[文書名] 規制緩和及び競争政策に関する日米間の「強化されたイニシアティブ」第四回共同現状報告
規制緩和及び競争政策に関する 日米間の「強化されたイニシアティブ」第四回共同現状報告
規制緩和及び競争政策に関する日米間の「強化されたイニシアティブ」の下での4年目の対話において、日米両国政府は、更に規制緩和を促進し、効果的な競争政策を用い、「強化されたイニシアティブ」の実施に相当のリソースを投入する決意を再確認した。
4年目の対話を通じ、日米両国政府は、上級会合並びに専門家会合(電気通信、住宅、医療用具・医薬品、金融サービス、エネルギー、及び、IT・競争政策・商法改革・法制度改革・流通・透明性及びその他の政府慣行を含む構造的問題)を開催してきた。双方通行の対話の原則及び具体的な進展の達成という目的にのっとり、日米双方は、多岐に亘る規制緩和項目について意見交換を行った。こうした努力の一環として、2000年10月、日米両国政府は要望書を交換した。
日本政府は、一連の規制緩和措置をとってきており、その最新かつ最も重要なものとして、2001年3月30日に規制改革推進3か年計画が採用されたことがあげられる。今回の共同現状報告には、強化されたイニシアティブの下での作業に関連する日米両国政府による主要な規制緩和及びその他の措置が列挙されている。両国政府は、過去4年間に強化されたイニシアティブの下で達成された進展を歓迎している。日米両国政府は、これらの措置が競争力のある製品及びサービスの市場アクセスを改善し、消費者利益を増進し、効率性を高め、経済活動を促進するとの見解を共有する。強化されたイニシアティブの下で取られる措置は、国際的な義務と整合的に、競争的な外国の製品及びサービスに対し無差別待遇を提供するものである。
両国政府は、更に規制改革を促進する決意を再確認する。両国政府は、いずれかの政府の要望に基づき、双方に都合の良い時期に、この報告書に含まれている措置を取り上げるために会合する。両国政府はまた、新たに設立される成長のための日米経済パートナーシップの重要な構成要素となる規制改革及び競争政策改革イニシアティブを通じ、強化されたイニシアティブの下で達成された進展の基盤の上に立つ決意を確認した。
「強化されたイニシアティブ」の下での日本政府による規制緩和及びその他の措置
I. 電気通信
A. 競争促進
1. 日本政府は、電気通信事業の公正競争の一層の促進を図るため、市場支配的な電気通信事業者の反競争的行為を防止、除去する非対称規制の整備や電気通信事業紛争処理委員会の設置等を行う電気通信事業法等の一部を改正する法律案を国会に提出した。同法律案は、2001年6月15日に成立した。
2. 非対称規制には、以下のものを含む。
a. 反競争的セーフガードは、次の2類型の電気通信事業者に適用される。
(1)第一種指定(地域固定系)電気通信設備を設置する第一種電気通信事業者
(2)第二種指定(移動体系)電気通信設備を設置する第一種電気通信事業者であって、市場シェアやその推移その他の事情を勘案して、総務大臣から指定を受けたもの
b. 上記(1)又は(2)に分類される事業者に対し、規制は次の3つの禁止行為類型を明確化する。
(1)接続により得られた情報の目的外利用・提供
(2)特定の電気通信事業者に対する不当に優先的な又は不利な取扱い
(3)電気通信設備の製造業者若しくは販売業者又はコンテンツ・プロバイダーに対する不当な規律・干渉
c. そのような行為に対処するため、改正された法律の下に、違反行為を速やかに是正することを可能にする効果的な措置(行為の停止・変更命令)が整備される。
d. 改正された法律は、指定された地域固定系ネットワークを有する電気通信事業者とその親会社、子会社又は兄弟会社に該当する電気通信事業者の中から総務大臣が指定するものとの間の法的ファイアウォールを規定する。このファイアウォール規定は、以下を含む。
(1)役員兼任の禁止
(2)接続に必要な建物・施設の利用又は情報提供の同等性確保
(3)各種業務の受託に当たっての同等性確保
e. 改正された法律の下に、その違反行為を速やかに是正することを可能にする効果的な措置(過料又は行為の停止・変更命令)及び指定された地域固定系ネットワークを有する電気通信事業者に対する遵守状況の毎年の報告義務が整備される。
f. 指定された地域固定系ネットワークを有する電気通信事業者の契約約款(現在届出制になっている、ユーザ料金を除く)及び接続約款、共用協定は現行どおり認可とし、それ以外の事業者の契約約款及び接続協定、共用協定は認可を要せず届出となる。届出事項は関連省令に規定される。
g. 指定された移動体系ネットワークを有する電気通信事業者の接続約款については作成・届出・公表を義務付ける。接続約款が能率的な経営の下における適正な原価を反映していないと認められる場合には、変更を命ぜられることがある。
3. 総務省は、上記の法律の公布後、法律に定めるところに従い、情報通信審議会に諮ることにより、省令の改正を行う。審議会は、必要に応じて意見招請を行う。
4. 2001年に、総務省は、情報通信審議会に諮ることにより、改正されたNTT法第2条第5項に基づきNTT東日本/西日本が業務範囲拡大の認可を受けるための競争条件を明らかにしたガイドラインを作成する。
5. 新たな、競争中立的なユニバーサルサービス基金の仕組みの下で、適格電気通信事業者は、ユニバーサルサービス(加入電話、公衆電話及び緊急通報)の提供コストの一部を補てんするためユニバーサルサービス交付金の交付を受けることが可能になる。ユニバーサルサービスの提供コストは、長期増分費用(LRIC)方式に基づくコスト算定方式により決定される。
6. 全ての第一種及び特別第二種事業者は、協定又は約款の届出によりより柔軟に卸電気通信役務を提供できるようになる。届出事項は関連省令に規定される。
B. 相互接続
1. 総務省は、NTT東日本・西日本から認可申請のあった、電話・ISDNの提供等に用いる機能についての2000年度から2002年度までのLRIC方式による接続料の改定について、2001年2月に認可した。この結果、例として、2000年度に比較して、2001年度の公衆網の接続料は、7. 1パーセント(GC接続、180秒)-23. 1パーセント(ZC接続、180秒)低下した。
2. ISM交換機能の接続料について、総務省は、NTT東日本・西日本からの2000年度から2002年度の3年間で段階的に廃止するとの認可申請を、2001年2月に認可した。これにより、ISDNと公衆網の接続料の間の格差が消滅する。
3. 総務省は、1997年3月から1999年9月まで開催された長期増分費用モデル研究会の報告書及び2000年2月の電気通信審議会答申「接続料算定の在り方について」において指摘されている見直し事項等につき、2000年9月に長期増分費用モデル研究会を再設置し、長期増分費用モデルの見直しについて検討を開始した。検討される事項には、減価償却率、入力値の選択及び価格、ローカルループの原価算定、及びNTSコストの範囲が含まれる。この検討は2002年2月頃結論を出す予定である。
4. 定額のネットワーク利用料によりインターネットの利用を刺激し得る、定額的な接続料に関し、総務省は、具体的な算定方式等について、2001年1月及び2月に意見招請を行った。現在は、情報通信審議会において審議を行っており、その答申草案「IT時代の接続ルールの在り方について」が2001年5月に公表され、意見招請が行われた。総務省は、答申を受けて、適切な措置を講じる。
5. 総務省は、NTTドコモ各社の接続料改定について、それぞれの社の業務区域内にある接続点において他事業者と接続する場合の接続料を18. 1円/分から15. 2円/分に引き下げることを2001年3月に認可し、引き下げられた接続料は、2000年4月1日に遡及適用された。
C. 線路敷設権
1. 日本政府は、第一種電気通信事業者、電気事業者及び鉄道・地下鉄事業者による自主的な改善策について調査し、2000年10月及び2001年3月に報告書を公表した。
2. 日本政府は、2000年度において、線路敷設に関する意見・苦情を受け付け、我が国における「線路敷設権」及び既存事業者設備へのアクセスを巡る状況につきレビューを行った。そのレビュー結果は、2001年4月3日に公表された。
3. 日本政府は、2001年3月29日に高度情報通信ネットワーク社会形成基本法第35条に基づき決定された「e-Japan重点計画」において、線路敷設の円滑化のための措置を明示した。これらの措置には、約2万9千kmの公共の光ファイバ収容空間の整備・開放を進めるとともに、インターネットにて公表することが含まれる。また、政府は、2001年3月30日に閣議決定した「規制改革推進3か年計画」において、電柱・管路等の施設の更なる開放及び道路等の公的空間への敷設円滑化のために2001年度から2003年度までの3か年にわたって取り組む一連の関連措置を列挙した。
4. 総務省は、第一種電気通信事業者による線路敷設の円滑化を図り、超高速インターネットの整備に不可欠な光ファイバ網の整備等を推進するため、電気通信事業者、電気事業者、鉄道事業者が保有する電柱・管路等使用に関する公平、非差別、透明なルールを規定した「公益事業者の電柱・管路等使用に関するガイドライン」を策定した。ガイドラインに基づき、アクセス拒否の事由は明確にされる。ガイドラインは2001年4月1日から運用が開始された。
5. 日本政府は、線路敷設権に関する紛争に適用される紛争処理手続を強化するため、1)道路管理者等との調整手続、及び2)総務大臣が裁定等を行う際には電気通信事業紛争処理委員会への諮問・答申を経ることとする手続を新たに導入する電気通信事業法等の一部を改正する法律案を国会に提出した。同法律案は、2001年6月15日に成立した。
D. アンバンドリング
1. 総務省は、アンバンドルされたメタル加入者回線との接続及びISMとの接続に関して、接続料や技術的条件がNTT東日本・西日本の接続約款に含まれるよう、2000年9月に省令の改正を行い、2000年度内に認可した。これにより、インターネット利用のためのハイスピードアクセスサービスを提供する競争事業者は加入者回線を自前で設立しなくても加入者に直接サービス可能になる。
2. 2000年12月の電気通信審議会答申「接続ルールの見直しについて」を受けて、総務省は、ブロードバンド普及及び公正競争を促進するために、1)端末系と中継系のダークファイバの接続料、2)ダークファイバと接続する際の技術的条件、3)ファイバの材質や空き状況等を含めた光ファイバの設備との接続に要する情報開示を競争事業者がNTT東日本・西日本より受ける手続きをNTT東日本・西日本の接続約款に記載するよう2001年4月に省令の改正を行い、2001年5月、認可申請を受け、情報通信審議会に諮問した。総務省は、答申を受けて、適切な措置を講じる。
3. 総務省は、データ伝送サービスにおける公正競争条件を確保するために、1)データ伝送役務の提供に使用される伝送路設備及び事業者を振り分ける機能を有するルータ等を指定電気通信設備に追加する告示の制定と、2)NTT東日本・西日本の地域IP網をアンバンドルして、その接続料を算定し、NTT東日本・西日本の接続約款に記載するよう省令改正を、2001年4月に行った。地域IP網をアンバンドルした機能の接続料については2001年5月に認可申請を受け、情報通信審議会に諮問した。これにより、事業者はNTT地域会社のIP網に非差別的にアクセスできるようになる。総務省は、答申を受けて、適切な措置を講じる。
4. 総務省は、NTT東日本・西日本が現に設置する屋内配線の提供に関するルールを、NTT東日本・西日本の接続約款に記載するよう2001年4月に省令を改正し、2001年5月、認可申請を受け、情報通信審議会に諮問した。総務省は、答申を受けて、適切な措置を講じる。
E. コロケーション
コロケーションの機会を改善するため、総務省は、NTT東日本・西日本の接続約款に以下の各事項を記載するよう2000年9月に省令の改正を行った(2000年10月に施行)。
(1)コロケートされている施設の工事や保守を迅速に行うことを接続事業者に許容する手続き
(2)接続事業者にNTT東日本・西日本の建物内にコロケートされている自らの装置への24時間アクセスを提供するために必要な手続き
(3)コロケーションの請求に対する回答及びコロケーションのための工事のNTT東日本・西日本の標準期間
(4)コロケーションに利用可能な空間に関する情報開示手続き(5)コロケーションのための空間が利用可能である空き場所がないという回答があった場合にこれを確認するためにNTT東日本・西日本の建物に立ち入る手続き総務省は、関連する接続約款の改正を2000年11月に認可した。
F. 再販
1. 総務省は、専用線について、事業者向け割引料金(キャリアズ・レート)をNTT東日本・西日本の接続約款に記載するよう2000年11月に省令の制定を行い、2001年1月にATM及びその他のデジタル専用線サービスのための料金を認可した。割引率は事業者とエンドユーザに対するコストの差異に基づいている。デジタルサービスに対する割引率は、8. 6パーセントから24. 3パーセントである。
2. 公衆網の事業者向け割引料金については、2000年12月の電気通信審議会答申「接続ルールの見直しについて」において、専用線と公衆網との異同なども十分検討した上で、公衆網における事業者向け割引料金の実現を図るために引き続き詳細な検討を行う必要がある、とされたところであり、現在情報通信審議会において検討中である。
G. 電波管理
日本政府は、無線局免許における競願処理手続きを整備し、無線局の目的別の周波数等を定めた「周波数割当計画」を作成・公示することを内容とする電波法改正を行い、改正電波法は2000年11月に施行された。競願処理手続きのための比較審査基準や「周波数割当計画」は、意見招請手続きを行って策定され、一般に公開されている。
H. その他
1. 総務省は、第一種電気通信事業者が、自己のネットワークの一部に他の電気通信事業者から利用者契約約款ベースで調達した電気通信回線設備を利用し、全体を一体的に第一種電気通信事業として運用することができるよう2000年11月に省令を改正した。
2. 優先接続については、総務省は、1999年4月に所要の省令改正を行い、2000年12月に施行した。総務省は、優先接続を可能にするための接続料及び工事費の設定についてのNTT東日本・西日本の接続約款の変更申請について、2001年3月に認可し、優先接続は2001年5月1日から提供が開始された。
3. 番号ポータビリティについては、総務省は、1999年8月に所要の省令改正を行い、2000年12月に施行した。総務省は、番号ポータビリティを可能にするための接続料及び工事費の設定についてのNTT東日本・西日本の接続約款の変更申請について、2001年3月に認可した。
II. IT
A. インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)の法的責任
1. 2000年5月、総務省は、インターネット上を流通する違法情報への対策を検討するため、「インターネット上の情報流通の適正確保に関する研究会」を設置した。同研究会においてISPの法的責任に関する検討が行われた。2000年12月、報告書が取りまとめられた後、約1か月にわたって本報告書に対する意見募集手続が行われた。
2. 同報告書における提言や寄せられた意見を踏まえ、現在、総務省において、ISP等による迅速かつ適切な対応を促進するため、権利を侵害されたと主張する者と、情報の送信者との利益のバランスについて適切に配慮しつつ、名誉毀損、プライバシー侵害、著作権侵害といったあらゆるインターネット上の違法情報に対して、分野横断的に、ISPの責任の明確化を図ること等を目的とした法案の策定作業を進めている。日本政府は本件につき米国政府と引き続き対話を行う。
B. 知的所有権
1. 「一時的複製」日本政府は本件につき米国政府と引き続き対話を行う。
2. WIPO実演・レコード条約(WPPT)日本政府は、WIPO実演・レコード条約(WPPT)の発効を支持する。迅
速な発効を確保するため、日本政府はWPPTを可能な限り早く国会に提出する。
C. プライバシー
個人情報の保護については、個人情報保護法制化専門委員会が2000年10月にとりまとめた「個人情報保護基本法制に関する大綱」において、個人情報の保護と利用との間の適切なバランスが図られるべきであることが明確にされており、また、民間部門における個人情報の保護のための基本的かつ一般的な仕組みを構築することが求められているとともに、自主的なメカニズムを通じて苦情を解決する方途も開かれている。日本政府は、2001年3月、この趣旨に沿った法律案を国会に提出した。
D. 電子商取引に関する法的枠組み
1. 日本政府は、民間の取引における、書面主義、対面主義、日本における店舗設置義務付け等の法令その他行政上の義務付けが、今後の電子商取引の成長を妨げるものとなるとの認識の下、どのような義務付けが存在しているのかについて、総点検作業を行った。総点検作業は、書面主義については内閣官房が、それ以外については内閣官房と規制改革委員会とが連携して行われた。その結果は2000年9月に公表された。
2. 総点検作業の結果を受け、民間同士の書面の交付や書面による手続の義務付けを含む50本の法律について、従来の手続に加え、電子的手段を容認するよう、一括して改正する法律が、2000年の臨時国会において成立した。この法律は2001年4月より施行されている。
3. 日本政府は、対面行為の義務付け、日本における事業所の必置規制、及び書面保存義務など、電子商取引の成長を妨げる既存の法律や規制の改定について、逐次検討していく。
E. 政府調達の電子化
1. 物品・サービス(非公共事業)
a. 日本政府は、競争契約参加資格審査及び名簿作成を統一的に行い、いずれかの省庁に資格を申請すればその資格が全省庁に有効となるようなシステムを構築し、2001年1月の定期審査から運用している。
b. 日本政府は、各府省がホームページで提供する情報を一括する政府調達情報の統合データベースの運用を2001年度中に開始する。この情報は一つのウエブサイト(http://www. chotatujoho. go. jp/va/com/TopPage. html)上で提供される。
2. 公共事業日本政府は、2001年10月から、一部の事業でインターネットを活用した電子入札・開札を開始し、原則として2004年度までに全ての直轄事業で電子入札・開札を導入する。国土交通省は、公共事業支援統合情報システム(CALS/EC)を2004年度までに構築する。
F. デジタル商品の取引推進
日本政府と米国政府は、デジタル商品の貿易の自由な取り扱い及び全てのエコノミーにおける電子商取引の利用拡大を確保する施策を多国間で推進することにつき、協力していく。
G. セキュリティ
1. 日本政府と米国政府は、経済協力開発機構(OECD)の情報システムのセキュリティに関するガイドラインは、情報セキュリティに対する国別のアプローチの重要な基盤を成すべきであるとの見解を共有している。
2. 日本政府は、OECDのガイドラインのレビューを支持し、OECDが計画しているグローバル・ネットワーク時代の情報セキュリティに焦点を当てたワークショップを2001年9月に東京において主催する。
3. 日本政府と米国政府は、ガイドラインのレビューに貢献し、また、透明なレビューのプロセスを確保するために、OECDの他の加盟国と協力する。
4. 日本政府は、2000年12月に、いわゆるサイバーテロから重要インフラを防護するため、「重要インフラのサイバーテロ対策に係る特別行動計画」を策定し、本年中を目途に官民連携、連絡体制の確立等に取り組んでいる。
5. また、2001年1月に、IT戦略本部に民間有識者からなる「情報セキュリティ専門調査会」及び全省庁の代表からなる「情報セキュリティ対策推進会議」を設置するなど、官民一体となって情報セキュリティ対策を推進している。
III. 医療用具・医薬品
A. 革新性の認識
1. 厚生労働省は、2000年に、薬価制度の透明化を図る観点から、薬価算定ルールの明確化・文書化、薬価算定組織の設置といった措置を講じたところである。今後は、以下にあげられている薬価算定基準の残された課題について、2002年4月1日までに施策をとりまとめることを目標に議論を進める。これらの改革は、患者に対してより効果的で費用効率的な治療を提供する革新的な製品をより迅速に導入し、より広く使われるようにするために革新性を十分に認識した、医薬品の適切な評価を行うものである。この過程で、厚生労働省は、改革の過程の様々な段階での活発な対話を通じ、米国製造業者を含む関係業界の提案や意見を、真剣に考慮する。厚生労働省は、特に以下の点に着目し、現行の仕組み及び代替策の長所及び短所を考慮する。
a. 調整幅
b. 先発品・後発品の取扱い
c. 加算
d. その他(例えば(1)市場規模拡大に応じた再算定、(2)外国価格調整)
2. 2001年5月、薬剤分類委員会は、作業を終え、比較薬の薬剤分類の原案をとりまとめ、厚生労働省に提出した。厚生労働省はこれを公表し、米国製造業者を含む関係者に対して、2001年7月23日までの2ヶ月間、この原案に対する意見を表明する機会を与えた。この薬剤分類作業は、薬学及び臨床医学上の原則に基づき、革新的な医薬品の価値を適切に認識したものとなる。
3. 2000年10月、厚生労働省は、保険医療材料の保険適用手続きの見直し及び透明化を図る観点から、保険適用区分の細分化(A1からC2まで)、それぞれに対応した定義の明確化及び区分毎の保険適用までのタイムクロックの明確化を行った。この仕組みは、革新性の価値を十分に認識した、医療材料の適切な評価をおこなうものである。また、厚生労働省は、患者に対してより効果的で費用効率的な治療を提供する革新的な製品をより迅速に導入し、より広く使われるようにする観点から、C1及びC2製品に係る新たな機能区分について、適切な価格算定ルールや保険導入時期等について検討する。これらの検討については、中医協では、様々な点が検討すべき事項としてあげられている。米側としては、C1・C2の暫定価格の希望書提出、審査及び設定に関する明文化されたルール、基準及び手続き並びに医学的かつ経済的な考慮を反映した最終価格の設定を求めているところであるが、厚生労働省は、適切な審議会等において、米国製造業界が意見を表明する十分な機会を提供するとともに、示された意見について真剣に考慮する。
4. 保険医療機関購入価に係る医療材料の機能別の償還価格の設定過程においては、関連する企業に対し、それらの企業の懸念事項、例えばそれらの企業が認識している「不均衡な負担」について、厚生労働省と直接議論する意義のある機会が与えられる。
B. 承認手続き
1. 厚生労働省は、臨床試験不要の医療用具の範囲をさらに広げ、創傷被覆材も含めた。
2. 2001年3月28日に、厚生労働省は、「改良」及び「新」医療用具の承認審査のステップの概略を明確に示すフローチャートを含む文書を公表した。このシステムでは、申請者と審査官の直接のコミュニケーションが提供され、専門委員と面会する機会も与えられうる。このシステムには、審査の初期段階でのロードマップ機能も盛り込まれ、そこで申請者は審査官に対して、申請内容の要点を示すことができる。
3. 厚生労働省は、「改良医療用具」の新区分が「後発医療用具」の範囲を狭めるものではないことを確実にするため及び承認の迅速化を図るために、米国の業界を含む関係者との対話を積極的に行う。厚生労働省は、医療用具承認申請の3区分(「後発」、「改良」及び「新」)を明確にするためのディシジョン・ツリーの作成を進め、公表していく。
4. 厚生労働省は、医療用具の承認審査プロセスの流れのなかで、承認申請に関する申請前相談の機会を提供するという通知を2000年5月24日に発出し、かかる相談のための窓口を明らかにした。厚生労働省は、審査官により提供される申請前相談と申請後の取り扱いが一貫したものとなるよう、努めていく。
5. 厚生労働省は、医療用具の承認申請者に対しても、適宜、厚生労働省の上級職員との面会の機会を提供する。
6. 厚生労働省、経済産業省及び米国業界を含む関係者は、薬事法及び計量法の下での体温計及び血圧計の取扱いに関し、引き続き協議を続ける。厚生労働省及び経済産業省は、薬事法の下での承認並びに計量法の下での型式承認及び検定を要する体温計及び血圧計の申請者にかかるデータの負担のおそれを軽減するため、様々な方法を検討する。
7. 厚生労働省は、申請者のデータの負担軽減の目的に添って、生物学的適合性試験に関する米国業界を含む関係者からのコメントについて対話を継続し、さらなるコメントの収集のための改訂された案を近い将来公表する。
8. 過去三年間、厚生労働省は数多くの重要な、新医薬品の承認審査に関する改善を行ってきており、それらは承認審査期間の短縮につながっている。厚生労働省は、2000年4月以降に申請される申請に対する標準的事務処理期間の12ヶ月に向けて、着実な標準的事務処理期間の短縮の成果を上げている。厚生労働省は、この承認手続きの迅速化を継続し、また、米国業界を含む関係者との対話を続け、この成果全体を一層確実なものとしていく。米国政府は、米国企業に対して質の高い新医薬品承認申請を行うよう、引き続き、呼びかけていく。
9. 2000年11月に、厚生労働省は、医薬品の承認審査のステップを明確にするためのフローチャートを含む文書を発出した。この制度は、申請者と、専門委員を含む審査側との直接のコミューケーションを提供するものである。この制度は、審査の初期段階でのロードマップ機能も盛り込み、そこで申請者は審査官に対して、申請内容の要点を示すことができるとともに、原則として、面接審査会2週間前に申請者に提供される主要問題点に引き続き、申請6ヶ月後に面接審査会を行うものである。申請者においても、当該審査会に自身の専門家を参加させることができ、また、その後、申請者に、「承認」又は「承認不可」の見込みが示される。
10. 日本は、新医薬品の市販直後調査を2001年10月から実施するが、そこでの国内及び外国で開発された品目の取り扱いは同一である。
C. 外国臨床データの受入れ
1. 厚生労働省と審査機関は、外国臨床データの受け入れを増加し、臨床的な有効性及び安全性の主な根拠としての外国臨床データの受け入れを継続していく。
2. 医薬品機構での相談を通じ、ケースバイケースで、用法や臨床評価指標等の要因を考慮し、最初の効能を支持する外挿性を示すデータが存在する場合に、類似の効能について追加的なブリッジング試験を行う必要がないかどうかの可能性が検討されうる。
3. 厚生労働省は、日米EU医薬品規制整合化国際会議(ICH)E5ガイドラインの利用をより容易とするための付加的なガイダンス等の作成のために、ICHの枠組みにおいて、人種や追加的なデータが外国データの外挿のために必要かどうかについて、またどのような条件で必要とされるかについての解釈を含む当該ガイドラインの問題点を特定することに建設的に対応していく。
4. 厚生労働省は、米国業界を含む関係者に対して、ブリッジングの問題に関して意見交換をする機会を引き続き提供し、医薬品機構の治験相談の利用を促すとともに、治験相談における経験に基づく重要な留意点や指導を講習会等を通じて公表していく。
D. 透明性
1. 2000年10月1日、薬価算定組織及び保険医療材料専門組織が設置された。これらの組織は、医療材料及び医薬品の価格設定に対しての不服意見を表明する過程を提供している。結果に対して全体的な責任を有する厚生労働省は、これらの組織が、希望者が意見表明をし、関連する事項について議論するためのこれまで通りの十分な時間とアクセスを提供することを保証する。これらの組織は、希望者に対し真剣な配慮を与えつつ、不服意見表明の手続きを、明文化された手続きに従い、かつ公平に、とり行うものとする。
2. 厚生労働省は、薬価制度及び保険医療材料制度の見直しに係る検討の透明性を確保するために、外国の医薬品・医療用具製造業者からの要望に応じて、関係審議会や関係検討会における意見表明を日本の製造業者と同等に行う機会及び厚生労働省のあらゆるレベルの職員との意見交換を行う機会を引き続き提供する。厚生労働省は、改革の過程の様々な段階での活発な対話を通じ、意義のある議論を行うために十分な時間を与えるとともに、米国製造業者を含む関係業界の提案や意見を、真剣に考慮する。
E. 栄養補助食品
1. 厚生労働省は、2001年4月1日、「市場開放問題苦情処理推進本部」(OTO)の勧告を踏まえ、いわゆる栄養補助食品について、科学的なデータ及び情報がある場合には、栄養及び健康に関する表示を認めることとする新たな制度を施行した。将来新たに出てくる製品の自由化に関しては、当該新制度及び上記OTO勧告を踏まえ、評価されることになる。厚生労働省は、当該規制制度のデータ要件が、合理的かつ適切であること並びに安全性及び有効性を担保するうえで必要なものに限定されていることを確保する。厚生労働省は、製品の承認にあたっては、引き続き外国のデータ及び情報を最大限可能な限り使用することとし、同様の方法で栄養及び健康に関する表示を評価することとする。
2. カプセルや錠剤といった通常の食品とは形状の異なるものであって、健康に関する表示がなされた食品に使用される添加物(日本国における定義による。例えば、ビタミン、ミネラル及び賦型剤。)について、医薬品の成分として使用されたことがあるものである場合には、厚生労働省は、新たに策定された指針(「保健機能食品であって、カプセル、錠剤等通常の食品形態でない食品の成分となる物質の指定及び使用基準改正に関する指針」)において、1年間の毒性試験を省略することを可能とした。
F. ヘルスケアサービス
1. 2001年3月1日、改正医療法が施行され、医療機関が広告できるものとして、治験に関する事項、保健指導の実施、対応することができる言語、(財)日本医療機能評価機構による医療機能評価の結果、健康診査の実施といった事項が新たに認められることとなった。
2. 日本政府は、今後とも、サービスの効率性及び質を向上することを目的として、ヘルスケア分野の規制の見直しに努めていく。
IV. エネルギー
A. エネルギー分野の自由化
日米両政府は、日本のエネルギー分野の一層の規制改革についての進展と計画について、また、米国において現在進行中の同分野の再編について意見交換を行った。両政府は、日本の目指す効率的、合理的でより低廉なエネルギー供給の実現をもたらすより競争的なエネルギー市場の実現のための措置について議論した。これらの措置は、公共の福祉やエネルギー安全保障、環境について与える影響を考慮するものである。日米政府は、規制改革によって得られる便益や安定供給へのリスクを含め諸外国の事例から得られる教訓を注意深く考察する必要を認識し、上記措置が思慮深く推進される必要があるという点で認識が一致した。これらの共通の見解に基づき、日本政府はエネルギー分野における規制改革を実行しており、また今後も実行し続ける。
B. 規制主体
1. 2001年1月より、資源エネルギー庁の中に新しく電力市場整備課が設けられ、日本の電力市場の規制に対し責任を有することとなった。日本政府はこの新しい部署が電力規制に関し効果的で独立した権限を有するよう、引き続き以下を含む措置を講ずる。
a. 送電線網への公正で開かれたアクセスを促進すべく、電力市場整備課と公正取引委員会が協力することを確保する(2000年度に、経済産業省は20の相談・紛争処理事例について、公正取引委員会と共同で独禁法適用の観点から検討・対処した)。
b. 従前の組織よりも多くの人員を配置された電力市場整備課において、適切な専門性をもった人材及び資源を確保する。
c. 電力市場整備課の独立性を適切な規定により維持する。
2. 2001年1月より、資源エネルギー庁の中に新しくガス市場整備課が設けられ、日本のガス市場の規制に対し責任を有することとなった。日本政府はこの新しい部署がガス規制に関し効果的で独立した権限を有するよう、引き続き以下を含む措置を講ずる。
a. ガス輸送ネットワークへの公正で開かれたアクセスを促進すべく、ガス市場整備課と公正取引委員会が協力することを確保する。
b. ガス市場整備課において、適切な専門性をもった人材及び資源を確保する。
c. ガス市場整備課の独立性を適切な規定により維持する。
C. 競争政策の保護
1. 公正取引委員会は、日本の電力又はガス市場へのアクセスを、競争を実質的に制限したり、市場支配力を維持・拡大するような方法で妨げるような排他的行為に対し、独占禁止法及び関連するガイドラインを運用する。「適正な電力取引についての指針」及び「適正なガス取引についての指針」の遵守を確保すべく、電力及びガス市場は積極的に監視される。経済産業省及び公正取引委員会は、競争に関する問題が生じるような行動のタイプについての経験を積むに従い、適宜、両ガイドラインを拡張・明確化する。
2. 2001年4月、公正取引委員会は、審査局内に、IT・公益事業タスクフォースを設置したが、同タスクフォースは、他の分野の中でも、電気及びガス分野における独占禁止法違反被疑事件に焦点を当てる。このタスクフォースは、審査長1名及び幾人かの審査専門官により構成され、彼らは必要な場合、公正取引委員会の審査局以外の部署の職員や公正取引委員会の外部の専門家と協力する。
3. 独占禁止法に照らし、公正取引委員会は、電力及びガス市場を含むいかなる市場においても、反競争的な影響を引き起こす可能性のある合併及び資産取得について厳格に審査する。
D. パブリック・コメント手続
エネルギーに関する政令、省令、告示及びその他の手段の実施に際しては、経済産業省は可能な限り30日間、もし適切かつ可能であればより長い期間のパブリック・コメント期間を設ける。
E. 電力
日本政府は、電力市場における公正かつ効果的な競争の確保のための規制改革措置を実施しており、また今後とも引き続き実施していく。
1. 経済産業省は、競争的電力市場の実現のためには、送電線網への非差別的アクセスが必要であること、またそうした非差別的アクセスを実現し監視するためには、送電部門の活動を発電部門その他の活動と区別することが必要であることを認識している。2001年度中に、経済産業省は、
a. 2000年度に電力会社が実施した託送サービス収支の公表を確保する。
b. 託送サービスの収支を含む2000年度の電力会社の経理を監査し、託送料金が適切であるかどうかについての評価を行い、その評価の結果を公表する。
c. 非差別的アクセスの実現のため、託送サービスの中立性と透明性についての監視を続ける。
2. 経済産業省は、送電容量の拡張が必要な場合を含め、新規参入者からの託送申込みを公平かつ透明に処理することが競争的な電力市場にとって必要であることを認識している。経済産業省は、
a. 電力会社が、新規送電線の相互接続要件に関する情報を含む情報提供により、これらの申込みに対して公平かつ合理的に迅速な方法で検討し応答するよう、要請し続ける。
b. より競争的な電力市場の発展に伴う、新規送電線の建設の必要性を監視する。
3. 日本の電力市場における新規参入は、日本政府の電力価格の低廉化、効率性・革新性の増進という目標の実現に資するものであると認識し、経済産業省は新規参入の促進のために以下を含む措置を講ずる。
a. 新規の発電所や送電線のタイムリーな建設を確保するため、規制の公共目的を維持しつつ、既存の規制基準について必要に応じ研究する。
b. 市場への新規参入に関心を有する当事者からの相談に積極的に応ずる。(経済産業省は新規参入を含む44の事例に助言しており、その情報はインターネットで入手可能)
c. 新規参入者を含む様々な市場参加者間の紛争を調停するために最近確立された、公式で包括的な紛争処理メカニズムを通じ、市場における全ての需要家と競争事業者の公平な取扱を確保する。
4. 日本政府は、電源開発株式会社(EPDC)の民営化が、独占禁止法及び電力市場の規制改革に関する日本政府の政策に一致する方法で実施されるべきであり、競争を妨げるような方法で実施されるべきでないことを認識する。加えて、日本政府は、電源開発株式会社の設備の取得が独占禁止法による審査の対象となり得ることを確認する。
5. 経済産業省は、電力市場における市場参加者が入手可能な情報の質と透明性を向上させるための様々な施策を実施している。それらの措置は以下のものを含む。
a. 2001年に規制部門から自由化部門への内部補填を防止するための第三者監査を実施し、自由化部門において赤字が発生していた場合には、その結果を公表する。
b. 企業と消費者が、電気料金削減に関する規制改革の進展状況を把握しうるよう、各供給区域ごとの電力価格の半年毎の調査を引き続き実施する。さらには、経済産業省は、現在の規制改革が競争を実現している程度を評価するために、その調査結果を分析する。
6. 経済産業省は、電力市場における規制改革の進展状況について、新規参入の実態を含めた評価を2003年までに行い、公表する。
F. ガス
日本政府は、ガス市場における公正かつ効果的な競争の確保のための規制改革措置を実施しており、また今後とも引き続き実施していく。
1. 経済産業省は、十分に発達したガス輸送システムを伴った、公正で透明なガス市場の実現が、日本の電力市場での効果的な競争に貢献しうるということを認識する。
2. 経済産業省は、エネルギー市場の成長に、輸送インフラの発展が果たす役割を認識し、新規のパイプライン及びLNG設備の立地に必要な主要な規制のリストを公表する。
3. 競争的ガス供給者によるガス輸送サービスへの非差別的アクセスを確保することを容易にするため、経済産業省は、大手一般ガス事業者がそのガスパイプライン網へのオープンアクセスに当たっての公正で透明な条件を設定することを定めた規則を2001年1月に設定した。
4. 経済産業省は、包括的で透明な手法で日本のガス市場に関する研究を開始した。例えば、
a. ガス市場の透明性と効率性を増大させうる幅広い課題を調査することを目的とした「ガス市場整備基本問題研究会」を2001年1月に設置した。(研究会は、学会及び産業界の多くの有識者から構成され、その審議は公開される。)
b. 諸外国における自由化の状況についての研究を実施した。
5. 経済産業省は、2001年1月に制定・公表した、ガス料金算定方法、既存事業者所有のガスパイプラインに関する託送料金算定手法、その他の条件等に関する規則を実施する。
6. 経済産業省は、紛争処理ガイドラインに基づき、公正かつ公平な手法で、新たに規制緩和されたガス市場に関連する苦情に対処する。
7. 経済産業省は、ガス市場への参入者が利用できる情報の質と透明性を改善する措置を、今後とも講じる。これらの措置には次のものを含む。
a. 経済産業省の料金制度分科会において、料金の算定メカニズムとその透明性に関する研究を実施し、その結果を2000年11月に公表したこと。また、
b. 2001年1月に制定し公表した、ガス料金、託送料金、その他条件等に関する情報公開ガイドラインを速やかに実施すること。
8. 経済産業省は、ガス市場の規制改革の進展状況について、新規参入状況を含めた評価を2003年までに行い、公表する。
V. 金融サービス
A. 特定の措置
我が国の金融システム改革プログラム(日本版「ビッグ・バン」)は、1996年11月に橋本総理のイニシアティブにより開始され、フリー、フェア、グローバルの理念の下に抜本的な金融自由化・規制緩和を行うことにより、我が国金融市場の活性化を目的としている。全ての措置が予定通り実施に移された。
昨年10月12日の日本政府への米国政府規制改革要望書におけるに項目についても、下記に記述してあるとおり、目論見書の交付の電子化の導入がすでに措置済である他、確定拠出年金制度の導入及び、金融機関等による申請・届出等手続をインターネットを利用して行い得る制度の整備については今後措置を実施する予定であり、さらなる我が国金融市場の活性化を目指している。また、自主規制機関等が会員に関する政策、法令により付与された処分権限に係る審査基準、処分基準を定める場合についても、政府のパブリック・コメント手続に準じた手続を経ることが望ましい。例えば日本証券業協会や証券取引所はパブリック・コメント手続を既に実施しており、金融分野における透明性の向上が図られている。
1. 過去の共同現状報告において報告された措置に加え、以下の措置が実施済みである。
a. 銀行子会社による保険への参入の解禁(2000年10月1日)
b. 銀行による保険の窓口販売の解禁(2001年4月1日から一部商品を解禁)
c. 特定目的会社(SPC)による流動化対象資産を拡大するとともに、より使い勝手のよい制度に改める等の制度の整備(2000年11月30日関係法令施行)
d. ファイアー・ウォール規制の適用除外の承認基準の明確化(2000年6月30日府令、ガイドライン改正)。申請手続は2001年の早期に完了しており、本手続の下で最初の承認が既に行われている。
e. 有価証券の目論見書の交付等の電子化の導入(2001年4月1日)。有価証券報告書、半期報告書は電子的に提出することができる(2001年6月1日以降)。有価証券届出書については2002年6月1日までの政令で定める日に実施予定。
f. 年金福祉事業団の承継基金(年金資金運用基金)について、資産運用を委託している信託銀行及び投資顧問会社の間で運用委託先を変更する場合において、証券現物移管を可能とする規定を整備、及び、年金資金運用基金の資金運用における投資顧問会社を利用する際に、リミテッド・パートナーシップ以外の新たな信託スキーム(特定包括信託)を導入(2001年4月1日)
g. 株価指数に連動する現物出資型上場投資信託(ETF)の導入(2001年6月6日)
h. 金融庁は、昨年の共同現状報告に記述のある、現行の法令解釈等の照会に対する回答制度の効率的な実施に関し、意欲的に作業を行ってきた。2001年3月27日のいわゆる日本版ノーアクションレター制度に係る閣議決定を踏まえ、金融庁は今年度中の可能な限り早期に新たな制度を導入する。
2. さらに、引き続き金融市場の改革を推進していくため、今後以下の措置を実施する予定。
a. 銀行本体の信託業務への参入の解禁(「銀行法等の一部を改正する法律案」は、国会提出済。この部分については、2001年10月1日を施行日としている。)
b. 異業種による銀行業参入に対応した規定の整備(「銀行法等の一部を改正する法律案」は、国会提出済。公布日から6ヶ月以内の政令で定める日を施行日としている。)
c. CPのペーパーレス化。「短期社債等の振替に関する法律案」は国会を通過しており、2002年4月1日から施行予定。日本政府は、他の投資商品のペーパーレス化について検討を行う。
d. 確定拠出年金制度の導入(確定拠出年金法が成立。2001年10月1日施行。)
e. 金融機関等による申請・届出等手続について、インターネットを利用して行い得る制度、システムを整備(平成15年度までに実施予定)。
B. 簡保(簡易保険)
1. 日本政府は、2000年7月に発表した第三回日米共同現状報告IV. B. 2. を再確認する。
2. 簡易保険の将来については、簡易生命保険法の目的規定及び行政改革プログラム(1996年12月25日閣議決定)の基本的な考え方を踏まえ、1998年の中央省庁等改革基本法により、2001年1月に総務省と郵政事業庁へ事業が引き継がれ、今後、総務省と新たな公社へ事業が引き継がれ、実施されることとなっている。
総務省は、現在、新たな公社制度において適用される簡易生命保険法の枠組みについて検討中である。
3. 総務省は、簡易保険が国民の福祉の増進を図る旨を規定する簡易生命保険法の規定及び簡易保険制度の変更について外国保険事業者を含む民間団体が有する関心を踏まえ、新たな公社への移行が影響を与える簡易生命保険法における簡易保険商品に係る規定の改正案の作成に関し、法案の国会提出に先立って、広く一般に情報を提供することの重要性を認識している。
4. 上記の作成に関し、総務省は、外国保険事業者を含む民間利害関係者に対し、要請に基づき、意見を述べ、総務省と意見交換を行う機会を与える。
VI. 住宅
A. 二次的住宅市場
1. 情報アクセス国土交通省は、中古住宅価格査定に用いる新たな標準化モデルに住宅の維持・
改修の程度が反映されるよう、財団法人不動産流通近代化センターが行う戸建及びマンションの中古住宅の価格査定マニュアル改訂に対し、引き続き支援を行う。
2. 維持・改修の便益のプロモーション国土交通省は、従来から、中古住宅の維持・改修を行うことが如何に中古住宅の質の向上のためになりうるかについて様々な機会を通じて訴えている。これらの機会には、毎年国土交通省が主催し地方自治体と開催する全国規模の住宅月間があり、今年度は2001年10月に行われる。耐久性の向上は、環境に便益をもたらすのと同様中古住宅の質を向上させ得る。国土交通省は、中古住宅市場の整備のため種々の施策について考慮を続ける。
3. 融資(住宅金融公庫及び登録免許税)中古住宅の登録免許税に関しては、税率は50/1000から新築住宅と同様に3/1000(移転登記の場合)に軽減されている。中古住宅売買に対する同制度の重要性に鑑み、当該特例措置について、日本政府は、適用期限を2003年3月31日まで延長した。住宅金融公庫法の改正を経て、2000年度より、一定の良質な中古マンションについては償還期間を30年から新築と同じ35年に、同様に一定の良質な中古戸建て住宅については償還期間を20年から25年に延長した。
B. パブリック・コメント手続
国土交通省は建築基準法及び住宅の品質確保の促進等に関する法律に関する政令、省令、告示その他に関して可能な限り約30日の意見募集期間を取ることとし、適切かつ可能であればそれ以上の期間を取ることとする。
C. 建築規制及び基準
1. 米国政府は農林水産省と協力し、農林水産省が米国の林産物格付制度が日本農林規格(JAS)と同等であるかどうかを確認するため、必要な書類の作成に取り組んでいる。米国政府はその書類をかなり近い将来に提出するつもりである。農林水産省は、同等性審査を行うのに必要な書類の提出を受けて、可能な限り早く同等性に関する決定を行うため、誠意を持って努力する。
2. 建築基準の透明性を確保し、新しい製品や工法の導入を可能にし、客観的性能基準に基づくことを認識し、旧建設省は1998年に建築基準法を改正し性能基準を導入し、2000年6月1日に施行した。改正法の実施を円滑化するため、日本政府は耐火試験法について出版物を出版し普及をはかる。
3. 2000年の11月に旧建設省は、特定行政庁と指定確認検査機関に対し、OSBの調整係数に合板と同様の係数を用い、これらの同等性を確認することを通知した。
4. 米国政府と日本政府は、BEC(日米加建築専門家会合)、JAS技術委員会及び林産物小委員会等の場を通じて性能基準、耐火試験方法及び手続きの実施等に関する技術的話し合いを引き続き行う。
VII. 競争政策及び独占禁止法
A. 公正取引委員会の独立性
1. 2001年の省庁再編後においても、公正取引委員会の独立性は、以前と同様に確保されている。
2. 2001年6月26日に閣議決定された「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針(基本方針)」において、日本政府は、新たな省庁体制の中で、公正取引委員会の位置付けについて、規制当局からの独立性、中立性等の観点からよりふさわしい体制に移行することを検討することとされている。
B. 独占禁止法の執行強化
1. 日本政府は、公正取引委員会が独占禁止法違反行為の摘発を効果的に行い得るための、法整備を含めた政策手段を検討する。
2. 公正取引委員会は、2001年2月、2つの作業部会を含む独占禁止研究会を設置した。手続関係等部会は、独占禁止法の執行の改善に係る諸課題を検討している。これら課題には以下のものが含まれる。
a. 課徴金納付命令の対象範囲の拡大
b. 既往の違反行為に対して適正な措置を講じ得る範囲の拡大
c. 勧告及び審判開始決定の実施可能期間の延長
d. 刑事告発手続の整備
e. 海外への書類送達手続の整備
f. 公正取引委員会の審査に協力した事業者や個人に対する減免措置の導入
3. 独占禁止研究会は、2001年秋に、独占禁止法の執行を改善するため、公正取引委員会に対し、報告書を提出する。公正取引委員会は、本報告書及びその他の要素を考慮して、必要な法制化の準備を含めて、適切な措置を採る。
4. 公正取引委員会は、競争の実質的制限を引き起こすカルテルや共同ボイコットのような行為に対して、独占禁止法第3条を適用することを再確認する。さらに、かかる行為が日本における供給量を減らすものであり、その結果、日本における物やサービスの価格に影響を与える場合には、公正取引委員会は、かかる行為の参加者に対し、課徴金納付命令を行う。
5. 公正取引委員会は、すべての経済のセクターにおいて、価格競争を促進する形で独占禁止法の全ての規定を執行する。
C. 入札談合の排除
1. 日本政府は、入札談合に関与した発注者側に対する措置に関し新しい制度の導入を含めた法整備について検討を行う。
2. 公正取引委員会は、入札談合が行政指導に基づいて行われていると分かった場合は、行政指導に関するガイドラインに従って、そのような行政指導を排除し、当該官庁が独占禁止法に相容れない行政指導を行わないことを確保するために、関係省庁とともに活動を行う。
3. 談合の排除を含む、中央政府、政府関係機関及び地方公共団体による公共工事の入札及び契約の適正化を促進するため、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律が制定された。2001年4月1日に施行されたこの法律は、
a. 全ての発注者に、談合の疑いを提起する事実を公正取引委員会に通知することを義務づけ、
b. 中央政府に、閣議決定により、公共工事の入札及び契約の適正化の促進方策についての指針を定めることを求め、
c. 中央政府、政府機関及び地方公共団体が、公共工事の入札及び契約が適正に実施されるよう、教育及び研修その他必要な措置を講ずるように努めることを求め、かつ、
d. 国土交通省、財務省及び総務省に、発注者に対して、指針に従って講じた措置について報告を求め、公共工事の入札及び契約の適正化促進のため、特に必要がある措置を講ずべきことを要請する権限を与えている。
4. この法律に基づき、指針が閣議決定された。この指針は、発注者に対し、以下のことにつき努力義務を課している。
a. 談合の疑いを提起する事実を公正取引委員会に通知する際に従うべき手続を含む要領を作成・公表する。
b. 談合等の不正行為に対する毅然とした態度を明確にし、「指名停止」について、不正行為の再発防止のため、厳正に運用する。
c. 損害額の認定が可能な場合には、談合の結果として被った損害額の賠償を請求する。
d. 談合を組織し、又は幇助することを含む政府職員の違法行為について厳正に対処し、かつ、そのような行為の防止のため、職員の教育、研修を適切に行う。
5. 公正取引委員会と警察庁は、入札談合に係るそれぞれの調査に関する協力問題を含め、どのような協議・協力体制が可能であるか、引き続き検討する。
D. 規制緩和が進行している産業における競争の促進
1. 公正取引委員会は、規制緩和が進行している産業における、競争を促進する上で積極的な役割を果たす。
a. 公正取引委員会は、2001年1月、政府規制等と競争政策に関する研究会が取りまとめた報告書「公益事業分野における規制緩和と競争政策」を公表した。
b. 公正取引委員会は、所掌事務を遂行する上で必要に応じ、引き続き、競争政策の観点から、電気、ガスを含め規制緩和が進行している公益事業における、調査、研究及び政策提言を積極的に行う。
c. 公正取引委員会は、電気通信産業における商慣行に係る独占禁止法のガイドラインを策定中である。公正取引委員会は、ガイドライン原案を今年公表し、成案を公表する前にパブリック・コメントを行うとともに、当該コメントを考慮する。日本語版の公表と同時に、ガイドライン原案の英語訳も公表される。
d. 公正取引委員会の政府規制等と競争政策に関する研究会は、2001年末までに、電気通信と放送の融合分野における競争促進のためのアドバイスを含むことが予期されている報告書を公表する。
2. 公正取引委員会と総務省は、1.c.で述べたガイドラインと一体化するであろう共同ガイドラインの策定を含め、電気通信分野における競争を促進する観点から、協力するための行動をとる努力を行う。
3. 公正取引委員会は、電気通信、電力、ガスなど規制緩和が進行している産業における独占禁止法違反行為に対して審査・執行を行うため、審査局にIT・公益事業タスクフォースを設置した。タスクフォースへは、公正取引委員会のウェブサイト(www.jftc.go.jp/task.htm)を通じて連絡をとることができる。また、独占禁止法違反に係る申告を直接タスクフォースに出すこともできる。
E. 公正取引委員会のリソース増強
1. 2001年度において、公正取引委員会の職員数は、審査活動及び審査能力を強化するため、11名が増員された。この増員分は、主に審査局に配属されることとなる。
2. 2001年6月26日に閣議決定された「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針(基本方針)」において、日本政府は、公正取引委員会の体制を強化し、その機能を充実させ、競争政策を強力に実施することとされている。
F. 競争促進のための実態調査
公正取引委員会は、2001年度に1つ又は複数の分野について実態調査を行う。調査対象分野としては、高度寡占産業を含む可能性がある。
VIII. 透明性及びその他の政府慣行
A. パブリック・コメント手続
1. 日本政府は、「規制の設定又は改廃に係る意見提出手続(パブリック・コメント手続)」を、1999年度初めから実施している。本手続の下で、行政機関は、提出された意見・情報、及び、それらに対する考え方を公表する。意見・情報が要約された形で公表される場合であっても、それらの意見・情報は、原文のままの形で、一定期間、行政機関の閲覧室において、または、その他の形で、国民による閲覧のため公開される。
2. 総務省は、1999年度分に引き続き、現在、2000年度におけるパブリック・コメント手続の実施状況のフォローアップを行っている。今回のフォローアップでは、新たな調査項目として、個々の案件の中で意見・情報の募集期間が28日を下回るものについて、「具体的理由」を追加したところである。総務省は、その結果を近々に公表する。
3. 以下の機関はパブリック・コメント手続を導入することを決定している。(1)日本証券業協会、(2)日本小型船舶検査機構、(3)投資信託協会。日本証券業協会及び日本小型船舶検査機構は、既に右手続を実施している。
B. 「ノーアクション・レター」制度
1. 2001年3月27日、内閣は、「行政機関による法令適用事前確認手続の導入について」、いわゆる「ノーアクション・レター」制度を導入した。この新たな制度の下では、民間企業から府省に対し、特定の事実に関する状況が法令の適用対象となるかどうかに関し、照会を提出することが出来る。各府省は、原則として30日以内に、照会に対し書面で回答し、その回答を公表する。
2. 2001年末までに、各府省は、新たな「ノーアクション・レター」制度の実施に関し、詳細な規則を策定する。
C. 政策評価制度
1. 日本政府は、2001年1月、政府の透明性を向上させ、政府の国民に対する説明責任を徹底し、行政の質を向上させるため、全政府的な政策評価制度を導入した。この制度においては、各府省において政策評価担当組織を設置し、必要性・効率性・有効性等の観点から政策の評価を行っている。さらに、総務省は、政策評価制度を管理する機関として、各府省が行う政策評価の総合性及び厳格な客観性を担保するための評価を行い、各府省に対して必要な勧告を行う。政策評価に関する情報は公表される。
2. 日本政府は、総務省の政策評価の公正性及び中立性を確保するため、外部の専門家からなる政策評価・独立行政法人評価委員会を2001年1月に設置した。
3. 日本政府は、政策評価制度の実効性を高めるとともに、行政の説明責任を更に徹底するため、2001年の通常国会に「行政機関が行う政策の評価に関する法律案(GPEA)」を提出した。GPEAは2001年6月に国会で可決され、政府は2002年4月からGPEAを施行する。
4. 日本政府は、政策評価制度の充実強化のために引き続き努力し、必要に応じて見直しを行う。
D. 規制の新設審査
各府省は、規制の新設について、これを必要最小限にするとの基本的な方針の下に、大臣官房等総合調整機能を有する部局において審査を行うこととする。このため、各府省は、規制の新設に当たり、規制の必要性、期待される効果、予想される国民の負担等のコスト等について検討する。
E. 情報公開
「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」が2001年4月に施行された。さらに、日本政府は、政府の行政改革推進本部の下に設置された「特殊法人情報公開検討委員会」が2000年7月に提出した最終報告に基づく「独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律案」を2001年3月に国会へ提出したところである。この法律が制定されれば、独立行政法人、特殊法人等が保有する情報の公開を求めることが出来るようになる。
F. 民間機関
日本政府は、法律及びこれに基づく政省令並びに条例に根拠を有さずに国民の権利義務を制限するような規制を民間機関に代行させることはない。
IX. 法制度及び法律サービスのインフラ改革
A. 司法制度改革審議会
日本政府は、21世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議するため、1999年7月、内閣に司法制度改革審議会を設置した。同審議会は、2000年11月の中間報告の公表を経て、2001年6月12日、その意見を取りまとめ、内閣に提出した。この意見においては、
(1)国民の期待に応える司法制度の構築
(2)司法制度を支える法曹の在り方
(3)国民的基盤の確立
を三つの柱として掲げ、司法制度改革に関する広汎な提言を行っている。
B. 法律サービス:日本弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働
1. 日本政府は、国際的な法律サービスに対する需要が日本国内において著しく増加していること、及び国際ビジネスのニーズを満たすことができるだけの法律サービスの十分な基盤について懸念が表明されてきたことを認める。日本政府はまた、弁護士と外国法事務弁護士の提携・協働を更に推進することの重要性を認める。
2. 弁護士と外国法事務弁護士の提携に関して、司法制度改革審議会はその最終意見の中で、次のように勧告した。
a. 日本政府は弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働を更に推進する見地から特定共同事業に関する要件を緩和すべきである。また、
b. 外国法事務弁護士による日本弁護士の雇用を禁止する規制の見直しに関しては、日本政府は国際的議論の動向を考慮しつつ、将来の課題として引き続き検討すべきである。
C. 司法制度改革の推進体制
司法制度改革実現のための方策の具体化を検討し、3年以内を目途に関連法案の成立を目指すなど所要の措置を講ずるため、日本政府は内閣の下への司法制度改革の推進体制の設置を準備している。
D. 司法制度改革審議会意見書
司法制度改革審議会はその最終意見において、日本政府に対し、21世紀の我が国社会における司法のニーズに応えるための必要な措置を取るべきとしている。日本政府はこれらの提言を実現するための施策を早期に行うこととしている。
提言の中には次の様な項目がある。
1. 法曹人口の増加について
a. 現行司法試験合格者数の増加に直ちに着手し、2004年には合格者数の年間1,500人達成を目指す。
b. 法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況を見定めながら、2010年頃までには新司法試験の合格者数の年間3,000人達成を目指すべきである。
2. 民事裁判の充実・迅速化
a. 第一審における審理期間を半減すること
b. 訴訟当事者が早期に証拠を収集するための手段の拡充
c. 計画審理の推進
d. 裁判官の増員
e. 法的サービス供給のための弁護士の体制の改善
3. 東京・大阪両地方裁判所の知的財産権を扱う専門部を実質的に「特許裁判所」として機能させること
4. 民事訴訟の提訴手数料の低額化
5. 仲裁法制の整備6. 行政事件訴訟法の見直しを含めた行政に対する司法審査の在り方に関する総合的多角的な検討の開始
E. 訴訟における行政文書の利用
2001年3月、日本政府は、公務員又は公務員であった者が所持する文書について、民事訴訟法第220条において設けられている文書提出義務の範囲を拡大する法案を国会に提出した。
F. 意見交換
日本弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働をさらに促進し、円滑化するため、日本政府は日本弁護士連合会、外国法事務弁護士協会及び在日米国商工会議所(ACCJ)と引き続き意見交換を行う。
X. 商法
A. 法制審議会会社法部会の「商法等の一部を改正する法律案要綱中間試案」
1. 2000年に日本政府は商法改正へ向けた主要な作業を開始した。
2. 法務省の法制審議会(以下「審議会」という。)会社法部会は、2001年4月18日に、会社法の抜本改正を提案する「商法等の一部を改正する法律案要綱中間試案」(以下「中間試案」という。)を公表し、パブリック・コメントの手続きを行った。
3. 中間試案においては、以下の提案が盛り込まれている。
a. ストック・オプションの付与対象者及び会社が発行できるストックオプションの限度枠に対する規制を撤廃すること
b. 譲渡制限会社における授権株式数に係る制限を撤廃すること
c. 譲渡制限会社が数種の株式を発行している場合において、ある種類の株主に一人又は数人の取締役を選任することができるようにすること
d. 議決権なき種類の株式の総数に係る制限を、発行済株式総数の二分の一まで引き上げること(現在は発行済株式総数の三分の一とされている)
e. 監査役を置かなくてよいこととし、代わりに、会社の業務を執行する者を執行役として位置付け、過半数の社外取締役からなる監査委員会、指名委員会及び報酬委員会を設ける会社システムを採用するという選択肢を認めること
4. 中間試案について提出されたパブリック・コメントに十分な配慮を行った上で、審議会は、2001年9月に、株式及びITに関連する事項についての法律案要綱を答申するとともに、2002年2月にその他の事項についての法律案要綱を答申することが予定されている。
5. 日本政府は、2001年後半に臨時国会が召集されれば、当該臨時国会に商法の一部を改正する法案を提出する予定である。当該法案においては、以下の事項に関する規定が盛り込まれる。
a. ストックオプションの付与対象者及び発行限度枠に関する規制を見直すこと
b. 株主総会の招集通知、議決権行使等、従来書面等で行うこととされてきたものについて、インターネット等電子的手段を通じて行うことを可能とするよう措置すること
6. 日本政府は、2002年の通常国会に、審議会の答申に基づいて策定された広範な内容からなる商法の改正案を提出する。当該改正案には、会社に対して、監査委員会等の委員会を設けるとともに会社の業務を執行する者を執行役として位置付け、そのような場合には監査役を置かなくてよいこととする選択肢を認めることが含まれる。
7. 日本政府は、上記の新しい制度の導入に加えて、特定の会社に一人又は数人の社外取締役を置くことを義務づけるなど取締役会の監督機能の強化のための所要の措置を導入の可否を含めて検討するものとする。
8. 審議会は、国際的な企業実務家から表明された懸念を踏まえ、外国会社は、当該会社と連帯して厳格な責任を負う代表者を選任して登記しなければならないとする中間試案における提言を見直すものとする。
9. 中間試案について提出されたパブリック・コメントについて、法務省は、意見の提出者が反対しない限り、当該コメントを公表するか又は何らかの形で公の場でのレビューに付すものとする。
XI. 流通
A. 通関・輸入手続
1. 簡易申告制度日本政府は、貨物の日本への輸入手続を迅速化するために、簡易申告制度を含む種々の措置を採用してきた。2001年3月より、承認を受けた輸入者が、指定を受けた貨物について、法令遵守の確保を条件に、輸入申告と納税申告を分離し、納税申告の前に貨物を引き取ることを可能とする簡易申告制度を導入し、4月より本制度を利用した輸入申告が開始されている。
2. Air-NACCS
a. 通関情報処理センターは、2001年10月稼動予定の新Air-NACCSに係る利用料金案について、稼動に先立つ1年以上も前から全利用者に対して説明を行っている。
b. また、センターは、2001年3月に、新料金案に対する利用者の一層の理解を求めるとともに、料金設定に係る手続きの透明性を図る観点から、いわゆるパブリック・コメント手続を実施した。即ち、新料金案はもとより、料金設定の考え方、設定の基礎となる経費等をホームページ上で公表した上で全利用者から意見を求め、提出された意見及びそれに対する回答についても公表したところである。
c. 更に、利用料金に対する利用者の関心が高いこと、利用料金は円滑なシステム運営を目指す同センターの安定運営にとって極めて重要な事項であることに鑑み、同センターは、2001年6月、料金について利用者間で十分議論するために、委員会を設立した。委員会は、利用費用の増加が見込まれる利用者の代表を含んでおり、利用料金体系に関する実際的な勧告を行う。センター及び委員会の委員は、新Air-NACCS導入までにその作業を終了し、勧告が十分に扱われることを期待する。
B. 大規模小売店(大店立地法)
経済産業省は、一貫性があり、透明で予測可能な大店立地法の施行を円滑化するため、以下の措置を継続する。
1. 経済産業省は、地方自治体による大店立地法の運用が法の目的を損なうものとならないよう注視し、地方自治体に対する説明会及びその職員に対する実務面の研修を通じて情報提供を行う。経済産業省は引き続き、地方自治体に対し法の施行や相談窓口の役割に関する必要な情報提供を行う。
2. 経済産業省は、昨年開設した相談室を通じ、今後とも同法の適用に関する関係者からの苦情を受けつけ、その解決の円滑化を行う。
C. 支配的企業が市場をコントロールする力を有している分野における競争
日本政府は、流通分野において競争が促進されることの経済的な利益について認識しており、事業者間又は事業者団体で輸入品、あるいは他の競合商品の排除を目的とした協定を結ぶことは、競争を害し、我が国独禁法違反となることを確認する。日本政府は、板ガラス分野も含め、いかなる高度寡占市場においても、もし仮にそのような協定が存在するのであれば、反競争的慣行に関する具体的事実を摘示した上で、公正取引委員会に申告するよう、事業者・外国政府に対して勧奨する。
経済産業省では、流通分野における競争の確保に資するよう、経済構造改革を引き続き推進する。
「強化されたイニシアティブ」の下での米国政府による規制緩和及びその他の措置
I. 規制緩和・競争政策およびその他の措置
A. 貿易投資関連事項
1. ヒルマー・ドクトリン
a. 米国政府は、特に、ジュネーブの世界知的所有権機構で開催されている実体的特許法調和に関する進行中の協議に関連して、ヒルマー・ドクトリン及び米国特許法102条(e)に基づくその他の関連事項についての日本の要望を引き続き検討する。
b. 米国政府は、先願主義への移行、早期公開制度及び再審査制度のさらなる改善、並びに特許協力条約(PCT)の実務に整合した発明の単一性に関する規則の採用についての日本の要望に対し、引き続き十分に考慮することを確保する。
2. バード修正条項
a. 米国政府は、日本政府と、日米規制緩和対話の4年目の対話において、バード修正条項に関し、幅広い貿易政策上の観点から議論を行った。
b. 米国政府は、バード修正条項に関し日本政府等の9カ国のWTO加盟国政府と、DSU第4条及びGATT第22条に基づく協議を、2001年2月6日ジュネーヴにて行った。日本を含む9カ国の政府は、米国政府に対して、バード修正条項のWTO協定との整合性に関する懸念を表明した。
c. 米国政府は、2001年6月26日付の官報で法施行規則案を発表した。米国政府は、日本政府とバード修正条項に関する意見交換を今後も継続する。
3. エクソン・フロリオ条項米国政府は、エクソン・フロリオ条項に関して、就中規制の予見可能性、完了した投資の法的安定性、デュープロセス確保という観点から、日本政府が有している懸念を認識する。米国政府は、日本政府との会合及び質問に対する書面の回答においてこれらの懸念に応える努力は行った。米国政府は、今後のエクソン・フロリオ条項の運用に当たっては、日本政府の懸念も考慮に入れつつ、WTOルールとの整合性に配慮することとする。
B. 流通
1. 通関米国政府は、日本政府と協力して、2001年末までにWCO常設技術委員会で開発された通関時間調査ガイドラインに基づき通関時間調査方法の検討を行う。
2. 酒類販売免許米国政府は、カリフォルニア州の酒類管理法23398.5に規定されている韓国の「soju」と日本の焼酎の取扱いに関する問題について、カリフォルニア州のアルコール・飲料管理当局との対話を継続している。カリフォルニア州のアルコール・飲料管理当局は、以下のように法律の文言を解釈している。
a. この規定により販売されている「soju」は、米国に輸入され、アルコール分が24%以下で、農産品から製造されたものでなくてはならない。
b. 輸入されたものでなくてはならないが、「soju」がどこで製造あるいは瓶詰めされたかに関する制限はない。
c. 上記とは逆に、製品が「”Korean”soju」であるとラベルに表示することは法律上の要件ではない。
d. 23398. 5の規定上、ビール・ワイン免許で販売される「soju」に関し、韓国語の「soju」の代わりに日本語の「焼酎」が使用されうるかどうかに関しては、規定としては、ビール・ワイン免許の保有者は「soju」を販売することが認められる、というものである。「soju」という単語に代わる派生語や綴りを使用することはできない。
C. 領事事項
1. 米国政府と日本政府は、領事事項に関する懸念事項に対応しうる措置についての議論を継続する。
2. 日本政府は、一般的に、特定の分野の米国の移民関係の規則・規制に関する自らの見解を知らしめるために、既存のパブリック・コメント手続を利用できる。詳細は司法省移民帰化局のウェブサイト(www.ins.usdoj.gov)にある。
3. 米国政府はH1-Bビザ取得のためのプロセスを改善し、手続全体を簡素化するために可能な措置について検討している。米国政府は、所定の手数料を支払えば移民帰化局が15暦日内に当該申請を処理することを保証する「雇用目的の申請に対する特別処理サービス」を開始した。移民帰化局は、2001年7月30日までに本サービスをH1-B申請者にも拡大する予定である。
4. 到着・出発記録、または「I-94」に関し、移民帰化局は滞在許可期間の延長申請の処理期間の短縮化に努めている。現在行われている「入国管理に係る便益再生のためのプログラム」の一部として、移民帰化局は滞在延長の申請処理の簡素化にも努めている。さらに、移民帰化局は「I-94」の延長申請を期限切れの一年前から受け付けることを可能とする措置を検討する。
5. 日本人を含め、合法的に滞在する全ての外国人は、一つの州の運転免許証取得のための要件を満たしている場合には、米国の全ての州及び管轄地域において運転免許証を取得することができる。しかし、殆どの州が、申請者が社会保障番号を所持している場合にはその提示を求めているため、社会保障番号を所持していないと申告する申請者は、社会保障局において社会保障番号を申請するようにとの指示を受ける可能性がある。申請者が社会保障番号に不適格であるような州においては、社会保障局はその旨を示したレターを外国人申請者に直ちに発出する。日本人申請者は、そのレターを社会保障番号の代わりに州の運転免許証発行当局に対して提示できる。
6. 財務上及び納税上の目的のために納税者証明を求める日本人であって、社会保障番号に不適格である者は、米国内国歳入庁からの個人納税者番号を申請することができる。本人が内国歳入庁を訪れるか内国歳入庁の無料番号(1-800-829-3676)に電話して、様式W-7「個人納税者証明番号申請用紙」を要請することができる。
7. 米国の多くの行政庁と民間企業は、社会保障局が法により社会保障番号の割り当てを許されていない個人からであっても、また当該情報が、要求されるサービスの提供に必要とされていない場合であっても、個人に対して多くの目的で社会保障番号を要求する。この理由から、社会保障局は、社会保障番号を求められた日本人(社会保障番号に不適格である者)が当該行政庁又は民間企業に対して自分が社会保障番号を所持していないことを知らせるとともに、求めるサービスの目的のために別の身分証明の手段を用いるよう求めることを勧める。社会保障局は、社会保障番号に不適格であることをそれらの行政庁や民間企業に周知させ、別の身分証明の手段を受けいれるよう指導する。社会保障局は、社会保障番号に関する合法的滞在者からの苦情を受け付けて責任を持って対応するための窓口を設けることを検討する。
8. 社会保障局及び州は、社会保障番号なしに運転免許証及びその他のサービスや文書を取得することに係る州毎のプロセス及び手続に関する情報を引き続き提供する。
D. 法律サービス
米国においては、23の州とコロンビア特別区が、外国法コンサルタントについての規則を有している。国際ビジネスの促進の観点から、米国政府は全ての州が、外国法コンサルタントについての規則を採用することを引続き支持する。アメリカ弁護士会(ABA)は、本件に関する日本政府の要望を認識している。
E. 製造物責任(PL)改革
米国政府は、日本政府が製造物責任(PL)改革に関心を有していることを認識し、この問題に関し日本政府と引続き意見交換を行う。米国政府は、製造物責任(PL)改革のいかなる過程においても、外国企業を不公平に扱う意図はないことを確認する。
F. 競争政策
司法省は、継続されている反トラスト法適用除外の適否について、引き続き検討して意見を表明し、かつ、当然のものと思われている反トラスト法適用除外制度について、その廃止に努める。この意見についてのいかなる公表文書も日本政府にとって入手可能になる。
II. 住宅
A. 規格/基準
1. 米国政府は地方自治体と関係団体に対し、試験方法の開発・改良にあたりISOの試験方法を考慮することを引き続き奨励する。米国試験材料協会(AmericanSocietyforTestingandMaterials:ASTM)内で、特定のISO規格(例えばISO834、ISO1182)の参照と実施を円滑にするための文言の強化を行っている。
2. 米国政府は米国内の評価機関(例えばICBO評価サービス(EvaluationService:ICBOES)に対して、日本の評価機関との相互認証の機会について通知した。
3. 米国政府は国際基準評議会(InternationalCodeCouncil:ICC)がICCの建築物及び設備に関する性能基準の開発のために行っている努力に対し、支援を行う。
4. 日本政府と米国政府は性能基準、耐火試験方法及び手続きの実施等に関する技術的話し合いを引き続き行う。
B. メートル法の採用
1. 米国政府は、民間部門、連邦及び州政府レベルにおけるメートル法の使用を拡大、促進するための措置を引き続き講じる。また、当面の間、米国は以下の暫定的措置を講じている。
2. 商務省の国立標準研究所(The National Institute of Standards and Technology : NIST)及び計量に関する全米会議(NCWM)は、2000年1月1日以降、米国の消費財にメートル法のみの表示を認めるという改正された包装・表示に関する統一規則(UPLR)の完全実施に関する調整を行った。
3. 公正包装及び表示法(FPLA)の適用を受ける製品にメートル法のみの表示というオプションが認められるようにするため、同法を改正するための法案が議会への提出に向け準備されている。
III. 電気通信
A. 米国無線分野の免許付与
米国政府は、無線免許を保有する事業者への直接投資規制に関する日本政府の懸念に対し、外国事業者は、100パーセント保有する米国会社(subsidiaries)を通して(間接的に)無線局免許を保有することが可能であり、現に保有していることを確認した。米国政府は、この問題についての日本政府との対話を継続する。
B. 外国事業者の認証と免許付与
米国政府は、いくつかの基準の明確化及び国際サービスを提供する事業者への支配的事業者規制の適用を含む、米国の認証・免許付与の審査基準の透明性に関する日本政府との対話を継続する。
C. 米国無線サービス市場へのアクセス
米国政府は、無線免許保持者に対する投資に関する制限案について、日本を含む貿易相手国の懸念を考慮してきた。
D. 州レベルの規制
米国政府は、免許付与手続きを含む州レベルの規制の在り方及び州ごとの規制の調和に関する日本政府の関心について、日本政府との対話を継続する。
E. 州際アクセスチャージ
米国政府は、LRICあるいはその他の規制政策手段を使用する目的を、接続料が競争市場であれば設定されるであろう価格を反映することを確保するものと見ている。米国において取られた措置の結果として、過去数年間でLATA間通話着信の料金は大きく低下した。米国政府は日本政府に対し、連邦及び州レベルの両方におけるコストベースの規制手段(LRICを含む)の実施に関する情報、CALLSアクセスチャージ提案への参加に関する情報、及びLRIC方式に関する司法審理状況に関する情報を提供する。
F. コスト算出モデルの開発及び採用の透明性
FCCの更なるLRICモデルの開発のためのプロセスは、パブリック・コメントを取り入れた透明なプロセスを経たものであり続ける。FCCが外部のモデルを採用する場合は、そのような採用もパブリック・コメントの対象となる。
G. インターネットサービスに係る国際回線費用負担の在り方
本年、米国National Academy of Scienceは、米国におけるインターネットの発展の方向性を議論する“The Internet's Coming of Age”と題する報告書を発行した。この報告書は、www.nap.eduで入手できる。とりわけ、その報告書は、現在のFCC及び反トラスト当局によるインターネットのモニタリングのレベルは適切であり継続されるべきであると結論している。米国政府は日本とともに、インターネットの競争状況に関するデータ収集への参加を含む、インターネット関連の事項に関するAPEC及びITUの議論に積極的にこれまでも関わってきたし、これからも関わっていく。
H. ベンチマークに関するFCC規則
米国政府は、コストを超える計算料金の問題に対処しようとする多国間フォーラムに引き続き積極的に参加し、この問題を解決するための確かな努力に貢献し、そのようなフォーラムにおける議論の進展を尊重する。
IV. 医療用具・医薬品
A. 製造品質管理規則(GMP)
食品医薬品庁(FDA)と厚生労働省は、GMPについて、相互承認と同様の協力的な枠組みに向けて積極的に活動してきているところである。2000年12月、FDAと厚生労働省は、医薬品GMPの査察報告書及びその他関連の情報を交換していくという協力関係について、書簡を交換した。この書簡においては、以下の事項を行う旨の両者の意志が表明されている。
1. 求めに応じて、査察報告書の写し、製品の試験結果を提供する。
2. 日本及び米国に存在する医薬品製造施設一覧を作成し、改訂する。(それぞれの施設で製造された医薬品のリストを含む。)
3. 医薬品の回収に係る情報を提供する。
4. 医薬品の品質に係る情報の求めに対応する。
5. 情報交換の意義及び進捗状況を評価し、少なくとも3年ごとに1回は当該情報交換について議論する。
FDAは、医療用具のGMPに関しても、厚生労働省と、情報交換及びその他の協力を続けていく。FDAと厚生労働省は、当該活動の重要性を認識する。協力の手続きについて検討をすすめ、技術的な議論を一層進めていく。
B. 臨床試験の実施の基準(GCP)
FDAは、特にICHにおけるGCPにかかる協力活動を続けていく。またFDAは、GCPに係る情報について、日本を含む外国規制当局から要請があった場合には、適切に回答することを継続していく。厚生労働省職員が米国を訪れた場合には、FDAは情報交換の機会を提供する用意がある。
C. 医薬品の着色剤の変更に関する必要データ
FDAは、着色剤の変更に関する生物学的同等性試験については、ケースバイケースで不要とされる場合があることを確認する。
D. 輸出医薬品証明
FDAは連邦広報に次の提案を公表したところである。FDAの規制をうけるべき製品であってFDAにより未承認の製品の米国国外への輸出は、当該国の法律に抵触しない旨を米国内の企業の責任者が確約すれば差し支えないとすること。
E. 医療用具GMP査察
一般則として、FDAは、医療用具の原料及び原材料の供給会社を査察することはない。品質管理体制の規制においては、当該原料の供給会社が医療用具製造会社の定める規格及び品質要件に適合している原料を製造できる能力があることを、医療用具製造会社が評価することを義務づけている。FDAは、医療用具製造企業に原料供給企業を査察によって評価することを特に求めていない。
F. 化粧品の着色剤規制
FDAの「Permanently Listed Cosmetic Color Additives」及び「Provisionally Listed Cosmetic Color Additive」に掲載されている、FDAの証明が必要な、化粧品に用いる着色剤については、ロットごとにFDAによる証明を受けなければならない。化粧品企業が、FDAにより証明を受けた着色剤ロットを使用する限りにおいては、当該化粧品企業は証明を受けるために当該着色剤をFDAに提出することを免除される。
V. 金融サービス
A. 銀行部門
1. 金融持株会社(FHC)規制
金融制度改革法(グラム・リーチ・ブライリー法)においては、内国民待遇の原則及び競争的機会の均等法則に基づいて、外国銀行に対しFHC傘下の米国銀行と同等の資本及びマネージメント基準を満たすことを要件としている。この基準はすべての外国銀行に対して無差別に適用される。FRBは、FHCの認可となるための基準及び手続に関する最終ルールを発行した。レバレッジ・レシオは、外国銀行が「well-capitalized」の要件を満たすかどうかを判断する際の検査過程から除外された。現在の検査過程においては、tier1及びバーゼル合意に基づき計算された総資産高のみを参考としている。FRBは、外国銀行が「well-capitalized」の米国銀行と同等の資本を所有しているかどうかを判断する際の1つの要素として、引き続き外国銀行のレバレッジ・レシオを考慮に入れる。
2. セクション20企業
いわゆる「セクション20」企業に関して米国は、バーゼル合意に完全に合致した基準を適用している。これらの自己資本のレベルは米国及び外国銀行の双方に対し等しく適用され、内国民待遇とも合致している。健全性規制との合致から、FRBはいかなる申請者に対しても、自己資本、収益性、リスク集中度、流動性、資産価値、貸倒引当金の充足度など、すべての関連要素を含めた全体的な財務状況を査定する必要がある。
3. 自己資本等価性預金(Capital Equivalency Deposit)
ニューヨークにおける資産担保差入れの対象となる負債から買戻条件付取引が除外された。ニューヨーク州銀行局は、このように資産担保差入れの対象となる負債から除外することができるよう、買戻条件付取引と同様の性質を有するその他の金融商品について特定するよう外国銀行に求めている。
B. 証券部門
1. 米国外で募集された証券に関する届出書等の規制
SECは歴史的に、付随的に米国に接する公募の登録は不要であると認めていた。SECは1990年にレギュレーションSを採用し、1933年証券法の下、届出要件の治外法権の適用可能性を明らかにした。米国外でのいかなる証券の募集、売り申込み、売り出し、買い申込みについては証券法の登録要件に従わなくても良いことになっている。米国外で行われた取引であるかどうかについての決定はそれぞれのケースにおける事実と状況に基づいて行われる。レギュレーションSはまた、非独占的セーフハーバーを定め、その恩恵は特別手続を必要とする。
2. 「ブルースカイ」メモ
1996年10月、国家証券市場改革法は連邦による州法の先取りと、そして多くのケースにおける証券登録を要求する規則を規定するため1933証券法を改正した。結果として、非アメリカ発行者による募集を含む、合衆国における最も重要な証券募集に関連して、州レベルで証券を登録する必要性は取り除かれた。しかしながら、州は自身の対不正行為法の管理、執行権限を保っている。
3. グローバル・オファリングにおける広報活動制限
合衆国で証券を販売する準備をしている発行企業は、通常の業務と財務情報に関してパブリックと対話を行うことができる。この分野でガイダンスを行ったのに加えて、SECは、発行届出書がSECにファイルされた後に、証券の募集と関連して行われる一定のコミュニケーションを認める多くのルールを採用した。(例えば1933証券法下のルール134、135条を参照)さらに、同法下のルール135eは、国境を越えたオファリングに関して、外国発行企業による海外のプレスコミュニケーションに対するセーフハーバーを規定している。
4. 1940年投資会社法適用の免除
1940年投資会社法に基づく免除規定は多数存在し、投資会社の定義から特定の発行者を除外している。(1940年法セクション3(b)(1)、3(b)(2)、及びルール3a-1からルール3a-7以下を参照)
5. 日本国債の自己資本規制比率上の取り扱い
SECの純資本ルールのため日本国債と米国債の取り扱いにはほとんど違いがない。ニューヨーク証券取引所は現在、NRSRO(公認格付機関)の上位2つの格付けに評価される外国ソブリン債への証拠金率を下げるマージンルール(ルール431)の改正を提案している。改正案は現在SECによってレビュー中である。
6. グローバル・オファリングの安定操作の認可
1999年にSECは日本の証券のグローバルオファリングの免除を認めた。これにより、日本の安定操作ルールはアメリカの証券の募集が完了した後で適用されている。アメリカの証券の募集が完了する前では、日本におけるシンジゲート安定操作は1934年証券取引法下のレギュレーションMのルール104に応じなければならない。しかしながらルール104は、3つの条件;つまり1)合衆国における安定操作はない、2)アメリカの募集価格を超えた安定操作は行われない、3)外国での安定操作は同等の安定操作規制を持つ管轄区域で行われるべきである;の下、アメリカ安定操作ルールに従うことなく、アメリカの募集中の海外での安定操作を認める方法を提供する。
7. 格付機関の特定基準
米国市場に参入する際、外国格付機関はSECによる公認格付機関(NRSRO)としての指定または登録を必要としない。そのかわりに、SECスタッフは、ブローカー・ディーラーが自己資本規制の目的のために一定の格付機関をNRSROとして取り扱うことに関しては、ノーアクションの姿勢をとっている。NRSROの取り扱いに関するノーアクションレターを発行する際に、SECスタッフは格付機関の格付けの信頼性をまえもって判断している市場に頼っている。
8. 新発外国債に対する登録要件
外国政府は、特定の証券取引に適用される証券法の免除規定を利用することにより、1933年証券法(スケジュールB)下の登録要件及び40日待機期間の両方から逃れることができる。例えば、証券法セクション4(2)を参照;また第3回共同現状報告の記述も参照のこと。