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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定

[場所] 東京
[年月日] 2007年8月10日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

前文

 日本国政府及びアメリカ合衆国政府(以下「両締約国政府」といい、個別に「締約国政府」という。)は、

 1960年1月19日にワシントンで署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づく日米安全保障体制が、共通の安全保障上の目標を達成するための基礎であることを確認し、

 1954年3月8日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定及び同協定に基づく取極が、防衛関連情報の相互の交換を規定してきたことを認識し、

 2005年10月29日の安全保障協議委員会において、閣僚が、関連当局の間でより広範な情報共有が促進されるよう、共有の秘密情報を保護するために必要な追加的措置をとる約束を表明したことを想起し、

 秘密軍事情報の保護を確保するための相互協力を促進することを希望して、

 次のとおり協定した。

第一条 定義

 この協定の適用上、

(a)「秘密軍事情報」とは、アメリカ合衆国国防省若しくは日本国防衛省により作成され、それらの使用のために作成され、若しくはそれらにより保持されている防衛関連情報又はアメリカ合衆国政府若しくは日本国政府の他の関係当局により作成され、それらの使用のために作成され、若しくはそれらにより保持されている防衛関連情報であって、当該情報の起源となる締約国政府の国家安全保障のために保護を必要とするものをいう。秘密軍事情報には、秘密指定及び、必要な場合には、当該情報が秘密軍事情報であることを識別するための適当な表示を付す。秘密軍事情報は、口頭、映像、電子、磁気若しくは文書の形態又は装備若しくは技術の形態をとることができる。

(b)「国内法令」とは、次のものをいう。

(i)日本国に関しては、この協定の附属書に掲げる法律及び他の関係法令

(ii)アメリカ合衆国に関しては、外交上の経路を通じてアメリカ合衆国政府により日本国政府に対し通報される法律及び他の関係法令

(c)「秘密軍事情報取扱資格」とは、各締約国政府の適当な手続に従って個人に付与される適格性であって、秘密軍事情報を確実に取り扱うためのものをいう。

第二条 秘密軍事情報の保護

 一方の締約国政府により他方の締約国政府に対し直接又は間接に提供される秘密軍事情報は、この協定の規定が当該情報を受領する締約国政府の国内法令に合致する限り、当該規定に基づき保護される。

第三条 国内法令の変更

 一方の締約国政府は、この協定の下での秘密軍事情報の保護に影響を及ぼす自国の国内法令のいかなる変更についても、他方の締約国政府に対し通報する。この場合には、両締約国政府は、第十九条(b)に規定するところに従って、この協定の可能な改正につき検討するために協議する。その間、秘密軍事情報は、当該情報を提供する締約国政府が書面により別段の承認を行わない限り、引き続きこの協定の規定に従って保護される。

第四条 秘密軍事情報の秘密指定及び表示

 アメリカ合衆国政府にあっては、秘密軍事情報は、「Top Secret」、「Secret」又は「Confidential」と表示される。日本国政府にあっては、自衛隊法に従って「防衛秘密」に指定される秘密軍事情報は、「防衛秘密」と表示され、「防衛秘密」に指定されない他の秘密軍事情報は、当該情報の機微の程度に従って「機密」、「極秘」又は「秘」と表示される。

 「防衛秘密」であって追加的な表示である「機密」が付されるものには、合衆国の「Top Secret」と同等の保護が与えられる。「防衛秘密」には、合衆国の「Secret」と同等の保護が与えられる。

 同等の秘密指定は、次のとおりとする。

{表は省略}

 秘密軍事情報を受領する各締約国政府は、すべての秘密軍事情報に当該情報を提供する締約国政府名を押印し、又は表示する。また、秘密軍事情報には、当該情報を受領する締約国政府の同等の秘密指定が表示される。

第五条 補足実施取極

 この協定に基づく補足実施取極は、両締約国政府の権限のある当局により行うことができる。アメリカ合衆国政府については、権限のある当局とは、国防省をいうものとする。日本国政府については、権限のある当局は、日本国政府により特定され、日本国政府によりアメリカ合衆国政府に対し外交上の経路を通じて通報されるものとする。

第六条 秘密軍事情報を保護するための原則

 両締約国政府は、次の事項を確保する。

(a)秘密軍事情報を受領する締約国政府は、当該情報を提供する締約国政府の事前の書面による承認を得ることなく、第三国の政府、個人、企業、機関、組織又は他の団体に対し、当該情報を提供しないこと。

(b)秘密軍事情報を受領する締約国政府は、自国の国内法令に従って、秘密軍事情報について当該情報を提供する締約国政府により与えられている保護と実質的に同等の保護を与えるために適当な措置をとること。

(c)秘密軍事情報を受領する締約国政府は、当該情報を提供する締約国政府の事前の書面による承認を得ることなく、当該情報が提供された目的以外の目的のために、当該情報を使用しないこと。

(d)秘密軍事情報を受領する締約国政府は、自国の国内法令に従って、当該情報に関係する特許権、著作権又は企業秘密のような知的財産権を遵守すること。

(e)秘密軍事情報を取り扱う政府の各施設が、秘密軍事情報取扱資格を有し、かつ、当該情報にアクセスすることを許可されている個人の登録簿を保持すること。

(f)各締約国政府は、秘密軍事情報の配布及び当該情報へのアクセスを管理するために、当該情報の識別、所在、目録及び管理の手続を設定すること。

第七条 秘密軍事情報への職員のアクセス

(a)いかなる政府職員も、階級、地位又は秘密軍事情報取扱資格のみにより、秘密軍事情報へのアクセスを認められてはならない。

(b)秘密軍事情報へのアクセスは、政府職員であって、職務上当該アクセスを必要とし、かつ、当該情報を受領する締約国政府の国内法令に従って秘密軍事情報取扱資格を付与されたものに対してのみ認められる。

(c)両締約国政府は、政府職員に秘密軍事情報取扱資格を付与する決定が、国家安全保障上の利益と合致し、及び当該政府職員が秘密軍事情報を取り扱うに当たり信用できかつ信頼し得るか否かを示すすべての入手可能な情報に基づき行われることを確保する。

(d)秘密軍事情報へのアクセスを認められる政府職員に関して、(c)に規定する基準が満たされていることを確保するために、適当な手続が、両締約国政府により自国の国内法令に従って実施される。

(e)一方の締約国政府の代表者が他方の締約国政府の代表者に対し秘密軍事情報を提供する前に、当該情報を受領する締約国政府は、当該情報を提供する締約国政府に対し次の事項についての保証を与える。

(i)当該情報を受領する締約国政府の代表者が、必要な水準の秘密軍事情報取扱資格を有すること。

(ii)当該情報を受領する締約国政府の代表者が、公用の目的でアクセスを必要とすること。

(iii)当該情報を受領する締約国政府は、自国の国内法令に従って、当該情報について当該情報を提供する締約国政府により与えられている保護と実質的に同等の保護を与えるために適当な措置をとること。

第八条 訪問手続

 一方の締約国政府の代表者が、他方の締約国政府の施設であって、秘密軍事情報へのアクセスを必要とするものを訪問するための許可は、公用の目的のために必要なものに限定される。一方の締約国政府の領域内に所在する施設を訪問するための許可は、当該一方の締約国政府によってのみ与えられる。訪問を受ける締約国政府は、訪問先の施設に対し、訪問案、主題、範囲及び訪問者に対し提供することができる最も高い水準の秘密軍事情報について助言する責任を有する。両締約国政府の代表者による訪問のための申請は、合衆国の訪問者の場合には東京のアメリカ合衆国大使館の適当な事務所又は在日米軍司令部を通じて、日本国の訪問者の場合にはワシントンの日本国大使館を通じて、提出される。

第九条 送付

 秘密軍事情報は、政府間の経路を通じて両締約国政府間で送付される。送付に際し、秘密軍事情報を受領する締約国政府は、当該情報の保管、管理及び秘密保持に責任を有する。

第十条 施設の保安

 一方の締約国政府は、他方の締約国政府の秘密軍事情報が保管されているすべての政府の施設の保安に責任を有するとともに、各施設について、この協定に従って秘密軍事情報の管理及び保護の責任及び権限を有する適格な政府職員を指名することを確保する。

第十一条 保管

 両締約国政府は、第七条及び第十六条の規定に従ってアクセスを許可された個人のみがアクセスすることが確保されるような方法により、秘密軍事情報を保管する。

第十二条 送付される間の秘密保持の義務

 送付される間の秘密軍事情報の秘密保持に関する最低限の義務は、次のとおりとする。

(a)秘密指定された文書及び媒体

(i)秘密軍事情報を含む文書及び媒体は、二重の封印された封筒であって、内側の封筒に当該文書又は当該媒体の秘密指定及び受領予定者の属する組織の住所のみを記載し、外側の封筒に当該受領予定者の属する組織の住所、発送者の属する組織の住所及び適当な場合には登録番号を記載したものにより送付される。

(ii)同封される文書又は媒体の秘密指定は、外側の封筒には表示してはならない。封印された封筒は、秘密軍事情報を提供する締約国政府の定められた規則及び手続に従って送付される。

(iii)受領証が、両締約国政府間で送付される秘密指定された文書又は媒体を含む包みのために用意され、また、同封される文書又は媒体の受領証は、最終の受領者により署名され、発送者に返送される。

(b)秘密指定された装備

(i)秘密指定された装備は、その細部が識別されることを防止するために、封印され、被覆された車両により輸送され、又は確実に包装され、若しくは保護されるとともに、許可されていない個人によるアクセスを防止するために、継続的な管理の下に置かれる。

(ii)発送を待つ間、一時的に保管されなければならない秘密指定された装備は、当該装備の秘密指定の水準に応じた保護を与える保管区域に置かれる。許可された職員のみが、当該保管区域にアクセスするものとする。

(iii)送付される間に、秘密指定された装備の管理者が変わる場合には、受領証は、その都度取得される。

(iv)受領証は、最終の受領者により署名され、発送者に返送される。

(c)電子的送付

 電子的手段により送付される秘密軍事情報は、送付される間、当該秘密情報の水準に照らし適当な暗号を使用することにより保護される。秘密軍事情報の処理、保管又は送付を行う情報制度は、当該制度を採用する締約国政府の適当な当局により、秘密保持についての認定を受ける。

第十三条 破壊

(a)両締約国政府は、焼却、破砕、パルプ化又は秘密軍事情報のすべて若しくは一部の復元を防止する他の方法により、秘密指定された文書及び媒体を破壊する。

(b)両締約国政府は、秘密軍事情報の全部又は一部の復元を防止するために、秘密指定された装備を見分けがつかないまでに破壊し、又は当該装備を変更する。

第十四条 複製

 両締約国政府が秘密指定された文書又は媒体を複製するときは、これらに付されているすべての原本の秘密表示についても、複製し、又は各複製物に表示する。両締約国政府は、このような複製された秘密指定された文書又は媒体を、秘密指定された文書又は媒体の原本と同じ管理の下に置く。両締約国政府は、複製物の数を公用の目的のために必要とされる数に限定する。

第十五条 翻訳

 両締約国政府は、秘密軍事情報のすべての翻訳が、第七条及び次条の規定に従って秘密軍事情報取扱資格を有する個人により行われることを確保する。両締約国政府は、複製物の数を最小限にとどめるとともに、その配布を管理する。当該翻訳には、適当な秘密指定を付すものとし、かつ、文書又は媒体が当該文書又は媒体を提供する締約国政府の秘密軍事情報を含むことを示す適当な注釈を翻訳された後の言語により付すものとする。

第十六条 契約企業への秘密軍事情報の提供

 秘密軍事情報を受領する締約国政府は、当該情報を提供する締約国政府から受領する当該情報を契約企業(下請契約企業を含む。以下同じ。)に対し提供する前に、自国の国内法令に従って、次の事項を確保するために適当な措置をとる。

(a)いかなる個人も、階級、地位又は秘密軍事情報取扱資格のみにより、秘密軍事情報へのアクセスを認められないこと。

(b)契約企業及び契約企業の施設が、秘密軍事情報を保護する能力を有すること。

(c)職務上秘密軍事情報へのアクセスを必要とするすべての個人が、秘密軍事情報取扱資格を有すること。

(d)秘密軍事情報取扱資格が、第七条に規定する方法と同様の方法により決定されること。

(e)秘密軍事情報へのアクセスを認められる個人に関して、第七条(c)に規定する基準が満たされていることを保証するために、適当な手続が、実施されること。

(f)秘密軍事情報へのアクセスを有するすべての個人が、当該情報を保護するための責任について通知されること。

(g)秘密軍事情報を受領する締約国政府は、当該情報を提供する締約国政府の当該情報がこの協定において求められているとおりに保護されることを確保するために、当該情報が保管され、又は当該情報へのアクセスが行われている契約企業の各施設において、最初の及び定期的な保安検査を実施すること。

(h)秘密軍事情報へのアクセスが、職務上当該アクセスを必要とする個人に限定されること。

(i)秘密軍事情報取扱資格を有し、かつ、当該情報にアクセスすることを許可されている個人の登録簿が、各施設において保持されること。

(j)秘密軍事情報の管理及び保護の責任及び権限を有する適格な個人が、指名されること。

(k)秘密軍事情報が、第十一条に規定する方法と同様の方法により保管されること。

(l)秘密軍事情報が、第九条及び第十二条に規定する方法と同様の方法により送付されること。

(m)秘密指定された文書及び秘密指定された装備が、第十三条に規定する方法と同様の方法により破壊されること。

(n)秘密指定された文書が、第十四条に規定する方法と同様の方法により複製され、及び管理の下に置かれること。

(o)秘密軍事情報の翻訳が、前条に規定する方法と同様の方法により行われ、かつ、複製物が、当該方法により取り扱われること。

第十七条 紛失又は漏せつ

 秘密軍事情報を提供する締約国政府は、当該情報のあらゆる紛失又は漏せつ及び紛失又は漏せつのあらゆる可能性について直ちに通知され、当該情報を受領する締約国政府は、状況を特定するために調査を開始する。当該情報を受領する締約国政府は、当該情報を提供する締約国政府に対し、当該調査の結果及び再発を防止するためにとられる措置に関する情報を送付する。

第十八条 秘密保持に係る代表者による訪問

 前記の秘密保持に関する義務の履行は、両締約国政府の秘密保持に係る代表者による相互訪問を通じて促進することができる。このため、一方の締約国政府の秘密保持に係る代表者は、それぞれの秘密保持制度が合理的な程度に同等のものとなることを達成するために、秘密保持の手続について議論し、及びその実施を視察することを目的として、相互に合意する場所において、及び相互に満足する方法により、事前の協議の後に、他方の締約国政府を訪問することが許可される。一方の締約国政府は、他方の締約国政府により提供される秘密軍事情報が適切に保護されているか否かについて、秘密保持に係る代表者が決定するに当たり支援する。

第十九条 効力発生、改正、有効期間及び終了

(a)この協定は、署名の日に効力を生ずる。

(b)この協定の改正は、両締約国政府の書面による同意により行われ、署名の日に効力を生ずる。

(c)この協定は、一年間効力を有し、一方の締約国政府が他方の締約国政府に対しこの協定を終了させる意思を九十日前に外交上の経路を通じて書面により通告しない限り、その効力は、毎年自動的に延長される。

(d)この協定の終了の後においても、この協定に従って提供されたすべての秘密軍事情報は、引き続きこの協定の規定に従って保護される。

 2007年8月10日に東京で、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。

 日本国政府のために

 アメリカ合衆国政府のために

附属書

 第一条(b)に規定する日本国の法律

(a)日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法(1954年法律第百66号)

(b)自衛隊法(1954年法律第百65号)

(c)日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法(1952年法律第百38号)

(d)国家公務員法(1947年法律第120号)