データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ウルグアイ・ラウンド妥結に関する細川内閣総理大臣の談話

[場所] 
[年月日] 1993年12月16日
[出典] 細川演説集,32−33頁
[備考] 
[全文]

 本日ガットウルグァイ・ラウンド交渉全体が実質的に妥結したことを評価いたします。

 ウルグァイ・ラウンド交渉は、工業品の関税の引下げのみならず、今までガット体制の下で必ずしも十分な貿易ルールがなかった農業、あるいは新しい分野である特許権や商標権などの知的所有権、貿易関連投資措置、さらには、金融、運輸などのサービス分野を含む交渉であり、百十八の国や地域が七年にわたり交渉を行ったかつてない包括的かつ歴史的な一大事業でありました。

 この交渉が今回実質妥結したことは、各国がそれぞれの抱える困難を乗り越え、多角的自由貿易体制の維持・強化についての強い意思を示したものであり、国際経済秩序に対する信頼を確保する上で極めて重要なことであります。我々は千九百三十年代の保護主義の台頭が世界貿易、そして世界経済の低迷を招いた苦い経験をもっております。このような経験に照らせば、今回の交渉の成否が今後の世界の自由貿易体制、ひいては世界経済の拡大と活性化にとりいかに重要な意味をもつものであったかは明らかであります。

 貿易立国として、我が国政府は世界経済の拡大と繁栄なくして我が国経済の繁栄もないという強い信念の下にウルグァイ・ラウンド交渉を成功に導くため一貫して強い意思をもって交渉に臨んでまいりました。特に農業交渉ではコメなどの困難な問題を抱えておりましたが、将来にわたる国益を考えて厳しい決断を行い、農業合意案を受け入れたことは、ウルグァイ・ラウンド交渉全体の妥結に寄与したものと考えます。また工業品の関税引下げ、サービス、貿易関連投資措置等の分野では、終始積極的な交渉姿勢を示し、多大の成果を得ることができました。

 私は今回政府が交渉をまとめるため尽力するに当たり、国内各方面より得た御理解と御協力に深く感謝するものであります。

 我が国は、今後の課題として、交渉の結果でき上がった国際的ルールを遵守、活用する必要があり、また、新しいルールに順応していくために農業分野などで多くの国内努力をしていかなければなりません。そのためにも国内経済面における規制緩和を一層促進し、日本経済の一層の活性化を実現していきたいと考えます。

{本文中のウルグァイはママ}