[文書名] 米国の規制緩和等に関する日本国政府の要望事項
米国の規制緩和等に関する日本国政府の要望事項
I. 構造問題・競争政策・透明性・法的サービス
1. 分野横断的問題(制度的問題)
(1)政府調達
(イ)バイ・アメリカン法及び同趣旨の地方政府法令WTO政府調達適用基準額未満の連邦政府による調達、大量輸送や高速道路建設について連邦政府から財政補助がある場合の地方政府の調達や、WTO政府調達協定の対象とならない地方政府の調達について、内外無差別の原則を確保し、米国企業と外国企業に平等の事業機会を確保するべく、制度を改善されたい。
(背景)米国には、連邦バイ・アメリカン法を始め、公共工事における外国製鋼材の利用を規制する州法や米国製鋼材の優先利用を定めている連邦陸上輸送援助法等、明示的な国内製品優先の規定が存在する。わが国にはこうした国内製品優先を規定する法律はなく内外無差別の調達が確保されている。また、これらの法律による米国製品優遇の容認は、政府調達分野の内外無差別を促進するとのWTO政府調達協定の趣旨・目的に反する。
連邦バイ・アメリカン法は1979年通商協定法によりWTO政府調達協定との整合性はとられており、また、個別のバイ・アメリカン法は協定の適用除外とされている。しかし、WTO政府調達協定が一定額以上の調達を対象としていること、一部の適用除外を認めているのは、協定策定交渉の過程で各国の国内理由から、全ての調達に協定の手続きを適用することができなかったものであり、協定の趣旨・目的に照らせば、内外差別的な調達手続きを積極的に認めるものではない。
また、政府調達協定の対象となっていない州政府等の調達においても、米国製品を優遇する法令が設けられている。さらに、公共工事の入札において州内企業を優遇する調達手続州法が存在する。州内企業優遇策は、必ずしも外国企業の排除を直接の目的とするものではないが、州外の内国企業が州内企業を新たに設立することは外国企業に比べて容易であり、バイ・アメリカン法とほぼ同様の影響を外国企業に与えている。米国地方政府の調達は米国の政府調達の50%を占めるとも言われており、その貿易に与える影響は大きい。米国が引き続き世界の自由貿易体制の主要な担い手として責任を果たしていくことの重要性に鑑み、こうした規定について、米国企業と外国企業に平等の事業機会を確保すべきと考える。
(ロ)国家安全保障例外連邦調達規則、国防省調達規則、1996年情報技術管理改革法等において、「国家安全保障」を理由とした調達手続きの例外規定が設けられているが、これらの規定における適用除外の基準を具体的にされたい。
また、これらの規定を根拠に外国企業の応札が拒否されたケースがあれば、その件数、案件名、調達の対象となった機器の種類、調達金額についての過去5年間の資料を提供されたい。
(背景)米国政府調達手続きにおいて、「国家安全保障」の観点から例外規定を設ける必要性は充分認識するところであるが、その適用基準の不透明性ゆえに正当な事業活動を制限したり、あるいは「国家安全保障」の名の下に、特に先端技術等の分野において、米国産業の競争力を改善する手段として、制限された競争を正当化しようとすることがあってはならない。
(2)制裁法(対イラン・リビア制裁法等)
イラン・リビア制裁法(ダマト法)等の対外経済制裁措置は、制裁対象国への投資を行った外国企業への罰則等により、直接投資等による事業活動への障害となりうるもので、国内法の域外適用の問題及びWTO協定との関係で問題となる恐れがあることから、第三国の企業に対するこれらの法律の適用は差し控えられたい。
(背景)対イラン・リビア制裁法は、年間2000万ドル以上の対イラン・リビア投資を行い、それがイラン、リビアにおける「石油資源開発に直接かつ著しく貢献した」と判断する者に対し制裁(1米国輸出入銀行による輸出支援の停止、2米国法で事前の輸出許可を要する物資及び技術輸出の許可発行を拒否、3制裁対象が金融機関であれば、その米国債引き受け等を禁止、4米国金融機関が年間500万ドル以上の融資を行うことを禁止、5米国政府が政府調達を行うことを禁止、6国際緊急事態経済権限法に基づき、制裁対象者からの輸入を制限する)を課すことを規定している。
このような制裁法は、国内法の域外適用とWTO協定との関係で問題となる恐れがある。
(3)対米直接投資関連(エクソン・フロリオ条項)エクソン・フロリオ条項にいう「国家安全保障」の概念を明確化し、かつ同条項の今後の運用方針を明確化されたい。
(背景)エクソン・フロリオ条項(1988年包括通商・競争力法5021条)は、国家安全保障の観点から、対米外国投資委員会(CFIUS)が案件を審査し、その結果投資活動を差し止めできることを規定している。しかし、「国家安全保障」の概念が明確にされていないため、同法に基づく対米直接投資規制が恣意的に行われるおそれがある。
(4)米国特許法の国際標準化
(イ)先願主義への移行
先発明主義は世界的にも異質であり、米国だけが採用している制度である。先発明者の出現で事後的に特許権者の地位が覆されることがありうる点で確実性、予見可能性がなく、発明日立証のための証拠書類の作成、保管等が発明者に負担をもたらすという問題がある。米国の先願主義への移行を求めたい。
(ロ)早期公開制度の導入1993年10月より開催された日米包括経済協議の知的財産権作業部会において、米国が1996年1月までに早期公開制度を導入することに合意しているが、未だに実施に至っていない。早期公開制度の欠如により、他者が既に出願していることを知らずに重複した研究開発投資を行ってしまうことが避け難く、社会経済的損害が生じる。早期公開制度に関する合意事項の早期実施を求めたい。
(背景)早期公開制度に関する合意は、米国は原則、全ての出願につき、最先の出願日より18ヶ月後に公開するというもの。
(5)メートル法(SI単位)の採用
92年の日米構造協議第二次年次報告におけるコミットメントのとおり、米政府内及び民間部門におけるメートル法採用を徹底されたい。
特に、米国内の建築に係わる規格、基準等においては、メートル法(SI単位)に統一されたい。構造用材料の許容応力度(木材に関するNDS規格)に使用する単位系をSI単位系に改められたい。また、そのスケジュールを示されたい。
(背景)(イ)米国政府は既にメートル条約を批准しており、連邦諸機関は、91年7月25日の大統領行政命令12770「連邦政府のメートル使用計画」に基づくメートル法移行プランを同年11月30日実行に移していることをはじめ、92年の日米構造協議第二次年次報告においても、連邦及び州政府によるメートル法の使用を確保する措置を強化するとしており、商務省を中心として連邦諸機関及び産業界におけるメートル法への移行にコミットしている。
しかしながら、現時点に至っても、米政府並びに州政府、民間部門においてメートル法は採用されていない。
(ロ)本件に関しては民間部門におけるメートル法移行の増進が本質的に重要であり、一般国民向けの効果的な教育プログラムが重要であるので、連邦政府としての努力を強化されることを要請したい。在米日系企業からは、米国内向けと、例えば中南米市場向けとの計量単位が異なることによって生ずる不経済性について多くの不満が出されている。
(ハ)1989年7月より始まった日米構造問題協議の下でも日米間で取り上げてきており、1990年6月に発表され最終報告においては、メートル法採用に関する項目の中で以下が記述されている。
①連邦政府高官で構成されるメートル政策各省委員会は、1990年6月に、メートル法採用という目的を達成するための特別措置に資するタイムテーブルを策定する。委員会の議長である新たに任命された技術担当商務次官より、その機会に全省庁においてメートル法の採用に高い優先度を与えるよう奨励した。
②商務省は民間セクターがメートル法の使用を大幅に拡大、増加する方策につき引き続きスタディを実施する。
③米政府はこれらのメートル法使用を奨励するための努力と今後の計画を示すプログレス・レポートを作成する。
(ニ)その後、1992年7月の第二回フォローアップ年次報告においては、
①・・・プログレスレポートの中に、米国政府内におけるメートル法採用の程度を記述すべきである。その後、米国政府は民間部門におけるメートル法採用についてレビューし、報告する方途を考える。米国政府は、米国産業の全体的な競争力を強化していくとの観点から、連邦政府だけでなく州政府によるメートル法の使用を確保する措置を強化する。
②米国政府は、米国のSIIコミットメントの実施状況と今後の計画につきプログレス・レポートに関する日本側コメントを歓迎し、適当な場合には、これらのコメントを検討する。
と記述されている。
(ホ)なお、建築の規格、基準に関しては、米国がSI単位を採用しないために、我が国建築材料の輸出に支障を来している。また、米国製品を我が国で検査する際も余計なコスト(及び時間)がかかる(現行コストは日本側持ち)。
2. 物流/流通
(1)新運航補助制度の廃止毎年1億ドルの運航補助を10年間にわたって実施するという巨額の補助金の投入が、国際海運市場における自由かつ公正な競争条件を歪曲することは明らかであり撤廃されたい。
(背景)米国は、1937年、国家緊急時の際に徴用できる自国商船隊の整備を目的として、主要外国航路に就航する自国海運企業に対して外国海運企業の船舶運航費との差額を補助するための運航費差額補助制度(OperatingDifferentialSubsidy:ODS)を創設して以来、自国海運企業に対して多額の政府補助を実施してきた。ODSは1998年末に終了するものの、1996年に一定の米国籍船を対象とした運航費差額補助を10年間にわたって実施する法案が可決された。
(2)アラスカ原油輸出禁止解除法を含む各種貨物留保措置の撤廃商業貨物であるアラスカ原油輸出についての米国籍船使用の義務付けに代表される各種の貨物留保措置は、WTOサービス貿易一般協定の基本的原則である最恵国待遇及び内国民待遇の原則に反する保護主義的性格が強いものであり、撤廃されたい。
(背景)厳しい競争を行っている太平洋コンテナ船マーケット等において、米国船に対する事実上の補助金として機能しており、競争条件をゆがめている。米国からは、米国のばら積み輸出入貨物の95%を外国籍船が輸送しており(輸出入貨物の95%については貨物留保をしていない)、既に十分開放されている旨の回答があったが、そもそも、この問題は原則の問題であり、量の問題ではない。米国が貨物留保政策を採用していること自体、途上国がそのような貨物留保政策を採用する絶好の口実となっている。
また、世界最大の荷主国である米国の貨物5%という量は、途上国一国の輸出入にも匹敵する量であり無視できない。
(3)内航商船に関する規定(ジョーンズ法)内航海運に従事する海運業者に関し、米国国内での内航商船建造を義務づけていることを見直されたい。
(背景)1920年商船法(ジョーンズ・アクト)は、米国の内航海運に従事する海運業者は、米国で建造された船舶によって営業を行わなければならないと規定している。
米側は、内航商船の国内建造義務づけに関して世界の船舶建造量のうちの少量にしか影響を与えないと説明しているが、船舶建造のうち少量にしか影響をあたえないことは規制を残す理由にはならない。外国で建造された船舶の利用を制限することにより外国の造船事業者に不利益をもたらすものである。
また、使用者側にとっても、米国本土からハワイ等への遠距離海上輸送を行う場合、割高な米国船籍の使用により海上輸送費が増大するなどのデメリットがある。
(4)1998年外航海運改革法案における措置
同法案はFMCが我が国を含む外国海運企業を米国船と差別し、その運賃設定のあり方等について一方的に規制することを可能とするものであるところ、同法案については、内外無差別の原則を確保するとともに、海運自由の原則に基づき、商業ベースでの海運活動に対する政府の規制は最小限にとどめられたい。
(背景)本法案は、外国海運企業の運賃設定のあり方等を規制する権限をFMCに賦与する内容を含んでおり、今後、FMCが我が国を含む外国海運企業を米国船と差別し、その運賃設定のあり方(Pricing Practice)等を一方的に規制することを可能とし、またFMCのとりうる措置内容も不明確な規定になっているという問題がある。
(5)米国連邦海事委員会(FMC)による制裁措置昨年9月以来FMCが我が国船社に対して発動し、未だ取り下げるに至っていない制裁措置の根拠であるFMC規則は、相手国船舶に対する最恵国待遇、内国民待遇の付与等を規定した日米通商航海条約に違反するため、同規則を撤廃されたい。
(背景)我が国の港湾慣行等を理由として、昨年9月に米国FMCが直接関係のない我が国の海運企業3社に一方的制裁措置を発動し、150万ドル(邦貨換算約1.8億円)の課徴金を徴収したが、この根拠であるFMC規則は、相手国船舶に対する最恵国待遇、内国民待遇の付与等を規定した日米友好通商航海条約に違反するものである。港運問題については既に日米政府間で合意したが、FMCは当該制裁措置を未だ完全撤回するに至っていない。
3. 個別問題
(1)時計の輸入関税算定方法
時計の輸入関税算定については、部品毎の関税賦課を改め、HS分類6桁ベースで関税率を定めることにより手続の簡素化を図られたい。
(背景)時計の完成品を米国に輸出する際、米国の輸入関税額の算定方法は、完成品であっても一律の関税率ではなく、ムーブメント、ケース、バッテリー、バンド等の構成部品毎に異なった税率を適用し計算しなければならない。時計の種類によって部品構成が異なるため、税額計算等の通関手続が煩雑になっている。なお、日本は、時計の輸入関税率は0%であり、関税算定手続は不要。
(2)時計の原産地表示
原産地表示を完成品のみとし、表示方法も刻印、タグ等、メーカーの裁量によって行われるようにされたい。
(背景)時計の米国への輸出において、完成品を輸出する際、ムーブメント、ケース、バンド、バッテリー等の構成部品上に、それぞれ原産地表示をしなければならず、また、その方法も細かく規定されているため、手続きが煩雑になっている。なお、日本では表示方法についての公式なガイドラインは無く、国産品についてのみ、業界の自主基準がある。
(3)カメラの原産地特定
原産地特定の判定基準とされている「substantial transformation(実質的な変更)」を明確化されたい。
(背景)原産地を特定するための判定基準が、規定上「substantialtransformation(実質的な変更)」となっており、具体的な基準が規定されていない。このため、行政官の裁量に判断が委ねられており、通関手続きが煩雑かつ不透明となっている。なお、日本は、「HS番号6桁の変更」をもって原産地と主張している。
(4)繊維製品のNAFTA原産地特定
NAFTAの原産地特定の判定基準について、米国一般原産地ルール(縫製品については、縫製国が原産地)に合わせられたい。
(背景)NAFTAにおいて繊維製品がNAFTA原産と認定されるためには、一部の産品を除き、紡績の段階からNAFTA原産でなければならず、通常より厳しい原産地規則となっている。これにより、NAFTA域外からの輸出や直接投資が相対的に不利となると考えられ、問題である。また、メキシコの繊維製品が有利になった分、アジアの繊維製品が排除され日本にダイバージョン輸入が増えるおそれがあることも懸念される。
(5)自動車ラベリング法
8500ポンド以下の車両全てに対して年式、車両毎に米国・カナダ製部品比率等の内容を含んだラベルの添付の義務づけを求める同法について、ラベリング自体が米国車の購買を暗に奨励する可能性があることから、公正な競争を阻害することがないよう見直してほしい。
(背景)米国で販売される8,500ポンド以下の車両全てに対して年式、車両ごとに米国・カナダ製部品比率等の内容を含むラベルの添付が義務づけられているが、コンテント率を産出するためには、部品1点毎に原産国・コンテント率を購入先サプライヤーから入手する必要があり、こうした購入先調査等に莫大な手数・費用を要する。また、ラベリング自体が米国車の販売を暗に消費者に進めており、政府の規制が公正な競争に介入することとなっている。さらに、その計算方法においても、外国系メーカーが実質的に不利な扱いを受けることとなっている。
本法が公正な競争を阻害することがないよう見直してほしい。
(6)CAFE(企業平均燃費)における国産車・輸入車区分等
CAFE(企業平均燃費)値の算出に際し、カーライン毎に国産化率を計算し、国産車、輸入車別に燃費基準を達成することを義務付ける制度は、実質的に内外の同種の産品を差別するケースがあるなどの問題があるため、公正な競争を阻害することのないよう見直してほしい。
(背景)米国のCAFE(CorporateAverageFuelEconomy)規制は、自動車製造会社及び輸入会社に対し、国産車・輸入車別に、取扱車の平均燃費を一定レベル以上にすることを義務づけているが、その計算事務に費やされる労力・コストは膨大であり、また、輸入車と国産車とを別の集団として平均燃費の計算を求めていることは内外無差別の原則に抵触する恐れがある。また、基準をクリアするために国産車、輸入車の従来区分を維持する結果、米国製部品の採用拡大の障害となる場合がある。政府の規制は企業の事業活動に与える影響を最小限にすることに強く配慮すべきであり、こうした観点からの見直しを要望する。
4. 競争政策
適用除外制度の廃止
我が国においては、競争政策の強化のため、独禁法の適用除外制度の全範囲について見直しを行ってきており、多数の適用除外制度を廃止するとともに、残されたものについてもその範囲の縮減等を図ってきている。米国におかれても、反トラスト法の強化のため、適用除外制度を削減されたい。
(背景)
(イ)我が国の独禁法適用除外制度日本政府は、独占禁止法適用除外カルテル等の制度について見直しを進めてきており、1997年には個別法に基づく29の適用除外制度について廃止する等の立法措置を採った。また、1998年3月に閣議決定された規制緩和推進三ヶ年計画において、1独占禁止法に基づく適用除外制度については不況カルテル制度・合理化カルテル制度等を廃止し、2適用除外法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外等に関する法律)に基づく適用除外制度については協同組織の団体に係わるものを独占禁止法第24条の規定によることとし、その他のものは原則廃止するとともに、適用除外法そのものを廃止することとする。3以上のうち、立法措置を必要とするものについては、1999年の通常国会に改正法案を提出する等所要の措置を行うものとすることが決定された。また、損害保険料率算出団体に関する適用除外制度については、損害保険料率算出団体に関する法律が平成10年6月に改正され(同年7月1日施行)、自賠責保険及び地震保険を除き原則廃止された。
(ロ)米国反トラスト法適用除外制度の例:マッカラン・ファーガソン法マッカラン・ファーガソン法は、保険業の反トラスト法の原則的な適用除外を定めている。日本の保険業者から米国にも保険業の適用除外制度が存在するため日本のみ保険料率算出団体の適用除外制度を見直す必要性はないと主張される場合がある。
5. アンチ・ダンピング措置
以下の点につき、米国政府が改善措置をとるよう要請する。
(1)利用される情報
米政府当局が必ずしもAD協定の規定に則した運用を行っていない場合があることから、利害関係者が最善を尽くした提供情報は可能な限り最大限採用され、当該情報が採用されない場合にはその理由を詳細に説明し、意見提供の機会を与えられ、また、国内産業から提供された情報を"factsavailable"として採用する場合には情報の妥当性について意見提供する機会を与えられるべきと確信しており、当該観点から日本政府が従前より質問している点について誠実な回答を要望する。
(2)質問状に対する回答期限
米政府当局は、要求されるデータ量が膨大であるにもかかわらず、利害関係者に容易に回答期限の延長を供与せず、供与した場合でも概して短期の供与となっていることから、利害関係者にはデータ量に応じた十分な時間があたえられるべきであり、また、要求されるデータ量は米政府当局が合理的決定が可能となる最低限度のものとすべきと確信しており、当該観点から日本政府が従前より質問している点について誠実な回答を要望する。
(3)企業会計データの受け入れ
米政府当局は、生産者又は輸出者に対して、米国の会計原則に基づく情報提供を求め、米国の会計原則に合わせたコスト計算を強い、輸出者又は生産者に過度の作業負担を課していることから、コスト計算について輸出国において一般的に認められる会計原則に適合する場合には、AD協定で規定されているように調査の対象となる輸出者又は生産者が保有する記録に基づき算定を行うべきと確信しており、当該観点から日本政府が従前より質問している点について誠実な回答を要望する。
(4)清算手続
米政府当局が行う清算手続について、税額還付の要請があってから、実際に還付されるまでに、長時間かかる場合があることから、清算については迅速に完了されたい。
(5)関連者
米国1930年関税法及び商務省規則の運用に関し、「関連者」を判断する際には、5%以上の株式の直接所有者だけを基準とするのではなく、その他の要因(ある組織の役員・取締役と当該組織の関係、家族構成員等)を総合的に考慮し、判断するものに改善されたい。
(6)アンチ・ダンピング措置の撤回
将来のダンピング再発可能性の判断にあたり、本証明を求めるにあたっては、輸出者が、過度の立証責任を負わされないようにされたい。
(7)価格比較方法
ダンピングマージンのレビューにおいて、輸出価格と正常価額を比較する際、オリジナル調査同様、原則、加重平均価格同士又は個別取引価格同士で比較されたい。
(背景)
(イ)利用される情報
AD協定付属書II第5項において、提供された情報が全ての点において必ずしも完全なものでない場合においても利害関係者が最善を尽くした時は、調査当局が当該情報を無視することは正当化されない旨、また、同付属書II第6項において、行政当局が証拠又は情報を採用しない場合には、当該証拠又は情報を提供した利害関係者にはその理由を通知するべき旨等規定されている。
(ロ)質問状に対する回答期限
AD協定第6条1. 1において、アンチダンピング調査に係る質問状を受領した輸出者及び生産者には、少なくとも30日間の回答期限が与えられる旨、理由が示される場合には、可能な場合はいつでも延長が認められるべき旨規定されている。
(ハ)企業会計データの受入れ
AD協定第2条2項1.1において、調査におけるコストは、当該記録が輸出国において認められた会計原則(GAAP)に適合する場合、輸出者又は生産者が保有している記録により、原則、算定する旨規定されている。
(ニ)清算手続き
1930年米関税法第751条(a)(3)(b)において、清算は迅速に最大限可能な限り、税関への通達が行われた後90日以内に行われなければならない旨規定されている。
(ホ)関連者
米国1930年関税法及び商務省規則の運用に関し、米国は「関連者」を判断する際に、5%以上の株式の直接所有者についてはその他の要因(ある組織の役員・取締役と当該組織の関係、家族構成員等)に関わらず「関連者」とし、株式保有率のみを重視している。
(ヘ)アンチ・ダンピング措置の撤回
商務省規則351.222.(b)(1)は、ダンピング輸出がなくなった際に課税をとりやめるかどうかの判断基準として、輸出者に将来ダンピングをしないとの証明を求めているが、係る証明に必要な具体的事項は明示しておらず、結果的に輸出者に対して過度の立証責任を課している。
(ト)価格比較方法
米国政府当局は、ダンピングマージンのレビューにおいて、輸出価格と正常価額を比較する際、オリジナル調査で要件となっている加重平均価格同士又は個別取引価格同士の比較を行わず、加重平均価格と個別取引価格を比較することがあり、その結果、加重平均価格同士の計算に比べ、異なった結果が算出され、海外輸出業者に対してより高いマージン率を課すこととなる可能性がある。
6. ビザ・永住権
(イ)公立学校(小・中・高)に在学中の学生についてもF-1ビザが発給されることを確保されたい。
(背景)米国移民法改正(96年9月)により、公立の小学校の生徒に対してはF-1ビザ(学生ビザ)は発給されないこととなり、また、公立の中・高等学校の学生については、修学期間が一年以内でかつ学費を全額支払った場合を除き、F-1ビザは発給されないこととなった。この結果、Eビザにより米国に滞在している邦人駐在員が任期を終えて帰国する際、親のEビザの失効に伴い子女のビザも失効し、子女はF-1ビザも取得できないため、公立学校に在学中の子女は学期終了まで残れない。
(ロ)滞在許可の延長
滞在許可の延長手続に時間がかかりすぎ、事業運営に困難を生じているとの報告を受けている。これらの発給にあたっては、迅速・簡略化を図られたい(とくに日本人出向者派遣に関し)。
(ハ)米国永住権の取得について
米国永住権の資格要件及び申請から許可までの所要期間について、国籍による差別がないよう手続の透明性を確保し、標準所要期間を設定されたい。
(背景)米国在住邦人より、中国人、韓国人、ベトナム人については永住権の取得が比較的容易であるのに比べ、日本人の場合は永住権の取得は困難であるとの苦情がある。
7. 法的サービス
(1)外国弁護士の受け入れを全州に拡大されたい。
(2)外国弁護士の職務経験年数要件を短縮されたい。すべての州において3年とすることを要請する。
(背景)現時点で外国の弁護士を受け入れていることが確認されているのは約20州・区のみ。(なお、本年7月22日・23日に行われたWTOサービス貿易理事会に米国が提出したペーパーによれば、外国弁護士を受け入れているのは22州・区ということであるが、その制度の詳細については把握できていない。)
外国弁護士受入を認めている約20州・区は全て職務経験要件を課しており、うち3年としているのは2州(ニューヨーク、ミシガン)のみであり、4年が2州、5年が15州・区である(また、これら各州は、我が国が課していない、直近要件も課している)。また、経験地については、第三国における職務経験も算入しうることを認めているのは2州(ニューヨーク、インディアナ)のみで、その他は原資格国における職務経験を求めている。
なお、我が国の外国法事務弁護士法改正により、我が国における外国弁護士の職務経験年数要件は3年に短縮されている。
II. 住宅
試験方法の国際規格との調和
米国においては、建築構造、部材に係る試験方法について、多くのものが国内独自の規格となっている。米国においても早急に建築基準の性能規定化を行い、国際規格との調和を図られたい。特に最初は米国国内規格と国際規格との不調和が顕著な建築材料の不燃性試験の方法を国際基準と調和したものに改められたい。
(国際規格参考:ISO1182、ISO5560、ISO9705等)
(背景)米国の規格は民間団体が定める独自の国内規格となっているため、多くが国際規格(ISO規格)となっている我が国規格と齟齬が生じている。特に今後改正建築基準法関係規則を整備する際、我が方は一層国際規格を取り入れたものにする予定であり、日米間の差が大きくなる危険性がある。
なお、米国国内でも、性能規定化の動きがあり、民間団体において検討している最中。(実害)米国が国際規格を採用しないために、我が国建築材料の輸出に支障を来している。また、米国製品を我が国で輸入する際、再検査を要することもあり得、右検査に係るコスト(及び時間)がかかる。
III. 電気通信
1. 外国事業者の米国市場参入に関する連邦通信委員会(FCC)新規則及び外国衛星事業者の米国市場参入に関するFCC新規則
(1)審査基準
(イ)連邦通信法第214条及び第310条に関する認証の際に考慮される「公共の利益」(「外交政策」、「通商上の懸念」)及び「競争に対する非常に高い危険」などの要素を撤廃されたい。
(背景)FCCは、連邦通信法第214条の認証及び第310条の無線局免許に関する「公共の利益」及び「競争に対する非常に高い危険」を理由として、外国事業者に対し、認証拒否、免許拒否が可能である。「公共の利益」の要素として「外交政策」や「通商上の懸念」が挙げられているが、これにより申請内容及び申請者の能力的な考慮と関係のない事項を理由とした申請拒否が可能である。また、これらの要素は競合他社が参入妨害を行う際に、恣意的に認証手続きを遅延する戦術に利用され得る。
(ロ)WTO基本電気通信交渉合意に基づく、無線局免許に係わる間接投資の外資規制の撤廃の履行確保のため、通信法を変更されたい。
(背景)米国が無線局免許に係わる間接投資の外資規制の撤廃について、通信法の解釈を変更し、規定を何ら変更しないのは、WTO基本電気通信交渉合意に基づく約束の完全かつ実効性のある履行を確保する上で十分ではない。
(2)支配的事業者に対する規制
外国市場における市場支配力を理由とする外国事業者に対する規制を撤廃されたい。
(背景)外国市場における市場支配力は直ちに国内市場への市場支配力に結びつくものではなく、これを理由として外国事業者の参入規制を課すことは合理性を欠き、不当な差別的取扱の可能性あり。また、目的としている効果が不分明で、外国からの直接投資を不当に制限するものである可能性がある。当該規制は、WTO協定の定めのない内国法制による付加的規制であり、WTO協定との整合性を欠く。
(3)標準処理期間
90日の処理期間の延長を原則不適用とし、適用する場合には理由を明示されたい。
(背景)「極めて複雑な事案であること」を理由に、これを繰り返し延長出来ることとされているのは、透明性を欠くものである。90日の処理期間を延長する場合を真に例外的な場合に制限すべきであり、延長する場合にはその理由を明確に示すべきである。
2. ベンチマークに関するFCC新規則
(1)FCCの国際計算料金に関する規則を廃止されたい。
(2)外国事業者の米国市場参入に関するFCC規則パラ179~214を削除されたい。
(背景)米国が昨年8月に採択したベンチマークルールについては、国際精算料金を低廉化させるという方向性については認識を共有するが、①事実上の米国市場への参入障壁となりうること、②本来、商業ベースで決めるべき精算料金を、米国政府が参入規制と結びつけて一方的に設定するものであること、③内国民待遇等のWTO協定の諸原則との整合性も疑問であること等の問題があり、日本政府としては、規則案の段階から米国政府に対して上述のコメントを提出してきたが、規則制定時に十分な改善がなされなかった。また、今回FCCは国際精算料金に関する新規則案を示したが、ベンチマークルールの一部修正に留まり、十分な改善がなされていない。
3. インターネット利用に係わる回線利用負担の在り方
インターネット利用に係わる国際回線に関し、米国外の者が一方的に費用を負担するという現在の状況を改善されたい。
(背景)インターネット利用のための国際回線の費用負担において、対米接続の場合、米国外のISPが全て負担することとなっている。これは、インターネットが米国から発展したという歴史的経緯から生じているものと認識しているが、インターネットが全世界的に普及した現在において、米国利用者からのアクセスが全くないとは考えられず、現在の片務的な関係は改善されるべきである。
4. アクセス・チャージ算定方式
(1)米国州際アクセスチャージ算定に関して長期増分費用方式を日本と同時期に導入されたい。
(2)米国長期増分費用モデルの作成過程の透明性を確保されたい。
(背景)長期増分費用方式に関し、米側は我が国に対し2000年内の導入を求めているが、州際アクセスチャージ算定については2001年2月に長期増分費用の調査を行い、その後検討するまでは導入しないとしている。我が国と同時期の実施を求める。また、米側は長期増分費用モデルの作成を行っているが、モデル作成作業の透明性を確保することを求める。
IV. 医療機器・医薬品
1. GMP相互承認
日米間の医薬品・医療用具のGMP(Good Manufacturing Practice : 製造管理及び品質管理に関する基準)相互承認作業を促進されたい。
(背景)前回会合後も、米側が検討中であるという状況は変わっておらず、米側の返事を待っている状況にある。
2. 510(K)届出の審査期間短縮
市販前届出(510(K)届出)手続につき、特にCBER(生物学的製剤評価センター)の担当する医療器具の審査期間が長くなっていることから、審査期間を短縮されたい。
(背景)前回の要望後、本年1月に510(K)届出の免除品目の拡大が行われたことは評価するものの、特にCBER(生物学的製剤評価センター)の担当する医療器具の審査期間が長くなっている。
3. IND申請のデータ簡略化
IND(InvestigationalNewDrugs:治験薬(臨床試験のための薬)申請時の提出データを簡略化されたい。
具体的には、第1相試験(健常人)実施にあたって、簡略データを提出することを条件として、前臨床データ(安全性・代謝・薬理)のフル・レポート提出期限をNDA(NewDrugApplication)承認申請時まで延長できるようにされたい。また、Chemistry&ManufacturingControl関連データの提出期限を第2相試験終了時まで延長できるようにされたい。
(背景)FDAに対するIND申請の際に添付を要求されるデータは、我が国やEU諸国と比して非常に多く、ICH(日米欧医薬品規制調和国際会議)で作成されたガイドライン(「医薬品の臨床試験実施のための非臨床試験の実施時期についてのガイドライン」)に照らしても多すぎる。EUでは第1相試験の時点ではサマリーレポートで足りる。
4. GCP相互承認
日米間のGCP(GoodClinicalPractice:臨床治験に関する基準)相互承認の可能性について意見交換を開始したい。
(背景)ICHによって国際的に調和されたGCPが作成され、治験の信頼性に関して日米欧3極における共通基盤がつくられた。また民族差要因に関するICHガイドラインが実施されたのに伴い、海外データを使用した申請が増加するものと考えられる。GMPと同様に、GCPについても相互承認が可能になれば、適合性調査に係わる事務が効率化される。そこで、日本側としては、この機会をとらえ、GCP相互承認に向けて、意見交換を開始したい。
V. 金融サービス
1. 外国証券従業員に対する米国証券外務員試験の簡素化
SECが、日本その他の外国証券会社従業員に対する資格試験の簡素化を導入したことは評価するが、実際の手続き面についての整備が遅れていると聞いており、早急に整備することを求めたい。
(背景)証券外務員試験を行っている全米証券業協会(NASD)と日本証券業協会(JSDA)の間で、審査手続きに関する協議が行われており、98年5月に、JSDAよりNASDに対して、審査手続きに関する覚書修正案を送付済。現在は、NASDからの回答を待っているところ。
2. 外銀支店のFDIC加入義務
外銀の支店の場合、米国の市民若しくは居住者から10万ドル未満の小口預金を受け入れる場合に課せられている預金保険(FDIC)への加入義務を撤廃されたい。(背景)州法銀行の場合には選択自由であり、バランスを欠く。
3. 外銀支店に対する監督
外銀支店について、拠点支店所在地の州当局が一元的に監督するようにするべき。
(背景)リーグル・ニール修正法では、合併・新規支店設立により州際業務を営む州法銀行について、本拠州以外の支店に対する州当局の検査についても、本拠州当局が一元的に行うこととされている。
他方、外銀の支店に対する検査については、支店所在地の州当局の検査については規定が無く、
その結果、支店所在地の各州当局が検査を担当しており、検査結果の不統一やコスト増の懸念が生じている。
4. 外銀に対する検査
「FBOプログラム」によって、連邦と州当局による合同検査が行われるようになったことを歓迎する一方、規制の統一など一層の改善を求める。
(背景)実際の検査においては、連邦と州当局で指摘対象が異なるなど統一が図られていない部分があること、また、検査評価が厳しくなる方向で、連邦と州当局の間で競争が生じている。
5. 証券規制
法改正により、連邦・州レベルでの証券規制の重複が少なくなったことを評価。今後とも一層、重複を減らす方向で検討が進むことを望む。
(背景)96年、全米証券市場改革法が成立し、米側の説明によれば、連邦・州レベルでの証券登録要件の重複は可能な限り減らされた。執行状況を見守る必要。
6. 金融機関の取締役に関する市民権要件
日本では取締役の市民権要件を全く設けておらず、米国における市民権要件の撤廃を求める。
(背景)国法銀行の取締役は全員が米国市民であるべきであるとされている。ただし、外国銀行の支店や関連会社については、OCC長官の裁量により、「原則全員」から、「全体の取締役の半数以上」に軽減されうることとなっている。
なお、州レベルではより厳しい規制をおいている州が多い。
7. 金融近代化法案(H.R.10)
同法の成立によって、外銀に不利益とならないよう求める。
(背景)H. R. 10では、外国銀行法におけるグランドファーザー条項を廃止する一方、現行持株会社法において内国銀行持株会社に認められている業務については、外国銀行にも内国銀行持株会社と同等の立場で認めるとしているが、実際上、外国銀行に不利益とならないかとの懸念がある。
(了)