[文書名] クリントン米大統領との共同記者会見における細川内閣総理大臣の冒頭発言
一,本日の首脳会談で,私とクリントン大統領は,貿易・経済問題から当面する国際情勢,アジア・太平洋地域の将来,更にはグローバルな問題への協力まで,今日の日米関係の深まりを反映した幅広い分野の協力について話し合いましだ。率直に申し上げていい会談でした。
二,包括協議については,過去六ヵ月の真剣な交渉にもかかわらず,合意に至らない点が残りました。しかし,今回の結果が,両国間の強固な友好関係を損なってはならないということについて,意見の一致を見たところです。
三,私の政権は,発足以来マクロ経済運営につき,次々と対策を講じてきました。先般も史上最大規模の総合経済対策を打ち出したところです。このような積極的な経済運営が,他国の適切な経済運営と相挨って,中期的に我が国経済収支の黒字の十分意味のある縮小を達成することが可能であると確信しております。
四,包括協議の個別分野については,客観的基準をめぐる両国の立場は収束致しませんでした。しかしながら,私は「内からの改革」の一環として,政府調達について自主的な努力を行っていく考えであります。例えば「政府調達に関するアクション・プログラム」の決定等,この方向で既に具体的な努力を進めております。また,保険についても,手続の一層の透明化や規制緩和等,外国系保険会社の活動に資するよう取り計らっていくつもりです。自動車・自動車部品については,既に,日米間の産業協力の成果が着実に表れてきております。こうした動きを,政府としても可能な限り支援していきたいと考えております。
五,政治・安全保障の面での日米協力が拡大し深まっていることは明らかですが,特に,北朝鮮の核開発疑惑は北東アジアの安全保障にとって,当面最大の懸念材料であるという認識を共に致しました。また,この問題は世界の核不拡散体制にとっても重大な挑戦であります。この問題について本日,私とクリントン大統領は十分に話しあったところです。
六,冷戦後の今日,日米両国が協力して取り組むべきグローバルな課題は広範囲にわたっております。枠組み協議の一環で,両国は,環境や人口,エイズ等の問題についても話し台ってまいりました。我が国は,今後七年間にわたって人口及びエイズの問題で三十億ドルにのぼる国際協力を実施していくことになっており,大統領と私は,この分野での日米協力の強化にコミットしております。
七,過去,日米間では,その場を糊塗するような玉虫色の決着を図ってきたことがあり,それが往々にしてその後の誤解の種となりました。しかし,今日,新しい時代の日米関係の姿は,両国が,各々のなすべきことを自覚して自ら進んで最大限の努力を行うが,それにもかかわらず出来ないことについてはそれを率直に認め合うといった,成熟した大人の日米関係であると思います。お互いの判断を信頼し尊重する関係に成熟しつつあると私は思います。
私は,政治,経済,行政等様々な分野で旧体制を変革し,「政治の復権」を目ざしてまいりました。同じ改革を進める「同志」として,クリントン大統領が進めている財政赤字削減等の国内改革,あるいはNAFTA,APEC等で発揮された指導力を高く評価し,尊敬しております。私は,我々二人が進めている改革努力が相挨って,日米関係の強化,国際社会の発展につながるものと確信しております。