[文書名] 日米間の「規制改革及び競争政策イニシアティブ」に関する日米両首脳への第五回報告書
現在5年目を終えようとしている「日米規制改革及び競争政策イニシアティブ」は、2001年6月に小泉純一郎内閣総理大臣とジョージ・W・ブッシュ大統領によって始められた。イニシアティブは、規制改革を通じて経済成長を促進するための二国間のフォーラムとして設置された。イニシアティブは毎年、広汎な分野別及び分野横断的な事項を扱い、成果は首脳への報告書を通じて年一回報告される。
イニシアティブは、日米両政府間の双方向の対話の原則に基づいている。
2005年12月の両政府間での要望書の交換の後、このイニシアティブの下に設置された作業部会は、知的財産権、流通、特殊法人の民営化、情報技術、競争政策、貿易投資関連措置、商法、電気通信、領事事項及び医療機器・医薬品を含む主要な分野における改革について議論を行ってきた。2006年3月には、このイニシアティブの下に提起された一連の問題を前進させるため上級会合が開催された。イニシアティブでの政府同士の議論を通じて扱われる問題について議論を拡げるために民間部門の代表からのインプットも受けた。作業部会及び上級会合の後、両政府の要望に対応する前進を記録するとともに、将来採られることになる措置を明確にするために、この首脳への報告書は作成された。
今回の首脳への第五回報告書は、規制に関する決定を早めさせ、透明性を高め、市場アクセスを改善させ、競争環境を強固にし、ビジネスの障壁を低減させ、そして個人情報を保護するのに寄与する改革を含む、幅広い問題にわたる前進を提示している。報告はまた、模倣品及び海賊版の問題に対処するため、また、アジア大洋州地域において透明性基準の実施を促進するための共同措置も反映している。両政府は、二国間、地域及び多国間の議論の場における協力を引き続き向上させていく決意を確認する。
両政府は、更に規制改革を促進する決意を再確認するとともに、いずれかの政府の要請に基づき、双方の都合の良い時期に、この報告書に含まれている措置を取り上げるために会合する。
目次
日本国政府による規制改革及びその他の措置
I.電気通信 3
II.情報技術 5
III.医療機器・医薬品 14
IV.金融サービス 20
V.競争政策 23
VI.透明性及び政府慣行 26
VII.民営化 29
VIII.司法制度改革 33
IX.商法 34
XI.流通 37
米国政府による規制改革及びその他の措置
I.規制改革及び競争政策に関する分野横断的な問題 40
A.貿易投資関連措置 40
B.領事事項 45
C.流通 49
D.制裁法 53
E.競争政策 54
F.法律サービス及びその他の法律関連事項 55
II.電気通信 56
III.情報技術 59
IV.医療機器・医薬品 61
V.金融サービス 62
日本国政府による規制改革及びその他の措置日本国政府による措置
I.電気通信
A.競争促進
1.日本国政府は、これまで、電気通信分野において、著しい技術革新に沿った競争政策を遂行してきた。その結果、世界の中でブロードバンドサービスが最も高速かつ購入しやすく、技術的に最も高度化した電気通信市場の発展を促進してきた。日本では、ブロードバンドサービス契約数に占めるFTTH契約数の割合が増加しており、平均伝送速度も高速化しつつある。さらに、2006年3月末時点で、第3世代携帯電話の加入数は4,800万を超え、IP電話の利用数は1,100万を超えている。
2.総務省では、2005年10月より「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会」を開催し、IP化の進展に対応した今後の競争政策について検討している。具体的な検討課題は、電気通信ネットワークが公衆交換電話網(PSTN)からIP網へと移行していく環境において競争促進のために、PSTNの接続料算定の枠組み等、現行の接続その他のルールをいかに見直すべきかの検討を含む。
3.2005年11月、総務省は新規移動体通信事業者3社に1.7GHz帯及び2GHz帯の周波数を割り当てた。
4.総務省は、2005年12月と2006年4月に「携帯電話事業の環境変化と今後の政策対応」に関する意見募集を行った。2006年度内に、2002年6月に策定した「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」の改正を含む政策措置について検討を行うこととしている。
5.2006年1月、竹中総務大臣は専門家を集めて日本の通信と放送の今後の方向性についての懇談会を立ち上げた。同懇談会は、6月に最終報告書を公表した。現在、この件については、経済財政諮問会議において「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」の策定に向けた検討の中で議論を行っている。
6.日本国政府は、NTT株式の一定割合についての政府保有要件及び外国人による所有制限の根拠について説明した。
B.固定接続
1.パブリック・コメント手続及び情報通信審議会から答申を得た後、総務省は2006年2月に接続料規則の改正を行った。この規則に基づき、同年4月から適用される接続料を以下のとおり確定した:GC接続は3分あたり5.05円で前年度比5.1%の減少、IC接続は3分あたり6.84円で前年度比3.5%の減少となった。
2.2006年3月、総務省はパブリック・コメントを実施し、情報通信審議会からの答申を踏まえ、ユニバーサルサービスに関連した省令の改正を行った。同月、NTT東日本及びNTT西日はユニバーサルサービス制度の下で適格電気通信事業者の指定を受けた。改正された省令に基づき、この制度(適格事業者の範囲を含む)は3年以内に見直されることとなっている。
3.日米両政府は、WTO参照文書の約束に沿ったユニバーサルサービス制度を維持する継続的な意思を有することを再確認した。
C.移動体接続
1.NTTドコモの接続料は過去9年間にわたって低下してきている。その結果、同接続料は発信者課金制度を採用している先進国の中でも低いレベルまで下がっている。2006年3月、NTTドコモの接続料は、前年度と比較して同一のドコモグループ会社内に適用される接続料が2.6%、会社外に適用される接続料が5.6%、それぞれ引き下げられる旨、総務省に届出があった。
2.第二種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者(例:NTTドコモ、KDDI)は、電気通信事業法上、総務省に接続約款の届出を行い、公表することが引き続き義務付けられている。
3.電気通信事業法においては、仮に第二種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者が取得すべき接続料が、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超える場合には、総務大臣が接続約款変更命令を発することができることとされており、また、事業者等から意見申出を行うことも可能である。事業者間の協議が調わなかった場合には、総務大臣の命令・裁定又は電気通信事業紛争処理委員会のあっせん・仲裁手続といった法律上の仕組みを活用することも可能となっている。
D.先端技術及びサービスの促進
1.規制改革イニシアティブ電気通信作業部会は、政府及び民間の専門家からなる会合を開催し、高速電力線搬送通信の商用展開における干渉問題の解消について意見交換を行った。総務省は2005年1月より高速電力線搬送通信に関する研究会を開催し、パブリック・コメント手続を経た上で、12月に報告書を公表した。現在、情報通信審議会において高速電力線搬送通信設備に係る許容値及び測定法の審議を行っている。
2.総務省では、2004年11月から2005年12月まで「ワイヤレスブロードバンド推進研究会」
を開催した。2005年12月、総務省は、パブリック・コメント手続を経た上で、ワイヤレスブロードバンドサービスの将来像及びこれを踏まえたシステムの具体化、必要な周波数分配及び普及推進方策等を含む最終報告書を公表した。この報告書を踏まえ、総務省は2006年2月に2.5GHz帯を使用する広帯域移動無線アクセスシステムの技術的条件について情報通信審議会に諮問し、同審議会は検討を開始した。また、2006年3月、同審議会は高速無線LAN導入のための技術的条件について審議を開始した。
E.電気通信機器の貿易の促進
1.日米両政府は電気通信機器の適合性評価に関する相互承認協定(MRA)の早期締結に向けて公式交渉を継続する。
2.電磁両立性(EMC)に関し、日米両政府は、認定を受けた日本の適合性評価機関が行った情報技術(IT)機器、及び産業科学医療用機器(ISM機器)についての適合性評価結果の受け入れを可能とする措置の策定のため、引き続き協働する。
3.日米両政府は、米国政府の要望として、無線LANアンテナの「ファミリー認証」について議論を行った。日米両政府は、日本国政府が技術基準適合のために策定した政策及び日本市場における非適合機器の問題に対処する必要性を考慮しつつ、この問題に関する対話を継続する。
F.ネットワーク回線終端装置(NCTE):1990年ネットワーク回線終端装置(NCTE)に関する書簡を通じて設定され、首脳への第3回報告書において改訂された手続は、パブリック・コメント手続を経て、2006年度以降適用されないこととなった。指定電気通信役務を提供する電気通信事業者については、電気通信事業法第23条に基づき、NCTEの技術的条件を公表することが義務付けられている。
II.情報技術(IT)
A.IT及び電子商取引の政策立案:様々なe-Japan戦略及び重点計画は、日本経済全体において、効果的にIT及び電子商取引の利用を促進し、個人の利益を増し、より効果的な電子政府を作り上げ、高付加価値な事業活動を促進してきた。日本は、電子商取引を含めたITの利用を更に促進する規制環境を醸成する努力を継続するとともに、適宜、関心を有する者がIT政策の策定過程に貢献できる意義のある機会を提供する努力を継続する。
1.IT新改革戦略:IT新改革戦略(戦略)は、IT戦略本部により、パブリック・コメントを募集し、受け取ったコメントに対して十分な考慮を与えた後、2006年1月19日に採択された。日本国政府は、IT及び電子商取引における民間部門のリーダーシップとイノベーションが促進されるよう戦略を実施する。加えて、日本国政府は民間部門のイノベーションと市場参入が不当に抑制されないことは重要であると考えており、戦略の実施においては、この考え方を適用する努力を継続する。
2.民間部門のインプット:日本国政府はIT及び電子商取引政策の策定及び実施において、民間部門のインプットを求める重要性を認識している。この目的の達成を助けるために、日本国政府はIT及び電子商取引政策の立案における初期段階において、関心を有する者がインプットを与える適切な機会を提供する。
3.技術的中立:2005年の首脳への報告書において、日本国政府は、民間部門に最大限の柔軟性を与え技術革新を奨励するために、特定技術を過度に推進、強制又は選好しない方法(技術的中立)で、IT分野に関連する法、規則、ガイドラインを実施することが一般的に重要である、との見解を米国政府と共有した。日本国政府はこの考え方を引き続き適用する。加えて、日本国政府は、国際標準の策定活動において、民間部門と緊密な連携を行うとともに、IT政策の実施においては策定された国際標準を考慮する。
4.国際的整合性:日本国政府は、国境を越えた電子商取引を更に促進するための環境を醸成することが重要であると考えている。日本国政府は、引き続き、電子商取引及び関連するインターネット技術に関する政策及び法的枠組みと国際的慣行との調和を図るべく努力する。
5.パブリック・コメント手続:日本国政府は、改正行政手続法が、IT及び電子商取引部門を含む行政上の規則制定の過程において、意見提出のための有意義な機会を効果的に提供することを確保することについての必要性を認識する。この法律には、原則として30日以上の意見提出期間を設定すること、及び各府省は全ての提出された意見を十分に考慮すること等の改善策が含まれている。
B.知的財産権保護の強化
1.著作権保護期間延長:日本国政府は、著作権保護期間延長について、国際的な動向や権利者・利用者間の利益の均衡等の関連要因を考慮しつつ検討を続け、2007年度末までに著作権保護期間の在り方について結論を得る。日本国政府は、レコードを含むすべての著作物についての保護期間が延長されるべきとの米国政府の懸念を認識しており、米国政府は、そのことを世界的な傾向であると認識している。
2.法定損害賠償制度:日本国政府は、著作権の保護を強化し権利者の損害立証責任を軽減するため、侵害行為に対して法定損害賠償制度を利用することを含め、更なる措置の検討を継続し、2007年度末までに結論を得る。
3.デジタルコンテンツの保護
a.日本国政府は、著作権法その他の法令の違反行為が懲戒処分の対象となる旨を明確にした各政府機関の内部規則や通達等、ファイル交換技術の濫用を通じたものを含む政府活動における著作権侵害を禁止し、政府により使用されるソフトウェアや他のデジタルコンテンツ資産を含む知的財産を保護するために講じてきた措置につき、引き続き公表する。日本国政府は、引き続きこの問題について米国政府と情報を交換する。
b.他の著作権の改善策に加えて、プロバイダ責任制限法は、2002年5月の施行以来、関連ガイドラインを通じて一定の前向きな成果をあげている。同法及びガイドラインにより、デジタル・コンテンツの海賊版を含むインターネット上の権利侵害情報は、信頼性確認団体を通じた申立を受けて削除することができる。インターネット上の権利侵害に対する対処方法には、①プロバイダ責任制限法(ISP法)に基づく速やかな削除、及び②インターネット・サービス・プロバイダと発信者(著作権侵害が疑われる者)の契約関係に基づく削除、の二つがある。こうした取組みにより、インターネット上の権利侵害情報の削除が適切に行われている。日本国政府は、引き続き同法の実施状況を見守り、著作権侵害の対策を継続する。
c.日米両政府は、オンライン上の著作権侵害に関する事項について、著作権侵害の二次的責任原則の適用とその適用範囲を明確にする方法の検討も含め、議論を継続し、それぞれの国における司法判断や関連する情報を交換する。
d.日本国政府は、ピア・ツー・ピアネットワーク上でアップロードされる著作物及びレコードの著作権及び著作隣接権侵害への対応として、利用可能化権を設けていることを確認した。日本国政府は、この措置が著作権に関する世界知的所有権機関条約(WCT)及び実演、レコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)の規定に沿ったものであることを確認した。さらに、日本国政府は、関連する条約上の規定及び技術的な発展を踏まえて、私的利用の例外範囲の解釈を明確にするよう引き続き努力する。
e.日本国政府は、適切な方法と透明な制度により、「一時的複製」の保護の範囲の解釈を明らかにするよう引き続き努力する。
f.日米両政府は、技術的保護手段の保護の改善に関して議論を継続する。日本国政府は、「アクセスコントロール」について検討を行っており、引き続き米国政府にこの件に関しての最新情報を提供する。
g.日米両政府は、エンドユーザーの違法コピーに関する事項について議論を継続する。
4.偽作版:日本国政府は、特に大学構内における本の複製に関する事項について、米国政府との議論を継続する。また、日本国政府は、科学的、技術的、医学的な出版に関して提案された著作権保護の例外の影響についても議論する。
5.著作権法における教育例外条項の適切な解釈:日本国政府は、教育機関、教員及び学生に対する著作権法上の「教育例外条項」のガイドラインを公表し、例外となる実例を提示し、著作権法改正法における例外条項の範囲を明確にした。日米両政府は、この事項における例外の範囲について引き続き議論する。
6.知的財産推進計画及び知的財産政策:知的財産戦略本部(知財本部)において、知的財産立国を実現するための様々な施策が議論され、2003年7月に「知的財産推進計画(知財推進計画)」が策定された。法律(知的財産基本法)上、知財推進計画は、少なくとも年1回見直され改定されることになっている。この規定に従い、2006年6月8日、知財本部は、「知財推進計画2006」を決定、公表した。
a.知財推進計画の見直しにあたっては、知財本部はパブリック・コメント手続に関する一般的なルールに従って、パブリック・コメント招請のための十分な期間を設ける。その際、知財本部は、米国政府やその他利害関係者から寄せられたコメントについて、真剣に考慮し、必要に応じて最終的な施策や措置に反映することを確保する。
b.日本国政府はまた、知的財産基本法や知財推進計画のための施策が、国際的な義務、基準及び規範に従ったものであること、また、知財本部及び関係省庁に対して知的財産基本法や知財推進計画のための施策を実施するために必要な支援及び資源を提供することを確保する。
c.知的財産戦略本部令は、知財本部が必要と認める場合には、専門調査会が知財政策の立案時に有識者又は権利者を含む関係者を専門調査会の会合に招いて意見を聴くことができる、と定めている。
C.模倣品・海賊版対策に係る協力
1.海賊版や模倣品の深刻かつ増大しつつある問題に対処すべく、日米両政府は、それぞれ国内の知的財産権プログラム―米国においては「STOP!イニシアティブ」、日本においては「知的財産推進計画2005」―において新政策を実施した。2006年に実現した顕著な新政策は以下を含む。
a.STOP!イニシアティブ:「Stop Counterfeiting In Manufactured Goods Act」の成立、グローバル知的財産権アカデミーの設置及び知的財産権専門官の海外展開。
b.知的財産推進計画2006:模倣品・海賊版拡散防止条約の早期実現を目指す、個人輸入等の取締りを強化する、及びインターネットオークション上の模倣品・海賊版の取引を防止する。
2.知的財産権分野における日米双方の施策の策定に加え、日米両政府はこれまで、知的財産権の保護及び執行を強化すべく緊密に協力してきており、今後も緊密に協力していく。多国間協力と共に、日米両政府は、例えば、
a.アジア太平洋及び全世界における知的財産権の保護・執行を促進すべく、定期的に二国。
b.「APEC模倣品・海賊版対策イニシアティブ」において、模倣品・海賊版の取引削減、違法コピーの防止、及びインターネット上の模倣品・海賊版の販売防止のためのモデル・ガイドラインを共同提案し、この提案は2005年11月に韓国において開催されたAPEC首脳・貿易担当大臣会合において承認された。
3.日米両政府は、世界規模で知的財産権保護の強化を促進するため、APEC模倣品・海賊版対策イニシアティブやWTOTRIPS協定における透明性の確保の要請等、幅広い施策において更なる措置に着手することにより、二国間、地域内、多国間協議の場において、引き続き協力する。日米両政府は、適切な手段を用いて中国における知的財産権問題に対処するための協力を拡大する。加えて、日米両政府は、2005年7月に小泉総理大臣がG8グレンイーグルズ・サミットで提唱した模倣品・海賊版の拡散に対処するための国際的な約束に関する構想について引き続き協議する。
4.日米両政府は、規制改革イニシアティブの下、デジタルコンテンツの海賊版対策に向けて協力する方法について協議を行ってきた。
5.日米両政府は、知的財産権の保護戦略を議論する共同会議やセミナー等を開催する可能性を追求するため、引き続き企業及び産業団体と協力する。これには、知的財産権の執行活動に関する情報共有を含む。
D.オンライン・セキュリティの促進
1.プライバシー:個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)は、2005年4月に全面施行された。同法が各事業分野に共通する最小限の要素を示したものであることを踏まえ、策定・見直しされたガイドラインは、各事業分野特有のものとなっている。関係省庁は、各審議会における議論及びパブリック・コメントを踏まえ、これらのガイドラインの策定・見直しを行った。日本国政府は、同法の実施について、透明性・一貫性が確保されるとともに、効果的になるよう努力している。同法及びガイドラインの実施に当たって、関係省庁は相互に緊密な連絡を保ち、協力する。日本国政府は、透明性を確保し、民間部門の自主的な取組みを尊重するとともに、個人情報保護法の実施に関するよりよい理解を促進することが重要であると認識している。
a.2006年6月8日、内閣府、金融庁、総務省、経済産業省及び厚生労働省は、米国及び日本の事業者を対象とした個人情報保護法に関する第3回目のセミナーに参加するために専門家を派遣した。同セミナーは、参加者にとって、同法の実施に関する理解を深めるための有益な機会となった。
b.日本国政府は、インターネットの活用、説明会の実施等により、同法に関する周知徹底を図る。関係省庁は、法律に対する違反や是正措置に関する情報が事業者の法遵守に役立つことを認識し、適宜、それらの情報を公表する。内閣府は、報告の徴収・助言等の権限行使の状況等、毎年度の同法の施行状況について、主務大臣からの報告をとりまとめ、その概要を公表する。
c.関係省庁は、各事業分野のガイドラインの規定が任意か義務かについて、また、任意のガイドラインに従わなかった場合に罰則が科されないことについて、必要に応じて明確にする。この点について、経済産業省の「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」には、規定が義務か任意かを明確にする文言が含まれている。
d.基本方針に記されているとおり、内閣府は、個人情報保護法の施行状況について、同法の全面施行後3年を目途として検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。関係省庁は、各分野のガイドラインについて、各事業分野の実情に応じて見直しを行う。
2.オンライン上の迷惑、欺瞞行為及び詐欺:日米両政府は、企業及び消費者に悪影響を及ぼし、IT及び電子商取引の導入と円滑な機能を妨げるスパム、フィッシング及びその他の形態によるオンライン詐欺に対し懸念を有する。日本国政府は、インターネット・サービス・プロバイダやモバイル事業者といった民間事業者と緊密に協力し、多面的なスパム、フィッシング対策等を推進している。日本国政府は、オンライン上の迷惑・詐欺行為の対策を目的とした活動をさらに推進する。スパムやフィッシング等のオンライン上の迷惑・詐欺行為は、グローバルな性格を有していることから、日本国政府は、引き続き情報交換を通じ、また、OECDやAPECといった国際機関や二国間協議の枠組み等の活用を通して、米国政府との連携を深める。
a.日本国政府は、民間部門と緊密に連携して、スパム、フィッシング及びその他のオンライン詐欺に対処するため、産業界主導の技術的解決策や消費者教育などを含む対策を推進する。総務省は、電気通信事業者等の民間事業者とともに「フィッシング対策推進連絡会」を2005年1月から定期的に開催し、情報の共有に努めている。また、同年4月、経済産業省の提言を受け、民間部門等により「フィッシング対策協議会」が設立され、情報収集・提供、注意喚起等の活動を推進している。
b.日本国政府は、送信者情報を偽った送信の禁止及び当該禁止行為違反に対する直罰規定の導入を含む改正を行った「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(迷惑メール法)」を精力的に執行している。
c.総務省は、民間部門が主催するセミナーでの講演等の活動を通し、スパムに対する技術的対策の理解を促進している。総務省はまた、テクノロジー企業及びインターネット・サービス・プロバイダが日本においてスパムをフィルター及びブロックするための新技術を開発及び活用するにあたって、憲法における通信の秘密の規定と電気通信事業法がどのような影響を与えるかについて、民間部門の理解の向上を支援している。
d.日米両政府は、スパムに対する関心を高め、ベスト・プラクティスを明らかにし、さらにオンライン上の危険に対処するための官民の協力を促進すべく、協力して2006年4月に日米金融テクノロジーセミナーを開催した。同セミナーには、日米の企業を含む多くの関係者が参加した。
e.日米両政府は、スパム、フィッシング及びオンライン詐欺に関するベスト・プラクティスを向上させるために、引き続き情報と経験を共有する。
3.政府の情報セキュリティ:日本国政府は、日本の公的部門・民間部門双方における情報セキュリティの水準を引き上げるために、引き続き努力を行っている。2005年4月に設立された内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)は、この課題に対処するため、指針を提供したり、政府機関の協調を推進したり、民間部門との協働を行う上での指導的な役割を担っている。
a.NISCが「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準」(政府機関統一基準)の全体版初版の草案に対して、30日間のパブリック・コメントの募集を実施し、受け取った意見を注意深く精査した後に、情報セキュリティ政策会議(ISPC)は、2005年12月13日に政府機関統一基準を決定し、発表した。加えて、NISCは受け取った意見とそれに対する考え方を、NISCのウェブサイト(www.nisc.go.jp)に公表した。
b.日本国政府は、政府機関統一基準を実質的に変更する際にはできるだけ広く一般の意見を得ることが重要と考えている。全府省は、政府機関統一基準に従って最低限の情報セキュリティ対策を実施することが求められている。NISCは、政府機関統一基準の導入と評価、見直しを含めた”PlanDoCheckAct”のサイクルを通じて、各府省による実施を評価する予定である。
c.2005年12月、ISPCは「第1次情報セキュリティ基本計画」の草案に対する30日間のパブリック・コメント手続を実施した。ISPCは2006年2月に最終版を決定し、発表した。
d.総務省は、「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」について、2006年9月までに地方公共団体の特性を反映した形で見直しを行う。
e.日米両政府は、適宜、政府の情報システムの安全性を高める両国の取組みを改善するために、情報や経験を交換する。
E.IT関連の金融改革、医療におけるIT、及びeアクセシビリティ
1.IT関連の金融改革:2004年末に金融庁によって策定・公表された「金融改革プログラム」において、金融庁は、日本の金融機関の競争力を強化し、金融のインフラストラクチャーを更に発展させるため、情報技術の戦略的活用を推進する方針である。同プログラムは、金融サービス提供者が、利用者のニーズに対応した多様で良質な金融サービスを提供できる環境を整備する施策の一つとして、「電子的な資金決済・支払い、電子的金融取引に関する法制の整備に向けた検討」を掲げている。
a.金融庁は、金融サービスにおける情報技術への投資を推進する上で、革新的な技術の開発と配備を通じて、民間部門が主導的役割を果たすことを確認する。
b.金融庁は、金融セクターにおける情報技術の活用に関する情報や統計を集めて公表することにより、情報技術への投資を実施する上で金融セクターを支援する。このプロセスの一環として、金融庁は、日本における全ての預金取扱金融機関、証券会社、保険会社に対して情報技術の活用状況に関する調査を2005年夏に実施し、その結果を2005年9月に公表した。金融庁は、そのような情報を共有する機会を金融機関等に提供するため、「ITキャラバン」を2006年度に実施する予定である。
c.金融庁は、昨年4月、金融審議会の下に「情報技術革新と金融制度に関するワーキンググループ」を設置した。このワーキンググループでは、民商事法制学界の専門家、金融学界の専門家、金融サービス事業者及び情報技術の専門家等、様々な分野の有識者が、e-キャッシュ等の電子債権や新しい電子的支払サービスについて検討し、審議内容に関するとりまとめを逐次公表している。
d.金融庁は、IT戦略本部、経済産業省、法務省、その他関係省庁と緊密に連携し、情報を交換するとともに、民間部門に予見可能性を与えるべく、日本の情報技術関連の金融改革と他の情報技術及び電子商取引規制やその政策との一貫性を促進している。
2.医療におけるIT:日本国政府は日本の医療の質、安全性及び効率を高めるためにITの活用を促進している。また、日本国政府はカルテやレセプト処理等にITを用いた解決法を迅速に導入することを促す方策を立案し、実行している。
a.厚生労働省は2005年5月の標準的電子カルテ推進委員会の最終報告において、医療情報交換の国際的標準であるHLが情報交換標準として実装されるべきと提言した。ある限定された環境においては、特定の技術を採用することが不可避である場合もあるが、日本国政府は医療におけるITの分野において、適切かつ実際的な範囲で技術的中立性を維持するよう引き続き努力する。
b.厚生労働省は、2006年4月10日の「療養の給付、老人医療及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令」の改正により、2011年度当初から、全ての医療のレセプトは、原則としてオンラインで提出されるべきこととした。
3.e-アクセシビリティ:日米両政府は、両国におけるe-アクセシビリティに関する取組みについて更に協調し理解を増進するため、この分野におけるそれぞれの取組み及び優先事項に関する情報を必要に応じて引き続き交換する。
F.IT調達改革の推進
1.改革実施の推進:2006年1月、情報システムに係る政府調達府省連絡会議(連絡会議)は、インターネット上において、同連絡会議における取り決め事項(取り決め事項)にまとめられた改革の各府省による2004年度における実施状況に関する「フォローアップ調査」の結果を公表した。当該調査結果によると、多くの分野において進展が遂げられたが、いくつかの分野において、改革実施努力が続けられている。連絡会議は、引き続き、各府省による取り決め事項の改革の実施状況を把握するとともに、遅滞なくこの過程が完了するよう働きかる。
a.フォローアップ調査によると、内閣府において情報システムに係る調達計画における競争入札参加資格の柔軟性を向上させる措置を講じた他、9府省において中小企業からの報システムに係る調達を推進するための措置を講じた。連絡会議は、未だこれらの分野における改革を実施していない府省に対して、取組みが推進されるよう働きかける。
b.また、フォローアップ調査によると、2004年度、5府省が計13の情報システムに係る調達において、契約者間の責任分担の定義と制限をより明確化するための措置を講じた。これら5府省を含む連絡会議構成府省は、取り決め事項に従い、今後の全ての情報システムに係る調達契約において、政府と企業間の責任分担の適切な範囲を明確に定義し、設定するための同様の措置を着実に講じる。
c.「知的財産推進計画2006」で述べられているように、日本国政府は2007年の通常国会に関連法案を提出する準備を進めている。この法案は、ソフトウェアを含む政府が発注する情報システムの開発において生じた知的財産権を受託者に帰属させることを可能とすることにより日本版バイドール制度の適用範囲を拡大する。
d.総務省は、各府省の調達担当官に対し、知的財産分野の専門知識を向上させるべく、政府調達における知的財産事項に関する研修コースを引き続き提供するとともに、研修内容の充実を図る。当該研修は、調達担当官に対し、受注者又は第三者の既存の知的財産権を保護するために受注者が措置を講ずることを認めることを奨励する取組みを含む。
e.全ての連絡会議構成府省は、低入札価格調査基準を設定し終えており、これは、情報システムに係る調達における透明かつ公平な競争を促進する取組みを向上させる。
f.日本国政府は、情報システムに係る調達事例データベース(http://cyoutatujirei.e-gov.go.jp)が、情報システムに係る調達における透明性、公平性を向上させるための効果的なツールであることを確保するよう引き続き取組む。この目的の達成を助けるため、連絡会議は、
(1)各府省が調達事例データベースの目的と機能を十分に認識することを確保するために周知の取組みを促進し、全ての府省が必要な調達事例情報を、遅滞なく調達事例データベースに登録するよう働きかける。さらに、
(2)競争入札と随意契約比率の変化や、国庫債務負担行為の活用、ライフサイクル・コストや総合評価落札方式(OGVM)等の入札価格方式の採用など、情報システムに係る調達の傾向の把握を助けるため、調達事例データベースにおける情報の分析と結果の公表を行う。
2.調達プロセスの改善:情報システムに係る調達プロセスをより改善するために、各府省は、落札者選定後、可能な限り速やかに契約が締結されるべきであることを認識する。
III.医療機器・医薬品
A.日本の医療制度の変更:厚生労働省が医療制度の変更を検討し実行する際には、米国業界を含む業界は、その事項が医薬品及び医療機器の保険償還制度に係るものである場合には、厚生労働省及び中央社会保険医療協議会(中医協)に対して意見を表明できる。
B.医療機器及び医薬品の価格制度改革及び関連事項
1.保険償還価格制度の変更:医療機器及び医薬品の保険償還価格制度の変更が行われる際には、厚生労働省は、革新の価値、市場の重要な役割並びに先進的な医療機器及び医薬品が適時に患者に提供されることの必要性を考慮する。
厚生労働省は、医療機器及び医薬品の保険償還価格決定のプロセスの透明性を引き続き確保する。厚生労働省は、米国業界を含む業界に対し、価格設定ルールの見直しに先立ち意見を提出し、相談に参加する機会並びに中医協において意見を表明する機会を引き続き提供する。加えて、厚生労働省は米国業界を含む業界に対し、引き続き医薬品の価格制度に係る新たな提案について意見を提出する機会を与える。
厚生労働省は、中医協が保険償還価格改定の頻度の問題を議論する場合、米国業界を含む業界に対し、厚生労働省及び中医協に対して意見を提供する機会を与える。
厚生労働省は、革新的な医療機器、医薬品及び血液製剤の価値を認識し、2006年度において以下のような措置を講ずる。
厚生労働省は米国政府が、医療機器及び医薬品の保険償還価格が毎年変更されうるようないかなる制度にも強い反対を表明したことに留意する。厚生労働省は、革新的な医療機器、医薬品及び血液製剤の価値を認識し、2006年度において以下のような措置を講ずる。
a.医薬品
(1)補正加算:厚生労働省は、画期的な新薬が適切に薬価算定されることを確保するため、臨床上有用な新規の作用機序を有し、かつ、対象となる疾病又は負傷の治療方法を改善する医薬品も有用性加算(I)の適用を受けることができるように、有用性加算(I)の要件を緩和した。厚生労働省は、2006年4月1日、次のように画期性加算有用性加算(I)及び有用性加算(II)の補正加算率を引き上げた。
画期性加算:40%~100%→50%~100%
有用性加算(I):15%~30%→25%~40%
有用性加算(II):5%~10%→5%~20%
厚生労働省は、2006年4月1日、次のように補正加算率の傾斜配分の標準額を引き上げた。
内用薬:300円→500円
注射薬:1,500円→4,000円
外用薬:300円→500円
厚生労働省はまた、2006年4月1日に、3%~10%の補正加算率で新しく小児加算を導入した。厚生労働省は、画期的な医薬品が導入され、補正加算の要件を満たす場合には、補正加算を適用し、利用可能な加算率の範囲の使用を考慮する。
(2)医薬品の外国平均価格調整ルール:2006年度、厚生労働省は、医薬品の外国平均価格調整の適用のルールを変更した。そのルールの運用に当たり、厚生労働省は、適切な形で中医協の了解を得る。厚生労働省は、2005年度に、外国平均価格調整ルール等の医薬品の価格算定ルールの変更の実施について業界と意見交換を行ったところであり、引き続きこれらの問題について意見交換をする。
(3)薬価算定組織会議:厚生労働省は、2006年4月1日、新薬の補正加算の適用又は原価計算方式による算定を希望する薬価基準収載希望者に対し、新薬の償還価格が薬価算定組織会議により決定される前、最初の薬価算定組織会議において、提出した資料に基づき直接意見表明する機会を提供することを公式に開始した。これらの会議は、薬価算定組織が直接、かつ償還価格算定の過程の早期において企業から説明を聞くことができるようにすることにより、透明性を向上させる。
b.医療機器
(1)医療機器の価格設定:2006年度の医療機器の保険償還価格制度改革の過程において、厚生労働省は、医療機器の外国価格の収集に用いられる方法について米国業界を含む業界と十分相談を行った。厚生労働省は米国業界を含む業界に対し、中医協において意見を表明する機会を与え、中医協はその意見について議論を行った。厚生労働省は、医療機器の価格の再算定に当たり、米国業界を含む業界から提供されたデータのみを用い、引下げ幅の最大パーセントを維持した。厚生労働省は、医療機器の保険償還制度の調整について、引き続き業界と相談する。厚生労働省は、日本の規制及び流通のシステムが医療機器の国内価格に与える影響を調査するとの中医協の勧告に従う。厚生労働省はまた、医療機器分野における日本国内での事業実施のコストに関する米国業界を含む業界による調査を検討する。
(2)医療機器の外国価格参照制度:中医協の基本方針に従い、厚生労働省は、医療機器の外国価格参照制度に係る施策について検討する。米国政府は、厚生労働省が次期価格改定までに医療機器の外国価格参照制度を廃止し、日本における市場の要素に基づく新たな償還制度を用いることを要求したことに、厚生労働省は留意する。外国価格参照制度が実施されている間、厚生労働省は価格データの収集について米国業界を含む業界と引き続き相談する。
(3)C1、C2の価格設定:C2に区分される医療機器について、厚生労働省は2006年度に、保険収載の頻度を年4回に増やし、2006年4月に既に一つの機器をC2として収載することを決定した。厚生労働省は、引き続きC1への分類とその加算を適切かつ迅速に提供する。厚生労働省は引き続きC1への適合性及び加算に関する基準を明確にするための米国業界を含む業界からの質問に対応する。厚生労働省はC1に該当した製品についての情報を引き続き業界に提供する。
2.診断用品:厚生労働省は診断用品(体外診断用医薬品及び画像診断機器を含む)の臨床的価値を引き続き認識する。厚生労働省は、付加的な臨床的価値を有すると考えられる個々の製品試験の分野について、米国業界を含む業界と対話を行う用意がある。2006年4月1日、画像診断機器の保険償還価格改定において、厚生労働省は革新的な製品に加算を与えることにより、従来型の製品と革新的な製品との質の差を認めた。厚生労働省は、先進的な体外診断用医薬品を引き続き迅速かつ適切に保険償還する。
3.データの独占権:知的財産戦略本部により決定された「知的財産推進計画」の一環として、日本国政府は医薬品の試験データに関して8年間の保護期間を検討している。新医薬品の開発に対するより大きなインセンティブを与えるために、厚生労働省は、米国業界を含む関係業界団体との意見交換を継続しつつ、引き続き、当該事項の検討を続ける。
4.血液製剤:厚生労働省は、2006年4月1日、改正薬事法の施行のコストを認め、ほとんの血液製剤の価格の引き下げを行わなかった。厚生労働省は、引き続き価格算定制度に関して米国業界を含む血液製剤業界と相談する。
C.医療機器及び医薬品の制度改正及び関連事項
1.医薬品医療機器総合機構の必要な資源:2006年度、厚生労働省と医薬品医療機器総合機構(総合機構)は、安全で有効で革新的な医療機器及び医薬品の導入を速めるための努力を増加する。また、厚生労働省は、総合機構がその達成目標を達成するための資源を得ること16第5回報告書日本国政府による措置を保証する。厚生労働省は、総合機構が、特に、その医薬品と医療機器の審査と安全確保を行う能力を高めるための適当な職員を雇うことによってその資源と専門性を高めることを保証する。厚生労働省は、総合機構がその職員数を2009年3月31日までに346名にするとの目標を達成することを確保する。厚生労働省は、総合機構が、その審査担当者に対して、研修の機会を与え、またその人事方針をとおしてその専門分野における知識を深めることを確保する。2005年度には、総合機構は、審査担当者に対して数回の適切な研修の機会を与えた。
2.医薬品の達成指標:総合機構は、新医薬品申請に係る審査の各段階を完了するのに総合機構が要した時間と、処理した申請数に関する統計を適時公表している。厚生労働省は、総合機構が、その審査を効率化するために達成指標を使用することを確保する。総合機構の2005年4月から12月までの報告書に、新医薬品申請から初回面談まで、初回面談から専門協議まで、専門協議から審査結果通知まで、審査結果通知から承認までのそれぞれにかかった時間の指標が記載されている。総合機構は、6ヶ月毎にこれらの審査事務処理期間、すなわち総合機構が新医薬品申請を審査するのに要する時間の指標を公表する。2006年には、総合機構は、これに加えて、産業界に対して、通常審査品目と優先審査品目の審査期間を分けて示した指標を提示した。厚生労働省は、総合機構が、指標に関して業界と対話を続けるよう促す。
3.医薬品申請の滞貨:厚生労働省は、総合機構が、新医薬品申請の滞貨を2006年9月までに解消するよう促す。
4.審査官の専門性の向上:2006年度に、厚生労働省は、総合機構が、その優れた医薬品審査担当者を雇用する能力を高める方策を検討するよう促す。
5.医薬品の治験:厚生労働省と総合機構は、医薬品の世界同時開発の実現に役立つよう、内における治験の実施を促進する。厚生労働省と総合機構は、医薬品の世界同時開発を促進するための方策につき、引き続き業界と議論を続ける。厚生労働省は、米国業界に、特に厚生労働省の治験に関する小委員会において、治験について議論する意味のある機会を与える。
6.治験相談:総合機構は2006年4月に、2006年3月7日付け通知に基づき、対面による医薬品の治験相談に加え、書面による相談を試験的に開始した。また、総合機構は、2006年4月に、相談の概要の提供を開始した。総合機構は、治験相談の実施について検討し、またそれを改善するほか、治験相談申し込みから実施までの待ち時間を減少させるように努力する。
7.医療機器審査の改善:2006年度、厚生労働省と総合機構は医療機器の申請及び審査の向上のため業界と協働するとともに、この目標の達成を助けるため国内外の業界とのワークシップへの参加を継続する。厚生労働省と総合機構は2006年度に以下の措置を講ずる。
a.一部変更:厚生労働省は、変更が軽微でない場合に限り、製造業者に対し医療機器の一部変更承認申請を総合機構に行うよう求める。厚生労働省と総合機構は、いつ総合機構に一部変更承認を申請する必要があるかの理解を助けるため、追加的な具体的事例を製造業者に対して示す。厚生労働省と総合機構は、前の一部変更承認申請が審査中であっても、更なる一部変更承認申請を認める制度を設けるため、業界の協力を得て、多くの具体的事例について調査する。
b.医療機器審査担当者:厚生労働省は総合機構が、医療機器審査担当者を増員し、彼らが担当分野において専門家であることを確保するという中期目標を達成することを確保する。総合機構は2006年4月1日付けで新たに4人の医療機器審査担当者を雇用した。
c.医療機器申請の滞貨:厚生労働省は、総合機構がその設立以前の滞貨を解消し、2006年9月末までに審査待ちの新医療機器申請の量を通常レベルにすることを確保する。
8.医療機器の臨床試験:厚生労働省は、日本の臨床試験の実施の基準(GCP)と同等又はそれ以上GCPに従い実施された試験を日本が受け入れることを説明する通知を2006年3月31日付けで発出した。総合機構は日本以外で収集された適切な根拠が利用可能な時は、日本で臨床試験を実施することを求めることを引き続き差し控える。厚生労働省と総合機構は海外臨床試験データが日本で積極的に使われ、受け入れられていることを米国及び欧州の医療機器製造業者に知らせる。総合機構は引き続き、日本での補足的な臨床試験を求める決定について説明する科学的、統計学的妥当性を申請者に伝える。2005年度上半期において、日本は総計28の承認された医療機器のうち、20について海外臨床試験データだけに基づいて承認した。厚生労働省と総合機構は必要とされる臨床試験の基準を明らかにするとともに、医療機器の安全性と有効性を証明するに最低限必要な臨床試験データを受け入れる。
9.医療機器の品質システム:厚生労働省及び総合機構は、米国業界を含む業界に対し、供給業者及び滅菌業者への品質システム査察の適用の要否につき明確化する。品質システム査察を実施する際には、総合機構は、供給業者及び滅菌業者の負担を最小限にするよう努める。
10.医療機器の原材料データ:厚生労働省は総合機構が、最終製品の生物学的安全性に関する情報では製品の安全性を判断するのに不十分な場合にのみ、製造業者に原材料の情報の提供を求めることを確保する。2003年、厚生労働省は生物学的同等性の評価を生物学的同等性試験の国際規格であるISO10993に基づき行うことを通知した。厚生労働省は、申請者が特定の試験方法の選択に関する科学的な根拠を総合機構に提供した場合には、総合機構がISO1099シリーズに含まれるもの以外の生物学的同等性試験のデータを要求しないことを確保する。
11.医療機器の加速安定性試験:厚生労働省と総合機構は引き続き、製造業者が承認申請をした時点では加速安定性試験を受け入れ、審査の最終段階までは実測データを求めない。厚生労働省と総合機構は2006年度に米国の業界を含む業界と本件について話し合う。
12.医療機器の承認の更新:2005年4月1日以前に承認された医療機器の製造業者と輸入業者の負担を緩和するため、厚生労働省は改正薬事法の施行後、経過措置を講じた。関係者の意見を考慮し、厚生労働省は改正法による新たな規制の枠組みへの円滑な移行を確保する努力を続ける。厚生労働省は、改正薬事法によるある種の医療機器のクラス分類の変更に伴う製造業者と総合機構の資源に対する追加的負担を最小限にする。
D.血液製剤:厚生労働省は、米国の血液製剤製造会社を、その全ての製品について市場への公正なアクセスと製造の機会を与えることによって、公正かつ透明性をもって扱う。厚生労働省は、血液製剤の需給計画の実施が、外国製品に対して差別的なものでなく、透明で、日本の国際貿易上の義務に完全に従うものであることを引き続き確保する。2006年に、厚生労働省は、アルブミンとグロブリンの製造と供給に関する作業部会を設置した。米国業界は、引き続き、国内業界と対等な立場でその作業部会に参加する機会を得る。
E.栄養補助食品
1.透明性:厚生労働省は、栄養補助食品を食品のカテゴリーの一つとして規制しており、栄養補助食品を含む食品に関する規制の情報を引き続き公表していく。厚生労働省は、厚生働省ホームページの栄養補助食品のコーナーを引き続き改善し、この情報をアクセスし易い場所に掲載する。
2.啓発及び情報提供目的の説明:栄養補助食品の表示に関する国際的なガイドラインや規格について、日本国政府は、健康強調表示の規則に関する議論が行われているFAO/WHO合同食品規格計画(コーデックス委員会)において、これらの文書の策定に当たり引き続き積極的な役割を担っていく。2006年度、厚生労働省は、市場開放問題苦情処理体制(OTO)に勧告されたように、独立行政法人健康・栄養研究所のデータベースの情報を消費者に提供するシステムを構築するために業界と協働する。
3.輸入関税:日本国政府は、医薬品と同じ成分を含んでいる栄養補助食品を含め、関税水についてはWTO交渉において包括的に議論を続けることとする。
F.化粧品及び医薬部外品
1.効能の標榜:厚生労働省は、米国業界を含む業界と、化粧品と医薬部外品の広告と表示の規制に関する意見交換をする。
2.透明性:厚生労働省は、化粧品と医薬部外品の規制に関する透明性を引き続き高める。
a.厚生労働省は、規制が施行される前にそれらを理解するための十分な時間を事業者に与えるため、そのウェブサイトにおいて、新規の又は改定された通知や事務連絡を含む規制要件及び登録手続に関する詳細な情報を適時供給してきた。厚生労働省は、これら情報が一層容易に入手できるようにする方法を真剣に検討する。
b.厚生労働省は、化粧品と医薬部外品の広告に関するガイドラインを公表した。厚生労働省は、広告規制が一貫して実施されることを確保するため、定期的に都道府県の薬事監視員との協議の場を持っている。厚生労働省は、薬事法及び関連する政策における広告規制に関し、業界と意見交換を行う。
3.規制要件:厚生労働省は、業界を含む関係者と緊密に協力しつつその規制要件を、特に、その関連するガイドラインや政策を科学の進歩に併せてアップデートすることにより改善してきた。厚生労働省は、規制に関し、米国産業界を含む業界と意見交換を行う。
a.厚生労働省は、製品に関する基準が安全でありかつ実際的であることを確保するため、米国業界を含む業界と協働する。2005年の秋に、厚生労働省は、日本衛生材料工業連合会に、衛生パッドの基準を見直すことを依頼した。日本衛生材料工業連合会は、2006年6月に最終提案を厚生労働省に対して行う予定である。厚生労働省は、製品基準を省令レベルから下位の規制に落とすことを含め、業界からの提案を検討する。
b.厚生労働省は、相互の努力を通して審査プロセスを速める方策につき米国業界を含む業界と意見交換する。厚生労働省が都道府県に権限を委譲する場合には、(承認)申請に係るものを含め規制の執行が都道府県間で一律であることが期待される。厚生労働省は、(都道府県での)不一致を避けるよう努力する。
c.厚生労働省は、化粧品規制国際整合会議(CHIC)の議論に積極的に参加してきており、今後もそれを継続する。
IV.金融サービス
A.個別措置
1.貸金業制度の見直し:2005年3月以来、金融庁の「貸金業制度等に関する懇談会」は貸金業制度の見直しを議論し、2006年4月21日に「座長としての中間整理」を取りまとめた。金融庁は、貸金業制度の見直しを検討するにあたり、中間整理で示された意見や提案を尊重すべきであると認識している。
a.貸付金利規制を含む貸金業制度に関する諸問題についての与党内での議論、及び最近の最高裁判所の判決を踏まえ、金融庁は、消費者の多重債務を防止する観点から、どのような道筋をとることが適切か、更に検討を深める。
b.「貸金業制度等に関する懇談会」は、グレーゾーン金利は廃止されるべきであるとの意見で概ね合意に達した。
c.「座長としての中間整理」の議論を踏まえ、日本国政府は、債務者保護の必要性に配慮しつつ、貸金業規制法上の、電子通知を含む貸金業者による債務者への書面交付の手段について検討を続ける。
2.信用情報機関と信用情報:2006年4月21日に金融庁の「貸金業制度等に関する懇談会」においてまとめられた「座長としての中間整理」では、懇談会のメンバーは、「過剰貸付防止の観点から、貸し手が与信審査の精度を上げるために、信用情報機関の利用を促進する必要があることについては概ね一致した。」とされている。金融庁は、「座長としての中間整理」で示された意見や提案を尊重し、与党の関係者の意見も踏まえ、貸金業制度に関する諸問題について更に検討を深める。
3.投資顧問及び投資信託の規制の一本化と投資信託契約の統合:2006年6月に国会で成立した「証券取引法等の一部を改正する法律」及びその整備法の施行後、投資顧問業者、投資信託委託業者、証券会社等は、金融商品取引業者として、包括的・横断的な規制である「金融商品取引法」の下に監督されることとなる。この法律の施行時期は、関係政令で定められる予定である。また、2006年3月に国会に提出された「信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」の成立により「投資信託及び投資法人に関する法律」が改正されると、投資者保護等に配慮しつつ、投資信託の運営者による投資信託の統合が可能となる措置が導入される。(注:この法案は、次期国会において継続審議されることとなった。)
4.確定拠出年金
a.日本国政府は、老後の所得保障、労働移動及び投資者教育の観点から、日本の確定拠出年金制度の価値を認識している。
b.2005年10月、個人型年金からの中途脱退については資産額が50万円以下の場合、企業型年金からの中途脱退については資産額が1.5万円以下の場合について、少額資産の中途引き出しが可能となった。
c.厚生労働省は、確定拠出年金制度を実施している企業を通じた従業員への投資助言サービスを行うことの重要性を理解している。
d.日本国政府は、確定拠出年金法の規定に基づき、法施行の5年後に当たる2006年10月以降に、関係者の意見に留意しつつ、法の見直しの必要性について検討を行う。これまでの制度の施行状況を考慮し、厚生労働省は確定拠出年金制度の改善の努力を継続していく。
B.透明性
1.ノーアクションレター・法令解釈に係る照会制度:金融行政の透明性と予測可能性を更に向上させるため、金融庁は、2005年にノーアクションレター制度を改正し、制度の利便性及び効率性を更に高め、効果的な利用を促進することを確保するよう改善し、また、補完システムの充実を図った。具体的には、以下の措置を講じた。
a.金融庁は、一般の人々を対象に2005年6月に実施されたノーアクションレター制度に関するアンケートを踏まえ、ノーアクションレター制度に関する規則を改正した。(アンケートの結果は2005年10月に公表され、金融庁ホームページで閲覧できる。)改正規則は、以下の点を含む。
(1)照会受付後、金融庁はできる限り早期に回答するよう努める
(2)金融庁が近々改正を予定している法律及び規則も、照会の対象に含まれる
b.金融庁は、ノーアクションレター制度を補完する方法として、所管法令に関する金融庁の解釈を示す「法令解釈事例集」をホームページに掲載した。また、2005年4月、金融庁所管法令の直接の適用を受ける金融事業者及び関連業界団体が所管法令の解釈について一般的な照会をした場合に対する書面回答の手続をホームページ上に公表した。
c.金融庁は、2005年7月に「行政処分事例集」をホームページ上に公表した。このリストは、金融庁が行った行政処分の具体的事例を示すものであり、一般に公表され、その概要を閲覧することができる。また、金融機関及び関係団体が閲覧することにより、同様の法令違反の再発の防止に資すると考えられる。
2.「金融商品取引法」の立案過程の透明性確保:「金融商品取引法」の立法過程の透明性を確保する為、金融庁は、以下の措置を講じた。
a.金融庁は、金融審議会による中間整理を2005年7月に公表してパブリック・コメントを募集した。その結果、在日米国商工会議所(ACCJ)を含む国内外の関係者より100件以上のコメントが寄せられた。
b.また、金融審議会は、同審議会のメンバー、市場参加者、及び有識者による審議の結果を踏まえ、報告書(「投資サービス法(仮称)に向けて」)を2005年12月に公表した。
c.この審議に並行して、金融庁は、国内外の関係者からの意見提供の機会を確保するため国際銀行協会(IBA)を含む外国金融機関の関係団体の代表者と非公式な意見交換の場持ち、金融商品取引法の法制化のプロセスにおける透明性を確保するための最大限の努力を行った。
d.金融審議会の報告書を踏まえた「証券取引法等の一部を改正する法律」及びその整備法が2006年6月に国会で成立した。なお、金融庁は、今後の関係政省令の整備プロセスにおいても、パブリック・コメント手続を通じてそれらの法令を公表し、そのプロセスの透明性を確保する。
3.パブリック・コメント手続の活用:金融庁は、各種政省令等の改正にあたり、パブリック・コメントの募集を実施し、いかなる個人・団体も当該各種政省令等の改正について意見・情報を表明できる機会を確保するとともに、寄せられた意見に対する対応方針を公表している。また、2006年4月に施行された改正行政手続法では、パブリック・コメント手続が法律上の手続として定められ、原則として30日以上の募集期間を設けることとされた。金融庁はこの改正行政手続法を踏まえ、パブリック・コメント手続を適切に運用して、金融監督行政の透明性を確保する上で、更なる努力を行っている。
V.競争政策
A.改正独占禁止法の有効性の強化:日本国政府は,独占禁止法の強力かつ効果的な執行を通じ,競争市場を促進することを確約している。これに関連して、3月31日,小泉総理大臣は,公正取引委員会の執行権限と組織の見直し及び強化,独占禁止法執行の強化や公的部門の施設及びサービスを民間部門に委譲することを内容に含む新しい規制改革・民間開放推進3か年計画を発表した。さらに,日本は,競争政策を強化するため、以下の措置を講じ又は講じることとしている。
1.公正取引委員会の課徴金減免制度の効果の最大化:公正取引委員会の新しい課徴金減免制度が、2006年1月4日に施行され、カルテル又は入札談合の存在を公正取引委員会に報告した最初の3社に対して,課徴金を免除又は減額することとなった。課徴金減免制度の効果を最大化し,積極的な利用を促進するため,公正取引委員会は、
a.「課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則」を,関係する申請書式の様式及びこれら様式の記載上の注意事項とともに公表した。
b.「改正独占禁止法に伴う新規則に対する公正取引委員会の見解:公正取引委員会規則の原案に対して寄せられた意見と公正取引委員会の考え方」において課徴金減免申請に係る必要事項を明確にし、2006年4月11日,公正取引委員会のホームページで英訳を公表した。この文書において,公正取引委員会は,外国語資料の日本語への翻訳要件が課徴金減免制度の潜在的申請者に対する申請提出の遅延の原因とならないよう確保するため,申請者は独占禁止法違反を証明する必要資料の抄訳を提出し,翻訳全文は、公正取引委員会より要請があれば,後日提出すればよいことを明確化した。
c.課徴金減免の申請について秘密性が確保されるよう,以下の点を明確化した。
(1)公正取引委員会は,課徴金減免制度の申請者から提出された報告内容を裁判所及び他の機関に対して開示しない方針である。
(2)課徴金減免制度の申請者は、違反行為の詳細等については,文書に代えて口頭による報告を行うことを許可される。
2.独占禁止法違反行為に対する抑止効果の強化及び独占禁止法遵守の促進:独占禁止法による抑止効果の強化及び企業の独占禁止法遵守の促進を図るため,公正取引委員会は,
a.公正取引委員会に対する犯則調査権限の導入を踏まえ,2005年10月,「独占禁止法違反に対する刑事告発及び犯則事件の調査に関する公正取引委員会の方針」を公表した。
(1)公正取引委員会は,悪質かつ重大な独占禁止法違反行為等に対して,新しい犯則調査権限を活用し,このような違反行為に従事した会社及び個人に対する摘発及び告発を積極的に行う。
(2)これに関連して,公正取引委員会は,し尿処理施設工事の入札談合に係る審査において犯則調査権限を用い,2006年5月及び6月に、11社及び個人11人を告発した。
b.「特許・ノウハウライセンス契約に関する独占禁止法上の指針」の見直しを行う予定であり、夏までに原案を公表し,外国の経済界や米国政府を含めた各方面からのコメントを募集した後,最終決定する予定である。
3.公正取引委員会職員の経済的分析能力及び資源の強化:公正取引委員会は,人員と予算を着実に増やしている。公正取引委員会の人員は2007年3月31日には合計737名となる予定である。公正取引委員会は、2001年以降,大学院レベルの教育を受けたエコノミスト5名を採用し,その能力を業務に活用している。公正取引委員会は、今後も引き続き、研修や実務経験の蓄積等を通じて職員の経済的分析能力の向上を図り、適切な形で体制強化を図る。
B.公正取引委員会の審査及び行政手続の公正性の確保
1.排除措置命令及び課徴金納付命令における事前手続:公正取引委員会は,事前手続制度を導入し,排除措置命令又は課徴金納付命令の名あて人となるべき者に対して,当該命令案を事前に通知することとした。公正取引委員会は,事前通知の際に,名あて人となるべき者からの要求に基づき,公正取引委員会が認定した事実及び課徴金の計算の基礎について説明し,命令の根拠となった違反行為を証明するために必要な証拠を提示する用意がしてある。命令の名あて人となるべき者は,当該命令が発せられる前に,公正取引委員会に対する意見申述及び証拠提出の機会が与えられる。また、命令の名あて人となるべき者は,原則として,事前通知から公正取引委員会への意見申述及び証拠提出までの間に、約2週間の猶予が与えられる。ただし,公正取引委員会が,名あて人となるべき者に対する説明を行うために,さらに時間が必要であると判断した場合には,そのような状況を考慮して、名あて人となるべき者に対して意見申述及び証拠提出のためにより長い猶予期間を設定することとしている。
2.警告における事前手続
a.2006年1月の改正独占禁止法施行に伴い,公正取引委員会は、独占禁止法違反被疑行為に対して警告を行う際の事前手続を導入した。具体的には,公正取引委員会は、警告の発出に先立ち,警告の名あて人となるべき者に対して警告書案を手交し,公正取引委員会に対する意見申述及び証拠提出の機会を与えることとしている。
b.景品表示法違反被疑行為に関しても,独占禁止法違反被疑行為に対する警告と同様の事前手続を導入している。
3.独占禁止法基本問題懇談会
a.独占禁止法基本問題懇談会事務局は、同懇談会の会議資料及び議事録については、引き続きホームページ上で公開する。
b.懇談会は、2006年夏に中間報告をとりまとめた上、関心を有する外国の関係者及び団体を含め、中間報告についてのパブリック・コメントを提出する機会を設ける。
C.効果的な談合対策
1.行政上の措置軽減:公正取引委員会の課徴金減免制度を創設する独占禁止法の改正を踏まえ、国土交通省は、2006年2月、特定の入札談合事案に関し公正取引委員会の課徴金減免制度の適用を受けた企業について、公正取引委員会による開示によって当該企業が課徴金減免制度の対象となった事実を国土交通省が認識した場合には、当該企業に対する指名停止期間を半分に短縮する行政上の措置軽減を実施することとした。他の行政機関及び政府関係機関におけるこのような行政上の措置軽減の実施は、各機関において決定される。
2.行政上のペナルティ
a.国土交通省は、2005年9月より、10年以内に入札談合を再度犯した企業に対しては、指名停止期間の下限を2倍にするという方針を公表した。例えば、重大な独占禁止法違反行為を再度犯した企業に対する指名停止期間の下限は、6ヶ月間から12ヶ月間に引き上げられた。この措置は、改正独占禁止法の施行日と同じ2006年1月4日に実施された。
b.入札談合の再発を防止するため、2005年7月より、国土交通省は、2003年6月の違約金特約条項の導入以前の契約であっても、工事契約における入札談合に関与していた企業で、公正取引委員会及び(又は)司法当局により入札談合と認定された企業に対し、損害賠償請求を行うこととした。
3.競争入札
a.公正な競争を促進し、不正行為を排除するため、2006年5月23日、「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針」を改訂する閣議決定がなされた。この改訂は、一般競争入札の拡大、入札監督の強化、不正行為に対する指名停止措置の厳正な運用、官製談合の排除・防止の徹底を含むものであり、入札談合の防止に寄与するものである。
b.国土交通省は、WTO政府調達協定の基準額以上の価額の公共事業に係る一般競争入札においては、各企業の本社又は支店の所在地を参加資格要件としていないことを確認する。
4.利益相反-天下り:公共事業に対する国民の信頼を確保するため、国土交通省では、次の措置を講じた。2005年7月29日の入札談合再発防止対策の一部として、国土交通省は、
a.全ての国土交通省職員について、昨年発生した鋼橋工事に係る入札談合事件に関与した企業への再就職の自粛
b.国土交通省の幹部職員について、退職後5年間、直轄工事受注企業への再就職の自粛の要請を行った。
VI.透明性及び政府慣行
A.パブリック・コメント手続
1.日本国政府は、行政上の規則制定過程の透明性を高め、公正性を確保するため、パブリック・コメント手続の改善に引き続き取組んでいる。パブリック・コメント手続の法制化を含む改正行政手続法が2006年4月1日から施行された。この法律には、パブリック・コメント手続を強化するための以下のような多くの改善策が含まれている。
a.各省庁は、命令・規則案や関連する資料を、インターネットや必要に応じ他の手段を用いて公示・公表する。
b.原則として、最低30日間の意見提出期間を設定する。例外的に意見提出期間が30日未満の場合は、省庁は、命令・規則案の公示時に、意見提出期間を短縮するとの決定に至った理由を明らかにしなければならない。
c.各省庁は、全ての提出された意見を十分に考慮する。
d.各省庁は、提出された意見の全文又は要約に加えて、意見がどのように取り入れられたか又は取り入れられなかったかということと、その決定の理由を公示する。
2.日本国政府は、改正行政手続法が、行政上の規則制定の過程において意見提出のための有意義な機会を効果的に提供することを確保することについての必要性を認識している。総務省は、引き続き、各省庁におけるパブリック・コメント手続の実施状況の包括的な年次調査を行い、公表する。これに関連し、関係省庁と密接な連携を図る。
3.加えて、日本国政府は、行政手続法がそのような意見提出のための有意義な機会を効果的に提供することを確保するために、必要な措置をとることを考慮する。
B.日本法令の外国語訳:日本国政府は,平成18年3月23日,有識者及び関係省庁を構成員とする法令外国語訳実施推進検討会議において取りまとめられた最終報告を受け,平成18年度から平成20年度までの翻訳整備計画に従い,約200本の法令の翻訳整備が行われるよう必要な置を講ずることなどを決定した。また,平成18年4月には,日本国政府は、内閣官房のホームページにおいて,本取組みに関する情報提供を開始した。日本国政府は,今後,翻訳整備計画を着実に実施できるよう努力するとともに,同計画の見直しを検討するに際し,引き続き外部の意見や要望を聞く予定である。
C.APEC透明性基準:日米両国は、APEC各メンバーの国内法体制においてAPEC透明性基準が完全実施されるよう、引続き、各メンバーに対し協力して働きかけていく。
D.構造改革特区
1.小泉内閣は、引き続き構造改革特別区域を日本の経済活性化計画における優先度の高い事項としている。2003年4月に第1弾として57の特区を認定して以来、特区の合計数は2006年3月31日現在で630に達した。
2.成功を収めた特区の経済効果を日本経済に広く普及させるため、日本国政府は、成功した規制の特例措置を可能な限り迅速に全国規模で展開するとともに、特区の提案から規制の特例措置の適用に至るプロセスの全てを透明性を持った形で行っていく。日本国政府は、2006年3月31日現在で、64の特例を評価し全国展開した。日本国政府は、引き続き、特区で行われ成功した規制改革を全国展開していく。
3.日本国政府は、また、特区に関する情報についての外国関係者からの照会に可能な限り対応している。日本国政府は、引き続き、特区の透明性と有効性を確保していく。
E.政策策定における市民参加-審議会等
1.日本国政府は、審議会等に関する強い透明性基準を策定することにより、日本における審議会等の透明性やアクセスを高めるべきという米国政府の見解を認識しているが、審議会等27第5回報告書日本国政府による措置についてはそれぞれの設置法令や平成11年4月の審議会等整理合理化に関する基本的計画に関する閣議決定等にしたがって、議事録の公開や利害関係者からの意見を聴取する機会を設けるよう努めるなど各府省において運営がなされているところである。
2.審議会等のリスト及びそのメンバーリストについては、電子政府の総合窓口(http://www,e-gov,go,jp)により、電子的にアクセスが可能になっている。
3.日本国政府は、今後とも、引き続き、審議会等の透明性やアクセスに関する上述の取組みを推進していく。
F.法案策定への市民によるインプット:幾つかの府省は、その判断で、策定中の法案に対し、法案が国会へ提出される前に、一般市民によるインプットの機会を設けてきた。
G.保険契約者保護機構
1.2006年4月1日に施行された改正保険業法により、保険会社が破綻した場合に資金援助の財源として政府補助を含む保険契約者保護機構(PPC)制度の存続期間が延長された。また、改正法では、2006年4月1日から3年以内にPPCの財源制度についての見直しを行うこととなっている。
2.この見直しを行うにあたり、金融庁及び政府の関連審議会等は、民間の利害関係者(外資系保険会社を含む)に対して、要請に応じて、その見直しに関する情報を提供するとともに、意見表明や意見交換の有意義な機会を提供する。
H.保険商品の銀行窓販
1.2004年3月31日の金融審議会第二部会報告書を踏まえ、2005年7月8日に保険業法施行規則が改正された。
2.この改正により、2005年12月22日に銀行の窓口において一部の保険商品の販売が解禁され、銀行を通じた保険販売に関する消費者保護のための弊害防止措置が講じられた。金融庁は、2007年12月まで、弊害防止措置の実効性についてのモニタリングを行った上で、すべての保険商品の銀行における販売を解禁し、全面解禁に先立ち関連する技術的な準備を行う予定である。
3.規則の改正の過程において、金融庁は、国内及び外国の保険会社や銀行を含む幅広い関係者からの意見を考慮し、保険業法の関係政省令の改正案についてパブリック・コメントを募集した。
4.金融庁は、銀行による保険募集の状況をモニタリングする過程において、必要に応じて、保険会社、銀行、その他の関係者からの定期的なヒアリングを行う。
5.日本国政府は、銀行窓販に関わる規制が、消費者保護を確保するとともに、特定の商品やサービス提供者を優遇することなく公平に実施されることが重要であると考えている。
I.共済
1.いわゆる無認可共済については、2006年4月1日に施行された改正保険業法により、法の適用範囲が拡大されて、無認可共済がその対象に含められ、少額短期保険業者制度が導入された。
2.この制度見直しの検討過程において、金融庁は金融審議会を開催し、外資系保険会社と意見交換を行ったほか、政省令改正案をパブリック・コメント手続に付した。
3.改正保険業法は、その施行日から5年以内に、金融庁が少額短期保険業者について見直しの検討を行う旨規定している。この見直しを行うにあたり、金融庁は、必要に応じて、その検討に関する情報や、外資系保険会社を含む保険会社や他の関係者が意見を表明する有意義な機会を提供する。
4.認可共済に関し、日米両政府は、近い将来、金融庁以外の省庁が規制する各共済の規制や監督の整合性を評価するための検討が行われるべきであり、またそのような検討は、利害関係者に対して意見表明を行う機会を与えるなど、透明な形で行われるべきであるという米国政府の見解に関し議論を行った。
J.農業関連の政府慣行
1.日本国政府は、公的防除及び危険度解析に関する国際植物防疫条約(IPPC)基準に基づいた、より国際的に認可された植物検疫システムを採用するために、2005年において有意義な措置を講じた。
2.日本国政府は米国政府によって特定された4種類の害虫に対する検疫措置及び(又は)検査手続の改正に関し大きな進展を遂げた。日本国政府は、残り4種類の害虫を検疫措置の対象とすべきかどうか判断するための病害虫危険度解析(PRA)を引き続き実施する。
VII.民営化
A.特殊法人の民営化
1.2001年12月19日、日本国政府は、特殊法人等整理合理化計画を閣議決定した。同計画の29第5回報告書日本国政府による措置実施に際し、2006年3月末までに、日本国政府は、対象163法人のうち136法人の組織形態について、法改正等の所要の措置を講じた。
2.日本国政府は、引き続き特殊法人の再編及び民営化に取組んでおり、今後とも、パブリック・コメント手続の積極的な活用や、適切な場合にはその他透明性の確保に資する手段を通じ、透明な形でこの改革を進めていくこととしている。
3.整理合理化計画の実施状況の評価・監視を行うため日本国政府により設置された民間からの有識者により構成される特殊法人等改革推進本部参与会議が、2002年7月の発足以来、49回開催された。その議事要旨及び会議資料は公開されている。
B.日本郵政公社
1.郵便貯金・郵便保険に対する対等な競争条件
a.日本郵政株式会社、郵便事業会社、郵便局会社、郵便貯金銀行及び郵便保険会社の財務情報は、他の民間企業と同様に、会社法、銀行法、保険業法、その他の関係法令を含めた規制の下で開示されることとなり、また、公開資本市場において取引される場合は、金融商品取引法(証券取引法)の開示規制を受けることとなる。郵便貯金銀行、郵便保険会社、日本郵政株式会社及び郵便局会社の相互の取引関係は、アームズ・レングス・ルールを含め、銀行法及び保険業法の義務に服することとなる。銀行法及び保険業法の下での会計規則の適用にあたっては、これらの4会社は、銀行法及び保険業法の「特定関係者」の要件に該当することとなる。
b.郵政民営化関連法には、損益が明確にされることを確保し、他の事業により影響を受けるリスクを排するため、新たに設立される金融会社と非金融法人との間の事後的な内部相互補助を可能とするスキームは規定していない。民営化関連法によれば、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構は、日本郵政公社から承継した郵貯・簡保契約を、適切かつ確実に管理することを目的としている。日本郵政公社は、2007年9月30日の財務諸表を独立した会計監査人による監査を受けて作成し、公表することとなる。独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構に承継される資産及び負債は、評価委員会の評価を受けることとなる。この評価は、日本の一般会計原則に従って行われることとなる。日本国政府は、この評価の適時開示が重要であるという米国政府の見解に留意する。独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構は、独立行政法人通則法に基づき、毎年の財務諸表を、日本の一般会計原則に従い、独立した会計監査人による監査を受けて作成し、公表することとなる。民営化関連法は、承継された民営化前の契約から生じる資産運用は、2007年10月から預金及び再保険契約により、郵便貯金銀行と郵便保険会社に委託されることを規定している。2007年10月以降、これらの預金及び再保険契約は、銀行法及び保険業法に基づき、金融庁の監視・監督に服することとなり、商業ベースの取引となる。さらに、郵政民営化関連法は、当初の預金及び再保険契約は、承継計画に規定され、(2007年10月より前に行われる)政府の認可に先立ち、新金融会社と他の民間金融機関との競争条件を考慮しつつ、郵政民営化委員会(有識者からなる第三者機関)によってレビューされることとしている。
c.郵政民営化を規定している法律上、郵便局会社が、郵便保険会社以外の民間保険会社と生命保険募集委託契約を締結することや郵便貯金銀行以外の民間銀行と銀行代理店契約を締結することは可能である。郵便局会社のネットワークを利用する点において、郵便貯金銀行と他の民間の銀行や金融機関との間で、また、郵便保険会社と他の保険会社との間でイコールフッティングは現に確保されているところである。
d.2007年10月1日以降、郵便貯金銀行が受け入れる預金及び郵便保険会社が募集を行う生命保険商品には政府保証は付されない。これらの商品は2007年10月1日以降、政府保証がなくなり、預金保険機構や生命保険契約者保護機構により保護されることを世間に周知する努力がなされている。民営化以降、「政府保証がある」といった虚偽のことを告げてそれらの商品を販売する行為は、銀行法及び保険業法において禁止されている。
e.独占禁止法及びその他の法律は、その他のいかなる民間企業に対するものと同一の条件・基準により民営化会社に対して適用されることとなる。
f.社会・地域貢献基金については、社会・地域にとってその実施が真に必要であるが、民間企業では実施困難なサービスに対して資金を交付するものであり、郵便局会社、郵便事業会社、郵便貯金銀行又は郵便保険会社に不当な特典を与えるものではない。また、地域貢献業務の実施に当たっては、郵便局会社は、実施計画を作成し総務大臣の認可を受けるとともに、認可後遅滞なく実施計画を公表することが義務付けられている。さらに、計画期間の終了後3ヶ月以内に、郵便局会社は、地域貢献業務の実施状況に関する報告書を公表することが義務付けられている。日本国政府は、地域貢献業務の適正な実施及び基金の設置・運営の透明性を確保するための措置を講じる。
g.移行期当初から郵便貯金銀行及び郵便保険会社は、他の銀行や生命保険会社に適用されるのと同様に銀行法及び保険業法に基づき金融庁に監督される。従って、郵便貯金銀行及び郵便保険会社には、リスク管理条件及び金融庁の完全な監督を含め、民間の金融機関と同様の免許、情報開示、監督の基準に実際に客観的に適合するための措置がとられる。郵便局会社は、金融サービス商品又は保険商品の販売と取次を行う場合には、民間会社に適用される基準に従い、金融庁の監督を受ける。
2.競争条件及び新商品導入:郵政民営化関連法は、移行期間中、郵便貯金銀行及び郵便保険会社に銀行法及び保険業法の特例規定として業務制限を課すこととしている。新金融会社の当初の業務範囲は、日本郵政公社と同一のものとしている。将来の業務範囲の拡大は、内閣総理大臣(権限は金融庁長官に委任)及び総務大臣が、郵政民営化委員会の意見を聴取して、業務拡大を決定するという透明・公正な手続きを経なければならない。新会社の業務範囲の31第5回報告書日本国政府による措置拡大について主務大臣が決定を行う際は、新商品の導入の審査に当たり対等な競争条件及び経営の自由度が考慮されることとなる。郵便保険会社による新たな又は変更された保険商品の導入、郵便貯金銀行による新たな元本無保証型商品又は新たな貸付業務の導入は、上記のプロセスを通じて審査されることとなる。日本国政府は、郵便金融機関による新商品導入に関する米国政府の見解を認識している。
3.宅配サービスに対する対等な競争条件
a.日本郵政公社がトラックや同様の車両を使用して、又は他の運送事業者の行う航空運送、海上運送あるいは陸上運送を利用して行う国際物流事業については、他の民間会社と同様に、貨物運送法令に基づく国土交通省の監督を受ける。郵便事業株式会社がトラックや同様の車両を使用して、又は他の運送事業者の行う航空運送、海上運送あるいは陸上運送を利用して行う国内外の物流事業については、他の民間会社と同様に、貨物運送法令に基く国土交通省の監督を受ける。
b.郵便事業株式会社が行う郵便事業については、引き続き、郵便法令に基づく総務省の監督を受けるほか、トラックや同様の車両を使用して、又は他の運送事業者の行う航空運送、海上運送あるいは陸上運送を利用して行う郵便事業については、新たに、貨物運送法令に基づく国土交通省の監督を受ける。
c.日本郵政公社又は郵便事業株式会社が行う国際物流事業に係る貨物の通関手続きについては、他の民間会社と同様の申告納税方式が適用される。
d.日本国政府は、EMSを含む国際郵便物の通関手続きのあり方については、引き続き、検討を行っていく予定である。
e.日本郵政公社は、郵便事業と国際物流事業とを区分して、それぞれの収支の状況を報告することが義務付けられている。また、郵便事業株式会社は、郵便事業とその他の事業とを区分して、それぞれの収支の状況を公表することが義務付けられている。日本国政府によって行われるこれらの開示は、内部相互補助が起こっているかどうかを客観的に判断できるような方法で行われる。
f.郵便事業株式会社には、日本郵政公社の業務、機能等の円滑な移行・承継等のための必要最小限の措置を除き、他の民間会社と同様の納税が適用される。
g.日本郵政公社と2007年10月に発足する郵便事業株式会社は、他の民間会社と同様な航空安全・保安上の法規則に従う。
4.包括性・透明性
a.日本国政府は、適切な方法により一般公衆に対し郵政民営化に関する法律、規則、ガイドライン及びその他の情報を提供することを含む郵政民営化プロセスにおける透明性の確保の重要性を認識している。郵政民営化委員会が必要と判断したときには、利害関係者の意見を聴取する機会を適切に設けることができる。郵政民営化推進室、総務省及び金融庁は、民間部門の利害関係者に対し、その要請に基づき、関係職員と意見交換を行う機会を引き続き提供することとする。日本国政府は、郵政民営化委員会の独立性を認識しつつも、郵政民営化委員会の透明性の重要性も認識している。
b.郵政民営化法の規定に基づき、内閣総理大臣は郵政民営化委員を任命し、郵政民営化委員会は、2006年4月1日に設置された。郵政民営化委員会議事規則では、原則として、郵政民営化委員会が、議事要旨及び詳細な議事録を適時に公開するように規定している。郵政民営化委員会は、これまでの会合ごとに、会合後のブリーフィングや議事要旨及び詳細な議事録の公開を行ってきた。郵政民営化委員会事務局は、委員会の各会合前に、会合の議題を公開する(関係するウェブサイトでの公開を含む。)こととする。
c.日本国政府は、行政規則、行政決定、行政ガイドライン及びその他の措置の準備及び施行に関し、行政手続法に基づくパブリック・コメント手続きの必要に応じた活用及びその他の方法により透明性を確保する。日本郵政株式会社は、2006年7月31日までに内閣総理大臣及び総務大臣へ実施計画の骨格を提出し、公表する予定である。日本国政府は、実施計画の骨格の公表が郵政民営化プロセスの透明性を向上させることを認識している。日本国政府は、実施計画が最終決定される前に、実施計画を意味のあるパブリック・コメント手続きに付することにより、透明性をより向上させるべきであるとの米国政府の見解に留意する。
d.郵政民営化関連法の施行に伴い発生する諸問題についても、この報告書の序文の最終節に記述された方法によって、更に取り上げられることとなる。
VIII.司法制度改革
A.外国弁護士の提携の自由の確保:改正された「外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法」(外弁法)は、外国法事務弁護士(外弁)による弁護士の雇用禁止規制の撤廃及び弁護士と外弁による共同事業(外国法共同事業)の制度を導入したものであるが、2005年4月1日に施行され、これまで適切に実施されている。法務省は、外弁法の適切な実施について、日本弁護士連合会(日弁連)及び各地の弁護士会の会則及び会規が法務省の見解と矛盾しないよう、引き続き、必要に応じ、日弁連及び外弁と協議する。
B.専門職法人及び支店の設置の許容:法務省は、(i)外弁に対し、弁護士法人と同じ条件でかつ同じ利点のある法律専門職法人の設立を認めるべきであるかどうか、及び(ii)外国法律事務所及び日本にいる外弁パートナーに対し、別途日本の法律専門職法人を形成することなく、日本の法律に従って職員が配置された複数事務所の設立を認めるべきであるかどうかについて、国際的な法律サービスの動向及び無差別の原則の観点から検討してきた。昨年から、法務省は、これらの問題について協議するため、日弁連及び外弁と数回にわたり会合を行ってきた。法務省は、外国法共同事業及び弁護士法人の実状並びに日本における他の法令との整合性に照らし、この問題について引き続き検討する。法務省は、米国政府に対し、これらの問題について得られた検討結果及び何らかの結論を、2007年4月までに通知する。
C.外国弁護士の裁判外紛争解決(ADR)手続への参加の許容:日本国政府は、日本国内で行われるADR手続であって当事者の一人が外国籍であるか又は外国法が適用されるものについては、少なくともその代理行為が外弁法に矛盾しない限りにおいて、外弁が当事者を代理することができることを確認する。日本国政府は、日本で行われる全ての形態のADR手続において、外弁が主宰者として活動することが認められるべきであるとする米国政府の見解に留意し、この分野におけるより一層の法的確実性を確保するために適切な措置を執るべきかどうかについて、更に検討を行う。
IX.商法
A.現代化された合併手法の施行
1.三角合併、現金合併その他の存続会社の株式以外の財産(外国株式を含む)を対価とする合併手法を認める「合併等対価の柔軟化」に関する会社法の規定は、2007年5月1日に施行される予定である。略式(スクイーズ・アウト)合併を認める会社法の規定は、2006年5月1日に施行された。
2.将来、法務省が上記の規定に関する法務省令の改正を決定すべき場合には、当該改正を最終決定する前に、改正案を公表し、外国の法曹界及び経済界からを含め、パブリック・コメントを募集し、検討する。
3.日本国政府は、企業にとってM&A取引を行うかどうかを決定するにあたり税に関する考慮が非常に重要であるとの米国政府の指摘に留意しつつ、会社法によって可能となる「合併等対価の柔軟化」に係る税制上の取扱いについて、課税の適正、公平及び租税回避防止の観点も踏まえ検討している。日本国政府は、新たな会社法の規定を用いたM&A取引について、税法に規定されるべき適切な税制上の取扱いに関し、会社法の関連諸規定が施行される2007年5月1日までに結論を得る。
B.効率的なTOBの促進
1.2006年6月7日、「証券取引法等の一部を改正する法律案」が国会で成立した。改正証券取引法により、公開買付けを行う者は、以下の各事項が可能となる。
a.対象会社が(i)公開買付者の目標とする株式保有を希釈化する方法又は価格での株式分割又は他の株主への株式割当、若しくは他の株主への新株の発行又は新株予約権の付与を行う場合、又は(ii)ポイズン・ピルその他の買収防衛策を排除することができなかった場合に、公開買付けを撤回すること
b.対象会社による公開買付者の株式保有を希釈化する方法又は価格での株式分割又は株式の割当に対応する為、買取価格の引き下げにより、公開買付条件を変更すること
2.改正証券取引法は、対象会社に対して、公開買付に関する役員会の見解を、その見解に係る根拠及び見解に至るまでに採られた手続を含めて、政令で定められた期間内に金融庁長官に提出することを課している。
a.虚偽の情報を含む見解を提出した対象会社は、最高500万円以下の罰金に処せられる。当該対象会社の役員も、最高5年以下の懲役又は500万円以下の罰金又はその併科に処せられる。
b.見解を提出しなかった対象会社は、最高100万円以下の罰金に処せられる。当該対象会社の役員も、最高1年以下の懲役又は100万円以下の罰金又はその併科に処せられる。
c.また、改正証券取引法は、公開買付者に対して、政令で定められた期間内に、対象会社からの質問に回答することを課している。
3.法務省は、2006年2月、新しい会社法に関する施行規則を公布した。施行規則127条は、会社が買収防衛策を導入した場合、事業報告(会社法上、事業年度ごとに作成し、株主に対して開示することが義務付けられている)において、当該防衛策を明示するとともに、そのような防衛策が当該会社及びその株主の共同の利益を毀損するものではないことの理由及び役員の個人的利益を図るためのものではないことの理由を明示することを課している。
C.日本において適法に事業を行う外国企業に対する保護
1.日本国政府は、会社法第821条(疑似外国会社に関する規定)が、日本において有効に登記され、適法に事業を行っている外国会社の業務に対して不利な影響を及ぼさないことを確保する。この点に関する国会の意図は、会社法案についての国会審議の際に明確にされたところである。35第5回報告書日本国政府による措置
2.この目的の推進のために、法務省は、外国経済界の意見を聴取した上で、日本で業務を行っている外国会社の懸念に対応するために、2006年3月、第821条の解釈を明確にする通達を発出した。
3.参議院においては、会社法施行後に第821条が外国会社に与える影響を踏まえ、必要に応じ、第821条の見直しを検討する旨定めた会社法案の附帯決議が採択された。したがって、日本国政府は第821条が外国会社に与える影響を注視し、日本における外国会社の適法な業務に対して悪影響が及ばないようにするために必要があれば、第821条の改正を前向きに検討していく。
D.望ましいコーポレート・ガバナンスの強化
1.機関投資家による積極的な議決権の代理行使を通じた株主利益の増進
a.2006年4月、年金積立金管理運用独立行政法人が新たに設立された。コーポレート・ガバナンスの重要性を認識しつつ、厚生労働大臣は、2006年4月1日、年金積立金管理運用独立行政法人に対する中期目標を発出した。年金積立金管理運用独立行政法人は、中期計画を公表した。中期計画には、運用受託機関による議決権代理行使は、長期的な株主利益の最大化を目標として行使されるべきことが規定されている。計画には、「年金積立金管理運用独立行政法人は、運用受託機関に議決権行使の方針や行使の状況について報告を求める」とも記載されている。運用受託機関が定めた方針に基づく全ての運用受託機関による議決権代理行使の結果の概要は、毎年の年金積立金管理運用独立行政法人の業務概況書において公表される。
b.日本国政府は、企業価値を増加させるメカニズムとして、ミューチュアル・ファンド及び投資信託の運用者による議決権の代理行使の促進を支持する。金融庁は、現在、投資託協会に対し、会員企業による議決権の代理行使の実績の結果概要を公表するよう、議決権の代理行使に関する規則の改正を促している。投資信託協会は、この点に関する規則改正案の概要を、今年の夏に決める予定である。
c.日本国政府は、民間の年金基金の運用管理者が議決権を基金の加入者の利益のために、適切に代理行使することが望ましいことを認識している。日本国政府は議決権の代理行使に関する具体的な受託者義務を導入することが適切かどうかについて検討を続けるとともに、引き続き、年金基金による議決権の代理行使の動向及び状況を注視していく。
2.コーポレート・ガバナンスの強化と議決権代理行使の促進
a.日本国政府は、上場会社のコーポレート・ガバナンス向上の重要性を認識しており、その目的を実現する上での証券取引所の役割について、適切な場合には、証券取引所と意見交換を行っていく。
b.なお、東京証券取引所は、上場会社に対し、監査役又は委員会設置会社方式のガバナンス形態を採用した理由、社外取締役及び買収防衛策の有無に関する情報を含むコーポレート・ガバナンスの体制を記載した報告書を、東京証券取引所のウェブサイトにおいて公表することを求める規則を制定し、2006年3月に施行した。東京証券取引所は、上場規則を2006年に改正し、株主の権利を著しく侵害する買収防衛策の導入を上場廃止理由に含めた。現在、東京証券取引所は、買収防衛策の詳細を速やかに開示することを上場企業に求めており、上場企業は、導入する買収防衛策が改正後の上場規則に整合しているかどうかについて、東京証券取引所に相談することができる。
3.特別利害関係株主が議決権を行使した総会の決議に対する司法審査:日本国政府は、特別利害関係株主が議決権を行使した総会の決議について、その決議の内容が株主平等原則に違反することを理由として株主が訴訟で効力を争う場合、何らの出訴期間の制限も適用されないことを確認した。
XI.流通
A.着陸料及び空港使用料
1.空港使用料は空港管理者と航空会社の議論を通じて決定される。成田国際空港については、2005年に着陸料は引き下げられ、IATAにより受け入れられた。
2.日本国政府は、空港使用料は透明性を含むICAO原則に従って決定されるべきであるとの点について、米国政府と見解を共有する。
3.日本国政府は、米国政府が、印象的で現代的な成田空港第一ターミナルの南ウイングの再開について日本国政府を祝福したことに留意した。日本国政府は、この新施設が成田国際空港会社の利益を増大させ、航空会社の利用料の緩和につながりうるという期待を米国政府が表明したことに留意する。
B.航空運賃:日本国政府は、航空券の販売に関する米国政府の懸念について見解を述べた。
C.空港建設と運営
1.成田国際空港は、2004年に民営化され、利益に対する強い志向を持っている。成田空港会社の2006年3月期の利益は140億円であった。成田空港会社は、効率的でコスト意識のある手法で平行滑走路の拡張を実施する。
2.この事業により、成田空港の容量が拡大され、より大きな飛行機による平行滑走路使用が増進される。このことから、この事業は、成田国際空港をより活用したいという強い要求を有している航空会社やその他国々から支持されており、また成田空港会社の利益を増大させることになる。
D.税関手続に伴う書類提出
1.2006年3月、関税法が部分改正され、外国貿易船及び外国貿易機に対し日本の開港及び税関空港に到着する前に積荷及び旅客に関する情報を報告する義務を課した。
2.この法案の立案に当たっては、2005年11月の意見募集により関係者から寄せられた意見及び、同年12月の関税・外国為替等審議会における答申が考慮された。
E.クレジット・デビットカード及びATMサービスと受け入れの促進
1.日本国政府は、日本の銀行において、国際的に認められているATMネットワークのセキュリティ標準と同等のセキュリティ基準を維持することの重要性を認識している。日本国政府はまた、銀行ATMの管理者が、国際PINセキュリティ及び暗号化基準へ準拠するかどうかを含め、自らのネットワークに用いる暗号化基準を決定することを指摘する。
2.警察庁は、日本におけるカード犯罪に関連する取締りを引き続き強化している。警察庁は個人情報を含まない偽造カードの原版となる、いわゆる「生カード」の日本への密輸入防止や犯罪グループの不法入国を防止するため、税関、入国管理局及びクレジット/デビットカードの発行者並びに販売者との連携を強化している。
3.日本国政府は、政府サービスの支払手段としてのクレジットカード及びデビットカードの利用を推進してほしいとの米国政府の要望に留意した。加えて、総務省が主催した研究会は、地方公共団体のサービスへの支払い方法としてクレジットカード払いを導入することについて、種々の法制的・技術的な課題を検討しており、これらの検討に基づき、総務省は、地方公共団のサービスへの支払い方法としてクレジットカード払いを可能とすることを含む地方自治法の一部を改正する法律案を国会に提出した。この改正法案は、5月31日に成立した。最新の規制改革・民間開放推進会議3か年計画では、クレジットカード払いによる国税の納付について、カード手数料負担の在り方を含む諸課題について検討し、2006年度中に結論を得るとしている。なお、2005年4月から、東京都では、幾つかの都立病院や駐車場において、クレジットカードによる支払いが可能となっている。
F.道路運送車両法の改正
1.2005年6月以降、有識者が自動車リース会社等の大量に自動車を所有している者に係る変更登録・移転登録の手続の負担軽減措置に関する議論を行い、2005年12月に中間報告を取りまとめた。
2.中間とりまとめは、所有者と使用者が異なる場合自動車検査証から所有者情報を削除し、登録手続と自動車検査証記載事項の変更手続を切り離すことを提案している。また、自動車の安全かつ円滑な取引の観点から、自動車の流通において簡便で確実な所有者の確認手段を確保するため、登録情報の電子閲覧制度を設けることについて提案している。国土交通省は、中間取りまとめの内容を踏まえ、必要な制度改正に関連する道路運送車両法の改正案を国会に提出し、同法案は2006年5月12日に成立した。法律は、2008年に施行される予定であるが、国土交通省は、それまでの間、大量に自動車を所有している者が変更登録・移転登録の手続を行う場合にその所有者が使用者と異なる時は、登録手続の負担軽減を図るため、当該変更登録・移転登録時に新車検証を交付し、登録後に旧車検証を運輸支局等へ返納することを可能とする暫定的な運用を行っている。
3.日本国政府は、2005年12月から一部地域において新車新規登録手続を対象にオンラインで申請できるワンストップサービスの部分的運用を開始した。ワンストップサービスは、2008年までに全ての自動車登録手続について全国において拡大されることを目指している。
G.大規模小売店舗に影響を及ぼす法律
1.大規模小売店舗に影響を及ぼす法律についての米国政府の懸念に対し、日本国政府は、2006年2月8日、中心市街地活性化法及び都市計画法の改正法案を国会に提出した旨説明した。更に、日本国政府は、中心市街地活性化法の改正の目的は、中心市街地活性化に関する現行の支援措置の抜本的な見直し及び強化を行うことである旨説明した。
2.日本国政府は、都市計画法の改正の目的は、大規模小売店舗の開業を規制することではなく、都市計画決定の適切な手続を経ることにより、大規模集客施設の適正な立地を確保することであるということを確認する。大規模集客施設が規制される地域においては、用途地域(ゾーニング)の変更の適切な手続を経ることにより、それらの施設の立地は可能である。その手続を円滑に行うため、改正法は、民間の開発事業者に、都市のゾーニングに対し変更を提案することを認めることとしている。
3.また、日本国政府は、改正法が、経済上の需給を勘案した商業調整システムを復活させることを意図するものではなく、かつ、大規模小売店舗というビジネスモデル自体あるいは消費者の選択を規制することを意図するものではないことを確認する。
4.日本国政府は、改正法の運用指針が、民間部門及び他の関心を有する団体が意見を述べる機会を含む、透明かつ公正な方法で作成されることを確認する。
5.日本国政府は、改正都市計画法の施行後、時宜を得た方法で、かつ、民間部門及び他の関心を有する団体が意見を述べる機会を含む方法で、日本国政府が改正法の影響を評価するという米国政府の要望に留意する。
米国政府による規制改革及びその他の措置
I.規制改革及び競争政策に関する分野横断的な問題
A.貿易・投資関連措置
1.ダンピング防止措置及びセーフガード措置:米国政府は、米国のダンピング防止に関する法律、規則及びその他の措置がWTO協定上の義務に整合的なものとなることを確保する。
a.2006年2月8日、継続的ダンピング及び補助金相殺法(バード修正条項)の撤廃を規定する2005年赤字削減法が発効した。2007年10月1日より前に通関した産品に係る税については、バード修正条項が廃止されていないものとして、同条項に基づき分配される。2007年10月1日以降に通関した産品については、最終的に確定した税が、影響を受けた米国製造業者に対し分配されることはない。
b.2004年12月3日、1916年歳入法第801条(1916年ダンピング防止法)が撤廃された。
c.熱延鋼板に関するWTO紛争問題について、今期議会において、紛争解決機関の勧告及び裁定を履行する法案が提出された。米国政府は、熱延鋼板紛争における勧告及び裁定を履行する法律が成立するよう、引き続き、議会と緊密に協力していく。
d.米国政府は、鉄鋼輸入モニタリング及び分析制度(SIMA)が、WTO協定に完全に整合的である自動的なインターネット上の輸入ライセンス制度にとどまるものであることを説明した。SIMAの改訂の際にはパブリック・コメントが募集され、日本のコメントは、十分に考慮された。
e.米国政府は、その他特定の米国のダンピング防止に係る問題に対する日本国政府の懸念について、自国の見解を説明した。
2.連邦バイアメリカン法及び関連規則:米国政府は、連邦バイアメリカン法及び関連規則についての日本国政府の懸念に留意する。
a.国防総省は、米国の供給者に対して調達市場を開放している同盟国及び友好国の供給者に対して自国の調達市場を開放するという、米国の長年続いている政策を阻害する立法に対し反対する。
b.米国政府は、1991年複合陸上運輸効率法の実施規則について説明した。米国政府はまた、実施にあたっての物品の調達において、非差別的な取り扱いを求める日本国政府の要求に留意する。
3.再輸出規制
a.米国政府は、通常はライセンスを要する日本からの特定の再輸出品目に対しライセンスなしで(即ち、ライセンス例外で)認可を与えることにより、日本の効果的な輸出管理制度を認めている。米国の再輸出規制に関する日本国政府の懸念に対し、商務省は日本語に翻訳した再輸出ガイダンスをホームページに掲載した(http://www.bis.doc.gov)。また、再輸出管理規則に関する照会に対する支援のために特に訓練された職員を東京に配置した。
b.米国政府は、日本国政府によって提起された懸念に対処するために、輸出管理品目番号の問題について米国輸出業者と協議を行いうる。
c.再輸出規制及びその他の問題に対処するために、米国政府は経済産業省と継続的に協議を行う。
4.エクソンフロリオ条項
a.米国政府は、エクソンフロリオ条項に対する日本国政府の懸念、とりわけ関連規則の予見可能性、すでに完了した取引の法的安定性及び適正な手続の確保に関する懸念を認識する。米国政府は、同条項の運用に当たっては、日本国政府の懸念に配慮する。
b.米国政府は、CIFIUSの見直し過程に関する米国内の最近の議論についての日本国政府の懸念、及びこの議論が外国から米国への投資を阻害しうるのではないかとの懸念に留意する。米国政府は、開放的な経済システムを確約しており、引き続き、経済成長に貢献する、外国からの投資を歓迎する。
5.メートル法
a.米国商務省標準・技術研究所は(NIST)、引き続き、米国経済全体におけるメートル法の使用を促進する。90パーセント以上の米国の州は、自動車の付属品、衣類、及び家庭用設備を含む、自らの排他的管轄に属する商品の包装の際の表示上、メートル単位のみの使用を許可している。NISTは残りの州に対し、自主的にメートル法のみの表示を許可するために法律や規制を改正するよう働きかけている。
b.NISTはまた、連邦政府レベルでの措置については、メートル法のみの表示を許可するような公正包装及び表示法(FPLA)の改正に対する業界や社会全体の支援を引き出すべく努力を続ける。NISTの作業部会は、2005年末に、本件に対する問題意識を喚起することを目的として、「許可されうるメートル法のみの表示」と題された報告書を更新した。
6.米国特許制度:日米両政府は、効果的かつ実体的な特許法の調和に向け相互に支援することを再確認する。米国政府は、日本国政府との議論を喜んで継続し、この分野における日本側の要望を考慮していく。米国政府は、特許問題に関して米国議会との協力を適切に継続していく。
a.先発明主義:米国は、米国の先発明主義が独特の制度であり、米国内では依然として議論がある問題であるが、ほとんどの国で先願主義が採用されていることを認識している。先願主義を採用する法案(H.R.2795及びその修正案)が、現在米国議会で審議されている。この法案に加え、更に米国は日本及び他のWIPOの先進国Bグループの国々との間で、先願主義の観点から起草された条約草案に関する協議を含む特許法の調和について、引き続き協議に従事し、参加していく。
b.早期公開制度:米国は、早期公開制度において例外事項が不適切であるかについて評価を行っている。この問題はまた、米国議会において審議中の前述の法案及び2006年4月に米国下院に提出された法案(H.R.5096)においても扱われている。
c.再審査制度:前述の法案(H.R.2795及びH.R.5096)にも盛り込まれている審査後の異議手続の実施に関する新しい規定を含め、米国の再審査制度の変更については、引き続き、幅広く議論する。
d.発明の単一性:米国政府は、発明の単一性の決定基準が特許協力条約(PCT)の基準よりも厳しいということを認識しており、現在、発明の単一性基準に関するより緩和された件の採用を検討している。
e.ヒルマー・ドクトリン及び特許法第102(e)条:米国政府は、日本国政府がヒルマー・ドクトリンおよび特許法第102(e)条に関する懸念を有していることを認識する。米国政府は、これらの問題が米国、日本および他のWIPOの先進国Bグループの国々との間で実施されている実体的な特許法の調和に向けた協議において議論されている点に留意する。米国はこうした議論に、引き続き、従事し、参加していく。なお、これらの問題は、上述の法案(H.R.2795)においても扱われている。
f.先行技術の情報開示義務:米国政府は、先行技術の情報開示義務に関する日本の懸念を認識する。翻訳に関する日本の懸念について、米国政府は、英訳は容易に用意できる場合に限り提出を求められるという点を指摘する。情報開示義務の期間を短縮するとの日本国政府の要望に関して、現時点での米国政府の見解では、特許出願中及び特許権付与前の期間、出願人は、常に特許性につながる資料とされている情報について時宜を得た形で開示しなければならない。米国政府は日本国政府の見解に留意し、特許出願人に対して不当な負担を科さないことを確保するとの観点から、諸措置が適切かどうかについて評価を行う。
g.植物特許:米国政府は、特許法とUPOV条約第6条との間で新規制要件に関し相違があるとの日本国政府の懸念について留意する。米国政府は、日本国政府の見解において、UPOV条約に即した新規性テストの重要な側面と、日本国政府により提起された懸念への対処方法ついて、日本国政府と協議していきたいと考えている。
7.州別建設業許可の調和・統一化:米国の連邦制度に基づき、連邦政府は各州の境界内で行われる建設業許可に対する法的な権限を有していない。各州の慣行に対するさらなる理解の促進のため、米国政府は日本国政府に対し、非営利団体である米国州建設業者許可団体協会NASCLA)が取りまとめた、州の許可の情報に関する包括的なガイドブックを提供した。このガイドブックは、州の様々な種類の許可、法律、規則、政策、相互協定に関する情報を含んでいる。また、米国政府はNASCLAが本年末までに全国建設業者許可試験を創設する取組みについて言及した。米国政府は日本国政府に対し、本件に関連する情報を適宜提供していく。
8.保険業規制
a.全米保険監督官協会(NAIC)は、免許と監督のプロセスを調和させることの利点を認識する。州の実務を調和させ、監督基準と保険商品のプロセスを合理化するためのNAICの努力は、「2003年規制の近代化のための行動計画」の下で引き続き進展している。以下のは、その計画においてこれまで達成された重点事項である。
(1)標準化された届出義務と米国全州内での免許の統一基準の採択に加え、NAICは金融監督基準及び認定プログラム(米国の全管轄区域における基準)の実施を継続し、年金、再保険、長期介護保険、健康保険を含む多くの分野でモデル法を洗練化する。
(2)2006年6月現在、27の州議会が州際保険商品監督取決めを採択し、その発効に必要とされる採択州の数を超えた。州際委員会は、生命保険、年金、障害保険、長期介護保険の分野における州政府の監督上の判断のスピードと効率性を高めるため、統一国内商品基準と中央提出登録手続を整備する。NAICは、この取決めのより多くの採択を促すため、引き続き州政府と共に取組む。取決めを採択する立法措置は、このほか10州の議会に提出されている。
(3)合計で52の保険当局が、保険料率と様式の電子届出制度を活用している。この制度は、保険業者の申請のために、スピードと効率性を高めるための電子制度である。2005年末現在、この制度の下で約18万5千件の電子届出があった。
b.2005年12月のホワイト・ペーパーの承認に続き、NAICは、無認可の再保険業者に再保険を提供するために、2006年末までに代替措置の提案を準備するよう2006年3月に再保険タスクフォースに指示した。タスクフォースとその他関連会議は、外国の関係者にも開かれており、また日本の保険業界の代表を含む関係者グループからの意見が定期的に募集されている。
c.米国政府は、日本国政府が米国での保険監督制度を近代化させるための継続した努力を歓迎することに留意する。米国政府は、日本国政府が連邦レベルでの監督に関するイニシアティブに対する関心を強調してきたことを承知している。
d.米国政府は、州別規制を原因とする問題に関して、適切に、日本国政府とNAICとの対話を引き続き促進する。またNAICは、日本国政府から提起された問題に関する直接の照会先を提供したところであり、そのような問題はNAIC内部で適切な関係者に伝達される。
9.クレジットカード情報保護
a.米国政府は、クレジットカード情報保護の重要性を認識し、この目的の為、一連の法律、規則、指針を制定した。これらの措置は、業界の基準とあわせて、銀行及びクレジットカード会社双方による顧客の機微情報やクレジットカード情報の秘匿性を確保しようとするものである。連邦政府の関係省庁は、連邦情報保護法及び関連規則・指針を実施する責任を共有する。
b.米国政府の規制当局は、銀行及びその他金融機関のとりわけデータ保護法令・規則の守について、管理・審査する。これらの規則は、金融機関に対し、契約上業務処理受託会社に適切なデータ保護措置を実施するよう義務づけることを求めるものである。金融機関はまた、適切な時には、業務処理受託会社によるデータ保護措置の実施状況について監視しなくてはならない。場合によっては、米国政府による検査は、金融機関の業務処理受託会社のデータ保護実施状況を直接検査することを含めることもできる。加えて、米国政府規制当局は指針を発行し、また業界団体は、金融機関による顧客情報の保護、及び適用される法律及び規則の遵守を促進する基準を策定した。
c.FTC法及びグラム・リーチ・ブライリー法は、顧客の機微情報の保護手段が不適切であると判明した企業、又は、顧客情報を収集し、取り扱う上で、不公正かつ詐欺的な活動・慣行に従事する企業に対して、執行措置を取るために用いられる2つの立法例である。FTCは、これらの法に基づき、業務処理受託会社に対する1件を含む13のデータ保護に関する事件を起訴した。
d.米国政府は、クレジットカード情報の漏洩の再発防止の為の努力を継続する。
e.日米両政府は、本問題に関する情報交換を継続する。専門家間協議を促進すべく、米国政府は、日本国政府とのクレジットカード保護問題を議論する準備のある米国政府の専門家の連絡先リストを作成した。
B.領事事項
1.査証(ビザ)手続
a.ビザ更新手続の効率化:2006年1月に発表されたライス・チャートフ・イニシアティブにおいて言及されているとおり、米国政府は、合法的な旅行者がビザを取得し、更新することを容易にしつつ、安全を強化することのできる技術を可能な場合に利用して、ビザ手続を円滑にする方法を探求することに関心を有している。
(1)米国政府は、米国国内におけるビザ更新手続に関して、日本の在米日本企業が直面している困難な状況について日本国政府から表明されている重大な懸念を理解し、引き続き米国国内でのビザ更新手続再開の実現可能性を検討する。
(2)米国国務省は投資・貿易(E)ビザの申請手続を合理化し、より多くの公館において第三国の国民からの更新申請を受け付けられる方法を探求している。日米両政府は、引き続きビザ関連事項に関する定期的な対話を行う。
b.ビザ取得可能な在日米国公館の拡大:米国政府は、日本国内におけるビザ取得可能な公館を拡大すべきであるという日本国政府の要請に応え、2006年4月19日から在札幌米国総領事館で月に1度、非移民ビザの申請手続を試験的に開始した。このプログラムが成功し、費用面でも効率的であれば、米国政府はこれを継続し、日本国内及び世界の他の地域に拡大することを検討する。
c.ビザ発給及び有効期限
(1)米国政府は、日本に赴任する企業内転勤の外国人に5年間有効なビザが発給されているのに対し、Lビザの有効期間が2年又は3年しかないことに対する相互主義的観点からの日本国政府の懸念に留意する。
(2)米国政府は、Eビザの資格要件に関する日本国政府の要望を認識している。
2.運転免許証
a.国土安全保障省は、2005年5月11日にブッシュ大統領の署名により成立し、2008年に施行される予定のRealID法に基づき、各州政府が運転免許証やその他の州発行の身分証明書を発行する際に従うべき最低基準を設定する規制を定める過程にある。
b.すべての州は、国土安全保障省との間で、運転免許証申請者の法的地位を確認するためのシステム(SAVE)を利用する外国人運転免許証申請者の法的地位を確認するための覚書を結んだ。RealID法は、一定期間米国に滞在することを認められた外国人に発行される運転免許証や州政府発行の身分証明書の有効期間は、滞在許可期間を超えてはならないと規定する。
c.現時点では、各州が新法の規定をどのように執行するかは定かではない。同法は、国土安全保障長官に対し、運輸長官及び各州と協議の上、規則の制定、同法の遵守の確認及同法の下での各種許可を行う権限を付与されている。国土安全保障省は本年中に政府官報において規則案を公示する予定である。規則案はパブリック・コメント募集のために公表される。米国政府は、日本国政府の懸念を理解する。国土安全保障省は引き続き、規則が制定されていく中で、利害関係者からの情報を求めるとともに、各州は同法を執行していく中で、現在各州の運転免許証に関する規則が日本人や他の国の国民に影響を及ぼしている問題についても検討するべきであるという日本国政府の要請を認識する。また、同省は、規則策定過程でパブリック・コメント募集に日本国政府が参加することを歓迎する。
d.米国政府は、国際運転許可証、ミシガン州の身分証明書提出要件、マサチューセッツ州の同乗者同行義務、テネシー州及びユタ州の自動車運転証明書、ロードアイランド州の運転免許実技試験場制限などの各州の運転免許証に関する規則について、日本国政府が懸念を有していることを認識している。
3.生体情報による出入国管理
a.US-VISITは、国土安全保障省の最優先事項であり、米国国境をまたぐ合法的な旅行や通商を円滑にする一方で、米国国民と訪問者の安全を強化するものである。
b.国土安全保障省は議会により要求されていた期限である2004年及び2005年12月31日までに、US-VISITによる生体情報を用いた入国審査は、115の空港、15の海港、及び154の陸路入国の二次審査地点で適用されている。US-VISITによる生体情報を用いた出国審査は、全国12空港、及び2海港において実施されている。
c.US-VISITは、その基本的考え方を陸路米国入国地点での自動出入国システムという形で具現化することに向けて進んでおり、5の米国陸路入国国境でRFID(無線周波数による認証)技術を試験運用することによって国境管理システムの改善を続けている。2006年5月時点で、5600万人を超える外国人訪問客がUS-VISITに登録されたが、審査待ち時間の大幅な増加はこれまで見られていない。これまで犯罪歴や不法移民歴のある1100人以上の者がUS-VISITから提供された生体情報に基づき米国税関国境保護局職員により入国拒否された。
d.US-VISITは在米国日本大使館を通じて日本国政府と定期的に会合を持っている。これらの協議では、社会への知識普及、プライバシー及び運用上の問題に焦点が当てられている。US-VISITは、US-VISITプログラムの要件や、米国への出入国の際に何が行われるのかについて、日本国政府、旅行業界、一般の人々に知らせるための幅広い広報活動プログラムを有している。
e.US-VISITプログラムについての情報は、在日米国大使館のウェブサイトから日本語で入手できる。米国政府は、引き続きこの情報を更に広めるための日本国政府の提案を歓迎する。
f.米国政府は、日本国民の個人情報の保護に関する日本国政府の懸念を十分に理解し、共有する。取得された情報は、個人の渡航記録の一部として、国土安全保障省と国務省によって管理されるデータベースに保存される。データベースのシステムは、入国地点に駐在する米国税関国境保護局職員、移民税関執行局の特別担当者、米国市民権移民局の認可担当職員、米国領事館、及び連邦・州・地方の法執行機関職員によって、知る必要がある場合のみ利用される。このプログラムは、US-VISIT個人情報保護基準及び米国の個人情報影響調査を遵守した形で実施される。US-VISITにはこのプログラムを専門的に取り扱うプライバシー担当者がおり、政府横断的なプライバシー原則が厳守されるよう、国土安全保障省の他のプライバシー担当者と密接に協力している。国土安全保障省の個人情報保護担当官は、適切なセーフガード措置が実施されるよう、US-VISITプログラムの関連部分を見直している。米国政府は、US-VISITによって集められた外国人の生体情報を、米国国民の個人情報に適用されるものと同等の水準のプライバシー基準で保護する。また、情報が不適切な形で使用されたりあるいはアクセスされたりすることのないよう、セーフガード措置が実施されてきた。
4.非機械読み取り式旅券所持者に対するビザ免除措置の停止
a.米国税関国境警備局の業務部副監督官は2005年9月12日、在米国日本大使館に書簡を送り、非機械読み取り式の緊急旅券が発給されているビザ免除対象国の国民に対して同局が臨時の入国許可を与える条件を提示した。このようなビザ免除対象国の旅行者は以下の条件を充たさなければならない。1)本国の外で旅券を紛失し、もしくは盗難に遭い、又は期限切れを迎えていること、2)紛失し、又は盗難に遭った旅券に代わるものとして政府機関により発給された緊急旅券を提示すること、3)本国に帰国するために米国に留まることなく直行すること、4)本国へ帰国するための確定した航空券(又はEチケットの記録)を所持していること、5)通常の場合であれば米国への入国が許可されること、6)臨時の入国許可が認められた場合、許可手数料として65ドルを支払うこと、である。
b.上記の場合を除いて、ビザ免除措置により旅行する際には旅券はすべて機械読み取り式でなければならない。加えて、2005年10月26日以降に発給された旅券はデジタル写真を搭載していなければならず、また、2006年10月26日以降に発給される旅券はICチップを搭載していなければならない。但し、公用・外交・緊急旅券の場合は、ビザ免除措置により旅行するに際して、機械読み取り式であることのみが求められる。この場合を除き、機械読み取り式でない旅券及びデジタル写真・ICチップといった仕様に適合しない旅券を所持する旅行者は、米国を訪れる際はビザを取得することが求められる。米国政府は、「帰国のための渡航書」を所持する日本人旅行者をビザ免除措置のための必要書類及び手続においてどのように扱うかにつき、検討を行っている。2005年10月26日以降、デジタル写真搭載が求められることをビザ免除対象国に知らせるための広報活動の努力が行われてきたが、このような努力は、適切な旅券を所持せずに米国に到着するビザ免除対象国からの訪問者の数の減少に貢献してきた。日米両政府は、2006年10月26日以降に発給される旅券にはICチップ搭載が求められること等がビザ免除措置の対象となる条件であることを一般の人々、旅行業界、航空業界に確実に周知するため、更に努力する。
5.社会保障番号(SSN)
a.SSN取得期間の短縮化:社会保障庁(SSA)はSSNを発給する、あるいは社会保障カードを発行する前に、外国人の移民資格を確認しなければならない。昨年中、SSAと国土安全保障省は、移民資格を確認する作業を迅速化する努力を継続してきた。両省庁は、現在、オンラインによる確認システムの導入に取組んでおり、これにより確認作業の遅れが減少し、SSAから国土安全保障省への書面での確認照会を少なくすることが出来る。米国政府は、この点についての日本国政府の要請を考慮しつつ、こうした努力を継続していく。米国政府は現在、他の分類の外国人にまで入国時登録(Enumeration at Entry)プログラムを拡大することの実現可能性を研究している。
b.駐在員家族への社会保障番号の発給:米国政府は、駐在員家族へのSSNの発給に関する日本国政府の懸念を十分に理解する。米国政府は国土安全保障省の就労許可を得、あるいは社会保障番号発給のための有効な非就労の理由があれば、社会保障番号の有資格者であると認める。
6.納税者番号(ITIN):米国内国歳入局(IRS)は納税者番号(ITIN)に関する日本国政府懸念に留意し、納税者番号の発行における過度の遅滞が不便さをもたらしうることを正しく認識し、この点について利用者サービスを改善する方法を検討する。
7.滞在許可証(I-94):米国政府は、I-94の有効期間を延長するべきとの日本国政府の要請に留意する。
a.米国市民権移民局(USCIS)は、2005年2月に提出された2006年度予算において未処理件数の削減を優先しており、2005年度予算より全体で4%の増額を要求し、未処理案件の解消に向けた努力にかかる経費として総額1億ドルを特定している。現在まで、市民権移民局は未処理件数を削減する目標の達成に向けて大きく前進している。
b.市民権移民局は、(1)国家の安全保障の確保、(2)未処理件数の削減、(3)顧客サービスの改善の3点を優先している。中でも、市民権移民局は2003年に設立されて以降、電子申請システム及びその便益を拡大し、全申請の50%がその恩恵を受けるようになると共に、申請者が自らの申請の現状についての情報をUSCISのウェブサイトを通じて確認できるようになった。市民権移民局は、これらの努力を継続する。
C.流通
1.海事テロ対策:米国政府は、日本国政府との間で、安全保障上の考慮と国際貿易促進の必要性とのバランスをとることの重要性について、理解を共有する。国際供給網及びそれを支える海上輸送システムの安全性と効率性は、世界全体の繁栄のために非常に重要である。この観点から、米国政府は、この問題に関する日本国政府の要望に留意し、テロ対策強化に向けた取組みと迅速、円滑且つ効率的な流通とのバランスを図ることを確約している。また、米国政府は、公共の安全を高める一方、現代のビジネス慣行を補完する共通の手続及び基準を構築するため、国際社会と協働することを確約している。船舶及び湾岸施設の安全性を評価するための共通の基準を規定する船舶及び港湾施設の保安の国際コードは、国際協力を通じて達成され得る成功例である。米国政府は、安全な通商及び経済的な繁栄を促進する方法で、貿易の安全を確保するとしている国際貿易の安全確保及び円滑化のための「基準の枠組み」を実施していくために世界税関機構(WCO)と引き続き協働していく。我々は、この枠組みを実施するための能力向上を支援するための日本の尽力、またコンテナー・セキュリティ・イニシアティブ(CSI)に関して我々が享受している支援に感謝している。2006年3月のマケル・チャートフ国土安全保障長官の来日は、米国政府が日本国政府と多岐にわたる分野において協力関係を深めていくとの確約を確認した。
a.貨物情報の事前電子提出:事前情報及び戦略的なインテリジェンスは、貨物の船積み前に安全及び保安に対する潜在的な危険を有する輸送貨物の識別を可能にする。こうした貨物検査に関するリスク管理方式は、国際的に認知されたベストプラクティスとなりつつる。現代的なビジネス情報システムの進歩は、潜在的な脅威を解消する様々な機会を提供し、次第に、供給網におけるより早い段階でのリスク分析の機会を作り出している。米国政府は、米国通商法の事前電子貨物情報提出要件の実施規則を改善することについて、貿易関係業界と緊密に連携してきた。この要件は、ビジネスプロセスにおいて、修正を要するものと認知されつつ、徐々に実施されてきた。これらの要件は、情報分析を可能とする合理的な時間枠を定めているので、海上輸送システムには安全な貨物のみが入ることとなる。米国政府は、民間部門が新たな要件に適応する際に、この方式が、供給網におけるリードタイムを短縮するための輸入者の努力に悪影響を及ぼしかねないとの日本国政府の懸念に留意する。米国政府は、米国への輸出についてのリードタイムを短縮するための日本国政府の推進協議会による内部的な尽力を歓迎する。貨物情報の事前電子提出の規制緩和に関する日本国政府の要望に留意し、米国政府は、引き続き、徹底的な安全対策と効率的な流通の両立を高めるために努力し、より広範な国際貨物輸送に係る要件の国際的な均一性を高めるため、国際海事機関や世界税関機構といった機関を通じて国際社会との協働を継続していく。
b.C-TPATは、国際供給網の安全性を強化及び改善する協力的な関係を構築するための官民共同による任意の取組みである。米国政府は、事前に電子的に提出された貨物情報及び法執行機関の情報システムに基づく全ての貨物を検査している。参加者は、脅威に関する分析の緩和及び低い検査頻度といった利益を享受し、またC-TPATは、安全措置を向上させた参加者に対しより大きな利益を提供するための階層型の利益付与システムの導入によって精緻化されたが、米国政府は、より具体的な利益がC-TPAT参加者に与えられるべきであるとの日本国政府の要望を十分に理解する。米国政府は、C-TPAT参加者に対する具体的メリットを拡大するために適切な措置をとり、またC-TPAT関連規則の実施と更なる見直しの過程における、透明性を向上させる取組みへの民間部門の関与を、引き続き、促進する。
2.バイオテロ法及び関連規制
a.2002年公衆の健康安全保障及びバイオテロへの準備及び対策法は、米国食品医薬品局(FDA)に対し、第307条(輸入食品発送の事前通知)を含む同法の4つの規定を履行するための規則を制定する権限を与えた。FDAと税関国境保護局(CBP)は、2003年10月に暫定最終規則案を共同で発表し、バイオテロ法で定められているとおり、同規則が2003年12月12日に発効する一方で、関係者に対し、同最終規則案の規定についてコメントを提出する追加的な機会を与えた。FDAとCBPは、執行にかかる裁量の行使についての履指針を2003年12月に発表した(この履行指針は、最近では2005年11月に改訂された)。FDAは現在、最終規則を制定していく中で、暫定最終規則案に対する意見募集期間に受け取った、日本国政府からのコメントを含むすべてのコメントと共に、履行指針が取り扱う分野について、これら規則が貿易に与える影響を可能な限り少なくしながら、バイオテロ法やその立法過程と整合し同法の目的を達成する規定を策定するという目的のもとに、慎重に検討している。
b.米国政府は、2003年12月にFDAが最初に発表した履行指針(最近では2005年11月に改訂された)において、非商用差出人から非商用目的のために米国に輸入され又は輸入のために提供される食品については、FDAやCBPは基本的に規制措置をとらないこととしており、それらの輸送手段が国際郵便であれ宅配便であれ、FDA及びCBPは、事前通知が行われていなくても基本的にそれら食品の輸入を差し止めないこととしていることに留意する。http://www.cfsan.fda.gov/~pn/cpgpn6.html参照。
c.在日米国大使館は、日本の食品加工業者、日本郵政公社、商業宅配サービス業者及び一般の日本国民が、バイオテロ法の履行について高い関心を有していることを認識し、理解する。大使館は、日本の食品加工業者及び発送人に影響を与えうるバイオテロ法関連のいかなる重要な進展についても、大使館のウェブサイトにて日本語で関連情報を提供するように努める。米国政府はまた、日本国政府と緊密に協議しながら、日本を含む諸外国の国民、特に個人食品発送者及び中小の食品加工業者によるバイオテロ法の遵守を支援するために、米国大使館・領事館を通じて簡単に入手できる利用しやすい資料の作成作業を行う。在日米国大使館は、バイオテロ法に関する広報活動をいかに効率的・効果的に改善していくかについて、日本国政府及び利害関係者と更に議論することを歓迎する。50第5回報告書米国政府による措置
3.州際高速道路における重量制限
a.米国政府は、連邦政府によって定められている州際高速道路における重量制限が輸送コストに影響を与えうるとする日本国政府の懸念に留意する。米国務省は、州際高速道路における重量制限についての日本国政府の要望に関連して、米運輸省連邦高速道路管理局(FHWA)の貨物管理運用室(FMO)と協議を行った。
b.州政府は、国際商取引(他国発又は他国向け)においてコンテナで運搬される貨物を「分割できない積荷」と見なす選択肢を有している。全てではないが、様々な州ではこのような選択肢をとっている。したがって、州政府の政策により、国際商取引において運搬されるコンテナが分割できない積荷として規定されれば、当該州政府は、州際高速道路上で運送することを可能にする重量超過許可証を発行することができる。個々の州政府は、高道路交通インフラの運用と維持の責任を有しており、またそのインフラのうちどの経路が重量超過貨物の通過に適しているかを最もよく知っていることから、州政府が、今まで通り引き続き、重量超過貨物の移動についての認可当局となるべきである。連邦高速道路管理局は、自己のウェブサイトに、本件に関する様々な州のウェブサイトや重量超過許可取得のための問い合わせ先についての情報をまとめた。
c.日米両政府は、本件に関する意見及び情報の交換を継続する。連邦高速道路管理局及び貨物管理運用室の商業車のサイズ・重量チームは、日本国政府に対して連邦の重量規制について説明し、更なる懸念があれば議論する旨申し出た。
4.米国の海運法
a.1920年商船法及び日本の港湾状況に関する報告要求:日米両政府は、1920年商船法に関し意見交換を行った。米国の行政省庁は、日本国政府と引き続き協議及び情報交換を行い、日本の港湾状況につき米国連邦海事委員会(FMC)に対し、随時報告する。
b.1998年外航海運改革法:日米両政府は、1998年外航海運改革法に関し意見交換を行った。米国政府は、日本国政府の懸念に留意した。
5.新運航補助制度の廃止:米国政府は、日本国政府の懸念を認識し、日本国政府に補助対象船舶リスト及びこの重要な国家安全保障対策措置のいかなる変更についての情報も提供することを引き続き確保する。
6.各種貨物留保措置:日米両政府は、アラスカ北岸産出原油の輸送を米国籍船にのみ認めこととした法律を含む各種貨物留保措置について意見交換を行った。米国政府は、貨物留保等の措置が国際海運市場における自由かつ公正な競争の条件を歪めるおそれがあるとの日本国政府の意見に留意した。これらの問題について、米国政府は以下のとおり説明した。
a.米軍貨物の輸送を含めて貨物留保法が適用される米国政府所有貨物は、外洋航海を伴う米国の対外貿易全体の1%未満である。
b.2000年4月以降、アラスカ原油の輸出はない。それ以降は、アラスカ原油のすべては精製及び米国国内消費のため米国西海岸市場へ輸送されている。
7.酒類に関する規制
a.しょうちゅう販売許可:米国政府はカリフォルニア州におけるしょうちゅうの販売に関する日本国政府の懸念について留意し、また日本の要請をカリフォルニア州政府に伝達する。加えて、米国政府は、販売場で消費されるためのしょうちゅうの販売を許可するたに、日本国政府がカリフォルニア州政府に対し州の規制の免除、もしくは関係する州法又は規制の改正を自由に要請することができることを指摘する。
b.酒類の表示承認証明:米国政府は、日本国政府のアルコール飲料の表示に関する見解に留意し、連邦法がこれらの表示を要求している旨指摘する(連邦法第27編205(e)の連邦酒類管理法)。また、米国政府は、酒類タバコ税貿易管理局(TTB)の規則(連邦規則第27編27.74)が、外国からの注文を得るための一定の商用サンプル、及び米国商務省が1959年トレードフェア法に基づいて認可した貿易見本市のための一定の展示用サンプルを適除外としている旨指摘する。この表示承認証明書(COLA)の限定的な適用除外を援用するには、輸入者は以下のような連邦規則第27編27.49の要件に適合しなければならない。
(1)この適用除外は、それぞれの関係者に対し、それぞれのアルコール飲料につき、四半期の間に1本のサンプル品に限り認められる。すなわち、輸入業者は1種類のアルコール飲料につき、1本のサンプル品をCOLAなしに持ち込むことができる。
(2)ビールについて8オンス入り以上、ワインについて4オンス入り以上、蒸留酒について2オンス入り以上のものはサンプルとして認められない。
(3)サンプル品には、健康に関する警告が貼付されていなければならない。連邦法第27編215(a)を参照。
(4)1959年トレードフェア法に基づいて米国商務省によって指定された貿易見本市で使用されるより量の多いアルコール飲料については、COLA及び連邦物品税の免除がわれうる。この免除は、貿易見本市において展示目的で利用されるアルコール飲料にのみ適用され、またそのような製品にはしかるべき表示がなされていなければならない。貿易見本市が指定した時点で、輸入者はTTBにCOLAの適用除外について申請しなければならない。輸入者は以下の住所によりTTBに連絡を取ることができる。
Director, International Trade Division, Suite 400W
Alcohol and Tobacco Tax and Trade Bureau
1310 G St., NW
Washington, D.C. 20220
D.制裁法
1.イラン・リビア制裁法
a.米国政府は、本件に関し、日本国政府を含む米国の貿易相手国の見解を得られたことを評価する。米国政府は、日本国政府により提起された問題点に対して、イラン・リビア制裁法は、同法の規定に従い、同法の対象とされている活動を行った者に対して適用されるのであり、国籍による区別は無いことを説明した。また、同法が米国の国際法上の義務と整合的な形で適用されるべきとの問題意識を米国議会が有していることは、同法の立法経緯が示しているとの説明があった。米国政府は、これらの問題について、引き続き日本国政府と対話を継続していく。米国政府は、イラン・リビア制裁法を大幅に変更する修正法案が議会に提出されたことを指摘する。
b.米国は、リビアにおいて大量破壊兵器と長距離ミサイルの廃棄が進展したことを受け、2004年4月、リビアに対する本法の適用が停止され、本法の適用範囲が大きく変更されたことを再度指摘する。
2.1996年キューバの自由と民主主義連帯法(ヘルムズ・バートン法)
a.米国政府は、1996年キューバの自由と民主主義連帯法に関する日本国政府の懸念を理解する。同法の制定以降、大統領は本法第3章(没収財産に関する取引を行った者に対し、民事訴訟を提起することを認める)の適用延長が米国の国益にとって必要であり、キューバの民主主義への移行を促進するとの認識に基づき、6か月ごとに第3章の実施停止期間を延長してきている。適用延長の期間は同法306条の規定で決められており、6か月を超える延長を一度に行うことはできない。
b.直近では、2006年1月17日に、大統領が同法に則り、同法第3章の実施停止期間を2006年2月1日から更に6か月延長する旨の書簡を議会に発出した。
3.地方レベルの制裁法:ここ何年もの間、米国政府は、州及び地方レベルでの制裁の取組みが連邦政府の外交政策を支持するものとなることを確保すべく、州及び地方行政府に働きかける多大な努力を行ってきている。米国政府は、関連する国際的な義務にも留意しながら今後も必要な場合にこうした努力を継続する。
E.競争政策
1.反トラスト適用除外
a.米国連邦政府の競争当局は,米国の消費者利益のための競争促進の観点から,引き続き連邦反トラスト法の適用制限及び適用除外の適切な範囲について,その見解を表明する機会を求めていく。これに関連し,2006年1月,米国は,GosselinWorldWideMoving社対米国政府事件において,米国の海運業者から国防省に提出される軍及び民間物資の米国への輸送料金に係る入札談合は1984年海運法が規定する反トラスト適用除外には該当しない旨の第4巡回区連邦控訴裁判所の判決を審理しないよう求める意見書を米国連邦最高裁判所に提出した。
b.米国司法省及び連邦取引委員会は,州政府及び関係団体に対し,競争阻害を最小限にする、又は排除するよう働きかけるため積極的に意見を提出している。例えば,2005年10月18日,司法省と連邦取引委員会は,ミシガン州議会上院及び同州労働・経済成長省に対し,すべての不動産仲介業者に最低限の不動産サービスのパッケージを義務付けることによって,消費者が必要なサービスのみ購入し、出費の節約を行うことを妨げる法案をミシガン州議会が採択しないよう求める連名の意見書を提出した。また、2005年11月,司法省はニューメキシコ州不動産委員会に対しても,ミシガン州の法案と同じ効果を持つ規制案の採択を行わないよう働きかける同様のレターを発出した。
c.2005年9月,連邦取引委員会の職員が,連邦反トラスト法の近代化の必要性の有無を検証し、特定の制度変更に係る勧告を提出するよう法律によって委ねられた組織である反トラスト近代化委員会において証言を行った。この証言において,連邦取引委員会の職員は,とりわけ、競争を排除するという意図が州政府によって明確に表明されなければならないという連邦反トラスト法の適用除外のための要件を再確認し、州政府が競争に取って代わる行為を積極的に監督しなければならないという要件を強化するため,ステートアクション理論が明確化されるべきであると勧告した。
d.米国郵政公社による特定の行為を反トラスト法の適用対象とするとの条項を含む郵政改正法案が米国議会両院を通過した。同法案は現在両院協議会での審議に付されている。
2.反トラスト法執行に係る文書及び資料の公表
a.連邦取引委員会は,2006年1月,各年毎に作成される反トラスト法の執行活動に関する3つの異なる報告書へのアクセスを提供するため,同委員会のインターネットのホームページを更新した。それらの報告書のうち2つには,年次統計資料や、同意命令,行政審判開始決定、審決及び連邦裁判所の判決を含む連邦取引委員会によって採られた合併及び非合併案件に関する法的措置の概要が含まれている。残りの報告書-ハート・スコット・ロディーノ反トラスト改善法に基づき、連邦取引委員会及び司法省が共同で作成する米国議会への年次報告書-には,合併事案に関する行政審判及び司法手続における,提訴(審判開始決定),判決(審決)及び同意判決(同意命令)に関する統計資料を含む両当局による反トラスト法の執行活動の概要が記載されている。
b.司法省は,すべての反トラスト法による刑事訴追や民事執行活動に関するプレスリリースを発出している。刑事訴追に関する大部分のプレスリリースは,違反行為の概要や求刑を含む有罪答弁合意に基づく略式起訴状に関するものである。同様に,司法省による民事執行活動の大部分は,同意判決により決着しているが,司法省はホームページにおいて,違反行為及び問題解消措置の概要を含む競争への影響に係るステートメントとともにこれらの同意判決を公表している。裁判所による確定判決も司法省のホームページに掲載されている。
c.司法省は,公正取引委員会に対し,要請に応じて,特定の反トラスト法に基づく刑事訴追や民事執行活動の結果に関する情報を提供する。
F.法律サービス及びその他の法律関連事項
1.外国リーガルコンサルタントとしての外国弁護士の受入れ
a.米国法律家協会(ABA)は、ABAのモデル規則に即した外国リーガルコンサルタント制度を採用することを全ての州に奨励することを目標に、引き続き、各州の法律家協会及び各州の最高裁判所との積極的な対話を行っていく。
b.ABAのWTOサービスの貿易に関する一般協定(GATS)作業部会は、2006年8月のABA年次会合において、ABAがモデル規則を自由化するよう勧告する報告書を、本年夏に発出する予定である。提案される自由化には、外国リーガルコンサルタントとして承認されることを求める外国弁護士について、推奨職務経験期間の短縮及び最低年齢の引下げ(又は廃止)を含まれることとなる。
c.本年、ハワイ州のホノルルにおいて開催予定である年次会合において、ABAのGATS作業部会は、8月5日、外国弁護士に大きな関心を有する州や太平洋地域諸国の法律家関団体及び法律家協会の指導者によるサミットを開催する予定である。先に開催された欧州の法律家の指導者とのサミットは、出席者の間で、相互の法律サービスの市場へのアクセスに関する機会に焦点を絞った率直な意見交換をするのに、有益な機会であった。
d.2005年12月、テキサス州は、外国リーガルコンサルタント規則を自由化した。規則の変更に伴い、外国弁護士が外国リーガルコンサルタントとして承認を受けるためには、直近の5年間のうちの3年間だけ、原資格国法の法律事務を行ってきたことが要件とされ、また、その職務経験は、第三国を含むいずれの管轄地域におけるものでも差し支えないこととなっている。
e.米国政府は、米国における外国リーガルコンサルタント制度に関する日本国政府の要望を引き続き検討するとともに、日本国政府に対しあらゆる結果を通知する。
2.製造物責任法
a.米国政府は、不適切な製造物責任訴訟や不合理な損害賠償額の決定により企業が被っている不当な負担を軽減することに、強い意思を有しており、この目的にかなう多くの法案を支持してきている。
b.2006年1月、食品医薬品局は、処方薬と生物製剤の表示内容及び方式に関する最終規則を発出した。この規則は、医薬品表示の方式や安全上の情報(警告等)の強調方法に関する新たな要件を導入している。さらに、この規則は、処方薬表示の内容又は方式が州の法律に整合していないとの申立に基づく州裁判所における製造物責任訴訟においては、州の法律が、(i)FDAに認可された表示に記載されている又はFDAによって審査中である安全情報と異なる安全情報又は追加的な安全情報を要求する場合、又は(ii)FDAに認可された表示に記載される以上の警告又は禁忌について異なる強調方法を要求する場合を含む様々な場合に、連邦法が優先するとしている。
c.2006年3月、消費者製品安全委員会(CPSC)は、マットレスの燃焼性(裸火)基準に関する最終的な規則を公布した。その規則の序文において、CPSCは、新しいマットレスの燃焼性基準は、積極的な立法や判例によって形成された要件の形であろうとも、これと整合的でない州の基準や要件に優先することになると考えている旨記載している。CPSCの規則は、製造業者が、同じ火災発生の危険性に関する連邦法によるものとは異なるあらゆる基準又は規則を遵守しなかったことについて責任があるとの主張に基づく、州法上の製造物責任訴訟を効果的に排除することができるものである。
d.米国政府は、訴訟の解決を迅速化し、訴訟コストを抑えるため、医療過誤訴訟改革及びアスベスト訴訟改革のための立法を強く支持している。この目的に向けて、米国政府は、意味のある改革法案を成立させるべく、今後も引き続き、議会と協力していく。
3.懲罰的損害賠償:米国政府は、懲罰的損害賠償制度に関する日本国政府の懸念に留意し、今後も引き続き、日本国政府との間でこの問題について議論を行っていく。
II.電気通信
A.米国無線市場への参加:米国政府は日本国政府に対し、引き続き、米国におけるコモンキャリア及び非コモンキャリアの分類及びタリフ及びノンタリフサービスの区別についての情報を提供する。
B.外国事業者に対する認証及び免許の審査基準の緩和及び報告要件
1.米国電気通信市場への外国事業者の参入のための免許の審査基準に関する議論において、米国政府は、電気通信に係る免許条件が、米国市場への外国参入に課されるいかなる不合理な制限も回避するように執行されていることを説明した。
2.1996年連邦通信法は、連邦通信委員会(FCC)に対し、連邦通信法に基づき公布された電気通信サービス事業者に適用される規則について、意味のある経済的競争により公共の利益に照らして、もはや不要となった規則があるかどうか及びそのような規則は廃止又は修正されるべきかどうかを決定するため、見直しを行うことを義務付けている。米国政府は隔年の見直しへの日本国政府の参加を歓迎し、日本国政府によるいかなる提案もその意義に従って真摯に考慮する。
C.州レベルの規制
1.米国政府は、州レベルの規制を統一するための全米公益事業委員協会(NARUC)のいかなる成果に関する情報についても引き続き日本国政府に提供する。
2.米国政府は、免許付与手続を含む州レベルの規制、州ごとの規制の調和に関する日本国政府の関心及び統一された報告様式の採用について、日本国政府との対話を継続する。
D.ブロードバンド時代の規制改革
1.電気通信サービスと情報サービスの二分法的区分:米国政府は情報サービスと電気通信サービスの規制の二分法についてのいかなるありうる見直しの進展についても日本国政府に情報提供を継続する。
2.IP関連サービス:米国政府は、特定のVoIP電話サービス提供者に対して、高度緊急通報(E911)機能をサービスの義務的特徴として顧客へ提供することを求める2005年6月の決定を、FCCがいかに履行するかについて、日本国政府との対話を継続する。
E.ユニバーサルサービス:日米両政府は、WTO参照文書の約束に沿ったユニバーサルサービス制度を維持する継続的な意思を有することを再確認した。
F.アクセス・チャージ:米国政府は、市内相互補償料金、州内アクセス・チャージ及び州際アクセス・チャージの異なる種類のアクセス・チャージの維持に係る複雑性を認識し、複数にわたる課金の仕組みを合理化することを目的として、統一的な事業者間精算制度に向けた取組みを行っている。
G.商用衛星に係る輸出許可及びTAA許可等の処理手続
1.商用通信衛星の輸出許可及び技術支援協定(TAA)許可について、米国政府は米国の法律、規制、政策に合致する範囲内で、その遅れを最小化し、透明性を最大化する努力を継続する。
2.日米両政府は、商用衛星の輸出許可に係る真摯な対話を行った。日米関係の重要性に鑑み、日米両政府は、本件に関する対話を継続する。
H.デジタルテレビ方式への移行過程における端末機器市場の競争:米国政府は、端末機器(セットトップボックス)市場における消費者の選択を確保するためにFCCが連邦通信法第629条をいかに施行するかについて、日本国政府との対話を継続する。
I.インターネット・アプリケーション、コンテンツ、機器及びサービスへの消費者のアクセス:2005年9月、FCCは、ブロードバンドネットワークがすべての消費者にとって広く整備され開かれ、安価でかつ利用可能であることを確保することを意図した政策文書を採択した。
J.先端技術及びサービスの促進
1.規制改革イニシアティブ電気通信作業部会は、政府及び民間の専門家からなる会合を開催し、高速電力線搬送通信の商用展開における干渉問題の解消について意見交換を行った。2004年10月、米国政府は高速電力線搬送通信の商用展開を促進する規則を導入した。
2.2006年末までに、FCCは(1710―1755MHz帯及び2110―2155MHz帯における)高度無線サービスのための周波数90MHzのオークションを実施することとしており、技術中立性に基づき商用移動無線サービスを提供する事業者に割り当てられる予定である。
K.電気通信機器の貿易の促進
1.日米両政府は電気通信機器の適合性評価に関する相互承認協定(MRA)の早期締結に向けて公式交渉を継続する。
2.電磁両立性(EMC)に関し、日米両政府は、認定を受けた日本の適合性評価機関が行った情報技術(IT)機器、及び産業科学医療用機器(ISM機器)についての適合性評価結果の受け入れを可能とする措置の策定のため、引き続き協働する。
L.ネットワーク回線終端装置(NCTE):1990年ネットワーク回線終端装置(NCTE)に関する書簡を通じて設定され、首脳への第3回報告書において改訂された手続は、パブリック・コメント手続を経て、2006年度以降適用されないこととなった。指定電気通信役務を提供する電気信事業者については、電気通信事業法第23条に基づき、NCTEの技術的条件を公表することが義務付けられている。
III.情報技術
A.模倣品・海賊版対策に係る協力
1.海賊版や模倣品の深刻かつ増大しつつある問題に対処すべく、日米両政府は、それぞれ国内の知的財産権プログラム―米国においては「STOP!イニシアティブ」、日本においては「知的財産推進計画2005」―において新政策を実施した。2006年に実現した顕著な新政策は以下を含む。
a.STOP!イニシアティブ:「StopCounterfeitingInManufacturedGoodsAct」の成立、グローバル知的財産権アカデミーの設置及び知的財産権専門官の海外展開。
b.知的財産推進計画2006:模倣品・海賊版拡散防止条約の早期実現を目指す、個人輸等の取締りを強化する、及びインターネットオークション上の模倣品・海賊版の取引を防止する。
2.知的財産権分野における日米双方の施策の策定に加え、日米両政府はこれまで、知的財産権の保護及び執行を強化すべく緊密に協力してきており、今後も緊密に協力していく。多国間協力と共に、日米両政府は、例えば、
a.アジア太平洋及び全世界における知的財産権の保護・執行を促進すべく、定期的に二国間協議を開催した。
b.「APEC模倣品・海賊版対策イニシアティブ」において、模倣品・海賊版の取引削減、違法コピーの防止、及びインターネット上の模倣品・海賊版の販売防止のためのモデル・ガイドラインを共同提案し、この提案は2005年11月に韓国において開催されたAPEC首脳・貿易担当大臣会合において承認された。
3.日米両政府は、世界規模で知的財産権保護の強化を促進するため、APEC模倣品・海賊版対策イニシアティブやWTOTRIPS協定における透明性の確保の要請等、幅広い施策において更なる措置に着手することにより、二国間、地域内、多国間協議の場において、引き続き協力する。日米両政府は、適切な手段を用いて中国における知的財産権問題に対処するための協力を拡大する。加えて、日米両政府は、2005年7月に小泉総理大臣がG8グレンイーグルズ・サミットで提唱した模倣品・海賊版の拡散に対処するための国際的な約束に関する構想について引き続き協議する。
4.日米両政府は、規制改革イニシアティブの下、デジタルコンテンツの海賊版対策に向けて協力する方法について協議を行ってきた。
5.日米両政府は、知的財産権の保護戦略を議論する共同会議やセミナー等を開催する可能性を追求するため、引き続き企業及び産業団体と協力する。これには、知的財産権の執行活動に関する情報共有を含む。
B.著作権・著作隣接権の保護
1.デジタル時代における著作物の保護とその権利執行は、日米両政府にとって重要である。
2.米国政府は生の実演に関する権利及び人格権の保護の確保の重要性を認識する。米国政府は、日本国政府が非固定の著作物に関する権利の保護を重要視していることを認識する。
a.これらの権利の保護は、米国では米国著作権法、州のコモンロー及びその他の連邦法や州法に基づく権利によって複合的に確保される。米国政府は、引き続きこれらの権利の保護に関する透明性を確保するための十分な措置を取る。
b.米国政府は、生の実演の固定、無線による放送及び公衆への伝達の権利の保護は、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)第14条及び実演、レコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)第6条で義務付けられていることを認識する。米国政府は、日本国政府がこの権利は音楽以外の実演に関する権利を含むものであると理解していることを認識する。
3.米国政府は、WIPOインターネット条約が要求する利用可能化権の重要性、及び日本国政府がこの権利を重要視していることを認識する。米国政府は、著作物のオンラインにおける円滑な利用の重要性を認識する。米国政府は、著作権の適切な保護を図りつつオンラインの著作物の利用を促進するため、立法措置を含めた十分な措置を引き続き検討する。
4.米国政府は、コンピュータープログラムに係わる貸与権の保護について、特にビデオゲームのプログラムを重視して、日本国政府との議論を継続する。
C.デジタル・ミレニアム著作権法に関わる権利の適正な保護:日米両政府は、オンライン上の侵害行為及び著作権侵害の疑いがある加入者を特定する情報を得るための米国著作権法第512条(h)による文書提出命令の使用について、著作権所有者の権利と侵害の疑いがある者のプライバシー権及び表現の自由との間の適切な均衡を取ることの重要性を認識する。これに関連して、日米両政府は、この分野における将来の展開を注視するとともに、議論を継続する。
D.デジタル化、ネットワーク化への対応
1.米国政府は、デジタル・ミレニアム著作権法(DMCA)により追加された米国著作権法第1201条に基づく「アクセスコントロール」について、日本国政府との情報交換を継続する。
2.米国政府は、「アクセスコントロール」の保護が、例えばフェア・ユースのような権利侵害を構成しない著作物の利用に悪影響を与えず、関係する全ての利害関係者からの支持が確保できるように、適切な措置を取る。
3.米国政府は、著作権に関する世界知的所有権機関条約(WCT)第11条及び実演、レコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)第18条は、著作権及び著作隣接権の行使に関連て用いられる効果的な技術的手段の回避を防ぐための適当な法的保護及び効果的な法的救済を要求していることを認識する。
E.スパム
1.日米両政府は、情報通信技術(ICT)分野において、また、企業と消費者にとって世界的な問題となっている迷惑メールに対する懸念を共有する。
2.米国政府は、CAN-SPAM法の精力的な執行、官民の協力、産業界主導の技術的解決策の推進、国際協調(執行の協力を含む)及び消費者教育を含む、スパム対策の多面的な取組みを継続する。
3.連邦取引委員会(FTC)は最近、CAN-SPAM法の有効性を評価する報告書を議会へ提出した。2005年12月の報告書提出の時点で、FTC、司法省、州の検事当局及びISPは、2004年1月1日の施行以来、CAN-SPAM法の下で50件以上の訴訟を提起した。CAN-SPAM法違反の申し立てに加え、FTCはまた、商業における、もしくは商業に影響を与える不正や欺瞞行為・慣行を禁じるFTC法を、スパム送信者に対する訴訟に用いることも可能である。
4.FTCによる議会に対する報告書「CAN-SPAM法の有効性と施行」は、下記のアドレスで入手可能である。http://www.ftc.gov/reports/canspam05/051220canspamrpt.pdf
5.米国政府は、日本国政府とともに、スパムを撲滅するための方策の探求及び検討を継続する。
IV.医療機器・医薬品
A.在米日本企業との定期会合:米国厚生省食品医薬品庁(FDA/HHS)は、引き続き在米日本企業との会合の機会を提供する。日本については、国際訪問プログラムを通じ、2004年度(米国会計年度。以下本項において同じ。)には世界最多の22訪問団が、2005年度には世界第2位の19訪問団FDA/HHSを訪問した。2006年度上半期には、FDA/HHSは日本から12の訪問団を受け入れた。
B.世界同時開発の推進:米国商務省は、引き続き米国産業に対し、日本の規制当局と協働して、日本を含めた、医薬品の世界同時開発を推進するよう促す。
C.FDA査察方針の明示:FDA/HHSは、そのウェブサイト(www.fda.gov/ora/inspect_ref/)で査察方針や手続に係る詳細の説明を提供している。日本におけるFDA/HHSの査察は、米国向けの製品のみを対象としており、日本向けの製品は対象としていない。日本企業が、どの製品を米国市場で販売するかを決定し、査察の焦点を選択することとなる。
D.治験医療機器免除(IDE)のための治験相談実施期間の遵守:治験医療機器免除(IDE)の方針及び手続に関するガイダンスに定められた治験相談の実施期間を遵守すべきという日本国政府ら米国政府に対する要望に関して、両政府は、引き続き厚生労働省とFDA/HHSとの二者協議の場で議論していく。
E.明確な医療機器のクラス分類:医療機器の付属品類のクラス分類について判断基準を明確にするとともに、製造業者がクラス分類を自ら判定できるようにすべきという日本国政府から米国政府に対する要望に関して、両政府は、引き続き厚生労働省とFDA/HHSとの二者協議の場議論していく。
F.市販前届出の第三者審査機関による審査の迅速化:医療機器の市販前届出の第三者審査機関による評価期間を規定すべきという日本国政府から米国政府に対する要望に関して、両政府は、引き続き厚生労働省とFDA/HHSとの二者協議の場で議論していく。
G.超音波内視鏡の510(k)申請時の超音波出力データ:申請者の負担を軽減するために、ガイダンスの見直しを行い、超音波内視鏡の510(k)申請書に添付するデータは、代表的なもののみに限定すべきという日本国政府から米国政府に対する要望に関して、両政府は、引き続き厚生働省とFDA/HHSとの二者協議の場で議論していく。
H.申請区分の明確化:申請者が事前に必要な時間と費用を見積もれるようにするために、医療機器の市販前承認取得後の変更申請の申請区分を明確にすべきという日本国政府から米国政に対する要望に関して、両政府は、引き続き厚生労働省とFDA/HHSとの二者協議の場で議論していく。
V.金融サービス
A.事業再編時における外国証券発行企業に係る登録要件:事業再編(合併、統合、証券の組替え、企業資産の移転)の一環としての証券の公募又は交換は、1933年証券法(1933年法)規則145に基づき、証券の公募及び販売と位置づけられている。証券の保有者が他の登録免除措置に依存することが排除されている場合、取引の一部として交換された証券は、1933年法に基づき、証券監視委員会(SEC)による登録を要する。1999年にSECは、1933年法規則800及び802を採用し、買収企業及び被買収企業が外国企業であり、かつ米国居住者による被買収企業の株式保有が10%未満である場合は、事業再編の一環としての証券の発行について登録義務を免除することとした。
1.SEC職員は、そのSECの登録義務には健全な根拠があると信じている。既に保有している証券との交換により証券を取得する際の決定と、現金の支払いにより証券を取得する際の決定は、ほぼ同様の投資判断である。投資家保護に関する懸念と内国民待遇を尊重することが、この規則(規則145)の対象とされる取引の登録を免除することにはならない。
2.SECが1933年法規則800と802、及び外国企業の公募に関する適用除外規定である規則801を採択する際、SECは、登録免除の目的と投資家保護の利益に照らし合わせて、適切かつ望ましい米国居住者の持分比率の水準を注意深く検討した。SECの職員は、証券取引から排除されるのではなく、10%以下の水準で参加することを可能とすることにより、米国連邦証券法令の完全な保護を受けなくとも、米国居住の証券保有者の利益が最も満たされると信じる。
3.最後に、規則800及び802は非排他的な免責条項である。米国居住者の株式保有比率が10%超であっても、相反する規制上の義務と募集慣行に対応するため、より整備された救済策が採り入れられてきた。その結果、10%基準(特定の取引に関して求められる基準値であり、継続中の要件ではない)を満たさない又は満たしていると判断することが困難な証券取引を行う日本の企業は、SECの職員に対し、個別の救済策が保証されるかどうかの具体的な懸念を提起することが勧められる。
B.外国投資信託/会社の販売と勧奨に関する規則:1940年投資会社法の下に制定されている規則7d-1は、文言上はカナダの投資会社のみに適用されるものであるが、SECは歴史的に、カナダ以外の外国投資会社が規則7d-1の要件を満たした場合、これらの投資会社に対しても、その1940年法に基づき登録を許可するための第7条d項の命令を発出してきた。例えば、195年から1973年の間に、SECは、カナダ、オーストラリア、バミューダ、南アフリカ及び英国の投資会社に対して第7条d項の命令を発出している。これらの各命令において、申請者は、第7条d項の命令を取得する上での必須条件として、規則7d-1の条件に従うことに同意した。いくつかの事例において、SECは、規則7d-1からの限定的な適用除外を付与している。例えば、1979年、カナダの投資会社に対し、米国の銀行の日本支店に保管されている日本株式の保有を維持することを認めたが、もし認めなければ、規則7d-1に違反していたことになっていたであろう。(Templeton Growth Fund, Ltd.の事例(投資会社法に関する発表10628(1979年3月13日)及び10657(1979年4月11日)を参照のこと。))
1.他の手段が利用可能であることに鑑み、SEC職員は、日本のファンドについて規則7d-1の拡大解釈を追求することや、この規則の実質的な義務について変更を提案することは、実用的でも現実的でもないと信じる。第7条d項に基づき、SECは、外国ファンドの投資家が米国のファンドと同様の執行可能な保護を受けているとの厳格で断定的な結論を出すことが求められている。実際には、規則7d-1の要件を満たすファンドはほとんどなく、SECは少なくともこの四半世紀の間、第7条d項の命令を発出したことがない。SEC職員は、規則7d-1の修正を提案したり、拡大解釈をする計画はない。
2.第7条d項は、排他的に米国市場へのアクセスを制限するものではない。外国の出資者が、米国にミラー・ファンドや「支流」ファンドを組成し、登録して、外国の「マスター」・ファンドに投資することは可能である。更に、議会が1940年法を1996年に改正した際、国内外のファンドが「適格購入者」に限定して証券の公募と販売を行う場合、米国内で活動することを認める第3条c項7号を採択した。
3.日本国政府の懸念が、上場投資信託(ETF)に適用される規則に関連する問題に基づくものである限り、外国の出資者が1940年法に基づき米国のETFを組成し登録する場合、そのようなETFはSEC職員が米国のETFの取引を促進するために提供したのと同種類の適用除外の資格を有するという点が留意されるべきである。この点について、この法律に基づき登録されたファンドに適用除外を付与する上でSEC職員が検討しなければならない条件は、外国のファンドの登録を認めるために、第7条d項に基づきSECがなすべき厳しい結論と同じではない。
C.金融持株会社の要件:最近まで、日本と同様、米国は商業銀行と投資銀行との統合を制限してきた。グラム・リーチ・ブライリー法のもと、議会は、米国の預金受入金融機関の子会社が、資本と経営について、非常に高いプルデンシャル基準を満たしている組織に限って、これら制限を撤廃することを決定した。その自由化の資格を有する組織は、金融持株会社(FHC)として知られている。内国民待遇の原則と競争機会の均等原則を適正に考慮し、外国銀行は、金融持株会社となっている米国の銀行持株会社傘下の銀行子会社に適用されるプルデンシャル基準と同等のプルデンシャル基準を満たした場合、金融持株会社となることができる。この基準は全ての外国銀行に対して無差別に適用される。資本の同等性を決定する上で考慮される要素には、外国銀行の資本の構成、会計基準、長期債務格付け、政府の資金調達への依存、資本の分析に影響を与える可能性のあるその他の要素が含まれる。前述したとおり、単一の要素が決定的であるわけではない。30を超える数の外国銀行がFHCとなっている。米国政府は、日本の主要行の多くが不良債権処理を進展させたことを認識する。米国政府は、これらプルデンシャル基準を満たす外国金融機関によるFHC資格の申請を歓迎する。
D.外国投資信託による新規公開株式投資規制の緩和:全米証券業協会(NASD)規則2790は、NASD会員が新規公開株式を「制限された者」が利益を有する口座に売却することを一般的に禁止している。米国の登録された投資会社は、この禁止から免除されている。この規則は、外国の投資会社への限定的な免除を含んでおり、投資会社の株式の5%超を保有している者が「制限された者」でなければ、このようなファンドは新規株式公開に参加することができる。外国のファンドは、また、新株の購入の全てがこの規則に従うものであることを示す書面を提供なければならない。この規則の目的は、新規株式公開の資金フローの利益が、一般国民のものとなることを確保することであり、また立場を利用して一般投資家の不利益となる形で新規公64第5回報告書米国政府による措置開株を取得する可能性のある証券インサイダーのものとならないようにすることである。
1.外国のファンドに対する5%制限は、慎重な考え方に基づくものであり、また新規公開式を購入するために外国の投資ファンドを利用しようとする「制限された者」が規則2790の回避を防止することを意図している。米国内の投資会社には、関係者間の取引禁止を含めた米国の規制に服することから、同じ条件は課されない。
2.外国の規制体系の同等性を調査することは本質的に難しく、また米国の投資会社が、外国の投資ファンドを介在させることによって、適用される規則を回避しようとすることを防ぐため、NASDは、外国のファンドに追加的な条件を課すことが必要であると決定した。
3.SECの職員は、NASDが外国ファンドに対する5%制限について提起された懸念を引き続き検討する意向であると理解しており、また、改正が適当か否かについて、この規則に関連する業界と更なる議論を行う意向である。