[文書名] 米国の規制緩和及び競争政策等に関する日本国政府の要望事項
日本国政府は、平成9年6月のデンヴァー・サミットにおける日米首脳会談において合意され、本年5月の日米首脳会談においてとりまとめられた「第2回共同現状報告」において対話の継続が確認された「強化されたイニシアティブ」の下での3年目の規制緩和対話を開始するに当たり、米国の規制緩和及び競争政策等に関する要望事項を以下の通り米国政府に対し提出する。日本国政府としては、3年目の対話の開始に当たり、米国政府が、デンヴァーにおける日米首脳間の共同声明において確認されている対話の双方向性の原則に基づき、以下の要望事項につき真剣に検討し具体的な成果を上げることが、「強化されたイニシアティブ」における3年目の対話を成功に導くために不可欠であると確信している。
I. 規制緩和・競争政策等
1. 米国製品優遇制度
(1)連邦バイ・アメリカン法及び同趣旨の地方政府法令
(a)日本国政府は、米国政府に対し、政府調達における内外無差別の原則を徹底するとの観点から、WTO政府調達協定の適用を受けていない米国連邦政府の調達についても、米国産品を優遇するバイ・アメリカン法を撤廃し、米国企業と外国企業に平等な事業機会を確保することを求める。また、地方政府の調達についても、内外無差別の原則を確保し、米国企業と外国企業に平等な事業機会を確保するために、連邦政府として必要な措置を講ずることを求める。
(b)(i)また、大量輸送や高速道路建設に関するプロジェクトについて、連邦政府からの財政補助の条件として米国産品の使用等を義務付けている規定を撤廃することを求める。撤廃がなされるまでの間、米国産鉄道車両となるための条件として全部品コスト中60%以上が米国製部品でなくてはならないとの要件について、こうした要件が企業の効率的な部品調達行動を阻害していることから、(ii)当該米国製部品比率を引き下げるとともに、(iii)米国製部品比率算定において、労賃等最終組立コストの算入を認めることを求める。
(2)1992年自動車ラベリング法
(i)年式、車両毎に米国・カナダ製部品比率等の内容のラベルの添付を義務付ける1992年米自動車ラベリング法について、同法に基づくラベリングは米国消費者に対して米国車の購入を暗に奨励しかねず、公正な競争を阻害する恐れがある。米国政府は、現在国家高速交通安全委員会(NHTSA)で実施中の評価等における検討を通じて、同法を撤廃されたい。
(ii)また、撤廃されるまでの間、企業負担を軽減する観点から、デミニマスルール(米加製部品比率が小さい場合には、詳細計算を不要とすること)の導入、サプライヤーに対する部品毎の米加製部品証明義務の廃止、部品比率の計算方式をCAFEと同様の方式にする等の代替方式への移行、を要請する。
(3)CAFE(企業平均燃費)における国産車・輸入車区分CAFE(企業平均燃費)値の算出に際し、カーライン毎に国産化率を計算し、国産車、輸入車別に燃費基準を達成することを義務付ける制度は、実質的に内外の同種の産品を差別するケースがあり、公正な競争を阻害する恐れがあるため、米国政府は、右制度を撤廃されたい。
(4)繊維NAFTA原産地特定
(i)米国政府は、繊維製品に関するNAFTA原産地規則について、縫製段階からNAFTA域内であることによりNAFTA原産と認める制度に改正するとの結論を得、また、改正する意図を有して他のNAFTA加盟国に提起して頂きたい。
(ii)米国政府は、上記(i)のような日本の要望について、適当な場において、日米両国の専門家間での協議を行うことに同意されたい。こうした専門家間での協議の進捗状況は、本規制緩和対話で確認する。
(5)公共工事における地元雇用の条件
ミシガン州においては、公共工事契約を行った企業及びその下請け企業が雇用し、かつ、当該公共工事に従事させる者のうち50%以上は、州内在住1年以上の者とすることを義務付けている。本条件は公共工事を施工する上での必要不可欠な条件とは言えず、かつ、州内企業に比し州内居住者とのコンタクトの少ない州外企業、特に外国企業にとっては過大な負担となっていることから、これを撤廃するよう、連邦政府よりミシガン州政府機関に対し要請して頂きたい。
2. 貿易関連措置
(1)再輸出管理
米国の再輸出規制は、一般国際法上許容されない米国内法の域外適用の恐れがあり、国際法上問題である。また、わが国を含め、輸出管理に関する各種国際レジームに参加し十分に実効的な輸出管理を実施している国からの輸出については、再規制は不要であることから、例外なく米国再輸出管理の適用除外とすることを求める。
それまでの間、外国輸出企業の負担を軽減する視点から、再輸出管理の運用を改善するため、以下の措置を講ずることを求める。
(i)「規制緩和及び競争政策に関する日米間の強化されたイニシアティブ第2回共同現状報告」における米側措置をすみやかに実施する。当該措置は、日本の輸出業者にとって、米国再輸出管理制度についての透明性を抜本的に改善するものであり、利便性を向上させるものでなくてはならない。
(ii)外国輸出企業が米国再輸出規制の順守のために必要な情報を得られない場合には、同規制に係る義務を免除する。
(iii)ソフトウェアと技術の組込比率の計算方法について、ガイドラインを作成し、公表する。
(iv)上記(iii)のガイドラインに該当するケースについて、外国輸出企業自らの計算によりデミニマスルールに該当すると判断される場合には、米当局の許可を不要とする。
(2)商用衛星及び関連物資に係る規制
米国による商用衛星の輸出に係る権限が1999年3月に商務省から国務省に移管された結果、商用衛星及び関連物資に係る輸出及び技術情報移転について、国務省の許可が必要となった。
(a)右移管により、我が国の衛星通信事業者が自ら発注した衛星の技術情報を得るのに長期間を要することとなり、衛星打ち上げ計画にも影響が出ている。(i)米国政府は、我が国の企業が発注した商用衛星に係る技術情報を速やかに入手できるように、米国衛星メーカーから発注者に対する技術援助協定(Technical Assistance Agreement : TAA)の許可及び輸出許可に係る処理期間を極力短縮するとともに、(ii)TAA許可後も個々の技術情報を受ける都度に必要とされる政府機関の事前承認の手続を簡素化されたい。
(b)また、移管に伴う商用衛星の関連物資に係る輸出に関する規制強化が我が国にも適用される場合、我が国の企業が米国から商用衛星の関連物資を輸入する際に問題が生じる可能性もある。(i)米国政府は、我が国企業が発注した商用衛星の関連物資の技術情報を得る際に、長期間を要することのないよう、適切な措置を講じられたい。(ii)更に、1999年国防授権法(PublicLaw105-261)によれば、商用衛星及び関連物資に係る輸出に関する規制強化はNATO加盟国及び非NATO主要同盟国には適用されない(sec.1514.b)こととなっているところ、本件規制強化の適用範囲を明確にされたい。
(3)アンチダンピング措置
米国政府が、AD措置の運用の改善を図るため、WTOにおいて、AD協定の規律の明確化と強化について、積極的に議論に取り組むことを求める。その結果については、本規制緩和対話で確認して頂きたい。
(4)時計の関税率算定方法
米国ITCが、時計の輸入関税算定について、日本政府が本年6月29日に提出した「米国ITCの関税率表の簡素化(案)に関する日本政府のコメント」を踏まえ、米国ITCが本年4月に示した簡素化案を抜本的に見直し部品毎に関税を賦課していることを改め、HS分類6桁ベースで関税率を定めることにより貿易手続の簡素化を図るとの結論を得ることを求める。
(5)時計の原産地表示規則
米国ITCが、日本政府が本年6月29日に提出した「米国ITCの関税率表の簡素化(案)に関する日本政府のコメント」を踏まえ、(i)時計に関する原産地表示を完成品のみとし、(ii)表示方法も刻印、タグ等、メーカーの裁量によって行われるようにすることを求める。
(6)メートル法(SI単位)の採用
米国は、1992年の日米構造問題協議フォローアップ第2回年次報告において、連邦の調達、補助金及び商業関連活動はメートル法に基づくこと、更には、民間部門におけるメートル法の使用を大幅に拡大・増加するための方途につき商務省がスタディを実施することにコミットしている。また、米国は、1999年の「規制緩和及び競争政策に関する日米間の強化されたイニシアティブ第2回共同現状報告」においても、一定の措置を取ることにコミットしている。これらのコミットメントに基づき、米国政府には以下の措置を取って頂きたい。
(i)日米構造問題協議におけるメートル法採用に関するコミットメントの進捗状況について、日米規制緩和対話の場において報告すること。
(ii)国立標準技術研究所(NIST)が、メートル法のみの表示のオプションを可能とするよう、公正包装および表示法の改正を行うこと。
(iii)計量に関する全米会議が、製造業者に対し、州政府のみによって規制されている商品に関し、メートル法のみの表示のオプションを許可するため、包装・表示に関する統一規則を改訂すること。
また、その他にも、以下の措置を取って頂きたい。
(iv)米国内の建築にかかわる規格、基準等においては、メートル法(SI単位)に統一すること。
(v)構造用材料の許容応力度(木材に関するNDS規格)に使用する単位系をSI単位系に改め、そのスケジュールを示すこと。
(7)特許
(a)先願主義への移行
先発明主義は世界的にも異質であり、米国だけが採用している制度である。先発明者の出現で事後的に特許権者の地位が覆されることがありうる点で確実性、予見可能性がなく、発明日立証のための証拠書類の作成、保管等が発明者に負担をもたらすという問題がある。米国の先願主義への移行を求める。
(b)早期公開制度の導入
1994年8月、日米包括経済協議の知的所有権作業部会において、米国政府は、1996年1月までに早期公開制度を導入することに合意しているが未だに実施に至っていない。今期106議会において、特許改正法案H.R.1907が1999年8月4日に下院を通過しているが、この法案に盛り込まれた早期公開制度は、外国に出願されていない出願は非公開にできるなど不十分な内容であり、合意を満たすものではない。早期公開制度の欠如により、他者が既に出願していることを知らずに重複した研究開発投資を行ってしまうことが避け難く社会経済的損害が生じる。早期公開制度に関する合意事項の早期実施を求める。
(c)再審査制度の改善
1994年8月、日米包括経済協議の知的所有権作業部会において、米国政府は、1996年1月までに再審査を請求しうる理由の範囲を拡大し、また、第三者が手続きに参加し、特許の有効性を争う機会の拡大を図ることに合意しているが、未だ実施に至っていない。再審査請求の範囲は、先行技術文献の存在を理由とするものに限られ、明細書記載要件の不備等の請求理由が認められず、また、第三者が再審査の手続きに参加出来ないなど、米国の現在の再審査制度は、特許権者に有利な制度となっており、第三者が異議を申し立てる制度として十分機能していない。今期106議会において、特許改正法案H.R.1907が1999年8月4日に下院を通過しているが、この法案には再審査の請求理由の範囲拡大が含まれていないなど、合意内容を完全に満たすものではない。再審査制度の改善に関する合意事項の早期実施を求める。
(d)発明の単一性
米国の特許制度では、発明の単一性に関して厳しい基準を採用しており、一出願中に含むことができる発明の範囲が日本国特許庁(JPO)と欧州特許庁(EPO)の採用している基準に比べ狭くなっている。たとえ一出願中に記載された発明が単一の発明概念を形成するように連関している一群の発明であっても、出願人はより狭い群に限定することを要求されることが多い。その場合、出願人は選択されなかった発明について、分割出願をせざるを得ず、このことは出願人に大きな負担を課すものとなっている。
こうしたことから、米国政府に対し、JPO、EPOと同様、1988年の三極覚書に基づき定められたPCT出願に対する発明の単一性の判断基準を米国国内出願にも採用することを求める。
3. 制裁法
(1)対イラン・リビア制裁法
対イラン・リビア制裁法に基づく制裁措置は、一般国際法上許容されないような国内法の域外適用になりうるのみならず、WTO協定との関係で問題となるおそれがある。(i)米国政府は、国際法との整合性を確保しつつ本法を慎重に運用して頂きたい。特に、第三国の企業に対する本法の適用は差し控えて頂きたい。また、(ii)1998年5月に3社によるガス田開発投資契約につき本法の適用の免除が決定されたのと同様、日本を含む他の全ての国の企業にも適用が免除される旨を明らかにして頂きたい。
(2)ヘルムズ・バートン法(対キューバ制裁法)
ヘルムズ・バートン法は、米国国内法を第三国の企業にも適用するものであり、一般国際法上許容されないような国内法の域外適用になりうるのみならず、WTO協定との関係で問題となるおそれがある。米国政府は、国際法との整合性を確保しつつ本法を慎重に運用して頂きたい。特に、第三国の企業に対するこれらの法律の適用は差し控えて頂きたい。
(3)ミャンマー制裁法
米国各州・市・郡のレベルで取られているミャンマー制裁法は、一般国際法上許容されないような国内法の域外適用にあたるおそれも排除しえず、日本企業を含む外国企業及び米国企業にとって政府調達に係る入札への参入障壁となっている。特にマサチューセッツ州とサンフランシスコ市の制裁法については、実際にこれらにより日本企業の活動に影響が出ている。また、マサチューセッツ州の制裁法は、個々の調達における運用によっては、WTO政府調達協定の諸規定(内国民待遇、無差別待遇等)との関係で問題となるおそれがあるのみならず、連邦地裁で違憲判決が出ており、連邦高裁でも右を支持する判決が出ている。米国連邦政府は、(i)既に制裁措置を取っている州・地方政府及び議会に対する働きかけを開始または強化する等により、各州・地域において上記のような問題が生じないことを確保し、(ii)上記のような問題が新たに生じることを予防するため、制裁措置を取っていないものも含め全ての州・地方政府に対し、連邦政府として、州・地方レベルでの制裁措置が上記のような問題を生じさせていることにつき懸念を持っている旨を伝達して頂きたい。
4. 流通
(1)輸入通関手続
米国政府が、米国における輸入通関手続の所要時間にかかる詳細な調査を行い、入港から許可まで及び申告から許可までの各段階毎における所要時間を明らかにすることを要望する。
(2)新運航補助制度の廃止
毎年1億ドルの運航補助を10年間にわたって実施するという巨額の補助金の投入が、国際海運市場における自由かつ公正な競争条件を歪曲することは明らかであり撤廃されたい。
(3)アラスカ原油輸出禁止解除法を含む各種貨物留保措置の撤廃
商業貨物であるアラスカ原油輸出についての米国籍船使用の義務付けに代表される各種の貨物留保措置は、WTOサービス貿易一般協定の基本原則である内国民待遇の原則に反する保護主義的性格が強いものであり、撤廃されたい。
(4)1920年商船法(ジョーンズ法)
(a)ジョーンズ法に基づく一方的制裁措置
ジョーンズ法第19条(1)(b)により、外航海運に影響を与える規則を策定する権限が、米国連邦海事委員会(FMC)に対し与えられている。同法に基づきFMCが策定し、1997年9月にFMCが我が国船社に対して発動した一方的制裁措置の根拠となったFMC規則(同規則は本年5月に撤廃された。)は、相手国船舶に対する最恵国待遇、内国民待遇の付与等を規定した日米友好通商航海条約に違反するものであった。連邦政府として、このような一方的措置が取られることがないよう確保していただきたい。
(b)内航商船に関する規定
米国内での内航海運に従事する商船に関し、米国国内での建造を義務付けていることを見直されたい。
(5)1998年外航海運改革法
同法は、FMCが我が国を含む外国海運企業を米国海運企業と差別し、その運賃設定のあり方(PricingPractice)等について一方的に規制することを可能とするものであるところ、内外無差別の原則を確保するとともに、海運自由の原則の観点により、今後、FMCがマーケットの実情を無視して我が国を含む外国海運企業の運賃設定のあり方等を一方的に規制することのないよう、商業ベースでの海運活動に対する政府の規制は最小限にとどめられたい。
(6)酒類販売免許カリフォルニア州においては、蒸留酒としてはアルコール分24度以下の韓国焼酎のみが料飲店におけるビール・ワイン免許(人口基準による免許発行数の制限なし)での取り扱いが可能となっている。右扱いはWTO協定との関係で問題となるおそれもあるところ、我が国の焼酎を含む他の同種の産品に対しても同様の取り扱いを拡大するよう、連邦政府より加州政府に対し要請して頂きたい。
5. 競争政策
適用除外制度の廃止
我が国においては、競争政策の強化のため、独占禁止法の適用除外制度の全範囲について見直しを行ってきており、多数の適用除外制度を廃止するとともに、残されたものについてもその範囲の縮減等を図ってきている。米国におかれても、反トラスト法の適用除外制度を削減すべく、競争当局(司法省反トラスト局及び連邦取引委員会)が中心となって検討を進め、関係省庁及び議会に対し積極的に働きかけを行うこととされたい。
6. 法律サービス
(1)外国弁護士の受入れの全州への拡大
外国弁護士の受入れを全州に拡大するため、連邦政府は、各州政府に申し入れをするなど所要の措置を取られたい。
(2)外国弁護士の受入れの要件としての職務経験要件の短縮
外国弁護士受入れの要件とされる職務経験年数を短縮し、全ての州において3年とするため、連邦政府は、各州政府に申し入れを行うなど所要の措置を取られたい。
(3)外国弁護士の受入れの要件としての第三国における職務経験の算入
外国弁護士としての職務経験地について、全ての州において第三国における職務経験を算入できるようにするため、連邦政府は、各州政府に申し入れを行うなど所要の措置を取られたい。
7. 領事事項
(1)H-1Bビザ
H-1Bビザの発給が総枠で制限され、発給手続も長期間を要するため、日本企業からの適切な人員派遣が困難となっている。また、専門知識、専門技術を有する外国人の人材の雇用を希望するハイテク産業を中心とする米国企業にも発給枠の拡大の希望がある。米国連邦政府は、(i)H-1Bビザの発給総枠を2000年度以降相当程度拡大すること、(ii)米国の高等教育機関卒業後引き続き米国に滞在し、ハイテク産業に就職する者に対する新たな種類の非移民ビザを新設し付与すること、(iii)H-1Bビザ発給手続の短期化・簡素化及び予測可能性・透明性の向上のため、発給手続の標準処理期間を設定し公表すること、の3点を検討して頂きたい。
(2)F-1ビザ
米国移民法改正(1996年9月)により、公立小学校の生徒に対してはF-1ビザ(学生ビザ)が発給されないこととなり、また、公立の中・高等学校の生徒については、就学期間が1年以内でかつ学費を全額支払った場合を除きF-1ビザが発給されないこととなった。日本国政府としては、米国政府が「強化されたイニシアティブ」の第二回共同現状報告においてコミットしている検討において、(i)学費の支払いの義務化を廃止し、また、(ii)公立高校で1年間の学業を終えた生徒が卒業できるようにするため、在学中の1年間の期間制限を2年間とすることの2点を検討して頂きたく、(iii)右検討結果を2000年3月末までに明示して頂きたい。更に、(iv)公立小中学校の生徒に関しても、学費支払い義務化の廃止及び1年間の期間制限の延長を検討して頂きたい。
(3)滞在許可証(I-94)
連邦移民帰化局(INS)におけるI-94の延長申請は期限4ヶ月前からしか受け付けないこととなっているが、申請受理から発給までの所要期間はシカゴにおいては10ヶ月から1年程度、ニューオルリンズにおいては8ヶ月程度であることから、期限切れ前に一度帰国し、新たなI-94を取得して再入国することを強いられている日本人駐在員が存在する。(i)外国人の滞在期間についてビザによる制限とI-94による制限が二重に課せられているのは不合理で不必要な制約であるので、I-94の滞在許可期間が自動的にビザの有効期間と一致するようにするための方策を検討して頂きたい。(ii)また、右が不可能な場合、あるいは右の検討に時間がかかる場合には、連邦移民帰化局は、I-94延長手続の短期化・簡素化及び予測可能性・透明性の向上のため、全米一律の延長手続の標準処理期間を設定し公表して頂きたい。
(4)社会保障番号
1996年2月の米国社会保障局の規則改正により、労働許可ビザを持たない外国人の居住者には社会保障番号が発行されないこととなったが、運転免許証やクレジットカードの発行、銀行口座の開設、住居の賃貸契約等の際には社会保障番号の提示が求められるため、日本人駐在員の扶養家族が不利益を被っている。社会保障局は、(i)合法的滞在者が社会保障番号を取得出来るよう規則を改正して頂きたい。それが不可能な場合には、(ii)民間企業に対し、社会保障番号の発行の制限に関する規則改正につき周知徹底し、合法的滞在者に対しては社会保障番号の有無に関し差別的な扱いをしないよう指導するための措置を取って頂きたい。
(5)運転免許証
上記(4)の通り、社会保障番号を取得できなくなった合法的滞在者がいるにも関わらず、1996年連邦移民改革法によって、各州は、2001年10月1日以降、運転免許証に社会保障番号を記載しなくてはならないこととなった。(656条)。(i)社会保障番号を取得出来ない合法的滞在者が運転免許証を取得できるようにするため、各州は適法な滞在許可を有するが社会保障番号を取得出来ない外国人に対し、運転免許証発行に当たって、社会保障番号を発行の条件とすることなく、代わりにI-94を提示することにより運転免許証を取得することが可能となるよう、運輸省規則を発出して頂きたい。(ii)また、右が実現するまでの間は、社会保障番号を取得できない合法的滞在者に対しては国際運転免許証で運転を行うことを認めるよう、各州政府に対して要請して頂きたい。
II. 住宅
住宅に関する試験方法の国際規格との調和
米国における建築構造、部材に係る試験方法等、建築基準の性能規定化を2000年中に行い、国際規格との調和を図られたい。特に最初は米国国内規格と国際規格との不調和が顕著な建築材料の不燃性試験の方法を国際基準としたものに改められたい。(国際規格参考:ISO1182, ISO5560, ISO9705等)
III. 電気通信
1. 米国市場への参入
(1)外国事業者等の米国市場参入に関する審査基準
外国事業者の米国市場参入に際し、連邦通信委員会(FCC)規則にある「公共の利益」(「外交政策」、「通商上の懸念」)及び「競争に対する非常に高い危険」などの審査基準を理由として認証を拒否することが可能であり、実際に我が国の電気通信事業者による米国の国際通信事業への参入の認証が、「通商上の懸念」を理由に大幅に遅延した例がある。また、これまでの対話の過程で、日本政府が再三求めてきた「通商上の懸念を理由とする認証拒否」に関する米国政府の見解は、未だに示されていない。米国政府は、「外交政策」、「通商上の懸念」及び「競争に対する非常に高い危険」という裁量の幅が広く恣意的な運用が可能な審査基準を撤廃されたい。
(2)ベンチマークに関するFCC規則
国際電気通信連合(ITU)電気通信標準化研究委員会において、国際精算料金の勧告案が作成された。米国政府は、一方的に決めている(i)国際精算料金に関するFCC規則、及び、(ii)外国事業者の米国市場参入に関するFCC規則パラ179~214、を削除されたい。(3)州レベルの規制米国では、各州ごとの事業免許申請の手続やフォーマット、報告様式・内容等が統一されておらず、新たに参入する事業者にとっては過度の負担となっている。米国政府は、州ごとに異なる免許申請手続等による申請者の過度の負担を解消するために適切な措置を講ずるべきである。
2. 相互接続
(1)州際アクセス・チャージ
我が国では、長期増分費用(Long Run Incremental Cost : LRIC)方式について、できるだけ早期に導入することができるよう、2000年春の通常国会に所要の法律案を提出することとしている。
日米規制緩和対話の過程で、米国政府は、LRIC方式が接続料引下げに最も効果的であり、日本における早期導入を主張していたが、米国州際アクセス・チャージへのLRIC方式導入は、2001年2月8日期限のLEC(Local Exchange Carrier)によるコスト調査以降に検討するとのスケジュールとなっている。
米国政府は、我が国政府の政策決定と同時期(2000年春の法案提出に先立つ時期)に導入に関する成案を得るよう、スケジュールを前倒しされたい。
(2)モデル作成の透明性
我が国では、本年7月に「長期増分費用モデル研究会」による報告書案及びモデル案を公表しパブリック・コメントを招請した。
一方、米国では、パブリック・コメントを招請したのは、FCCが自ら作成した加入者回線部分に限られ、交換伝送装置等のネットワーク部分については一部事業者が民間のコンサルタントに作成させたモデル(HAIモデル)をパブリック・コメントも招請せず採用するなど、モデルやデータに関する作成作業の透明性が確保されていない。
米国政府は、FCCにおける長期増分費用モデル作成作業の透明性を確保されたい。特に、確実な作成スケジュールのコミット及びHAIモデルを含むモデル全体のプログラムとデータを公表しパブリック・コメントの招請を行われたい。
(3)接続料算定方式等へのアクセス
我が国では、東西NTTの指定電気通信設備の接続料及び算定方式については、接続約款や郵政省令等により公表し、接続約款はホームページに掲載(和・英両方)し、英語版CD-ROMも頒布している。
一方、米国では、連邦通信法に各州の公益事業委員会は、接続協定等を承認後10日以内に公衆の閲覧等に供すると規定されているが、接続料やその算定方式に関する情報にアクセスする方法が明らかでなく、それらに関する情報を入手することが、事実上困難である。
連邦政府は、各州における接続料及びその算定方式(使用したモデルの公開を含む)について、外国の関心を有する者の容易なアクセスを確保されたい。
3. インターネットサービスに係る国際回線費用負担の在り方
インターネットは、今や全世界的に普及し、米国から他国へのアクセスも相当量存在すると考えられる。しかし、インターネットに係る国際回線費用は、米国外の事業者が一方的に負担しているという現状にあり、我が国政府やアジアの通信事業者は、その是正を米国政府及び米国通信事業者に求めてきた。本年5月の共同現状報告においては、米国政府は、APECが進めているインターネットのトラフィックフロー、コスト構造等に関する調査に、積極的に参加する旨記載されている。
米国政府は、インターネットの国際回線費用負担の是正を図るため、その調査結果を踏まえ、インターネットに係る国際回線費用負担の改善措置を速やかに講ずるべきである。
4. ドメインネーム登録・管理の公正な競争環境
“.com”、“.org”、“.net”といった一般トップレベル・ドメイン(generic Top Level Domain : gTLD)を持つドメインネームは国際的な共有財産であり、非営利の国際的な民間団体であるICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)による新たな管理体制により、公正な競争環境の下で登録・管理が行われるべきである。しかしながら米国のNSI(Network Solutions nc.)社は、ICANN管理体制下になく、未だ実質的に支配的立場にある。また、新たに登録業務を行う全ての登録事業者が、NSI社のデータベースを共有して登録業務を行うためのシステム(Shared Registration System : SRS)を利用する際、NSI社とのライセンス合意が必要となる。このことは、差別的行為に対するセーフガードが無い状況では、NSI社の支配的地位の濫用につながる恐れがある。
民間主導で設立された新たなICANN管理体制の下で、gTLDの登録・管理業務への公正な競争導入に向けて、米国政府は、NSI社の支配的地位の濫用を防止するセーフガードを設ける等、必要な措置を講ずるべきである。
IV. 医療機器・医薬品
(1)GMP相互承認
日米間の医薬品・医療用具のGMP(GoodManufacturingPractice:製造管理及び品質管理規則)相互承認交渉を促進されたい。
(2)GCP相互承認
日米間のGCP(GoodClinicalPractice:臨床試験に関する基準)相互承認に向けて、意見交換を開始したい。
(3)実生産スケールでの安定性試験要求時期の改善
申請時にsite-specificstabilitydataとして、商業生産設備で製造した製品を用いた3ヶ月の安定性試験データの提出を求めているが、パイロットプラントで製造された製品による安定性試験データの提出で可能としてほしい。
V. 金融サービス
(1)外国証券外務員に対する米国証券外務員試験の簡素化
証券取引委員会(SEC)が、日本その他の外国証券会社従業員に対する資格試験の簡素化を導入したことは評価するが、実際の手続面についての整備が遅れていると聞いており、早急に整備することを求めたい。
(2)外国国債の新発債に対する取引制限の緩和
現在、証券法において、証券取引委員会(SEC)に登録していない有価証券を米国内で取引することは制限されており、日本国債であってもSECへの登録及び顧客への目論見書の交付をしない限り、発行後40日以内においては、販売はできないこととされている。外国国債については、各国の信用に基づいて発行されたものであり、上記制限の緩和若しくは適用対象外として頂きたい。
(3)外銀に対する連邦と州当局による合同検査
第2回共同現状報告の中で、合同検査周期を12ヶ月毎から18ヶ月毎に延ばす案についてパブリックコメントを求めたとの記述がある。右についての現状につき報告して頂きたい。
(4)レギュレーションK(米国銀行の外国での営業、外国銀行の米国での営業について規定している)の改正
第2回共同現状報告の中で、1997年12月に連銀はレギュレーションKの改正を提案したとの記述がある。右についての現状につき報告して頂きたい。
(了)