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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米間の「規制改革及び競争政策イニシアティブ」に関する日米両国首脳への第一回報告書 附属文書:「e-イニシアティブ」

[場所] 
[年月日] 2002年6月25日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

デジタル商品の貿易自由化を通じた電子商取引の推進

 経済を活性化し将来の成長を推進する上での電子商取引が重要性が増す中で、日米両国政府は、以下の事項及び基本的原則において、多国間の枠組みにおいて協力することを通じて、デジタル商品の自由化及び電子商取引の世界的な利用の拡大を確保すべく、共同で作業していく。

1) WTOで約束を行ったサービスは電子的にも配信できることを確認する。

2) 各国のデジタル商品を無差別に取扱う。

3) 電子商取引に係る法律、規則及び通則を公表する。

4) 電子商取引の利用及び開発に対する不必要な規制を避けることの重要性を認識する。

及び、これに加え、

5) 日米両国政府は現在、電子上で取引されるデジタル商品に関税を賦課していない。両政府はこの関税が賦課されていない環境が維持されるべきであるというグローバルな理解に向けて作業する。

6) 貿易自由化の精神で、日米両政府はキャリアメディア上のデジタル商品の関税評価の決定に関し、多国間の場における意見の一致を形成するよう共同で作業する。

7) 日米両国政府は、非ITA加盟国に対しITAに加盟するよう共同で働きかけていく。


電子政府の推進

 両国政府は、電子政府の実現により、国民や企業が、地理的、時間的な制約なしに政府の提供する幅広いサービスの提供を受けることが可能になるとの認識を共有する。電子政府の実施は、ビジネスの機会を生み、世界的な貿易を促進するとともに、両国経済全般に積極的な乗数効果を与えるものである。

 両国政府は、電子政府を実現するための基本的なよりどころとして、電子政府に係るそれぞれの政策指針や法制(すなわち、米国においては電子政府戦略、日本においてはIT基本法)に反映されている原則を重視してきた。

 日米両国政府は、世界的な電子政府のサービスの推進・実施について、グローバルなリーダーシップを示していくことを意図しており、また以下の概念の重要性を認識している。

透明性 : 電子政府は、透明性を有し、実質的にいつでもアクセス可能であり、国民にとってすべてのオンラインによるやりとり、手続が便利なものとなるような電子化された行政を促進すべきである。

効率性 : 電子政府は、行政を簡素化し、効率を向上させ、国民や企業の負担を軽減すべきである。また、官中心とすべきではない。

セキュリティ : 電子政府は、国民が、安心して情報システムやネットワークを利用できるよう、安全で、信頼でき、秘密が守られる環境を提供するよう努力しなければならない。

民間部門のリーダーシップ : 電子政府に関わる手続は、迅速、革新的で市場ベースのものとすべきである。IT分野は、原則として民間部門が主導的な役割を担うべきであり、政府は公正競争の確保される環境を創り出すとともに、革新を阻害するのではなくむしろ促進すべきである。


 日米両国政府は、消費者、企業、行政機関及び国民を支援する双方向性を有するインターネットサイトを構築することによって、これらの電子政府の概念を実現しつつある。また、日本では、申請・届出等手続の電子化、電子調達、歳入・歳出の電子化、行政情報の電子的提供等の分野に力を入れており、米国においては、それぞれ同様に、「税務申告の電子化」、「連邦資産売却」、「ワンストップによるビジネス関連情報の提供」、「ワンストップによるレクリエーション関係の情報の提供」等に取り組んでいる。

欧州評議会のサイバー犯罪条約に関する協力

 サイバー犯罪条約の重要性にかんがみ、以下の取組みを通じ、両国政府は、同条約がより幅広く受け入れられ、かつ、活用されるべく共同で作業する。

- 欧州評議会(COE)が加盟国のうちの未署名国が同条約に署名するよう促す。

- 同条約の発効を確保すべく、有資格国が条約に参加するよう促す。

- 同条約のより広い適用を確保すべく第三国の加入を促進するCOEの努力を一般的に支持する。

- 国連決議56/121に従い、法律及び政策の策定並びにその実施にあたり、同条約を考慮に入れるよう各国に促す。