データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本とアメリカによるコモン・アジェンダ共同声明

[場所] ワシントンD.C.
[年月日] 1997年5月22日
[出典] 外交青書41号,257頁.
[備考] 
[全文]

(1) 4月25日に行われた橋本総理とクリントン大統領の会談において地球的規模の課題への日米の取り組みの枠組であるコモン・アジェンダが日米関係の重要な柱の一つであることが再確認された。コモン・アジェンダは設立以来,健康,急速な人口増加,災害の軽減,環境といった最も差し迫った地球的規模の問題の幅広い分野において,数多くの具体的な成果を収めてきている。コモン・アジェンダは広い基盤に立つ日米関係の重要な象徴であるとともに,更には1国家の枠を越える困難な課題の解決に協力して取り組む我々の能力を示すものである。

 今次の次官級全体会合では,先般のゴア副大統領の訪日の際に承認された「環境教育」,「地球変動研究・予測」,「油流出事故への対応」,「子供の 健康」,「環境協力」の5つの協力案件を如何に取り進めていくかについて意見が交換された。日米双方は,21世紀の課題に備えるべく,世界の子供たちの環境教育を推進するため一層の努力を行う決意を確認した。

(2) また,日米両国は,アジア,アフリカおよび中南米地域における協力を拡大することを決定した。なお,今次の次官級協議では中南米地域に焦点が当てられた。両国は,世界各地の開発途上国における差し迫った課題に対処すべく,共同で協力のための計画を検討していく。

(3) コモン・アジェンダを更に推進するためには,協力範囲を拡大するのみならず,一層効果的な今後の協力のための枠組を構築することが必要である。かかる目的のために,コモン・アジェンダについての包括的レビューの結果を踏まえ,現在のコモン・アジェンダの対象26分野を更に運営しやすい枠組へと整理・統合することとなった。

(4) 多面にわたる地球的規模の問題への取り組みを更に活性化するためには,コモン・アジェンダへの参加主体の多様化を図ることも重要である。このことは,これまでのコモン・アジェンダの下での多くの成功例は,両国政府のみならず,企業,NGO等民間セクターそして第三国の参加する協力から生まれていることから明らかである。こうした観点から,NGO等民間セクターとの更なる関係強化及びコモン・アジェンダに対する理解の促進の重要性についても確認された。また,コモン・アジェンダの受け入れ国,NGO等の民間セクターの参加を得て,コモン・アジェンダ世界会議を来年初頭に開催し,コモン・アジェンダの下での活動につき意見交換する予定である。