想にそった自主的な措置を進めたいと考えております。米国においても財政赤字の削減や国際競争力の強化などの進展が図られることを期待しております。今後このような両国の努力によって、内閣総理大臣日米経済関係の強化と世界経済の発展に貢献して行きたいと考えます。