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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 社会保障に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定

[場所] ワシントン
[年月日] 2004年2月19日
[出典] 厚生労働省,外務省
[備考] 
[全文] 

社会保障に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定

 日本国及びアメリカ合衆国は、

 社会保障の分野における両国間の関係を規律することを希望して、

 次のとおり協定した。

   第一条

1 この協定の適用上、

 (a)「合衆国」とは、アメリカ合衆国をいう。

 (b)「領域」とは、日本国については、日本国の領域をいい、合衆国については、合衆国の諸州、コロンビア特別区、プエルトリコ、合衆国領バージン諸島、グアム、合衆国領サモア及び北マリアナ諸島をいう。

 (c)「国民」とは、日本国については、日本国の国籍に関する法律にいう日本国民をいい、合衆国については、移民国籍法(その改正を含む。)第百一条に定義された合衆国の国民をいう。

 (d)「法令」とは、日本国については、次条1に掲げる日本国の年金制度及び日本国の医療保険制度に関する日本国の法律及び規則をいい、合衆国については、次条2に掲げる合衆国の法律及び規則をいう。

  ただし、法令には、一方の締約国と第三国との間で締結された社会保障に関する条約その他の国際約束又はそれらの条約その他の国際約束の実施のために制定された法律及び規則を含めない。

 (e)「権限のある当局」とは、日本国については、次条1に掲げる日本国の年金制度及び日本国の医療保険制度を管轄する政府機関をいい、合衆国については、社会保障庁長官をいう。

 (f)「実施機関」とは、日本国については、次条1に掲げる日本国の年金制度及び日本国の医療保険制度の実施に責任を有する保険機関(その連合組織を含む。)をいい、合衆国については、社会保障庁をいう。

 (g)「保険期間」とは、日本国については、日本国の法令のうち次条1 から までに掲げる日本国の(a)(i)から(v)までに掲げる日本国の年金制度に関するものによる保険料納付期間及び日本国の法令において給付を受ける権利の確立に際して考慮されるその他の期間をいい、合衆国については、合衆国の法令により加入四半期として付与される期間又は合衆国の法令による給付を受ける権利を確立するために用いることができる同等の期間をいう。

 (h)「給付」とは、いずれか一方の締約国の法令に定める給付をいう。

2 この協定の適用上、この協定において定義されていない用語は、各々の締約国の法令において与えられている意味を有するものとする。


   第二条

 この協定は、

1 日本国については、

 (a)次の日本国の年金制度について適用する。

  (i)国民年金(国民年金基金を除く。)

  (ii)厚生年金保険(厚生年金基金を除く。)

  (iii)国家公務員共済年金

  (iv)地方公務員等共済年金(地方議会議員の年金制度を除く。)

  (v)私立学校教職員共済年金

   ((ii)から(v)までに掲げる日本国の年金制度を以下「日本国の被用者年金制度」という。)

   ただし、この協定の適用上、国民年金には、老齢福祉年金その他の福祉的目的のため経過的又は補完的に支給される年金であって、専ら又は主として国庫を財源として支給されるものを含めない。

 (b)次の法律(その改正を含む。)により実施される日本国の医療保険制度について適用する。

  (i)健康保険法(大正十一年法律第七十号)

  (ii)船員保険法(雇用保険及び労働者災害補償保険に関する規定を含む。)(昭和十四年法律第七十三号)

  (iii)国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)

  (iv)国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)

  (v)地方公務員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)

  (vi)私立学校教職員共済法(昭和二十八年法律第二百四十五号)

   ただし、この協定の適用上、第三条、第五条、第六条、第八条、第十条、第十二条、第十三条、第十五条(3を除く。)及び第十七条2の規定は、日本国の医療保険制度には適用しない。

2 合衆国については、

 連邦老齢・遺族・障害保険制度に関する次の法律及び規則(その改正を含む。)について適用する。

 (a)社会保障法第二編及びこれに関する規則(同編第二百二十六条、第二百二十六A条及び第二百二十八条並びにこれらに関する規則を除く。)

 (b)千九百八十六年の内国歳入法第二章及び第二十一章並びにこれらに関する規則


   第三条

1 一方の締約国の法令の適用を受けているか又は受けたことがある者並びにこれらの者に由来する権利を有する家族及び遺族であって、他方の締約国の領域内に通常居住するものは、給付を受ける権利の取得及び給付の支払に関し、当該他方の締約国の法令の適用に際して、当該他方の締約国の国民と同等の待遇を受ける。ただし、この規定は、日本国の領域外に通常居住することに基づいて日本国民に対して認められる合算対象期間に関する日本国の法令の規定に影響を及ぼすものではない。

2 一方の締約国の領域外に通常居住すること又は当該領域内にいないことのみを理由として給付を受ける権利の取得又は給付の支払を制限する当該一方の締約国の法令の規定は、他方の締約国の領域内に通常居住する者には適用しない。ただし、この規定は、初診日又は死亡日において六十歳以上六十五歳未満であった者に関して障害基礎年金又は遺族基礎年金を受ける権利の取得のために日本国の領域内に通常居住していることを要件として定めた日本国の法令の規定に影響を及ぼすものではない。


   第四条

1 この条に別段の定めがある場合を除くほか、いずれか一方の締約国の領域内において被用者又は自営業者として就労する者については、その被用者又は自営業者としての就労に関し、当該一方の締約国の法令のみを適用する。

2 5から7までの規定に従うことを条件として、一方の締約国の法令に基づく年金制度及び医療保険制度に加入し、かつ、当該一方の締約国の領域内に事業所を有する雇用者に当該領域内において通常雇用されている者が、当該雇用者により当該一方の締約国の領域から他方の締約国の領域内において就労するために派遣される場合には、その派遣の期間が五年を超えるものと見込まれないことを条件として、その被用者が当該一方の締約国の領域内において就労しているものとみなして当該一方の締約国の法令のみを適用する。当該派遣が五年を超えて継続される場合には、当該他方の締約国の権限のある当局又は実施機関は、8の規定に従って、引き続き当該他方の締約国の法令の適用を免除することができる。この規定の適用上、合衆国の領域内の雇用者により合衆国の領域内から日本国の領域内における当該雇用者の関連企業(合衆国の法令で定義されたものをいう。)へ派遣される被用者の場合には、その雇用について合衆国の法令が適用されることを条件として、当該雇用者及び当該雇用者の関連企業は、同一の雇用者とみなす。

3 2の規定は、雇用者により一方の締約国の領域から第三国の領域に派遣されていた者が、その後、当該雇用者により当該第三国の領域から他方の締約国の領域に派遣される場合にも適用される。

4 一方の締約国の法令に基づく年金制度及び医療保険制度に加入し、かつ、通常当該一方の締約国の領域内において自営業者として就労する者が、一時的に他方の締約国の領域内において自営業者として就労する場合には、当該他方の締約国の領域内における自営活動の期間が五年を超えるものと見込まれないことを条件として、その者が当該一方の締約国の領域内において就労しているものとみなして当該一方の締約国の法令のみを適用する。当該自営活動が五年を超えて継続される場合には、当該他方の締約国の権限のある当局又は実施機関は、8の規定に従って、引き続き当該他方の締約国の法令の適用を免除することができる。

5 日本国の旗を掲げる海上航行船舶又は合衆国の船舶の乗組員としての雇用について両締約国の法令が適用されることとなる者については、当該雇用に関し、その者が通常居住する領域の属する締約国の法令を適用する。

6 航空機の乗組員としての雇用について両締約国の法令が適用されることとなる者については、当該雇用に関し、雇用者の業務上の本拠が置かれている領域の属する締約国の法令を適用する。

7 (a)この協定は、千九百六十一年四月十八日の外交関係に関するウィーン条約又は千九百六十三年四月二十 四日の領事関係に関するウィーン条約の規定に影響を及ぼすものではない。

 (b)日本国の領域内において合衆国政府に雇用されている合衆国国民であって、 (a)に規定する条約による日本国の法令の免除を受けないものについては、合衆国の法令のみを適用する。この(b)の規定の適用上、合衆国政府による雇用には、合衆国政府の関連機関による雇用も含む。

 (c) (a)の規定に従うことを条件として、日本国の公務員又は日本国の法令において公務員として取り扱われる者が合衆国の領域内において就労するために派遣される場合には、日本国の法令のみを適用する。

8 日本国の権限のある当局又は実施機関及び合衆国の権限のある当局は、被用者及び雇用者の申請又は自営業者の申請に基づき、特定の者又は特定の範囲の者の利益のため、これらの特定の者又は特定の範囲の者にいずれか一方の締約国の法令が適用されることを条件として、この条の規定の例外を認めることについて合意することができる。

9 日本国の領域内において就労する者であって、2、4、6、7(b)又は8の規定により合衆国の法令の適用を受けるものに随伴する配偶者又は子については、

 (a)当該配偶者又は子が日本国民以外の者である場合には、日本国の法令は、適用しない。ただし、当該配偶者又は子が別段の申出を行う場合には、この(a)の規定は、適用しない。

 (b)当該配偶者又は子が日本国民である場合には、日本国の法令の適用の免除は、日本国の法令に従って決定する。

10 この条の規定は、各締約国の法令における強制加入についてのみ適用する。2及び4の規定は、日本国の領域内に事業所を有する雇用者に当該領域内において通常雇用されている者又は通常日本国の領域内において自営業者として就労する者が、第二条1(a)(i)から(v)までに掲げる日本国の年金制度に加入していない場合には、適用しない。


   第五条

 合衆国については、次の規定を適用する。

1 合衆国の法令により六加入四半期以上の保険期間を有するが、合衆国の法令による給付を受ける権利の取得のための要件を満たすために十分な保険期間を有しない者について、この条の規定に基づいて給付を受ける権利を確立するため、合衆国の実施機関は、日本国の法令により付与された保険期間であって、合衆国の法令により既に付与された保険期間と重複しないものを考慮する。

2 1の規定に基づいて給付を受ける権利を確立するため、合衆国の実施機関は、合衆国の法令に従い、日本国の法令により付与された三箇月の保険期間(日本国の実施機関により証明されたものに限る。)ごとに一加入四半期を付与する。その結果生じた三箇月に満たない残余の保険期間は、一加入四半期として考慮する。ただし、合衆国の法令により既に加入四半期が付与された暦四半期に対しては、いかなる加入四半期も付与しない。この2の規定により付与される加入四半期及び合衆国の法令により既に付与された加入四半期の総数は、一暦年について四を超えない。

3 合衆国の法令による給付を受ける権利が1の規定に基づいて確立される場合には、合衆国の実施機関は、合衆国の法令に従い、次のものに基づいて比例配分された基本年金額を算定する。

 (a)合衆国の法令にのみ従って算定されたその者の平均収入

 (b)合衆国の法令に従って決定された生涯保険期間の長さに対する合衆国の法令によるその者の保険期間の長さの比率

合衆国の法令により支払われる給付は、比例配分された基本年金額に基づいて行う。

4 1の規定の適用により確立された給付を受ける権利については、当該規定を適用することなく当該給付と同等以上の給付を受ける権利を確立するために十分な合衆国の法令による保険期間を取得したときは、消滅する。

5 1及び2の規定の適用上、日本国の法令により付与される保険期間には、日本国の法令による保険料納付期間及び日本国の法令において給付を受ける権利の確立に際して考慮されるその他の期間を含む。ただし、日本国の領域外に通常居住することに基づいて日本国民に認められる合算対象期間及び国民年金における第三号被保険者としての保険期間を除く。第二文の規定にかかわらず、合衆国の実施機関は、被保険者が第三号被保険者としての保険期間の前及び後の双方に、第一号被保険者若しくは第二号被保険者として一箇月以上の保険期間を有していること又は合衆国の法令による一加入四半期以上の保険期間を有していることを条件として、第三号被保険者としての保険期間に最大限十一加入四半期を付与する。


   第六条

 日本国については、次の規定を適用する。

1 (a)日本国の法令による給付を受ける権利の取得のための要件を満たすのに十分な保険期間を有しない者について、この条の規定に基づいて給付を受ける権利を確立するため、日本国の実施機関は、合衆国の法令により付与された保険期間を考慮する。

 (b) (a)の規定は、日本国の法令による給付であって次に掲げるものについては、適用しない。

  (i)厚生年金保険の障害手当金

  (ii)各共済年金の障害一時金

  (iii)各共済年金の職域加算年金

  (iv)厚生年金保険の外国人脱退一時金及び各共済年金の外国人脱退一時金

  (v)厚生年金保険の脱退手当金及び各共済年金の脱退一時金

  (vi)各共済年金の特例死亡一時金

  (vii) (i)から(vi)までに掲げる給付と同様のその他の給付であって、この協定の効力発生後に導入され、かつ、両締約国によって合意されるもの

2 1 の規定の適用に当たっては、

 (a)日本国の実施機関は、各暦年について、合衆国の法令により当該暦年に付与された一加入四半期(合衆国の実施機関により証明されたものに限る。)ごとに三箇月の保険期間を付与する。日本国の実施機関により付与される保険期間は、月を単位として、日本国の法令により保険期間として既に算入された月を除き、当該暦年において最初の月から始まる順序で割り当てる。ただし、日本国の法令による個々の給付を受ける権利の確立に必要な場合には、当該付与される保険期間の月は、当該暦年において最後の月から始まる逆の順序で割り当てる。この(a)の規定により割り当てられる保険期間の月数及び日本国の法令により保険期間として既に算入された月数の総数は、一暦年について十二を超えない。

 (b) (a)の規定により日本国の実施機関により付与されることとなる合衆国の法令による保険期間は、日本国の被用者年金制度の保険期間及び国民年金における第二号被保険者としての保険期間として考慮する。

3 (a)日本国の法令が、障害年金又は遺族年金を受ける権利の確立のために初診日又は死亡日が特定の保険期間中にあることを要件として定めている場合において、次のいずれかのときは、当該年金を受ける権利の確立に当たり当該要件は満たされたものとみなす。

  (i)初診日又は死亡日が属する暦四半期までの八暦四半期中に合衆国の法令による四加入四半期以上の保険期間を有するとき。

  (ii)初診日又は死亡日が属する暦四半期までの十三暦四半期中に合衆国の法令による六加入四半期以上の保険期間を有するとき。

ただし、国民年金の下での障害年金又は遺族年金を受ける権利がこの3の規定を適用しなくても確立される場合には、この3の規定は、日本国の被用者年金制度の下での同一の保険事故に基づく障害年金又は遺族年金を受ける権利の確立に当たっては、適用しない。

 (b)(a)の規定の適用に当たっては、二以上の日本国の被用者年金制度における保険期間を有する者については、 (a)に規定する要件は、日本国の法令に従って、一の被用者年金制度につき満たされたものとみなす。

4 1(a)又は3(a)の規定の適用により日本国の法令による給付を受ける権利が確立される場合には、5から9までの規定に従うことを条件として、日本国の実施機関は、日本国の法令に従って当該給付の額を計算する。

5 障害基礎年金その他の保険期間にかかわらず一定額が支給される給付に関しては、当該給付を受けるための要件が1(a)又は3(a)の規定の適用により満たされる場合には、支給される当該給付の額は、7に規定する理論的加入期間に対する当該給付が支給される年金制度における保険料納付期間及び保険料免除期間を合算した期間の比率に基づいて計算する。

6 日本国の被用者年金制度の下での障害年金及び遺族年金(当該制度における保険期間が日本国の法令上定められた期間に満たない場合に支給されるものであって、支給される当該年金の額が当該定められた期間に基づいて計算されるものに限る。)に関しては、当該年金を受けるための要件が1(a)又は3(a)の規定の適用により満たされる場合には、支給される当該年金の額は、7に規定する理論的加入期間に対する日本国の被用者年金制度における保険期間の比率に基づいて計算する。ただし、理論的加入期間が当該定められた期間を超える場合には、理論的加入期間は、当該定められた期間と同一の期間とする。

7 5及び6の規定の適用上、「理論的加入期間」とは、次に掲げる期間を合算した期間(障害が認定された日の属する月の後の期間又は死亡した日の翌日の属する月から始まる期間を除く。)をいう。

 (a)二十歳に達した日の属する月から六十歳に達した日の属する月の前月までの期間(千九百六十一年四月一日より前の期間を除く。)

 (b)(a)に規定する期間と重複しない日本国の法令による保険料納付期間

 (c)障害が認定された日の属する月又は死亡した日の翌日の属する月の前月が(a)に規定する期間前にある場合には、(b)に規定する期間と重複しない合衆国の法令による保険期間

8 5及び6の規定による日本国の被用者年金制度の下での給付の額の計算に関しては、当該給付を受ける権利を有する者が二以上の日本国の被用者年金制度における保険期間を有する場合には、5に規定する保険料納付期間又は6に規定する保険期間は、当該二以上の日本国の被用者年金制度における保険期間を合算した期間とする。ただし、当該合算した期間が6に規定する日本国の法令上定められた期間に等しいか又はこれを超える場合には、6及びこの8に規定する計算方法は適用しない。

9 老齢厚生年金の一部である配偶者加給その他の日本国の被用者年金制度における保険期間が日本国の法令上定められた期間に等しいか又はこれを超える場合に一定額が支給される給付に関しては、当該給付を受けるための要件が1(a)の規定の適用により満たされる場合には、支給される当該給付の額は、当該定められた期間に対する当該給付が支給される日本国の被用者年金制度における保険期間の比率に基づいて計算する。


   第七条

 両締約国の権限のある当局は、

 (a)この協定の実施のために必要な行政上の措置について合意する。

 (b)この協定の実施のために連絡機関を指定する。

 (c)自国の法令の変更(この協定の実施に影響を及ぼすものに限る。)に関するすべての情報をできる限り速やかに相互に通報する。


   第八条

 両締約国の権限のある当局及び実施機関は、それぞれの権限の範囲内で、この協定の実施のために相互に援助する。権限のある当局及び実施機関が援助を行うのに要する通常の人件費及び業務上の経費は、無償とする。


   第九条

1 一方の締約国の権限のある当局又は実施機関は、第七条(a)の規定により合意する措置に従い、当該一方の締約国の法令の下で収集された個人に関する情報(この協定の実施のために必要なものに限る。)を当該一方の締約国の法律及び規則に従って他方の締約国の権限のある当局又は実施機関に伝達する。

2 一方の締約国の法律及び規則により特に必要とされない限り、この協定に従って他方の締約国により当該一方の締約国に対し伝達される個人に関する情報は、専らこの協定を実施する目的のために使用する。一方の締約国が受領するこれらの情報は、個人に関する情報の秘密の保護のための当該一方の締約国の法律及び規則により規律される。


   第十条

1 一方の締約国の法令(日本国については、他の法律及び規則を含む。)において、当該一方の締約国の法令の適用上提出すべき文書に係る行政上又は領事事務上の手数料の免除又は軽減に関する規定があるときは、当該規定は、この協定及び他方の締約国の法令の適用上提出すべき文書についても適用する。

2 この協定及び一方の締約国の法令の適用上提出される文書については、外交機関又は領事機関による認証その他これに類する手続を要しない。

3 一方の締約国の実施機関により真正かつ正確な謄本であることが証明された文書の謄本については、更なる証明を要することなく、他方の締約国の実施機関により真正かつ正確な謄本として認容される。提出される証拠文書(提出元を問わない。)の証明力については、当該謄本を受領する実施機関が最終的に判断する。


   第十一条

1 両締約国の権限のある当局及び実施機関は、この協定の実施に必要な場合には、相互に、及び関係者(居住地を問わない。)に対して、直接連絡することができる。この連絡は、両締約国のそれぞれの言語により行うことができる。

2 この協定の実施に際して、一方の締約国の権限のある当局及び実施機関は、他方の締約国の言語で作成されていることを理由として申請書その他の文書の受理を拒否してはならない。


   第十二条

1 一方の締約国の法令による書面による給付の申請、不服申立て又はその他の申告が他方の締約国の法令による類似の申請、不服申立て又は申告を受理する権限を有する当該他方の締約国の権限のある当局又は実施機関に対して提出された場合には、当該給付の申請、不服申立て又はその他の申告は、その提出の日に当該一方の締約国の権限のある当局又は実施機関に対して提出されたものとみなし、当該一方の締約国の手続及び法令に従って取り扱う。

2 この条の規定が適用される場合には、給付の申請、不服申立て又はその他の申告が提出された一方の締約国の権限のある当局又は実施機関は、これを遅滞なく他方の締約国の権限のある当局又は実施機関に伝達する。


   第十三条

 この協定に係る給付の支払は、いずれの締約国の通貨によっても行うことができる。


   第十四条

 この協定の解釈又は適用についての意見の相違は、両締約国間の協議により解決する。


   第十五条

1 この協定は、その効力発生前には給付を受ける権利を確立させるものではない。また、この協定は、合衆国については、その効力発生前に死亡した場合の死亡一時金を受ける権利についても確立させるものではない。

2 この協定の実施に当たっては、この協定の効力発生前の保険期間その他法的に関連する事実も考慮する。

3 第四条2又は4の規定の適用に当たっては、これらの規定にいう派遣又は自営活動をこの協定の効力発生前に開始した者については、当該派遣又は自営活動の期間は、この協定の効力発生の日に開始したものとみなす。

4 この協定の効力発生前に行われた決定は、この協定により確立されるいかなる権利にも影響を及ぼすものではない。

5 第五条及び第六条の規定は、この協定の効力発生の日以後に申請が提出される給付についてのみ適用する。

6 この協定の適用の結果として、この協定の効力発生前に権利が確立された給付の額を減額してはならない。


   第十六条

 この協定は、両締約国が、この協定の効力発生に必要なそれぞれの法律上及び憲法上の要件が満たされた旨を相互に通告する外交上の公文を交換した月の後三箇月目の月の初日に効力を生ずる。


   第十七条

1 この協定は、いずれかの締約国が他方の締約国に対し、外交上の経路を通じて書面による協定の終了の通告を行う月の後十二箇月目の月の末日まで効力を有する。

2 この協定が1の規定に従って終了する場合においても、この協定の下で取得された給付を受ける権利及び給付の支払に関する権利は維持される。

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。

二千四年二月十九日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。

日本国のために
  加藤良三

アメリカ合衆国のために
  ジョー・アン・B・バーンハート