[文書名] 規制緩和及び競争政策に関する日米間の強化されたイニシアティヴ」(第一回)共同現状報告
「規制緩和及び競争政策に関する日米間の強化されたイニシアティヴ」(第一回)共同現状報告
1997年6月以降、日米両国政府は、日米間の新たな経済パートナーシップのための枠組み(「枠組み」)の下での規制緩和及び競争政策に関する強化されたイニシアティヴ(「強化されたイニシアティヴ」)の目的、すなわち、「枠組みの中で謳われているように、消費者利益を増進するとともに効率性の向上と経済活動の促進を図るため、『競争力のある製品及びサービスの市場アクセスを相当程度妨げる効果を持つ政府の関連法令及び行政指導の改革を扱う』ために、真剣な意見交換を行い、また措置を扱う」との目的を達成するために、精力的な努力を重ねてきた。「強化されたイニシアティブ」は、規制緩和のもたらす利益についての日米両国政府の強い確信を反映している。規制緩和の促進と競争政策の積極的な実施は、両国政府にとって最重要の課題である。
「強化されたイニシアティヴ」の下、日米両国政府は、上級会合並びに電気通信、住宅、医療機器・医薬品、金融サービス、競争政策及び流通を含む構造問題と、透明性及び政府慣行に関する問題に取り組む規制緩和・競争政策等作業部会の5つの専門家会合を開催してきた。双方通行の対話と具体的な進展の達成という原則に則り、日米両国政府は多岐に亘る規制緩和項目について見解及び関心事項を交換するとともに、進捗状況につき明確にした。その努力の一部として、1997年11月、米国政府は、規制緩和、競争政策、透明性及びその他の政府慣行に関する意見書を日本国政府に提出した。日本国政府も、また、米国政府に対し規制に関する関心を提起してきた。
日本国政府は、内外の要望を幅広く聴取した上で、98年3月末に閣議決定した新たな規制緩和推進3カ年計画を始めとする一連の規制緩和措置をとってきた。この報告には、「強化されたイニシアティヴ」の下での対話に関連する日本国政府の規制緩和及びその他の措置が列記されている。
米国政府は、日本国政府の努力による進展を歓迎した。同時に、米国政府は、米国政府が1997年11月に提出した意見書の中で残された米側の提案を速やかに取り上げるよう、日本国政府の継続的な努力を促した。
米国政府は、日本国政府が関心を有する米側の事項につき説明した。これらの事項は、本件報告に列記されている。日本国政府は、米国政府がこれら事項に積極的に取り組むよう促した。
日米両国政府は、強化されたイニシアティブの下で話し合われたこれらの措置は競争力のある製品及びサービスの市場アクセスを改善し、消費者利益を増進し、効率性を高め、経済活動を促進するとの見解を共有する。「強化されたイニシアティヴ」の下でとられる措置は、国際的な義務と整合的に、外国の製品及びサービスに対し無差別待遇を与えるものである。
両国政府は、さらなる規制緩和の推進のため、「強化されたイニシアティヴ」の下、引き続き対話を行っていく決意を再確認した。両国政府は、追加事項を含む未解決の問題に引き続き取り組んでいく。両国政府は、競争を促進する上で幅広い規制緩和がもつ重要性並びにエネルギー分野がエネルギー安全保障及び地球環境に密接に関連していることを認識し、既存の日米エネルギー作業部会の下に設置される専門家会合において「強化されたイニシアティブ」の下での規制緩和の問題に取り組むこととする。この専門家会合は、日本側は外務省と通産省が共同で議長を務め、米国側はUSTRが議長を務める。
両国政府は、この報告で確認された措置の実施は継続する過程であり、多くの場合、政府の関連法令及び行政指導の改革が必要となることを認識している。「強化されたイニシアティブ」の下、両国政府は、いずれかの相手国政府の要望に基づき、相互に可能な時期に、これら措置を取り上げるために会合し、これら措置が「強化されたイニシアティブ」の目的の実現に貢献するために緊密に協力していく。
「強化されたイニシアティヴ」の下で扱われた日本国政府による規制緩和及びその他の措置
A. 住宅
1. 2000年度までに建築基準の性能規定化及び新しい建築材料に関する中央評価システムを導入するとともに、1999年度までに向上し、かつ、効率的な建築確認・検査手続きを実施し、また、2000年度までに準防火地域における木造3階建て共同住宅の性能規定化された新しい簡単な手続きを実施することを目的とした建築基準法の改正(現通常国会に法案提出済)。
2. 改正建築基準法に関する規則をどのように実施するかについての基本的な考えを関係者に対し準備期間の1998年6月から始めて2年間において発表。
3. 1997年8月から実行を始めている準防火地域における木造3階建て共同住宅の承認手続きの導入と奨励。
4. 1998年5月に始まる国際的及び北米の慣行を基礎にした合否試験を含めた2×4建築の試験方法と評価方法の実施。
5. 1998年2月に米国製材規格委員会(American Lumber Standards Committee : ALSC)と米国西部木材製品協会(Western Wood Products Association : WWPA)の機械等級区分製材(Machine Stress Rated : MSR 材)を承認し、ALSCとWWPAの構造用たし継材(Finger Joint : FJ材)の承認を1998年5月に行うと発表。
6. 種々の防火建築材料の為の耐火試験の試験機関としてULの承認へ向けた検討。
7. 1998年3月にコードレス釘打ち機(IM350/90CTQ)が銃刀法上の「銃砲」にあたらないとの結論。
8. 米国釘及び釘の使用方法に関する対話の継続。9.改正建築基準法を実施するための詳細かつ時宜を得た手続きのレビュー措置を含めた、住宅分野のマーケット・アクセス及び基準関連問題に関する対話の継続。10.板の強度を含む性能に基づく基準を重視した構造用合板に関する改訂された日本農林規格(JAS)の1998年度中の導入。
B. 電気通信
1. 相互接続
(1)番号ポータビリティーの実現方式について専門家による検討を行い、10年度中に結論を得る。
(2)多数事業者間の接続協定の締結方法の簡素化について専門家による検討を行い、10年度中に結論を得る。
(3)日本政府は、出来るだけ早期に接続料に長期増分費用方式を導入することができるよう、所要の電気通信事業法改正案を2000年春の通常国会に提出する意図を有する。この法案が成立すれば、日本政府は可能な限り早い期日に長期増分費用方式を実施できるように所要の手続き(例えば、省令の制定や接続約款の認可)を迅速に行う。仮に全ての適正な手続きが迅速に完了されれば、長期増分費用方式は2000年中に実施されよう。この過程において、ユニバーサル・サービスの確保、並びに既存の地域電話会社の利用者料金及び経営に破壊的な影響を与えないよう適切に配慮する。長期増分費用方式を基礎とした料金の導入に先立ち、日本政府は、その既存の権限の範囲内において、接続料の引き下げを可能な限り促進する。
2. CSデジタル放送
(1)1998年3月に、CSデジタル放送のチャンネル複数所有制限を緩和
(2)1998年中に、CSデジタル放送の委託放送事業者間で統計多重方式の活用ができるようにする(3)CS放送トランスポンダ料金の届出制に適用されている総括原価主義の廃止を1998年6月頃に予定
3. 国際単純再販(公専公)
国際単純再販を1997年12月22日から自由化
4. KDDの外資規制
KDDの外資規制の撤廃(1998年5月に公布)
5. 百対地規則
1998年6月末までに、国際回線の設定に関する制限(百対地規則)の撤廃
6. 免許と料金に関する手続き
(1)原則料金届出制とする法制の導入(1998年5月に公布)
(2)第二種電気通信事業者も、端末系伝送路設備であって、一の利用者の設備に接続するものを設置できるようにする。(1998年5月に公布)
(3)特別第二種電気通信事業者の範囲の限定(1998年5月に公布)
(4)反競争的料金設定防止措置の実施(1998年5月に公布)
7. 郵政省のパブリックコメント招請手続き
郵政省による、重要な規制の変更に関するパブリックコメント招請手続きの自発的な実施
8. CATVサービス
ケーブルテレビ事業者に係る外資規制について撤廃の方向で、1998年中に結論を得る。
9. 検査(試験)及び証明(認定)
(1)1997年9月16日より、無線設備検査検定協会(MKK)の無線設備の試験及び証明手続きの申請を簡素化
(2)1997年12月25日より、MKKの技術基準適合証明を簡素化
(3)1998年4月より、ケーブルテレビ施設設置の許可手続を簡素化
(4)無線設備の技術基準適合証明を簡素化(1998年5月に公布)
(5)電気通信端末機器の技術基準適合認定を簡素化(1998年5月に公布)
10. 線路敷設権
ケーブルテレビ会社と電気通信事業者が電柱、管路、ダクト、線路等用地への時宜を得た、無差別、かつ透明性のあるアクセスを得る能力を改善させるための措置を提案する目的をもって、日本におけるこれらの施設へのアクセスをめぐる現在の条件の検討を1998年末までに終える。
C. 医療用具/医薬品
1. 1997年の厚生省通知を可能な限り広範に解釈することにより、新しい医療用具の承認のために必要な外国臨床試験データ受入れを大幅に拡大する。
2. より効果的で費用効率的な治療を患者にもたらすような新製品の導入を阻害することのないよう医薬品と医療用具の開発の重要性を認識する。
3. 医療政策の検討における透明性を確保するために、関係審議会における外国の医薬品・医療用具製造業者からの有意義な意見表明の機会を日本の製造業者と同等に認めるとともに、外国の医薬品・医療用具製「業者から要望に応じて厚生省のあらゆるレベルの職員との意見交換の機会を設ける。
4. 新薬承認期間を2000年4月までに12ヶ月に短縮するとともに、現在からその時点までの間着実かつ継続的な改善を行う、また革新的な新薬の導入を一層迅速化するため、とりわけ優先的医薬品について承認期間を相当程度短縮する。
5. 1998年夏までに日米EU医薬品規制整合化国際会議のガイドラインを日本の国内規則に取り入れることにより医薬品の外国臨床試験データの受入れを拡大するとともに、受入れ手続を透明にし、不適切な遅延を避ける。
6. 中央社会保険医療協議会(中医協)の承認を条件として、関係製造業者、臨床医、その他の者の意見も考慮しつつ、医療用具の新たな機能別償還区分の一定の期間内における迅速な創設のための効率的かつ透明な手続をできる限り早期に策定する。
D. 金融サービス
2001年までにわたる金融サービス自由化の広範なプログラムは、1997年6月に定められたスケジュールに則り実施されてきており、未実施のプログラムの相当部分を実施するための法律が国会に提出された。米国はこの進展を歓迎するとともに、提案されたスケジュール内に、自由化プログラムを完全に実施するという日本の意図を歓迎した。
1. 普通銀行本体での劣後債の発行の解禁(97年6月30日)
2. 証券会社による未上場・未登録株式の取り扱い解禁(97年7月1日)
3. 東京証券取引所及び大阪証券取引所における個別株式オプション取引の開始(97年7月18日)
4. 証券総合口座の導入(97年10月1日)
5. 業態別子会社の業務範囲の拡大(97年10月1日)(銀行系証券子会社によるエクイティものの流通業務、株価指数先物・オプション取引(現物株式の受渡しを伴うものは除く)を解禁。証券会社の信託銀行子会社による貸付信託、特定金銭信託、単独運用指定金銭信託を解禁。)
6. 東京証券取引所における大口、バスケット取引に係る時間外取引制度の導入(97年11月14日)
7. 投資信託委託会社の銀行等からの店舗借りによる投資信託の窓口販売の導入(97年12月1日)
8. 金融持株会社の設立解禁(98年3月11日)
9. 改正外為法の施行による内外資本取引等の原則自由化(98年4月1日)
10. 株式売買委託手数料の自由化部分を5000万円超に引き下げ(98年4月1日)
11. 算定会の料率使用義務の廃止(現通常国会で審議中。98年7月1日実施予定)
12. SPC(特定目的会社)を利用した資産流動化の仕組みを創設することによる資産流動化の促進(現通常国会で審議中。98年9月1日実施予定)
13. 会社型投信、私募投信等の新しい投資信託の商品の導入(現通常国会で審議中。98年12月1日実施予定)
14. 証券デリバティブの全面解禁(現通常国会で審議中。98年12月1日実施予定)
15. 証券会社の業務範囲制限の撤廃(現通常国会で審議中。98年12月1日実施予定)
16. 証券会社の免許制から原則登録制への移行(現通常国会で審議中。98年12月1日実施予定)
17. 私設取引システム導入(現通常国会で審議中。98年12月1日実施予定)
18. 銀行の業務範囲の拡大(投信の窓販等の解禁等)及び銀行の子会社の業務範囲の拡大(金融関連業務全般)(現通常国会で審議中。98年12月1日実施予定)
19. 投資者保護基金及び保険契約者保護機構の創設(現通常国会で審議中。98年12月1日実施予定)また、投資者保護基金については、参加者のリスクを軽減するため、顧客勘定と自己勘定の分離など付随的に必要な措置を執る。
20. 企業の財務諸表及び情報開示を連結ベース主体とする。(99年3月期から段階的に実施予定)
21. 銀行の証券子会社及び証券会社の信託銀行子会社の業務範囲制限の撤廃(99年度下期中に実施予定)
22. 株式売買委託手数料の完全自由化(99年末までに実施予定)
23. 保険会社と金融他業態との間の参入(2001年3月までに実施予定)
24. 投資信託委託会社及び投資顧問会社が他の資金運用会社に一任運用を委託することを認める。(現通常国会で審議中。98年12月1日実施予定)
E. 流通
1. 通関手続/輸入手続
(1)輸入手続を迅速化するため厚生省及び農林水産省の輸入手続システムと税関の通関システムとを接続するネットワーク・システムを導入した。
(2)迅速な輸入通関手続きを可能にするため、日本の税関は、到着前審査の拡大、ファックスによる事前教示サービス及び航空貨物のための通関システム(Air-NACCS:Nippon Automated Cargo Clearance System)を用いたいわゆる到着即時通関サービスの提供などの措置を導入した。
(3)電子メールを使った事前教示制度を1998年末までに確立する。
(4)海上貨物通関システム(Sea-NACCS)の1999年度末までの改善
a.貨物情報と輸入申告情報を効率的に連結させることに謔閨A海上貨物の迅速な輸入通関を可能とし、そして、
b.他の関係省庁の輸出入手続システムと連係して輸出入手続のワンストップサービスを実現するため、ネットワークシステムを拡大する。
(5)1999年度までにを目途に、外国為替及び外国貿易法に基づく輸出入許可及び承認の手続きをEDI(電子データ交換)化する。
2. 小売およびサービス
(1)大規模小売店舗に関する基本的な政策変更大規模小売店舗の開店・事業活動に関する現在のおよび新たな問題に対応するための新たな法制度を導入するための法案を今次通常国会へ提出済。この新たな法制度は需給調整を廃止し、地方政府に対し、中央政府により定められるガイドラインの中で規定される、例えば、交通、騒音等の生活環境要素に限定される透明性のある基準に基づいて法を運用することを求めるものである。現行の大店法は、これにより、廃止される。
(2)酒類
酒類小売業免許に係る需給調整規制について、人口基準については、1998年9月から段階的な緩和を着実に行い、2003年9月1日をもって廃止し、また、距離基準については、2000年9月1日をもって廃止する。
3. 運輸
(1)トラック事業
a.トラック事業の営業区域について経済ブロック単位への拡大を1998年度中に完了する。そして、
b.トラック事業の最低車両台数規制については、2000年度までに全国一律5台となるよう段階的に引き下げていく。
(2)貨物運送取扱事業の運賃・料金の届出について、原価計算書の添付義務を1998年度までに緩和する。そして、
(3)港湾運送事業に関し現行の事業免許制(需給調整規制)を廃止し許可制に、料金認可制を廃止し届け出制にすべきであること、同時に港湾運送の安定化等を図るための各施策の実施及び検討が必要であること等を内容とする1997年12月の行政改革委員会最終意見の内容にしたがって、必要な措置を講ずる。
(4)自動車の基準、仕様および認証
(1)自動車整備士制度に関し、内外関係者のコメント・意見を踏まえ、規制緩和を目的の一つとしてその見直しを進める。
(2)完成検査終了証の有効期間について、6ヶ月を9ヶ月に延長する(道路運送車両法改正案を今次通常国会へ提出済)。
F. 競争政策
1. 公正取引委員会
(1)公正取引委員会は有力な製造業者による流通業者に対する行為(報復的な威嚇を伴う場合など)が自己の競争者の排除につながる場合を含む反競争的行為に取り組むため、関連するガイドラインに従って独占禁止法を効果的に執行し厳格に適用するとの方針を再確認する。
(2)公正取引委員会が経済実態調査の一部として企業が措置を実施することを提言した場合、公正取引委員会は、企業が同委員会により提言された措置を実施したかどうかを評価するためフォローアップ調査を行い、その結果を公表する。
2.日本国政府は、1998年度において、公正取引委員会の人員を10名新規増員し、予算を1.1%増加
させる。
3.実態調査 公正取引委員会は、
(1)日本の上位2000社を対象に独占禁止法遵守プログラムの調査を行い、報告書を1998年夏までに公表する。これに関して、公正取引委員会は、企業の遵守プログラムにつき当該企業からの相談に応じ助言を与える用意がある。
(2)企業が公正取引委員会の指摘にいかに対応してきたかを評価するため、カラー写真フィルム及び印画紙業界についてフォローアップ調査を行う。
(3)企業が公正取引委員会の指摘にいかに対応してきたかを評価するため、板ガラス業界についてフォローアップ調査を行う。
4. 私人による救済措置 日本国政府は、私人が独禁法違反行為について差止訴訟を提起することを認めるための制度を検討するため研究会を創設し(通産省につき1997年9月、公正取引委員会につき1998年3月)、研究会は、それぞれ、1998年夏及び1998年秋を目途に報告書を作成する。
5. 独占禁止法の適用除外制度 日本国政府は、1998年3月の閣議決定に基づき、次期通常国会に適用除外制度(不況カルテル及び合理化カルテルを含む)を廃止ないし改正するための法案を提出する。
6. 規制緩和 公正取引委員会は、参入規制が緩和された業種と同様に需給調整規制により参入が制限されている業種についても積極的に調査を行い、必要な提言を行う。
7. 談合
(1)日本国政府は、1994年の「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」におけるV.6(1)「入札書への記載」の完全な遵守を確保するため、必要な措置をとることとする。右条項は、発注者に対し、入札書において、入札参加者に、独占禁止法等に抵触する行為を行ってはならないと認識していること及び現に行っていないことを確認させることを求めるものである。
(2)入札過程における透明性を高めるため、日本国政府は、公共事業に関し落札者が公表された後に、予定価格を公表する。
G. 法的サービス
今次通常国会において成立した法案において、
1. 外国法事務弁護士として登録するために必要な職務経験年数を5年から3年に引き下げ、それに
伴い日本での経験年数のうち右要件を満たすために算入可能な期間を2年から1年とし、
2. 外国の弁護士が外国法事務弁護士の登録に必要な職務経験要件を満たすに当たり、当該弁護士が第三国において母国法に関する法律業務を行っていた期間も算入することを許容し、
3. 第三国における資格を有する外国の弁護士から書面による助言を得た場合には、外国法事務弁護士が当該第三国法に関する法律業務を扱うことができるようにし、そして、
4. 渉外的法律事件について外国法事務弁護士と日本の弁護士が共同事業を営むことにより、渉外案件において司法及び行政手続きも含む全ての過程を通じて包括的な法的サービスを提供することを可能とするため、共同事業の目的に関する規制を緩和した。
H. 透明性及びその他の政府慣行
1. パブリック・コメント手続
(1)規制の制定、改廃に関わるパブリック・コメント手続についていかなる行政上の措置をとるかについて結論を得る(1999年春まで)。
(2)中央省庁等改革基本法案(仮称)は、日本国政府は、政策形成に民意を反映し、その過程の公正性及び透明性を確保するため、パブリック・コメント手続制度の活用及び確立を検討しなければならない旨規定している(今次通常国会に提出済み)。
2. 申請手続について
(1)審査基準の明確化、具体化、数値化を図るとともに、可能な限り裁量的要素を少なくすること
を目指して、許認可等の審査基準の見直しを行う。
(2)許認可等の審査手続を簡素化・迅速化するための措置を1998年9月末までに具体化し、速やかに実施する。
(3)行政手続法の厳格な執行3.必要に応じ地方自治法改正案を国会に提出することも含め、1999年度中に所要の措置をとることを目的とし、地方自治体による調達につき総合評価落札方式を導入するためのあり方を検討する研究会を設置する。
I. 規制緩和推進機関
新規制緩和推進3カ年計画の下、日本国政府は、内閣総理大臣を本部長とし、全閣僚で構成される行政改革推進本部に置かれる規制緩和委員会に、(1)規制緩和推進3か年計画で決定した事項の実施状況を監視する、(2)規制緩和の新たな課題に対応する、という任務を与えている。そして、委員会が任務を果たすことができるようにするため、メンバーを7人から11人に拡大することを1998年5月8日に発表し、また、これを受け、委員会の活動が十全に行われるよう、委員会の意向を受けた調査活動に当たる事務機能を強化することとし、専担調査室(スタッフ15名程度)を早速5月11日発足させた。
米国に対する日本国政府の関心事項
日本国政府は、米国政府が以下の事項をめぐる状況について改善することを要望した。
1. 構造問題、透明性及び他の政府慣行
(1)バイ・アメリカン条項
(2)1997年外航海運改革法案における措置
(3)新運航補助制度
(4)米国籍船による輸送の義務づけ(貨物留保措置)
(5)内航商船の国内建造義務づけ規定
(6)油タンカーに係わる海洋環境保護のための米国及び国際基準
(7)アンチ・ダンピング措置
(8)保険分野における独禁法適用除外条項(9)ビザの発給手続き
2. 電気通信
(1)外国事業者の米国市場参入に関する連邦通信委員会(FederalCommunicationCommission:FCC)
新規則
a.審査基準
b.支配的事業者に対する規制
c.標準処理期間
(2)ベンチマークに関するFCC新規則
(3)外国衛星事業者の米国市場参入に関するFCC新規則
(4)インターネットの利用に係わる回線利用負担の負担の在り方
(5)米国での州際アクセスチャージを算出するための長期増分費用方式の日本と同時期の実施
(6)米国の長期増分費用方式モデルの準備の段階における透明性
3. 医療用具及び医薬品
(1)日米間の医薬品・医療用具のGMP(Good Manufactureing Practice : 製造管理及び品質管理に関する基準)相互承認の推進
(2)市販前届け出(510(K)届け出)手続の簡素化、迅速化
(3)製造方法の変更についてのFDA(The Food and Drug Administration)への届け出の事後連絡化(4)IND(InvestigationalNewDrugs:治験薬:臨床試験のための薬)申請時に添付を要求されるデータの簡略化
4. 金融サービス
(1)日本及び他の外国の証券従業員がニューヨーク証券取引所、全米証券業協会、及びアメリカ証券取引所と証券業務を行うための免許について簡素化された試験制度。
(2)連邦と州の間の証券登録要件の重畳を最小限にし、州政府が多くの証券について販売を制限したり、条件を付すことの禁止。
(3)複数の州に子会社を有する銀行持株会社及び外国銀行が、合併または統合により、これらの子会社を州際支店を有する単一の銀行にすることを認める。(但し、州際支店ネットワークを明示的に禁止している州を除く)
(4)銀行持株会社及び外国銀行が従事することの出来る活動対象(レギュレーションYに明示)を拡大し、リスクのない元本、私募、私設取引システム、以前は連邦準備制度の個別の命令によってのみ認可されていた他の活動を含める。また、銀行持株会社または外国銀行がレギュレーションYにある活動またはそのような活動に従事している会社を買収するための簡素化された申請及び届け出制度の採用。
(5)米国銀行の海外での営業及び外国銀行の米国での営業を定めるレギュレーションKの改正。この中には、非銀行業務制限免除のための適正を決定するための資格外国銀行の地位の算出方法の変更も含まれる。
(6)非金融会社との関係に一定の制限を課すとの条件の下、銀行、証券会社、保険会社の共同所有を認める金融近代化法の制定。