データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米首脳共同記者会見

[場所] 
[年月日] 1996年4月17日
[出典] 橋本内閣総理大臣演説集(上),443−456頁.
[備考] 
[全文]

(冒頭発言)

○橋本総理 ただいま皆さんの前で私がクリントン大統領とともに二つの文書に署名をいたしました。その一つは、今日の日米関係とそして二十一世紀へ向けて両国が協力して進んでいく方向を示した両国国民へのメッセージであり、二つ目は日米安全保障共同宣言です。

 両国国民へのメッセージでは、民主主義や自由の大切さ、地域問題への両国の協力、国連改革や軍縮に向けての協力、経済関係などに触れながら、日米の関係が両国国民にとっていかに大切なものか、また、両国が将来の課題にどのように協力していくかがまとめられております。

 そして、日米安全保障共同宣言には、我が国の安全、アジア太平洋の平和と繁栄を図る上で、日米安全保障体制というものがこれまでと同様に、今後とも重要な役割を果たしていくことを確認し、また、将来へ向けての両国の協力の出発点とする、そのようなことが記されております。

 首脳会談で私たちは、安全保障、経済など、日米両国間の諸課題や、国際社会の抱えるさまざまな問題など、幅広い議題を取り上げてきました。

 沖縄の施設区域の整理・統合・縮小の問題については、沖縄の方々の心を思いながら、その負担を少しでも軽減するために、両国政府が誠心誠意努力をしております。

 私たちは、一昨日発表された特別行動委員会の中間報告の内容を改めて評価し、この中間報告にある措置を的確に実施していくことが重要であること、そして、十一月の最終合意に向けて、引き続きお互いに全力を尽くすことを確認しました。

 また、日米経済関係の問題については、私から日本の経常収支黒字が縮小傾向にあること、日本政府は規制暖和や日本の経済構造の改革に一生懸命努力をしているさなかであることをご説明し、また、個別の問題については、これまでの実績を踏まえながら、必要な場合には、いつでもお互いに話し合っていこうと申し上げました。

 同時に私たちは、人類や地球社会に対する脅威、日米両国が協力して立ち向かっていくことの重要性についても話し合いました。そのために、コモン・アジェンダと呼ばれている協力の中に、新たにテロリズム、地震のような自然災害、新しい病気、感染症などについて協力して対処していくように、新しく六つのテーマを追加すると同時に、この試みの中に民間や第三国にも加わっていただいて、こうした協力を一層発展させていくことを確認し合いました。

 また、二十一世紀型の自然と共生する発展の在り方、共に生きていく発展の在り方につき、共に検討していくことも確認しました。

 また、限られた時間の中ではありますけれども、私たちは中国、朝鮮半島、ロシア、旧ユーゴスラビア、中東などの情勢についても意見を交換し、両国の政策方針について話し合いました。

 今日の私の印象を率直に申し上げると、本日の首脳会談は、言わば非常にしっかりとした太い柱、そして、屋根で支えられているような気がします。その柱とは、日米両国国民の相互理解という柱であります。私は大統領に対してこの柱を一層太くしていくために、将来、もっと多くのアメリカの若い方々が日本に来られる機会をつくりたい、そうした決意をお伝えをしました。

 そして、その屋根は、これまで両国がお互いに分かち合ってきた共通の価値です。民主主義、人権、開かれた経済といった普遍の価値を、国家の基本に据えている日米両国、この関係は世界の中でかけがえのない大切な関係を既に築いてきました。

 将来、これからの世界に対しても、私たちはこの関係をより大きなものに育てていきたい、その極めて大切な関係を確認出来たことが、私は本日の首脳会談のすべてだったと申し上げて、クリントンさんに発言の順番を譲りたいと思います。

○クリントン大統領 橋本総理、ありがとうございます。

 まず最初に日本の皇室の方々に、そしてまた総理にお礼を申し上げます。私と、それから私の夫人、そしてアメリカの今回の代表団に対して示されましたホスピタリティーにありがとうございますと申し上げます。

 そしてまた、この美しい春に日本の方々から歓迎を受けたことをありがたく思います。

 今回、私どもはこの二国間のすばらしいパートナーシップを祝うために集まってきております。五十年にわたるパートナーシップであり、そして時代の要請にこたえていくためのパートナーシップ強化の関係です。総理と私は固く決意いたしました。そして、合意いたしました。我々は世界で最強の民主主義国家であり、そして経済大国である。それゆえ、アメリカと日本は指導をしていく責任を負っているということです。今こそ、すばらしい可能性に満ちた日々であります。我々の国民が最大限に自分の力を発揮していくためのときであり、またいろいろとチャレンジのあるときです。

 いろいろと問題が国境を越えて起こっております。そして、その国境を越えた問題が国内の問題にもなります。例えば、いろいろならず者国家から我々に向けられる攻撃、そして大量破壊兵器、テロリズム、そして環境の悪化、経済的な混乱、このようないろいろな国境を越えた問題からだれも逃れることは出来ません。しかし、我々は共通の解決を見つけ出すことは出来ます。そして、ここ三年間、我々はそれをしてきました。我々の関係は非常に多様になってきております。安全保障、通商、コモン・アジェンダなどで我々は関係を深めてきました。日本とアメリカの関係というのは今以上、これまで以上によりよいものになり、また強固なものになっていると言えるでしょう。

 我々の安全保障関係こそ、この太平洋に安全と平和をもたらすためのものです。特に、この地域では今、大きな変化が起こっています。この安全保障に関する共同宣言、今、私は総理と署名いたしましたけれども、この宣言というのは一年にわたる本当にたくさんの人々の尽力によるものです。そして、二十一世紀に向けて両国間の同盟関係を強化するものであります。アメリカは、日本における米軍の駐留を今の水準で維持いたします。そして、日本の自衛隊との協力関係も強化します。また、日本の人々に対する我々の基地の負担、特に沖縄の人々に対する負担を削減していくこと、しかも削減しながらも我々の防衛能力はそがないということ、そのために尽力していきます。また、通商関係もよい軌道に乗っております。これも両国民にとってすばらしいことでしょう。

 アメリカにとって、我々の製品やサービスが日本ではなかなか売れない。日本の市場で売れないということをいつか私は申し上げました。しかし、それ以来、二十一の協定を二国間で結んでいます。例えば、自動車部品から医療機器からコンピュータにわたるものです。そして、我々の輸出品は八五%も上がりました。つまり、これはアメリカ人に更によりよい賃金での雇用をもたらしたということであり、日本の方々には更に選択の幅を増やすと同時に、価格も減ったということです。自由貿易というのは全員が、勝利を収める体制です。しかし、そのほかにも半導体やフィルムや保険業界でまだ解決しなければいけないものがあり、それは簡単に解決出来るものではありません。

 しかし、ここで明らかにしておきたいと思います。我々はプロセスをつくり上げたのであるということです。問題が出てきたら、それを忍耐力をもち、プラグマチックな形で解決していくプロセスです。

 そしてまた、この我々二国間のパートナーシップが世界で大きな変化をもたらしています。ボスニアでは、我々は人々に自分たちの土地を復興していくための支援をしております。そして、日本はそのために五億ドルの資金援助をしてくださいました。これを今、発表されました。これは本当に日本側の力強いコミットメント、世界の平和と自由のためのコミットメントの証です。

 橋本総理と私は、そのほかにも我々コモン・アジェンダでとっているイニシアチブを確認しました。西暦二〇〇〇年にはポリオの撲滅をするということ、そしてまた自然災害、そして地震など、こういう面でそれを予防するための努力をするということ、そして自然環境を守り、人々が技術によって生活水準を上げること、そして全面核実験禁止条約を今年は締結するということ。平和と自由をより多くの人々にもたらすための努力です。

 そしてまた、日本政府に対してはこれまで努力をし、いろいろと協力や文化交流をアメリカの人々との間に広めてくださいましたことを感謝いたします。特に橋本総理には、この点で努力をしてくださいましたことを感謝いたします。

 今こそチャレンジの時代であります。それゆえに二国間のパートナーシップというのは我々両国に、そして世界にとって今まで以上に重要なのです。我々がその潜在力を解き放てば、平和と、そして前進のために大きな力となり得るでしょう。それも、両国間、世界のためのであります。

 総理、どうもありがとうございました。

(質疑)

−クリントン大統領、橋本総理、ご苦労さまです。

 橋本総理に質問させていただきます。

 ただいま、今回の首脳会談について総理から率直な印象をお聞かせ願いましたけれども、個別的なテーマについて、今回は冷戦終結後の新しい国際情勢の中で、日米安保体制の重要性を再確認するというのが主な大きなテーマの一つだと思います。そのために例えば日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインの見直しをするということなども確認されたと思います。

 ただ、これについては既に国内から憲法で禁じられた集団的自衛権の行使などとの兼ね合いについて、今後意見調整が必要ではないかというような意見も出されています。この問題について、総理が国民的な合意を得るためにどのような取組みをなされるのか。そのことについて意見を伺いたいと思います。

○総理 我々は昨年、今までの防衛大綱を変えて新しい防衛大綱をつくりました。これは、冷戦終結後の今の国際情勢に合わせて日本の防衛力を根本的に位置づけたものです。当然ながら、その中で変化が生じていますから、我々はいろいろな変化に対応した研究はしなければなりません。

 そして、私たちは今まで、これは本当に私は日米安全保障条約のお陰だったと思いますけれども、第二次世界大戦に敗北を喫して以来五十一年間、平和の中で暮らすことが出来ました。そのために、万一の場合ということを我々は余り考えてこなかったように思います。そして、その万一という場合、例えば、その地域にいる在留邦人を救出する、あるいは避難民を受け入れる。そうした事態を想定することなく暮らしてこられたことは大変幸せなことでした。

 しかし今、やはり我々はそうした事態をも想定しながら何が出来るか。そして、何が出来ないかをきちんと研究しておく必要は本当にあると思っています。

 私は、ややもするとこうした議論が憲法の議論あるいは有事法制の議論といった観念的な議論から始まってしまうことを大変不幸だと思っています。我々は、現在の法体系の中でも出来ることがあるはずです。こうした点をきちんと研究していくことは、我々自身の責任ではないでしょうか。改めて、私はこの機会にそうしたことを訴えていきたいと思いますし、本当に危機が生じたとき、日米安保体制というものが円滑に機能する。そして、効果的に運用されるためにも、日米協力というものについて、我々は出来ることと出来ないことの研究はきちんとやっておかなければならない、私はそう思っているんです。

 −先程、中東について議論されたとおっしゃいましたが、イスラエルとヒズボラとの間に停戦をもたらすためには、どのような努力が出来るのでしょうか、どんな進展があったんでしょうか。この行動に対する責任はだれにあるのでしょうか。

○クリントン大統領 最初から申し上げましょう。明らかに休戦に対して違反が行われました。それは、ヒズボラが行った違反であります。かつてありました休戦、これをカチューシャロケットをイスラエルの北部に打ち込むことで、この休戦を破ったわけであります。そして、このような事態が勃発しました。

 まず、それを認識しまして次の点を申し上げます。ここで重要なのは、あらゆる努力をして今の暴力にとどめを刺す。これを終えさせることが必要です。私は日本におりますけれども、そして日本で非常に重要な問題に関して我々は今、努力をしておりますけれども、しかし、国務長官が、この問題に関してここ数日間、中東問題のためにあらゆる尽力、努力をしておりました。そして、暴力を終えさせ、実際に機能するような合意を中東で成立させようとしております。今のところ、しかし、その進捗状況に関するレポートはございません。

 −大統領、二か国間の協議において、最近の台湾海峡を挟んだ緊張関係についてお話がありましたでしょうか。そのことは、共同宣言の中に含まれておりませんでしたので伺います。

 日米安全保障条約は日本を守るためだけではなく、アジア太平洋地域における意味合いを持つと思いますが、その保護の中に台湾も含まれるのでしょうか。

○クリントン大統領 橋本総理もこの点についてコメントをなさりたいと思いますが、確かに台湾と中国の問題に関しては、我々は広範囲にわたり協議をいたしました。特に、台湾海峡での緊張に関して協議をいたしました。平和を維持したい、この地域のすべての人々のために平和を維持したいという気持ちを我々は非常に強く持っております。

 そして、橋本総理も私も、アメリカは明らかに確かにいわゆる中国は一つという政策を持っておりますが、しかし、その何年か前に我々がいろいろとしましたコミットメント、そのコミットメントの一つとしては、いろいろな違いを平和的な解決で妥結していくという、このようなコミットメントも忘れているわけではありません。したがって、そういうような観点から、台湾海峡での問題を見たいと思います。

 しかし、ここ数日を見ますと、もう少し秩序、それから平和があの地域に戻ってきたようであります。それこそ、我々が推し進めてきたものであります。台湾、それから中国、相互にそれを進めてきたものであります。

 総理、どうぞ。

○総理 私たちは、台湾海峡をめぐる情勢が非常に緊迫したとき、双方の当事者に自制を求めました。そして、我々もまた日中共同声明以来、中国は一つであるべきという、その主張を支持しています。その上で、私たちは双方の当事者が平和な中でこの問題を解決してもらいたいと心から願っています。

 −総理とクリントン大統領にお伺いしたいと思います。

 クリントン大統領はこちらに見える前に韓国に行って、北朝鮮、朝鮮半島問題について、中国、韓国、北朝鮮、アメリカの四か国で平和協定に向けて協議をすることを発表されましたが、今後、その四か国協議の中で、日本がどういう形でその話し合いの中に参画していくのか、アメリカとして、どのように日本の役割を提供されていくのか、日本として、どのような役割をアメリカあるいは中国、韓国、北朝鮮に提示していかれるのか、それが一つ。

 それから、この安保宣言の中で、東アジアの十万人を今後も維持するということをはっきりうたっておりますが、在日米軍については四万七千人という数字をあえて入れなかったというふうに我々は理解しております。大統領、今後、東アジアの情勢を、将来的なものもにらみながら、四万七千人という在日米軍の数字は固定化されたものなのか、それとも将来は柔軟に対応できるものなのか、その点についてコメントいただければ、よろしくお願いいたします。

○クリントン大統領 まず、二つ目の質問からお答えいたします。

 我々は、東アジアにおいて一体、ある週、例えば日本や韓国でどれぐらいの兵力を置くかというのは、それは日によって違っていきます。その世界情勢やこの地域で起こっていることによって柔軟性を持って対応していきますが、しかし、その兵力水準は、今とほぼ同じレベルをということを考えています。そして、我々のコミットメント、これは総理とペリー国防長官が発表されたものでありまして、橋本総理が非常なリーダーシップを発揮されたものでありますが、沖縄その他の問題に関しますあの取り決めを確認しつつ、四万七千人ぐらいのものを日本に駐留させるということであると思います。

 それから韓国に関しましては、あるいは朝鮮半島に関しましては、この四か国が和平協議に入るということです。といいますのも、中国もアメリカも、あの休戦協定の締約国であるからです。そして、これは四十三年前のことでありましたけれども、しかしながら、この南北朝鮮で、この当事国自身、韓国と北朝鮮が合意しなければ平和にはならないということは明らかです。そしてその平和をもたらすためには、この地域の近隣諸国、そして発言権を持っている人たちがここに参加してくることが必要であります。

 ですから、橋本総理が今回、金大統領と私が提案しました昨日の提案に関して、支持を示してくださいましたことを非常にうれしく思います。そのほかの方々も支持を表明していただきたいと思います。そうすれば、韓国と北朝鮮、そして彼らがその平和を求めての会談がそれで促進されると思います。

○総理 私は本当にあの発表を聞いたとき、非常にうれしく、その内容を受け止めました。そして、朝鮮半島をめぐる情勢の中で、アメリカ、中国を加え、韓国と北朝鮮が前提条件なしに話し合いの場につく、それが本当に朝鮮半島の平和のスタートになればいい、心からそう願いました。そして、私は日本として、その話し合いの中へ求められれば、どんな役割でも果たしていくべきだと思っています。

 しかし、やはりこれは朝鮮半島に今韓国と北朝鮮という二つの線が引かれ、そして、それに休戦協定をつくるときに参画されたアメリカと中国が加わって話し合われる、そこに日本から積極的にああしたい、こうしたいということを言うべきではない、私はそう思っています。求められた役割は一生懸命に果たして平和がよみがえるための努力をするのは当然です。

 −私は会見で話されましたコモン・アジェンダにつきまして、そのコモン・アジェンダに今回正式に追加されたという日本とアメリカの協力分野について、クリントン大統領と橋本総理にお伺いしたいと思います。

 今回、コモン・アジェンダの追加分野の中で発表されましたテロリズム対策という部分で、日米間の協力の強化が打ち出されたのではと思うんですけれども、ご承知のように日本では去年、過去に日本人が経験したことのないような大規模なテロ事件であるオウム事件が発生いたしました。こうしたテロに対しまして、特に日本とアメリカ、両国の間で具体的にどのようにして足並みをそろえて対応していこうというのか、その具体策を伺いたいと思います。

 例えば、FBIやCIAと日本の警察、法務当局の間で、定期的な情報交換を図るというようなことをお考えでしょうか、以上よろしくお願いいたします。

○クリントン大統領 もちろん、細かい点、細目に至っては今後また詰めていかなければなりません。しかし、枠組みについては私はお話し出来ると思います。それを少し申し上げたいと思います。

 我が国、あるいは日本のような国々、国境がますます開かれてきまして、お金や情報がどんどんと入ってきます。本当に今の世界では数秒の間にお金や情報が入ってくるわけです。そうしますと、もっと統合されるようになります。そうしますと、二つのテロの危険を負うことになるのです。その一つは国内でのテロであります。例えば、日本の地下鉄で起こったこと、それからアメリカではオクラホマシティーで起こったようなテロであります。

 それから二つ目のテロというのは、その発生地が国境の向こうであるときです。それは例えばニューヨークのワールドトレードセンターで起こった爆破事件であります。そのほかにもいろいろ攻撃の計画がありました。それを我々は事前に打ち砕くことが出来ましたけれども、そのように海外から来ているテロであります。

 このような攻撃というのは、本当に罪もなき市民に脅威を提供するだけではなく、いわゆる開かれた文明社会、そしてグローバルな経済そのものを脅かすことになるのです。ですからこそ我々は協力しなければいけない。

 二つのやり方があると思いますが、まず第一に情報を共有するということです。例えば国際的なテロ活動に関しての情報の共有であり、この点ではいろいろ協力することが出来ます。

 それからまた二つ目には、どのようにして国内のテロ対策をすればいいかということ、これに関してお互いに学ぶところがあると思うのです。これも国際的な側面を持っていると思います。

 例えばインターネットで、サリンガスのような問題をアメリカで引き起こすためにはどういうふうにすればいいかというのは、インターネットでもすぐ分かるようになってきております。インターネットからそのような情報、例えば、このオクラホマシティーの連邦ビルを爆破したような爆弾の作り方も、インターネットですぐに入手出来るようになっているのです。しかし、そういうことが実際に起こる前に予防することです。そのためにはまたいろいろな情報や技術、それを共有すると同時に、その取締り活動についても情報の交換が必要であります。偉大な国すべてが今後二十年、このようなテロ問題に直面していくと思います。我々はその最先端を行きまして、協力が出来るということ、そして人命を救い、自由を擁護することが出来るということを示したいと思います。

○総理 今大統領が述べられたことに私がつけ加えるとすれば、既に我々の間では、例えば麻薬犯罪に対してのマネーロンダリングを共同で摘発する、そうした行動は進んでいます。ただ、それをどういう手法でやるのか、公表することは勘弁していただきたい。しかし、現実にマネーロンダリングに対する対応のように、協力の進んでいるものはあるわけです。テロリズムと戦う場合でも、さまざまなやり方があるでしょう。

 −大統領、総理大臣、今、調印されました安全保障共同宣言ですけれども、アメリカの軍事プレゼンスが、どのような意味においてアジア太平洋地域において欠かすことの出来ないものになるのでしょうか。そしてまた、日本との関係においてどういう位置づけになるのでしょうか。

○クリントン大統領 まず第一に、私はアメリカのプレゼンスはここで必要とされている。人々に何らかの恐怖がある限りは、我々のプレゼンスは必要とされていると信じています。

 例えば、ある一つの国がほかの国を支配しようとしているのではないかという恐れ、あるいはこのアジアが何らかの形での安全保障上の問題の戦場となり得ること、例えば日本の人たちの独立、あるいはこの地域の同盟国の独立や自由を脅かすような恐怖あるいは脅威がある限りはプレゼンスが必要です。

 そのときが終わったというのを決めるのは、我々ではなくてこちらに住んでいらっしゃる方々だと思います。もちろん我々の意見も聞いていただきたいと思いますが、大統領として私が最も喜ばしく思うことの一つは、こうしたアジアで我々が担っております安全保障のパートナーシップ、これを通しまして、いろいろな国々から我々のプレゼンスこそ安定性の源であると見られているという点であります。

 我々の能力、軍事力を認めると同時に、また我々は自分たちのためにこれをやっているのではない。我々はある一国を支配しようとしているわけでもないし、あるいはどこかの国をコントロールしようとしているわけでもない。何らか不適切な形で我々の軍事力を使おうとしたのではなく、我々がここにいるのは、日本や韓国の同盟国にいるのは、それはこの地域の安全や、それから安定の源となりたいからであると、それを信じていただいていることです。それが信じられている限り、我々はここにいるべきであると思います。ここの人たちが我々にいてほしいと言う限りであります。そういうときがもはや必要でないというときが来ましたら、それは我々自身も分かると思います。

 しかし、そのような決断というのは何十年にもわたり、我々の同盟国であった、そちらの方々からそういう意思表示は来ると思います。

○総理 今の大統領の最後の部分を受けて、私は答えたいと思います。

 まさに、私は米軍のこの地域における存在というものを我々として歓迎している。そして、それがアジア太平洋地域の安定に役立っている。まず、それが一番大事なことなんです。東西二大陣営の対立という冷戦の時代が終わってから、確かに大きな紛争要因というものは減りました。

 しかし、先程からの質問の中にも出ているように、実は地域紛争は増えました。いろいろな原因で、不安定な地域が幾つもあります。そして、この地域には大量破壊兵器もまだたくさんあります。そうした中で、日本だけで日本の安全を確保しようとする、それは大変な努力を必要とするだけではなく、その日本の行動に対して国際的にもなかなか安心してもらえるような空気にはなりますまい。アメリカが自国の若い兵士たちの実際の姿で現に存在してくれていることが、どれほどこの地域に大きな安定をもたらしているかは、当然のことながらご理解いただけると私は思います。

 −大統領にお聞きします。冒頭の質問でございましたが、今回の首脳の合意が日本の安全保障を大きく転換するきっかけになると思います。これについての考えをお聞きしたいと思います。

○クリントン大統領 私の見解は、我々のこの安全保障関係を強化するものだと思います。これは一つの転換期というよりも、これが更に今後成熟したものに育っていく、そのプロセスだと思います。

 例を言いますと、総理が我々に対して沖縄の人たちの心をくんでほしいとおっしゃいましたときに、私は本当に実際に沖縄の人たちがどういうようなことを考えているのかということを知ることが出来ました。例えば、あの不幸な事件が起こったこともあります。こういう問題がまだこれまでに解決されなかったということに、私は非常に心を痛めております。

 昨夜も総理に申し上げましたけれども、アメリカにこのような機会を与えてくださいましたこと、あの問題を知り、それに対して的確な形で反応する機会を与えてくださいましたことを感謝いたします。

 しかし、そのやり方としては、我々の安全保障能力や、それから自衛の能力を損なうものではありません。そうではなくて、日本とは今後も協力出来ますチャレンジが将来来ましたら、的確な形でそれにこたえていけるようにであります。そしてまた、日本も独自の安全保障上の問題を自分たちで対応していけるようにであります。これは、これまでのやり方から大きく離れたのではなくて、長い間の同盟国の二つがいろいろ世界のチャレンジにこたえ、そして時代の要請にこたえて少し微調整しただけのことです。

 −大統領、テキサスにおけるCDCに関する新しい発見について伺いたいと思います。

○クリントン大統領 今朝、それについてブリーフィングを受けました。CDCがそれをしっかりと突き止めております。テキサスの保健関係者がその問題に今、対応しております。それは一般市民に対して大きな脅威はないと、そのように信じております。アメリカの国民に対して、これが疾病管理センターの反応であります。余り過剰反応しないように、確かに深刻な問題でありますが、我々はコントロールをしていきます。もっと本当に心配しなければいけないことになれば、アメリカの国民に直ちに我々はそれを知らせます。しかし、今のところ連邦政府がこれに対して適切な行動をとっている。我々は、今のところ人々の過剰反応は必要でないと信じております。