データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 安全と繁栄のためのパートナーシップ

[場所] ワシントン
[年月日] 2001年6月30日
[出典] 外交青書45号,291−292頁.
[備考] 仮訳
[全文]

 小泉純一郎総理大臣とジョージ・W・ブッシュ大統領は、本日、キャンプ・デーヴィッドで会談し、日米両国間の共通の価値観、相互信頼及び友情に基づくパートナーシップにつき再確認した。

平和と安定のための協力

 総理大臣と大統領は、日米安全保障関係50周年を歓迎しつつ、日米同盟が引き続きアジア太平洋地域の平和と安定の礎であることを再確認した。両首脳は、戦略対話の強化の重要性について意見の一致を見、アジア太平洋地域及び世界のその他の地域における協議を強化することを決定した。両首脳は、国際社会における中国の建設的役割及び同国のWTOへの早期加盟を促進し、朝鮮半島での平和を達成するため大韓民国と協力し、世界中での不拡散努力を強め、国連安全保障理事会の改革を推進し、日本が安全保障理事会に常任議席を得ることの重要性を強調した。

 両首脳は、日米防衛協力のための指針の継続的な実施を基礎として、安全保障協力における今後の方途につき、様々なレベルで安全保障協議を強化することを決定した。両首脳は、これらの協議が地域の安全保障環境の評価並びに兵力構成及び兵力態勢、安全保障戦略、緊急事態における両国の役割及び任務並びに平和維持に関する協力等の分野に焦点をあてることに留意した。両首脳は、米国の前方展開が地域の安定に不可欠であることを再確認し、大統領は、総理大臣に対し、日本の接受国支援への謝意を表明した。両首脳は、SACOプロセスの着実な実施により沖縄県民の負担を軽減するといった在日米軍に関連する問題に取組み、日米同盟を強化していくことが重要であることにつき意見の一致を見た。両首脳は、大量破壊兵器及び弾道ミサイルの拡散がもたらす増大しつつある脅威を認識し、この脅威に対処するため、種々の防衛システム及び軍備削減等の外交的イニシアチブを含む包括的戦略の必要性を強調した。両首脳は、両政府が不拡散及び拡散対抗措置の強化とともに、ミサイル防衛に関し緊密な協議を継続すべきことにつき意見の一致を見た。総理大臣は、抑止を変化させる新たなアプローチを探求するとの大統領の呼びかけに関する日本の理解を改めて表明した。両首脳は、弾道ミサイル防衛技術に関する共同研究の重要性についても改めて表明した。

成長のための経済パートナーシップ

 総理大臣と大統領は、開かれた市場とマクロ経済及び規制に関する健全な政策が、持続的な繁栄にとって極めて重要であるとの信念を確認した。総理大臣は、企業債務及び不良債権に効果的に対処することを含め、日本経済の再生のための構造改革及び規制改革を精力的かつ包括的に実施するとの決意を表明した。大統領は、総理大臣の「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」の計画を評価する旨表明した。総理大臣は、減税その他の措置を通じて米国における持続的な経済成長を支えるという大統領の強い意思を歓迎した。両首脳は、規制緩和及び競争政策に関する第四回共同現状報告の完成に満足をもって留意し、両国の外国直接投資の環境を改善するために更なる共同の努力を求めた。

 両首脳は、「成長のための日米経済パートナーシップ」と名付けられた新たな二国間の経済イニシアティブを立ち上げることを発表した(詳細別添)。このイニシアティブは、二国間の、地域的な及びグローバルな経済及び貿易問題に関する協力と取組みのための構造を設立する。両政府は、また、その他の主要な問題に対処していくための協調的な努力を行う。

 両首脳は、世界貿易を更に自由化し、WTOルールを明確化、強化、かつ拡充することにより、経済成長を促進し、グローバル化の課題に対応できる貿易システムを準備するため、本年後半にカタールにおいてWTO新ラウンドを立ち上げるための努力に個人的に関与し続けていく決意を再確認した。

地球的規模の課題における協力

 総理大臣と大統領は、複雑な地球的規模の課題に取り組む上での両国の過去の協調的な努力を認識し、これらの成功を踏まえて、二国間の地球的規模の協力を更に拡充することを約束した。

  総理大臣は、世界保健基金に対し、2億米ドルを拠出するとの意図表明を行った。既に同基金設立のため2億米ドルの拠出を表明している大統領は、これを感謝をもって歓迎した。

 両首脳は、気候変動によってもたらされる課題の深刻さについて、共通の理解を表明した。総理大臣は、この観点から、京都議定書の重要性を指摘した。両首脳は、気候変動が地球的規模でのアプローチを必要とする緊急の地球的規模の問題であることを認識した。大統領は、京都での日本のリーダーシップを念頭に、共通の基盤及び気候変動に対する共通の行動をとるための分野を探求するために、日米政府間ハイレベル協議を早急に開始するとの総理大臣の提案を歓迎した。

揺るぎない同盟におけるパートナー

 キャンプ・デーヴィッドでの会談は、総理大臣と大統領が、揺るぎない同盟の指導者として、さらに、親しい友人として、協力していくため、お互いに個人的に知り合うための機会を提供した。両首脳は、日米同盟関係の強さは日米両国民の堅固な支持に支えられていることに留意しつつ、両国国民の間の交流の拡大を歓迎した。両首脳は、秋の東京での会談において、戦略対話と成長のための経済パートナーシップについての進展をレヴューし、地球的規模の課題についての二国間協力を拡充していくことを決定した。