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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米間の「規制改革及び競争政策イニシアティブ」に関する日米両首脳への第八回報告書

[場所] 
[年月日] 2009年7月6日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 「日米規制改革及び競争政策イニシアティブ」(規制改革イニシアティブ)は、日米両国政府が規制改革を通じて経済成長を促進するための重要な二国間フォーラムである。

 経済成長を促し、新たな市場を開拓し、またビジネス環境を改善するような新たな措置を展開していくことの重要性は、最近の数ヶ月間に見られたグローバル経済の突然の落ち込みを見ても明らかである。安定的な経済成長の回復は引き続き最優先課題となっており、両国政府は、本イニシアティブが、日米経済・通商関係の拡大・深化に役立つのみならず、そうした課題を克服していくうえでも大きな貢献をなしていることを再確認する。

 本イニシアティブにおける日米両国政府の関与は双方向のものであり、2008年10月の要望書の交換をもって、秋口に開始された。

 4つの作業部会(分野横断、医療機器・医薬品、電気通信、情報技術)は、知的財産権、税関・流通、競争政策、貿易投資関連措置、政府調達、領事事項、医療機器・医薬品、商法、特殊法人の民営化及び電気通信を含む通信分野等主要な分野における改革を推進するために議論を行ってきた。2009年5月には、このイニシアティブの下で提起された一連の問題を前進させるため上級会合も開催された。作業部会及び上級会合の後、各政府の要望に対する前進を記録し、将来採られることになる措置につき詳述するために、この首脳への報告書は作成された。今回は本イニシアティブの下での第8回目の年次報告書である。

 日米二国間の議題に加え、この報告書は、両国政府により継続的に行われている知的財産権の保護及び執行に関する地域的、世界的な取組についても強調している。両国政府は、二国間、地域及び多国間の議論の場における協力を引き続き向上させていく決意を確認する。

 日米両国政府は、更に規制改革を促進する決意を再確認するとともに、いずれかの政府の要請に基づき、双方の都合の良い時期に、この報告書に含まれている措置を取り上げるために会合する。

目次{前2文字下線あり}

日本国政府による規制改革及びその他の措置{前21文字下線あり}

Ⅰ.通信・・・・・3

Ⅱ.情報技術・・・・・5

Ⅲ.医療機器・医薬品・・・・・13

Ⅳ.金融サービス・・・・・25

Ⅴ.競争政策・・・・・29

Ⅵ.商法及び司法制度改革の実現・・・・・37

Ⅶ.透明性・・・・・46

Ⅷ.その他の政府慣行・・・・・49

Ⅸ.民営化・・・・・55

Ⅹ.流通・・・・・60

米国政府による規制改革及びその他の措置{前20文字下線あり}

Ⅰ.ダンピング防止措置・・・・・62

Ⅱ.税関・流通・・・・・62

Ⅲ.領事事項・・・・・65

Ⅳ.特許制度・・・・・73

V.政府調達・・・・・75

Ⅵ.輸出関連規制・・・・・77

Ⅶ.基準・規格・・・・・78

Ⅷ.州別規制の統一化・・・・・80

Ⅸ.域外適用・・・・・81

Ⅹ.競争政策・・・・・82

ⅩⅠ.司法制度・法律サービス・・・・・83

ⅩⅡ.海運・・・・・83

ⅩⅢ.商品市場・・・・・85

ⅩⅣ.金融・・・・・85

ⅩⅤ.電気通信・・・・・87

ⅩⅥ.情報技術・・・・・91

ⅩⅦ.医療機器・医薬品・・・・・92

日本国政府による規制改革及びその他の措置

Ⅰ.通信{前4文字囲み線あり}

A.競争促進{前6文字下線あり}

1.2009年2月、総務省は、情報通信審議会に、電気通信市場における公正競争環境を確保する観点から、電気通信市場の環境変化に対応した接続ルールの在り方について諮問した。総務省は、特に4つの主要な分野を中心に諮問した。

a.第二種指定電気通信設備制度(移動通信に対する規制)の検証を含むモバイル市場の公正競争環境の整備

b.固定ブロードバンド市場の公正競争環境の整備

c.通信プラットフォーム機能のオープン化及び紛争処理機能の強化を含む通信プラットフォーム市場・コンテンツ配信市場への参入促進のための公正競争環境の整備

d.ビル&キープ方式についての検討を含む固定通信と移動通信の融合時代等における接続ルールの在り方

B.固定接続{前6文字下線あり}

1.2008年7月、総務省は、NTT東西の次世代ネットワークを第一種指定電気通信設備に指定するための省令改正を行い、その結果として競争事業者とのコスト指向かつ非差別の接続を確保する義務を負う。同年11月、本省令改正に基づき、総務省は、NTT東西の次世代ネットワークへの接続に必要なインターフェース条件等のネットワーク情報を含む、NTT東西の接続約款を認可するとともに、2009年3月に本省令改正に基づき、NTT東西の次世代ネットワークに係る2009年度の接続料を認可した。その結果、NTT東日本のVoIP(ひかり電話)に着信した場合の接続料は、3分あたり5.69円、NTT西日本のVoIP(ひかり電話)に着信した場合の接続料は、3分あたり6.29円とされた。

2.2008年7月、総務省は、NTT東西の次世代ネットワークの商用開始を踏まえ、NTT東西の次世代ネットワークのための設備等網機能提供計画の対象外設備について情報開示を行うことを義務づける告示の改正を行った。その結果、競争事業者が新たな機能を利用したサービス提供を事前に検討できるよう、新たな機能の提供予定時期の原則90日前までに、NTT東西の次世代ネットワークのための設備を含む、前述の設備に関する情報開示が義務付けられた。

C.移動体接続{前7文字下線あり}

NTTドコモの接続料は過去10年以上にわたって継続的に引き下げられており、その結果、発信者課金制度を採用する先進国の中で最も低いレベルまで下がっている。2009年3月、NTTドコモの接続料は、区域内及び区域外に適用される接続料の平均の接続料は1分間9.8円に改定され、前年度と比較して11%引き下げられる旨、総務省に届出があった。

D.先進技術及びサービスの促進{前17文字下線あり}

1.総務省は、電波の利用状況調査の評価結果に基づく具体的な周波数の再編を円滑かつ着実に実施するため、2004年度から「周波数再編アクションプラン」を策定し、毎年改定し公表している。2008年11月、最新の電波の利用状況調査の評価結果に基づき改定した「周波数再編アクションプラン」を公表した。改定されたアクションプランには、地上テレビジョン放送のデジタル化に伴う空き周波数の有効利用に関して、電気通信用途での使用に関し、800/900MHz帯の周波数再編の進捗状況及び携帯電話システム等の需要・技術動向を踏まえ、2012年7月25日から使用可能となるよう検討を実施すること等の具体的な取組が含まれている。

2.2008年12月、情報通信審議会は、電波の有効利用と混信の排除を考慮した3.9世代移動通信システムの技術的条件について答申を行った。2009年4月、総務省は、3.9世代移動通信システムの導入のための免許方針等を策定した。イー・モバイル株式会社、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ、ソフトバンクモバイル株式会社及びKDDI株式会社/沖縄セルラー電話株式会社から申請があり、同年6月、これらの開設計画すべてを認定した。

3.2009年6月、情報通信審議会情報通信技術分科会放送システム委員会は、VHF帯の一部のための放送方式を検討しており、携帯端末向けマルチメディア放送方式の技術的条件の報告案についてパブリック・コメントを開始した。

E.多国間関係{前7文字下線あり}

日米両国政府は、ITUにおけるネットワーク外部性付加料金に関して、他の国際約束との整合性に留意し、引き続き議論に参加していく。

Ⅱ.情報技術{前7文字囲み線あり}

A.医療におけるIT{前10文字下線あり}

1.新グランドデザイン(医療・健康・介護・福祉分野の情報化グランドデザイン)は、IT化による将来の姿を踏まえ、5年間の施策及び事業の計画について示している。厚生労働省は、医療のIT化において、技術中立性や相互運用性を確保するため、引き続き最大限努力する。

2.厚生労働省は、遠隔医療に関する診療報酬として、遠隔画像診断を算定できることとしているところである。厚生労働省は、当該技術に係る有効性・安全性等に関する科学的根拠に基づくデータの検証を踏まえ、医療保険適用の候補となり得る技術がある場合には、医療分野におけるITの活用に関する診療報酬制度について引き続き検討を行う。

3.厚生労働省では、米国から始まった、国際標準規格の組み合わせにより異なるベンダーからのシステムの相互運用性の確保を進めるIHE(Integrating Healthcare Enterprise)と呼ばれる取組について、2007年度より支援している。

 経済産業省は、2006年度から2008年度の3か年の計画で、医療機関間の相互運用性を確保するためのプロジェクトを、名古屋では脳卒中を対象とし、また、岩手、香川、東京、千葉では周産期を対象として実施した。また、2008年度から3か年の計画で、厚生労働省、総務省、経済産業省の3省は、個人が健康情報を生涯にわたり容易に収集・保管し、健康増進に効果的に活用することを目的として、PHRプロジェクト(Personal Health Record Project)を実施している。これら全ての事業において、標準化は重要な課題となっている。各事業において、経済産業省は国際標準化機関と連携して標準化を進めており、最大限、国際標準に準拠するように事業を進めている。これらの事業の報告書は、経済産業省のホームページで公開される(日本語)。

4.日本国政府としては、政府が支援するプロジェクトに関する情報を各省のそれぞれのホームページに掲載すること等により、幅広い情報提供に努めている。また、経済産業省は、厚生労働省及び総務省と連携して実施するPHRプロジェクトの調達に関する情報を、同省のホームページに掲載した。

5.日本国政府は、民間企業を含む利害関係者が、医療ITについての提言、政策及び規則に関する見解を表明し、医療IT関係の作業部会や検討会へ参加するための有意義な機会を引き続き提供していく。

6.厚生労働省においては、日本における医療ITを用いた医療情報の交換のための標準ルールとして、国際的標準であるHL7、DICOM等の採用を提言するなど、医療ITにおける技術中立性を確保する取組を継続している。

B.IT関連の金融改革{前11文字下線あり}

1.2008年5月、金融審議会第二部会に「決済に関するワーキング・グループ」が設置された。同ワーキング・グループは、事業者やその他の関係者とのヒアリングを通じて、決済サービスの制度的な枠組みの在り方について検討を行った。これらの審議に基づいて、2009年1月、金融審議会第二部会は、報告書「資金決済に関する制度整備について―イノベーションの促進と利用者保護―」を公表した。

 金融庁は、本報告書を踏まえ、法制化に向けた作業を進め、2009年3月6日、「資金決済に関する法律案」を国会に提出した。同法案は、2009年6月17日に成立した。

 本法においては、銀行免許がなくても、内閣総理大臣の登録を受けることにより、銀行等以外の者でも為替取引を行うことができることとしている。また、登録を受けた事業者は、同法により、利用者に引き渡すべき資金と同額以上の資産保全と倒産隔離が義務づけられる。

2.金融庁は、民間セクターとの協力をすべく引き続き努力する。金融市場に関わる法律については、国会における審議・成立を経る前に金融審議会やその他の審議会等の場での様々な利害関係者の意見を踏まえ、議論されている。また、政省令の策定にあたっても、行政手続法に従い意見の公募が求められている。金融庁は、国際的な制度との整合性も踏まえ、法律や規制を策定してきており、今後も引き続き策定していく。

3.金融庁は、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法に基づく重点計画等の策定において、IT戦略本部(ITSH)と引き続き連携していく。金融庁は、電子記録債権法の制定にあたり法務省と共同して法案を国会に提出したほか、金融審議会に必要に応じ関係省庁をオブザーバとして受け入れるなど、他の規制や政策との整合性に努めている。

C.政府のIT調達改革{前11文字下線あり}

1.透明性の向上{前6文字下線あり}

 内閣官房において、「情報システムに係る政府調達の基本指針」(基本指針)の実施状況についてフォローアップを行い、その結果について、2009年1月に内閣官房のホームページにおいて公表した。また、調達手続についてより一層透明性・公平性を確保し、真の競争環境を実現する観点から、総務省において「情報システムに係る政府調達事例データベース」の改修を行った。改修後のシステムは、調達計画書、調達仕様書、入札公告情報等登録事項を拡充し、2009年4月から運用を開始した。総務省では、運用に当たって、適切・迅速にデータベースに登録が行われるよう、各府省に要請を行った。大規模な情報システムの調達については、基本指針に沿って、外部の専門家を含む各府省のCIO補佐官が、その調達仕様書の明確性や公平性を確認することとされている。

2.日本版バイ・ドール制度の適用拡大{前18文字下線あり}

 2007年4月に改正した産業技術力強化法が各府省において実施されるのを促すため、経済産業省は、「ソフトウェアに係る日本版バイ・ドール制度に係るガイドライン」を2007年8月に制定した。本ガイドラインではベンダーの権利と義務を明確にしている。日本版バイ・ドール規程は、政府が支援するプログラムを通じて知的財産を開発した受注者が、その財産権を保有することを認めるよう各府省に対して義務づけるものではないが、経済産業省は引き続き、同ガイドラインに基づき、各府省が調達を行うように働きかけていく。

3.ベンダーの法的責任の制限{前14文字下線あり}

 基本指針において、ベンダーの責任範囲の明確化を図る観点から、要求仕様等の変更規定の明記、損害賠償範囲の設定等、契約にあたって留意すべき事項を提示している。総務省は、各府省においてベンダーの法的責任を明確化する取組が行われるよう、引き続き働きかけていく。

4.遡及の禁止{前5文字下線あり}

 日本国政府は、基本指針における契約の遡及適用の禁止を徹底する。総務省は契約の遡及適用に関する苦情を受け付け、関係機関に連絡等を行う窓口を運営している。

5.競争入札の拡大{前7文字下線あり}

 2007年8月の閣議決定により、独立行政法人が結ぶ契約については、原則として一般競争入札等競争性のある契約とすることとされた。これを受け、各法人において「随意契約見直し計画」を策定し、随意契約の削減に取り組んでいるところである。2008年7月には、見直し計画の実施状況が公表されたところである。

6.「ベスト・バリュー」原則の採用{前17文字下線あり}

 日本国政府の調達機関は、適宜、提案の価格、性能、機能及び技術等の要素を総合的に評価し落札者を決定する、総合評価落札方式を用いて情報システム調達を行っている。

D.プライバシー{前10文字下線あり}

 2007年6月、国民生活審議会は、個人情報保護法の施行状況を検討した「個人情報保護に関する取りまとめ(意見)」を公表するとともに、同法の執行を向上させる措置について今後検討すること及び同法に対する過剰反応を防止することを強調した。

1.国民生活審議会における部会は、上記意見において、日本国政府が、様々な施行ガイドラインの共通化について必要な検討を行っていくべきであることを強調した。これを受けて、内閣府は、2008年7月、24分野における37のガイドライン(2008年4月1日現在)について、個人情報の保護を政府として総合的かつ一体的に推進する観点から、ガイドラインの共通化に向けた考え方を示し、2009年7月末を目途に、各省庁が、これに沿って必要な措置を講ずることを申し合わせた。日本国政府は、各省庁がその標準的ガイドラインを模範とするよう奨励する。

2.2008年4月、日本国政府は、上記意見における結論を検討し、個人情報の保護に関する基本方針の一部変更を行った。この変更に照らして、日本国政府は、過剰反応を抑制するための広報・啓発活動等の措置を講じた。たとえば、内閣府は、全47都道府県において、個人情報保護法に関する説明会を開催し、約12,000人が参加した。また、過剰反応を防止するため同法に関するパンフレットや動画を作成した。日本国政府は、同様の措置を2009年も引き続き講じていく所存である。

3.日本国政府及び米国政府は、効率的な国境を越えるデータ流通を確保する一方で個人情報を効果的に保護することが重要であるとの考えを共有する。そうした原則及びプライバシーに関する柔軟な方針形成の価値を認識しつつ、両国政府は、経済協力開発機構(OECD)、アジア太平洋経済協力(APEC)等で進められている多国間の枠組みに参画し、プライバシー等の課題について、情報交換や合意形成を行う。

E.ITと電子商取引の政策立案{前15文字下線あり}

1.民間部門の意見の考慮{前10文字下線あり}

 日本国政府は、政策決定のすべての段階において、民間部門の意見を求め考慮するとともに、IT及び電子商取引に係る諮問機関への民間部門の参加を促すことの重要性を理解する。IT戦略本部及びIT新改革戦略評価専門調査会には、民間からIT分野の専門家が多数参加し、IT戦略の立案、実施を行ってきている。また、日本国政府は、パブリック・コメントの手続の活用を通じ、内外を問わず、民間の多様な意見を求めてきている。行政手続法では、同法に基づく意見提出期間は、公示の日から起算して30日以上でなければならない旨定めている。

2.技術中立性の促進{前8文字下線あり}

 日本国政府は、技術中立性を促す標準を策定することの重要性を認識している。日本国政府は、引き続き、国際標準の策定活動において、民間部門と緊密な連携を行うとともに、必要な法令、規制及びガイドラインの施行を通じて、競争的な市場環境を促進することとしている。

3.規制実施の円滑化{前8文字下線あり}

 日本国政府は、最終決定したIT及び電子商取引規制の公表からその施行日の間に妥当な日数を確保するとともに、十分な余裕を持って施行日を公表することの重要性を理解する。日本国政府は、規制に係る法令やガイドラインの制定・改廃を行う場合には、事前にその内容や施行時期についてパブリック・コメントの募集を行うなど、利害関係者への影響を引き続き十分に考慮していく。

F.知的財産権の保護と執行の強化{前16文字下線あり}

1.著作権侵害に対するエンフォースメントの強化{前21文字下線あり}

a.違法ダウンロード

 日本国政府は、私的使用目的の複製に関する著作権の例外規定が、違法に配信される音楽又は映像のダウンロードを、違法配信と知りながら行う場合には適用されないことを明確にする著作権法改正法案を国会に提出した。国会は、2009年6月12日に同法案を可決した。

 日本国政府は、音楽・映像以外の著作物取扱いについては、本年の文化審議会の検討課題としているところであり、時宜を得た方法で関係者と引き続き検討していく。

b.オンライン上の権利侵害

 日本国政府は、その法制度について米国政府との間で情報交換を行った。日本国政府は、プロバイダー責任制限法に基づく、オンライン上の侵害防止策について説明した。日本国政府は、オンライン上の海賊版の違法な譲渡をより効果的に防止するための措置の法的な影響について検討を行っている。

c.職権の付与

 日本国政府は、著作権法における著作権侵害罪を公訴する際の被害者(権利者)の告訴要件を見直すべきか否かについて検討を行った。文化審議会の議論をとりまとめた2009年1月の報告書においては、著作権等の侵害罪について、非親告罪化することは慎重な検討を要し、また、著作権侵害罪を公訴する際の被害者(権利者)の告訴要件が捜査の大きな障害になっているという認識はないことを再確認した。日本国政府は、職権の付与が著作権侵害罪の効果的な捜査・起訴を促進するための重要な手段であるとの米国政府の見解に留意する。

2.法の近代化{前5文字下線あり}

a.技術的保護手段

 日本国政府は、アクセスコントロールの無断回避、及び技術的保護手段の回避を目的とした、装置又はサービスに関するあらゆる形態の取引に対する、民事上・刑事上の救済措置に関して、引き続き情報収集を行う。また、日本国政府は、引き続き、これらの取組についての最新情報を提供する。

b.著作権保護期間延長

 日本国政府は、文化審議会において、著作権保護期間延長について、国際的な動向や権利者・利用者間の利益の均衡等の関連要因を考慮しつつ時宜を得た方法で検討を継続し、その審議の経過に関する最新情報を米国に提供する。日本国政府は、全ての著作物に対して、現在日本において映画作品が享受している期間と同様の保護期間を付与するという米国政府の要望に留意する。

c.法定損害賠償制度

 日本国政府は、文化審議会において、権利者の損害額の立証負担を軽減するため、侵害行為に対する法定損害賠償制度の創設の必要性の有無について検討を行った。2009年1月に取りまとめられた文化審議会の報告書においては、現行法(第114条の5等)によって損害賠償額を証明することは特段困難ではないことまた、法定損害賠償制度が民法や知的財産法などの法規定と一致し得るかどうかについて検討を行うことが必要とされた。日本国政府は、法定損害賠償制度の採用が、権利者への補償及び侵害の抑止のための重要な手段であるという米国政府の見解に留意する。

3.著作権保護の制限や例外の提案及びその他の著作権関連事項の提言{前31文字下線あり}

 著作権保護に対する新たな権利制限や例外、既存の例外範囲の拡大、そして文化庁の下に置かれた委員会を含む著作権関連の提言を行う委員会が行う、その他の著作権関連の提言に関し、日本国政府は、取りまとめに当たっては広く一般より意見を公募しているほか、日頃から権利者との意見交換を行っている。また、これらの委員会は権利者を委員として迎えて検討を行っているほか、検討課題に応じた権利者からの意見聴取の機会を議論の過程で必要に応じて設けている。

 日本国政府は、引き続き、国内外の権利保有者が著作権関連の提言に関する議論に参加・貢献できる有意義で時宜を得た機会を提供するよう努めていく。

4.特許手続き{前5文字下線あり}

a.繰り延べ審査制度

 日本国政府の特許審査制度は、審査請求されない出願を審査対象から外すことによって、特許庁がその審査資源を審査請求された出願に集中させることを許容する。審査請求がなされた場合、日本国政府はまた、サーチと審査の情報を他庁が利用できるようにするため、一回目のオフィスアクションの結果をできるだけ早く提供する努力を行っている。

b.特許出願の審査

 特許出願審査において、各特許出願は原則として、一回目の拒絶理由通知において全ての拒絶理由が通知されるべき旨を規定する審査基準に従って審査される。

c.グレースピリオド

 日本国政府は、米国政府と、12か月のグレースピリオドについて、引き続き多国間の交渉の場で、制度調和のパッケージの一部として議論していく。

5.他のイニシアティブに関する透明性{前17文字下線あり}

 日本国政府は、著作権の適用に影響を与えるイニシアティブの促進の過程において、広く一般より意見を公募している。また、日本国政府は国内外の関係者と意見交換を行っている。審議会及び研究会は、適当な場合には、関係者が委員やオブザーバーとして参加することを認めている。日本国政府は他のイニシアティブに関しても引き続き透明性の維持に努めていく。

G.知財権の保護と執行に関する日米協力の強化{前22文字下線あり}

1.日米両国政府は、二国間及び多国間で知的財産権に関する協力を引き続き強化していく。

2.特に、アジア太平洋地域における知財協力に関しては、アジア太平洋経済協力(APEC)における「模倣品・海賊版対策イニシアティブ」及びこれに基づく6つのモデル・ガイドラインの策定や、特許取得手続に関するAPEC協力イニシアティブの進展など、具体的な成果がみられた。

3.また、両国政府は、日米共同イニシアティブとして模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)の交渉を開始するために緊密に協力してきた。この緊密な協力は、交渉の進展とともに継続していく。

4.二国間における協力は、2008年のワークシェアリングと国際特許制度調和のための両国特許庁間における協力に関する声明の締結など、多面的に継続していく。

5.しかしながら、現在でも、日米間で協調して対応していくことが必要な知的財産権の保護のための多くの国際的な課題が残されている。

6.今後も日米両国は、国内的に又は国際的に、知的財産権に関する国際ルールの構築やその執行に関し、引き続き日米協力を強化していく。

Ⅲ.医療機器・医薬品{前12文字囲み線あり}

A.医療制度改革への意見{前12文字下線あり}

 厚生労働省及び中央社会保険医療協議会(中医協)等の審議会が日本の医療制度改革を検討し実施する際には、米国業界を含む業界は、厚生労働省に対して意見を表明することができ、厚生労働省はその意見を考慮するものとする。厚生労働省は、医薬品及び医療機器産業を日本の将来の産業の成長のための重要な原動力とし、医療関連産業の国際競争力を強化するための方策をとり続けている。新医薬品産業ビジョンはドラッグラグの解消、国際競争力のある医薬品産業の育成、日本を魅力的な投資先とすることを目的としている。さらに、「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」においては、革新的医薬品・医療機器の適切な評価等の方策が提案されている。

B.医療機器及び医薬品の価格制度の改革及び関連事項{前27文字下線あり}

1.医薬品{前3文字下線あり}

a.官民対話

 革新的創薬等のための官民対話(官民対話)において、「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」に、価格制度に関して、革新的医薬品・医療機器に対する適切な評価への努力が盛り込まれた。厚生労働省は引き続き、米国業界を含む業界が官民対話にて表明する意見を十分に考慮する。

b.中医協の専門委員

 厚生労働省は、中医協の薬価専門部会の委員について、国籍に関係なく引き続き適当な候補者を選出していく。

c.薬価制度改革の提案

 2008年の薬価制度改革において、厚生労働省は、(1)類似薬効比較方式における補正加算率の幅の拡大や、(2)有効性・安全性や革新性の程度も反映させるような原価計算方式の改正などの措置により、新薬の革新性の更なる評価を行うこととした。米国業界を含む業界から提案されている制度には、(1)革新性の程度を反映した新薬の薬価算定、(2)特許期間中又は再審査期間中の薬価の維持、(3)ジェネリック医薬品の使用促進に関する方策が含まれている。これらの3点は現在の薬価制度改革に係る議論の重要な部分である。業界からの提案は、2008年7月から2009年3月の間に中医協の薬価専門部会において4回議論され、関係者の意見を考慮しつつ引き続き議論されることとなっている。

d.毎年の価格改定

 厚生労働省は、米国政府が日本国政府に対して、日本の医療保険制度の下、毎年医薬品と医療機器の価格が引き下げられ得る制度の実施を回避するよう要請していることに留意する。厚生労働省は、毎年の価格改定について議論する機会を引き続き業界に提供していく。

e.市場拡大再算定

 厚生労働省は、米国政府が、日本国政府に対して、引き続き市場拡大再算定制度について廃止又は更なる拡大の回避を要請していることに留意する。厚生労働省は、米国業界を含む業界と、市場拡大再算定の問題について引き続き議論を行う。

f.外国平均価格調整制度

 厚生労働省は、外国平均価格調整制度について、引き続き米国業界を含む業界と議論を行う。

g.補正加算

 薬価の補正加算は、臨床上の革新性の程度を評価するためのものである。厚生労働省は、新薬の補正加算への該当性に基づき、柔軟に補正加算率を適用する。

h.新薬の処方期間

 厚生労働省は新薬の処方期間に関する業界の提案について留意し、これらの提案について議論する用意がある。

i.ワクチン

 厚生労働省は医療保険制度におけるワクチンに関する事項について、米国業界を含む業界と引き続き議論を行う。

2.医療機器{前4文字下線あり}

a.医療機器の外国平均価格参照制度(FAP)

 外国平均価格参照制度は2002年の実施以来、126の異なる機能区分の価格差を縮小した。2008年の保険医療材料価格制度改革において、厚生労働省は、影響を受ける機能区分を減少させ、業界が提出した比較国4か国のデータのみを使用し、価格引き下げ上限を25%に維持し、段階的引き下げを実施した。外国との価格差に対する国民の関心を考慮しつつ、厚生労働省は、米国業界を含む業界に対して、為替変動の影響も含め、外国平均価格参照制度に対する意見を表明する機会を引き続き提供し、必要に応じてこれら意見を考慮する。

b.Rゾーン

 厚生労働省は、医療機器の特性及び医療技術分野におけるイノベーションの重要性について認識している。Rゾーンに関する問題については、中医協(部会)で議論され、米国業界を含む業界の意見を表明する機会が設けられている。

c.革新性の評価

 2008年の保険医療材料価格制度改革において、厚生労働省は、新規及び改良された医療材料の補正加算の償還価格を引き上げたほか、その開発や実際の申請へのインセンティブを強化するため、有用性加算を統合して新しい改良加算を創設するなどの改革を行った。この取組をさらに促進するため、厚生労働省は、米国業界に日本でビジネスを行うことのコストに関する意見を表明する機会を提供する。医薬品と医療機器の基本的な機能の相違に留意しつつ、厚生労働省は、次回の保険医療材料価格制度改革に向けて補正加算に係る議論を継続する。

d.C1/C2製品の迅速な導入

 医療機器の迅速な保険導入のため、2006年の保険医療材料価格制度改革において、C2区分の保険償還時期を年4回とした。2008年には、C1区分の医療機器に関して、厚生労働省は、保険適用までの待ち時間を大幅に短縮した。厚生労働省は、デバイスラグを解消させるのに役立つ、医療機器の保険導入に関する米国業界を含む業界からの提案について、引き続き議論を行う。

e.保険償還プロセス

 厚生労働省は、2008年の保険医療材料制度改革により、新規の医療機器の価格算定について、米国業界を含む業界からヒアリングの機会を設けた。また、2009年の3月に、厚生労働省は、医療機器メーカーが、なぜ自社の特定保険医療材料や主要な機器が高い償還価格に値するのかについて主張することができるヒアリングの機会を設けた。

 また、2008年の保険医療材料価格制度改革において、厚生労働省は、供給が著しく困難な特定保険医療材料の保険償還価格引き上げが可能となるような改正を行った。厚生労働省はC2区分の申請を含む保険償還プロセスについて、引き続き業界と協議していく。

f.機能区分

 2008年の保険医療材料価格制度改革において、厚生労働省は、脳動静脈奇形手術用等クリップや在宅医療材料などの機能区分を細分化するなどの機能区分の見直しを行った。また、2006年4月から2008年4月までの間に、厚生労働省は、新製品に対する15の新たな機能区分を創設した。厚生労働省は、必要に応じて、既存の製品に比べある程度機能が向上した新製品に対し、機能区分の追加や見直しを引き続き検討する。

g.画像診断技術

 2008年の保険医療材料価格制度改革において、厚生労働省は、米国業界を含む業界からのヒアリングを行った。また、同年の診療報酬改定において、中医協の医療技術評価分科会での評価に基づき、学会より要望があった冠動脈CT加算及び心臓MRI加算を新たに創設した。厚生労働省は、中医協の保険医療材料部会において、画像診断を含む価格改革に関する業界からの意見を、引き続き聴取する。

h.体外診断薬

2009年3月、厚生労働省は、今年2回目の体外診断薬の勉強会を開催した。勉強会は、体外診断薬に関する問題について厚生労働省に説明する貴重な機会を業界に提供するものである。厚生労働省は引き続きこのような勉強会に参加する。2008年の診療報酬改定において、厚生労働省は、病院における「迅速検査」等について、これらの評価を考慮し、保険償還価格を引き上げた。厚生労働省は、米国業界を含む業界に対し、体外診断薬の問題に対する意見表明の機会を引き続き提供する。

3.血液製剤{前4文字下線あり}

 厚生労働省は、血液製剤に関連した償還価格の問題について、米国業界を含む業界と引き続き議論をする用意がある。

C.医療機器・医薬品の制度及び関連事項{前20文字下線あり}

 日本国政府は革新的な医療機器及び医薬品の日本への導入の遅れを解消するために引き続き努力している。日本国政府は2009年度中に以下の措置を講じることにより、規制制度を改善する。

1.医薬品{前3文字下線あり}

a.世界同時開発を含む、医薬品の開発

 開発計画やデータ要件を考慮する際、厚生労働省及び医薬品医療機器総合機構(総合機構)は引き続き、個々の製品の特性に応じた科学に基づく決定を行う。

 日本国政府は日本における効率的な医薬品開発を促進する手段として、医薬品の世界同時開発を支持する。日本国政府は「新たな治験活性化5カ年計画」を2007年より実施しており、(1)医療機関における国際共同治験を含む治験実施体制の整備、(2)効率的な治験実施による企業負担の軽減のための支援、(3)ガイドライン「国際共同治験に関する基本的考え方について」の発出等の対応をとるなど、国際共同治験を推進している。世界同時開発は、ドラッグラグ短縮に資することが期待されている。「革新的創薬等のための官民対話」などの各種の対話の場を通じ、厚生労働省と総合機構は、米国業界を含む関係者と引き続き意見交換する。

b.治験相談の待ち時間

 厚生労働省と総合機構は医薬品についての治験相談待ち時間の削減について、大きな前進を遂げた。総合機構は2008年度に持ち点を考慮した日程調整制度を廃止し、全ての相談にタイムリーに対応できるよう体制の整備を行った。厚生労働省は、総合機構が適時に治験相談の要請に応じられるよう引き続き支援する。

c.医薬品審査期間

 厚生労働省は総合機構が2009年度末までに236人の医薬品審査担当者を増員する計画を実施すること並びに総合機構が医薬品の審査及び治験相談を実施する体制を改善するために一層努力することを確保する。2009年4月現在、総合機構の審査担当者は346名である。また総合機構は、抗がん剤を専門に扱う新しい部署を設置するなど組織の改革も行い、審査の迅速化に努めている。

 審査の質の向上について、総合機構は、(1)2008年4月に新薬の審査員のために医薬品の承認審査実務についての留意事項を作成・周知、(2)各チーム内に一定の審査経験を有する審査員を配置等の各種の対策をとるなど一貫性の確保に努めている。

 厚生労働省と総合機構は、2トラック制の導入や審査過程における照会回答部分の効率性改善など、相談と審査のプロセス改善を目指して、米国業界を含む業界と引き続き意見交換する。

d.外国臨床データの受け入れ

 総合機構は引き続き、ICH E5ガイドラインに準拠した外国臨床データを受け入れる。

e.新薬申請承認処理時間

 厚生労働省は、最終的な承認を与えるまでの新薬申請処理時間を短縮することについて、米国業界を含む業界と引き続き意見交換する。

f.承認後の一部変更

 厚生労働省は承認後の一部変更申請の審査時間に関する通知を発出し、その一部変更申請の性質により、それぞれ2009年末及び2009年度末までに総審査期間を6ヶ月及び12ヶ月(中央値)にするといった目標を設定することを含め、審査時間の短縮に向けた努力への意図を表明した。

g.ワクチン

 厚生労働省は米国業界を含む業界も参加している勉強会において、ワクチンガイドラインの作成を行っている。日本国政府は米国業界を含む業界とワクチン審査の改善について、引き続き議論する。

2.医療機器{前4文字下線あり}

a.パフォーマンス目標とユーザーフィー

 厚生労働省は、米国業界を含む業界との議論の後、2008年12月に「医療機器の審査迅速化アクションプログラム」を策定した。このアクションプログラムに沿って、総合機構は審査期間を承認コホートの中央値で測定するほか、参考として申請コホートの中央値でも測定する。総合機構は、米国業界を含む業界が総合機構のパフォーマンスを評価できるようにするこの情報を引き続き公表していく。総合機構は、年二回の規制当局と業界の間の会議において、アクションプログラムの進捗をレビューするために意味のある議論を促進するような十分なデータを収集するよう努める。

b.医療機器の審査人員

 総合機構はアクションプログラムに基づいて、2009年4月に医療機器審査部の職員数を47人に増やした。また、総合機構は、同プログラム上の目標に従ってこのような増員を継続していく。審査員が知識を有し、熟練していることを確保するため、総合機構は、(1)内外の大学や研究所との人事交流促進や(2)米国食品医薬品庁の研修プログラムを参照することにより、研修プログラムを策定する。アクションプログラムの進捗は規制当局と米国業界を含む業界の会合で年二回レビューされる。

c.承認基準及び第三者認証の対象となるクラスⅡ医療機器

 アクションプログラムに従い、厚生労働省は承認基準を明確化すること及び2011年度までに原則全てのクラスⅡ医療機器が第三者認証の対象となることを確保することについて、米国業界を含む業界と引き続き協働していく。

d.一部変更承認

 厚生労働省、総合機構及び米国業界を含む業界は、審査と承認に関わる案件を議論するための実務レベル合同作業部会を設置した。この合同作業部会での議論の後、厚生労働省は医療機器の一部変更の手続きに関する二つの通知を発出した。合同作業部会は一部変更に必要な規制手続きの明確化に役立つフローチャートに係る作業を継続する。2008年11月の厚生労働省の通知で述べられた特定の変更に関するリアルタイム審査手続きの試行において、厚生労働省と総合機構は当該通知に示された2ヶ月の目標を達成するために努力する。

e.加速安定性試験データ

 2008年9月に厚生労働省は、承認の根拠としての、科学的な証拠により妥当とされた加速試験について明確化する通知を発出した。厚生労働省はどのような場合に加速安定性試験データが承認の根拠として使えるのかについて理解を向上させるため、Q&Aの通知について継続して作業する。加速安定性試験に関する案件は、要請に応じて合同作業部会で議論される。

f.機器の申請の一括化

 厚生労働省と米国業界を含む業界は、医療機器の申請の一括化の件について議論することを合意した。2009年5月、本件を取扱うため、実務レベル合同作業部会に新しいワーキンググループが設置された。厚生労働省は、「一品目」の範囲を明確にし、科学的及び規制上の問題が一つの審査によってもっとも効果的に対処されるような場合の機器の申請の一括化に関するガイドラインを作成するために、米国業界を含む業界と引き続き協働していく。

g.原材料データ要求

 機器の審査の迅速化のために、厚生労働省は、医療機器の特性を考慮し、またある種の医療機器はその他の機器より大きいリスクを有することを勘案して、申請における原材料データに関する要求を合理化する。加えて、厚生労働省は日本の生物学的適合性試験に関する要求事項がISO10993と完全に一致することを確保することを継続する。厚生労働省は、原材料に関する要求事項をさらに合理化することについて、米国業界を含む業界と引き続き協働していく。

h.外国製造業者認定

 厚生労働省と総合機構は、速やかな処理を目指し、企業が有効な申請を行うことを促すため、和文及び英文で外国製造業者認定の申請に関する企業への説明文書を公表した。厚生労働省は外国製造業者認定を取得するための手続きのさらなる合理化についての業界の提案を合同作業部会において米国業界を含む業界と議論していく。

i.製造所の調査プログラム

 厚生労働省はQMS適合性調査の合理化に関し、第三者認証機関、業界、地方自治体及び総合機構と、複数の会合で議論を行っている。厚生労働省はこれらのグループと今後とも議論を続けていく。

j.体外診断用医薬品(IVD)の承認

 厚生労働省は、実務レベル合同作業部会の議論を踏まえ、IVDの安定性試験と有効期間についての通知を発出することを予定している。厚生労働省は、例えば、国立感染症研究所による製造販売承認前試験に関する案件について、米国業界を含む業界と議論する。厚生労働省は申請後の臨床性能試験の継続を含むIVDの規制に関する業界の提案について、業界と議論する用意がある。

D.血液製剤{前6文字下線あり}

1.対話{前2文字下線あり}

 2008年度、厚生労働省は、血漿分画製剤に関する事項について業界と話し合った。

2.表示{前2文字下線あり}

 厚生労働省は、業界に対し、「献血」及び「非献血」の表示について話し合う有意義な機会を引き続き提供する。

3.需給計画{前4文字下線あり}

 厚生労働省は、血漿分画製剤の安定的な供給を確保するため需給計画を策定している。厚生労働省は業界に対し、需給計画について話し合い、当該計画についての理解を促進する有意義な機会を引き続き提供する。

4.一部変更承認{前6文字下線あり}

 厚生労働省と総合機構は、血液製剤の一部変更の審査時間短縮について、米国業界を含む業界と意見を交換する。

E.栄養補助食品{前8文字下線あり}

1.規制分類と表示{前7文字下線あり}

a.日本の保健機能食品制度は、CODEX委員会の栄養・特殊用途部会(CCNFSDU)によって策定されたガイドラインの考え方に従い作成されている。厚生労働省はCCNFSDUでの検討結果を踏まえ、引き続き保健機能食品制度の改善に努める。

b.日本の保健機能食品制度は、CODEX委員会の栄養・特殊用途部会(CCNFSDU)によって策定されたガイドラインの考え方に従い作成されている。厚生労働省は、栄養補助食品に関する規制の策定・改訂・施行の際には、公平性及び透明性確保のため、米国業界を含む業界への情報提供を行う適切な機会を引き続き提供していく。

c.厚生労働省は、我が国の保健機能食品制度の改善や、原料に特化した健康強調表示を認めるといった制度の改正を行う際には、透明性を確保しつつ、科学的根拠に基づいた改正となるよう、米国業界を含む業界と、健康食品に関する意見交換を引き続き行っていく。

d.厚生労働省は、国立健康・栄養研究所のデータベースを通じ、国民に対して情報提供を行ってきており、引き続き消費者や米国業界を含む業界と広く意見交換を行っていく。

2.健康食品安全規制{前8文字下線あり}

a.厚生労働省は、健康食品に関する規制の策定・改訂・施行の際には、公平性及び透明性確保のため、米国業界を含む業界への情報提供を行う適切な機会を引き続き提供していく。

b.厚生労働省は、医薬品、食品及び食品添加物の分類基準及び原料の医薬品への該当性を判断する際の手続きについて説明した。厚生労働省は、業界団体と意見交換を行い、新しい原料の分類基準や申請手続きについて照会するための機会を引き続き提供していく。

3.食品添加物{前5文字下線あり}

a.日本国政府は、有機溶媒、滑沢剤、栄養素の代替化合物を含む、日本では食品添加物に分類される物質に係る米国業界を含む業界からの申請の相談に引き続き応じ、また、可能な限り最も効率的な方法で食品添加物の指定を行うよう引き続き努める。

b.日本国政府は、食品添加物分野における国際的調和の重要性を認識している。(49ページ参照「その他の政府慣行:食品添加物」)

c.食品の検疫所での輸入手続きにおいて、食品添加物の使用基準に適合しない疑いがある場合には、輸入者の要望に応じて当該添加物の由来を聴取している。厚生労働省は、検疫所間で共通認識を共有し日本国政府のサイトに参考情報を掲載するなど、より効率的かつ一貫した方法で当該手続きを行うよう引き続き努める。

4.輸入問題{前4文字下線あり}

a.厚生労働省は、関係業界の意見も踏まえ、検疫所における輸入手続きがより効率的に行えるよう引き続き努める。

b.厚生労働省は、スタンプに代わる新たな手法として、検疫所が輸入者に相談の詳細に関する書類を発行することを検討してきた。この新しい手法は、2009年7月現在導入されている。厚生労働省は、米国政府及び日本の輸入者にその手法の内容を知らせる。

c.栄養補助食品の製造工程の大部分は中小企業が担っている。日本国政府は、地域の農水産物を活用した新しい栄養補助食品の開発を奨励している。日本国政府は、医薬品と同じ成分を有する栄養補助食品類を含む関税水準の問題について、WTO交渉において引き続き、包括的に対応する。

F.化粧品及び医薬部外品{前13文字下線あり}

1.医薬部外品{前5文字下線あり}

a.製品の承認基準に関連し、厚生労働省は医薬部外品の承認プロセスにおける透明性と効率性を向上させるために、米国業界を含む業界と引き続き議論を行っていく。

b.米国業界を含む業界からの協力を得て、厚生労働省は既に承認された薬用化粧品の有効成分リストについての通知を、2008年12月25日に発出した。厚生労働省は、リソースの制約の範囲内で可能な限り、リストの更新について努力していく。

c.厚生労働省は医薬部外品申請における添加物の評価を含む、医薬部外品の規制について、米国業界を含む業界と引き続き意見を交換する。

2.広告及び表示{前7文字下線あり}

a.厚生労働省は、化粧品の「乾燥による小じわを目立たなくする」という標榜を適切に定めることについて、米国とEUにおける関連情報を考慮した上で、米国業界を含む業界と引き続き協働し、適切な時期に結論に達することを目指す。

b.厚生労働省は、米国での表記の実態と日本の化粧品の表記規制との相違点を含む化粧品の表記と効能の規制に関し、米国業界を含む関連団体との意見交換を継続する。

c.厚生労働省は、現時点において、医薬部外品と化粧品の数値データを用いた広告は適切でないと考えている。しかしながら、厚生労働省は米国業界を含む業界と意見交換を継続する。

d.2008年9月、厚生労働省は日本と米国における化粧品と関連製品の広告規制についての情報交換会議に出席した。その他の出席者は、米国連邦取引委員会、米国商務省、米国業界及び日本業界であった。

3.他の透明性及び規制手続{前12文字下線あり}

a.2008年11月と2009年2月、厚生労働省は全国医薬品等広告監視協議会(六者協)において、米国業界を含む業界と意見交換を行った。厚生労働省は引き続き米国業界に対し、日本業界と同様に参加の機会を提供する。

b.厚生労働省は、外国製造所届の手続きの合理化を含め、化粧品の輸入プロセスを合理化する方法を2009年度末までに考案し、変更を適時実施するよう努める。この点に関し、厚生労働省は米国業界を含む業界と引き続き議論する。

c.厚生労働省は化粧品と医薬部外品のホームページを新たにウェブサイト上に作成した。このホームページは、2008年12月に厚生労働省が公表した既承認の薬用化粧品中の有効成分リストなどの重要な文書を含む。総合機構もまたその化粧品と医薬部外品のホームページに重要な文書を掲載した。厚生労働省は、リソースの制約の範囲で可能な限り、規制や通知の遅滞のない公表に関し、そのウェブサイトを引き続き改善する。厚生労働省は重要文書の英訳の提供や、規制に関する情報の公表に関連して、米国業界を含む業界と協力を続ける。

d.2009年4月、厚生労働省は、米国における広告規制の進展及び“米国化粧品原料レビュー”の概要について取り上げられた、化粧品と関連製品についての情報交換会議に出席した。その他の出席者は、米国連邦取引委員会、米国商務省、米国業界及び日本業界であった。

Ⅳ.金融サービス{前10文字囲み下線あり}

A.個別措置{前6文字下線あり}

1.大量保有に係る機関投資家の開示ルール{前18文字下線あり}

 大量保有報告制度の特例報告については、2006年にその見直しが行われ、2007年1月より新制度が施行された。金融庁は、株式の大量保有等の取引にかかる実務の動向等を注視してきたところであり、今後も、関係者の意見等を踏まえつつ、引き続き、状況を注視していく。

2.信用情報機関{前6文字下線あり}

a.改正貸金業法は、過剰な貸付けを抑制する観点から、消費者金融会社による信用情報利用の拡大や信用情報機関の強制的な使用を求めている。様々な消費者金融会社の信用情報機関を通じて、金融庁は、個人情報の保護に充分配慮しつつ、消費者保護や金融システムの安定の手段として、厳格で精緻な根拠に基づき、消費者金融会社がリスクを評価し健全な信用引き受けを促進するため、完全な信用情報が利用可能となるように取り組んでいる。

b.同様に、改正割賦販売法は、過剰な与信を抑制する観点から、信用購入あっせん業者による信用情報利用の拡大や信用情報機関の強制的な使用を求めている。様々な信用購入あっせん業者の信用情報機関を通じて、経済産業省は、個人情報の保護に充分配慮しつつ、消費者保護や金融システムの安定の手段として、厳格で精緻な根拠に基づき、信用購入あっせん業者がリスクを評価し健全な信用供与を促進するため、完全な信用情報が利用可能となるように取り組んでいる。

c.銀行等の金融機関や消費者金融会社、信用購入あっせん業者を含めた信用情報機関の在り方を検討するに当たり、金融庁及び経済産業省はまず第一に多重債務問題の動向を注視していく。

3.確定拠出年金{前8文字下線あり}

 日本国政府は、老後の所得保障、労働流動性の促進をあらためて重要視する観点から、日本の確定拠出年金制度を強化することの重要性を認識している。

a.企業型確定拠出年金における従業員拠出(マッチング拠出)については、昨年、新たな経済対策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議において取りまとめられた生活対策の中に盛り込まれた。日本国政府は、2009年度税制改正の要綱において、その導入を決定し、2009年3月、マッチング拠出の導入等を盛り込んだ確定拠出年金法の改正法案を国会に提出した。

b.拠出限度額については、2009年度税制改正の要綱において、以下のとおりの引上げを閣議決定した。

(1)企業型確定拠出年金

イ 他の企業年金がない場合 月額4.6万円→月額5.1万円

ロ 他の企業年金がある場合 月額2.3万円→月額2.55万円

(2)個人型確定拠出年金

企業年金がない場合 月額1.8万円→月額2.3万円

 日本国政府は、確定拠出年金法施行令の改正を行う予定である。

c.個人型確定拠出年金からの中途脱退については、個人型確定拠出年金からの中途脱退要件の緩和等を盛り込んだ被用者年金一元化法を2007年の通常国会に提出し、現在継続審議中となっている。

d.厚生労働省は、これまでに導入された様々な制度や規制の施行の進展に十分配慮しつつ、関係者と協議を行いながら、引き続き確定拠出年金制度の改善に向けて努力を行っていく。

4.顧客情報の共有のためのオプトアウト{前18文字下線あり}

a.ファイアーウォール規制の見直しについては、2008年6月に関連法が成立したことを受けて、関係する政令・内閣府令等の改正を行い、2009年1月に公布した。これらの法令は2009年6月1日から施行されている。

b.本改正においては、利用者利便の向上や実用的な制度の構築といった観点とともに、顧客意思の尊重・顧客情報の適切な保護といった観点を踏まえ、顧客の非公開情報に係る授受制限について以下の緩和を行っている。

(1)法人顧客の非公開情報について、当該顧客に明確にオプトアウトの機会を付与した上で、グループ内での共有を認める。

(2)グループ内における内部管理目的での顧客情報の共有について、金融庁の事前承認を不要とする。

 金融庁は内外の金融機関を含む市場関係者と緊密な対話を重ねた上で、これらの措置を策定した。

5.オンライン金融サービス{前12文字下線あり}

a.金融庁は、資金決済に関するサービスの適切な実施を確保し、その利用者等を保護するとともに、当該サービスの提供の促進を図るため、2009年3月に「資金決済に関する法律案」を国会に提出した。同法案は、2009年6月に成立した。

b.本法においては、銀行免許がなくても、内閣総理大臣の登録を受けることにより、銀行等以外の者でも為替取引を行うことができることとしている。また、登録を受けた事業者は、同法により、利用者に引き渡すべき資金と同

額以上の資産保全と倒産隔離が義務づけられる。

c.また、前払式支払手段に関しては、自家型発行者及び第三者型発行者について、従前より前払式証票の規制等に関する法律により規制されてきた。本法においては、基本的に前払式証票の規制等に関する法律の規制体系を受け継ぎつつ、発行者が前払式支払手段に金額等を記録する方式のものだけでなく、発行者がコンピュータ・サーバー等その前払式支払手段以外のものに金額等を記録する方式のものも、規制の対象に加えることとしている。

B.透明性{前5文字下線あり}

1.ノーアクションレター制度、一般法令照会制度{前21文字下線あり}

a.金融庁は、ノーアクションレター制度など行政対応の透明性・予測可能性の向上に継続して取り組んでいる。ノーアクションレター制度については、2008年4月からの1年間に5件の問い合わせに対し回答した。

b.また、ノーアクションレター制度を補完するものとして、2005年4月に一般法令照会制度を導入して以来、金融庁は同制度を通じて2件の問い合わせに対し回答した。

c.金融庁としては、ノーアクションレター制度及び一般法令照会制度の一層の活用に向けた努力を引き続き行っていく。

2.法案解釈の提供手段{前9文字下線あり}

a.金融庁においては、従来から「金融規制の質的向上(ベター・レギュレーション)」に取り組んでいる。

b.この取組の柱の一つとして、「行政対応の透明性・予測可能性の向上」を掲げている。こうした観点から、金融庁は、監督指針等を策定・改訂しているほか、正式の要請がなくても、金融法令の解釈などを事例集や質疑応答集を公表することにより幅広く周知している。

 金融庁は今後も引き続きニーズを把握し、金融法令に係る解釈の提供に努めていく。

3.検査の透明性{前6文字下線あり}

a.金融庁(検査局)及び証券取引等監視委員会事務局(以下「監視委員会」という)では、検査過程の透明性の向上のための取組を行ってきた。金融庁では『金融検査に関する基本指針』や、『検査マニュアル』を公表しているほか、『検査基本方針及び検査基本計画』や、『金融検査指摘事例集』、『意見申出事例集』を作成・公表してきた。同様に、監視委員会は『証券検査に関する基本指針』や、『金融商品取引業者等検査マニュアル』を公表しているほか、『証券検査基本方針及び証券検査基本計画』を毎年、『金融商品取引業者等に対する検査の結果指摘した事項のうち主なもの』を四半期ごとに公表してきた。

b.また、金融庁では、検査局バックオフィスの幹部が検査官を同席させずに被検査機関から意見を直接聴取する『オンサイト検査モニター』を通じ、被検査機関と意見交換を行う機会を設けており、以前希望制だった『オンサイト検査モニター』は、2007年7月より原則全件実施に改められた。また、検査結果の通知の前後に書面で被検査機関の意見を受け付ける『オフサイト検査モニター』を通じて、被検査機関の意見を聴取する機会を設けている。さらに、検査官と被検査機関が十分な議論を尽くした上でも認識が相違した場合には、被検査機関が意見を申し出ることのできる制度である『意見申出制度』を導入している。

c.同様に、監視委員会においても、バックオフィスの幹部が検査官を同席させずに被検査機関から意見を直接聴取する『オンサイト検査モニター(意見聴取)』を通じ、被検査機関と意見交換を行う機会を設けているほか、検査終了後1か月間の間、書面で被検査機関の意見を受け付ける『オフサイト検査モニター(意見受付)』を通じて、被検査機関の意見を聴取する機会を設けている。また、検査によって確認された事項について、検査官と被検査機関が十分な議論を尽くした上でも認識が相違した場合に被検査機関が監視委員会に意見を申し出ることのできる『意見申出制度』を実施している。

d.金融庁及び監視委員会は、これまでも、検査の透明性を確保するため、上記の措置を含む所要の制度整備を実施してきたところであり、今後ともベター・レギュレーションの推進に向け、引き続き制度の適切な執行・運営を図っていく。金融庁は、検査プロセスが金融機関やマーケットにとって重要な関心事項であることを認識し、引き続き、外資系金融機関や業界団体と様々なレベル・形態で対話の機会を持っていく。監視委員会においても、引き続き市場動向及び(又は)検査プロセスを通じて認識した問題について、内外の金融機関やその業界団体と議論する機会を持っていく。金融庁及び監視委員会は引き続き金融業界及び業界団体とのオープンな意見交換を実施していく。

Ⅴ.競争政策{前6文字囲み線あり}

A.独占禁止法(独禁法)の遵守及び抑止力の改善{前24文字下線あり}

1.ハードコアカルテルに対する処分の強化{前19文字下線あり}

 日本国政府は、2009年2月、独占禁止法改正案を国会に提出した。同法案は、同年6月3日に成立した。独占禁止法改正法の規定は、一部を除き公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。同改正法には以下の項目が含まれる。

a.不当な取引制限において主導的な役割を果たした事業者に対し、課徴金算定率を従来の5割増(例えば、主導的な役割を果たした大規模製造業者に対する課徴金算定率の10%から15%への引上げ)とすること

b.排除措置命令及び課徴金納付命令の双方の除斥期間を、それぞれ3年から5年に延長すること

c.独占禁止法第89条における違反行為に係る自然人に対する懲役刑の上限を3年から5年に引き上げ、これにより公訴時効期間も5年に延長されること

d.課徴金減免制度を見直し、同一企業グループ内の複数の事業者が一定の要件を満たす場合には、これらの者による課徴金減免の共同申請を認め、共同申請者に同一の順位を割り当てること

2.競争的単独行為の意図しない抑止の最小限化{前20文字下線あり}

a.改正独占禁止法は、排除型私的独占や優越的地位の濫用を新たに課徴金の対象としている。さらに、一定の共同の取引拒絶・差別対価・不当廉売・再販売価格の拘束行為のうち、十年以内に同一の違反行為を繰り返した場合を新たに課徴金の対象としている。

b.公正取引委員会は、このような課徴金制度の対象範囲の拡大により、適法な事業活動が萎縮することを避けるため、法運用の透明性・予見可能性を確保することが重要であると考えている。このような観点から、改正独占禁止法は、課徴金の対象となる共同の取引拒絶、差別対価、不当廉売、再販売価格の拘束及び優越的地位の濫用について、違反となる具体的な要件を明確化している。

c.加えて、公正取引委員会は、改正独占禁止法が施行される前に、どのような行為が課徴金の対象となるのかにつき事業者にとっての予見可能性を高める観点から、課徴金の対象となる排除型私的独占に該当する行為を明確化するため、ガイドラインを公表することとしている。公正取引委員会は、2009年6月、ガイドライン原案を公表し、パブリック・コメント手続を開始した。公正取引委員会は、ガイドラインを取りまとめるに当たって、諸外国の産業界、法曹界からの意見も含め、これらのコメントを考慮する。

3.独占禁止法適用除外制度の見直し{前15文字下線あり}

a.国際航空分野における独占禁止法適用除外制度について、国土交通省は、2008年8月に懇談会を設置し、国際航空分野における独占禁止法適用除外制度の最適な在り方について検討を行っているところである。産業界や消費者団体からの意見聴取を経て、懇談会は2009年度内に報告書を取りまとめ、公表する予定である。国土交通省は、懇談会の議論及び提言を踏まえ、独占禁止法適用除外制度が撤廃されるべきであるか否かについて、2009年度内を目途に結論を得ることとしている。

b.国際海運分野における独禁法適用除外制度が引き続き必要か否かについて、2007年、交通政策審議会海事分科会国際海上輸送部会の中で検討を行い、慎重な検討の結果、同年12月、競争的な市場を確保する観点も踏まえ、安定的な国際海上輸送確保の観点から、更に専門的な検討を行う必要がある、との答申が提出されたところである。

 国土交通省としては、当該答申で示された4つの検討の視点((1)各国の動きと我が国に与える影響、(2)市場の変化、船社の巨大化の進展等、(3)船社間協定は安定的なサービス提供のために機能しているか、(4)我が国経済に与える影響)を踏まえ、さらに検討を行っている。

 また、この検討を行うにあたっては、2008年10月の国際海運に関するEU競争法適用除外制度廃止の日本の海運経済への影響や独禁法の適用除外の継続的な有用性及び適切性について分析を進めている。

4.企業結合の事前届出手続の改善{前14文字下線あり}

 改正独占禁止法は、会社の株式取得について、合併等の他の企業結合と同様に事前届出制を導入することを規定している。また、同改正法は、企業結合に係る届出基準を、原則として企業結合集団の国内売上高の合計額とすること等を盛り込んでいる。こうした改正は、独占禁止法における企業結合の事前届出及びその審査制度と、国際競争ネットワークの「企業結合の届出・審査手続についての行動規範」及びOECDの「合併審査に関する理事会勧告」との整合性確保を意図したものである。

 より具体的には、原則として企業結合に係る届出基準額について、買収会社は現在の総資産ベースの100億円超から年間国内売上高ベースの200億円超に、被買収会社は現在の総資産ベースの10億円超から年間国内売上高ベースの50億円超に引き上げられる。

5.公取委の経済分析能力の強化{前13文字下線あり}

 公正取引委員会では、従来から経済分析能力の向上等を図るため、外部人材の積極的な受入に努めているところ、2009年4月1日現在、公正取引委員会においては、7名のエコノミストがその専門性を活かして、経済調査部門や企業結合部門といった経済分析が必要とされる業務に従事している。また、これらのエコノミストは、必要に応じ、公正取引委員会内の各部署が有している経済に関連する諸問題について助言を行っている。

B 公取委の行政及び審査手続の公平性及び透明性の改善{前28文字下線あり}

1.審判手続における信頼性及び透明性向上{前19文字下線あり}

 日本国政府は、公正取引委員会の審判制度に対する国民の信頼及び透明性を促進することとしている。これに関して、

a.独占禁止法改正法の附則は、公正取引委員会の調査及び執行手続における対象者が独占禁止法の目的の実現に矛盾しない形で手続上の公正性を与えられることを確保する観点から、日本国政府が、現行の事後審査型審判制度について、全面にわたって見直しをするものとし、2009年度中に検討を行う旨規定している。見直しに際しては、諸外国の産業界、法曹界からの意見を含め、公正取引委員会に提出されるすべての関係者の意見が考慮される。日本国政府は、その検討結果に基づいて、2009年度中に所要の措置を講ずる。

b.公正取引委員会は、審判官が審判官としての資質を備え、公平であることを確保する。この観点から、

(1)現在、公正取引委員会の審判官7名中4名が公正取引委員会の元からの職員ではない法曹有資格者である。また、公正取引委員会はこれまで個々の審判に対する審判官の合議体には、少なくとも1名の当該法曹有資格者を含むようにしてきており、公正取引委員会の審判に関する規則の改正又はその他の措置を講ずることにより、引き続きそれを確保する。

(2)独占禁止法は、審判事件について、当該事件の審査官であった者その他当該事件の審査に関与したことのある者を、その審判官に指定できない旨規定している。そして、公正取引委員会は、現在、特定の事件において、利益相反を有する者については、審判官に指定しない運用を行っており、引き続きそのような運用を行う。また、公正取引委員会は、被審人その他当該審判の結果の影響を受けるいかなる者と密接な関係を有するなど、特定の事柄に関して利益相反を持つ審判官が当該事案の審判官として指定されないことを保証するため、公正取引委員会の審判に関する規則の改正又はその他措置を講ずる。

2.公取委における審査手続の公平性向上{前17文字下線あり}

 公正取引委員会は、以下の政策や措置を通じ、同委員会の審査手続の信頼性や透明性を向上させることとする。

a.証拠収集のために公正取引委員会の審査官が行う手続に関して、公正取引委員会は、法47条1項4号の規定に基づき立入検査を行うとき、又は立入検査を行うことなく同条同項1号の規定に基づき関係人から報告を徴するときは、文書をもって、関係人に対し、被疑事実、審査の対象となっている関連市場、違反被疑法条、関連する審査手続きを行うための独占禁止法上の権限を伝えている。公正取引委員会は、犯則調査の臨検・捜索・差押えを行う際には、裁判官が発する許可状を提示する。犯則調査の場合は、裁判官の発する許可状において公正取引委員会が差押えが許される証拠が限られ、また、行政調査の場合は公正取引委員会が収集する証拠は、特定の違反被疑行為に関して合理的な範囲の証拠に限定されている。

b.公正取引委員会の審査に関する規則第18条の規定に基づき、公正取引委員会は、(行政上の立入検査によるものを含め)物件の提出を命じられた者に対し、提出された物件を閲覧し、又は謄写することを認めている。

c.公正取引委員会は、供述録取の際の弁護士の同席については、これを認めていない現行の制度で問題ないと考えているので、現行の運用について、変更する計画はない。一方で、公正取引委員会は、引き続き、立入検査の際に対象事業者の代理人弁護士が同席すること、また、事前手続や審判手続きにおいて弁護士が名あて人又は被審人の代理人となることを認める。

d.公正取引委員会は、排除措置命令又は課徴金納付命令の名あて人となるべき者に対して、最終的な決定を行う前において、その者が、同委員会が使用しようとしている証拠を検討し、同委員会に対して意見を述べ、及び証拠を提出することができる期間として、原則として2週間程度を与えることとしている。しかしながら、同委員会は、事前説明に要する期間といった要素も考慮しつつ、事前通知から回答までの期間を事案ごとに適切に設定してきている。また、公正取引委員会は、職権又は申立てにより期限を延長することができる旨規定している公正取引委員会の審査に関する規則に基づき、名宛人が公正取引委員会に正当な理由を申し立てる場合には、当該期間の延長を行ってきており、引き続き、当該場合には期間の延長を行う。

e.提出命令の際に適正な手続を定める公正取引委員会規則に違背したなど、審査官の処分に対する不服がある者は、公正取引委員会に対して異議申立てをすることができる。

f.公正取引委員会は、改正独占禁止法が施行されるまでに、警告の発出やその名宛人の名称を公表する際の公正性を確保する手続を含め、警告の発出に関する手続について公正取引委員会の審査に関する規則に規定する。

g.公正取引委員会は、審査の過程において取得した秘密情報が明らかにされないように守ることの重要性を認識している。この観点から、

(1)公正取引委員会は、弁護士とその依頼者との間におけるやり取りであって、当該依頼者から求められた法的助言の提供に関するやり取りを含んだ文書について、そうした文書は原則として弁護士とその依頼者との間において秘密情報とすることが意図されていることを考慮しつつ、当該書類に国家公務員法第100条、場合によっては独占禁止法第39条により保護される秘密情報が含まれる場合には、これらの規定に従って、当該書類を適切に取り扱う。また、公正取引委員会の調査対象事業者であって、そのような秘密文書が公正取引委員会に留置・押収されたと信ずる者が、特定の文書が秘密情報として取り扱われるように要求することを認める。

(2)改正独占禁止法は、利害関係人による審判事件記録の閲覧・謄写請求について、第三者の利益を害するおそれがあると認めるとき、その他正当な理由があるときに、公正取引委員会が当該請求を拒否できる権限を有するとしている。公正取引委員会は、第三者の利益を害するおそれがある場合や他の正当な理由がある場合は、事業者の秘密情報が明らかにされないようにこの権限を行使する。

C.談合対策{前6文字下線あり}

1.公共調達における利益相反の防止{前15文字下線あり}

 国家公務員の再就職に関する規定を盛り込んだ国家公務員法等の一部を改正する法律が2008年12月31日に施行された。この改正により、政府職員による利害関係企業等に対する求職活動、退職する職員及び元職員への再就職あっせん、元職員による現職職員への働きかけが規制される。

2.官製談合防止への取組の改善{前13文字下線あり}

a.総務省及び国土交通省は、2008年12月に地方公共団体に対して通知を発出し、入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律(官製談合防止法)に違反する不正行為を防止するという観点から、職員に対する教育、研修等を適切に行うことを求めた。また、総務省及び国土交通省は、地方公共団体に対し、引き続き、官製談合防止法及び関連法規の遵守の監視に資する第三者機関の設置を奨励する。

b.公正取引委員会は、国の機関や地方公共団体の職員、また、政府が出資している法人の職員に対して、官製談合防止法は何を要請しているのか、入札談合の証拠を発見するにはどうすべきか、同法違反を防止するにはどうすべきかなどの点について、セミナーや研修会の開催を含め、指導を行ってきている。来年度以降も引き続きこうした努力を継続していく。

c.公正取引委員会は、引き続き官製談合防止法を積極的に執行していく。公正取引委員会は、2008年10月、10社が、札幌市の職員から落札予定者として意向を示された者を受注予定者とすることに合意することにより、特定電気設備工事に係る入札談合行為を行っていたとして、札幌市長に対して、今後、更なる官製談合防止法違反行為が生じないよう必要な改善措置を講じるよう求めた。

3.行政措置減免措置の拡大{前11文字下線あり}

 国土交通省、総務省及び財務省は、「公共工事の入札及び契約の適正化に関する法律」に基づき、2008年9月1日時点の公共工事の発注者による入札契約の適正化の取組状況について調査を行い、2008年12月17日に調査結果を公表した。同調査結果によれば、国の機関の7割弱(18機関中12の機関)で行政措置減免制度(課徴金減免制度の適用があるときの指名停止措置の軽減措置)を導入している。後の調査によれば、参議院、内閣府(一部)、警察庁、宮内庁、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、環境省、防衛省及び最高裁判所が同制度を導入しており、2009年4月現在、行政措置減免制度を導入している国の機関は合計で14となっている。さらに、都道府県で9割、政令都市で全て、市町村で3割弱の機関が行政措置減免制度を導入している。

4.調達慣行の改善{前7文字下線あり}

a.日本国政府は、談合件数の減少を実現するため、中央政府及び地方公共団体における調達慣行の改善に向けて、実質的な努力を行ってきた。

(1)日本国政府は、公共工事における入札評価について総合評価方式の使用を推進してきた。国土交通省及び総務省は、地方公共団体に対し、2008年12月22日付けの通知「公共工事の入札及び契約の適正化の推進について」において、総合評価方式の導入・拡充に努め、対象工事の考え方や年度ごとの実施目標値を設定して着実にその拡大に努めることを求めた。2008年9月1日時点で、国の機関の80%以上(18機関中15の機関)、全ての都道府県及び政令指定都市並びに市町村の40%以上が公共工事において、総合評価方式を導入している。

(2)総務省及び国土交通省は、地方公共団体に対し、一般競争入札の拡大、電子入札の導入、入札及び契約に係る苦情を中立・公正に処理する仕組みの整備等により、公共工事の入札及び契約の一層の適正化を進めるよう、引き続き奨励した。このような取組の結果、2008年9月1日の時点で、全ての都道府県及び政令指定都市、市町村の60.6%が一般競争入札を採用、都道府県の97.9%、全ての政令指定都市、市町村の21.5%が電子入札を導入、また、都道府県の97.9%、政令指定都市の94.1%、市町村の13.4%が入札及び契約に係る苦情を処理する仕組みを整備している。

b.2006年4月に施行された公益通報者保護法に関しては、国・地方の行政機関は、談合事案を含む法令違反に関する内部職員からの通報を処理するための窓口を設置している。2008年3月31日時点では、国、都道府県においては100%の機関が、また、市区町村においては35.5%の機関が、通報・相談窓口を設置している。内閣府は、全国各地での説明会やシンポジウムの開催、各種広報資料の配布、地方公共団体職員向け研修会の開催など様々な手段を通じて、地方公共団体が効果的な内部通報制度を整備することの重要性について、引き続き周知啓発に努めていく。

Ⅵ.商法及び司法制度改革の実現{前17文字囲み線あり}

A.国境を越えた合併及び買収(M&A)の促進{前23文字下線あり}

1.対日直接投資有識者会議による提言の実行{前19文字下線あり}

a.2008年12月、内閣府は、外国からの直接投資を促進する目的で、対日直接投資加速プログラムを改定した。同プログラムは、日本国政府は最近のM&A事例の件数及び金額を含む現在の日本におけるM&A環境を調査し、当該調査の結果を国内及び海外に向け広く公表する予定であると述べている。

b.日本国政府は、三角合併を含めた現行の会社法の規律は規制改革の好ましい成果であると認識している。しかしながら、日本国政府は、国境を越えた三角合併が2007年5月の導入後1件にとどまっていることも認識している。日本国政府は、かかる手法の使用について注視を続け、その使用又は不使用の理由について調査を続ける。

2.課税繰延べM&A取引に関する代替的な適格基準の調査{前26文字下線あり}

 日本国政府は、現行の適格基準についてM&A取引における課税繰延べ措置の適格基準の有効性について引き続き検討を続けていく。

3.買収防衛策における株主利益の保護

a.対日直接投資加速プログラムにおいて規定されているとおり、2008年6月に企業価値研究会によって取りまとめられた報告書「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」の内容を踏まえ、日本国政府は、日本の産業界や投資家に対し、引き続き、買収防衛策の適切な在り方について、積極的に啓発・普及活動を行っていく。

b.企業価値研究会の報告書は、対象会社は買収提案の審査にあたって会社が社外取締役を含む特別委員会を設置することは義務付けられていないと述べているが、同報告書は併せて、会社は特別委員会が設置される場合にはかかる社外取締役の現経営陣からの独立性を確保すべきであり、また取締役は特別委員会の意見に従う場合であってもその判断に責任を負うと述べている。

c.日本はいまだ立法によって買収提案を審査するために社外取締役によって構成される特別委員会の設置を義務付ける段階にはないが、日本国政府は、買収提案があった場合の意思決定が専ら経営陣の利益ではなく、株主の利益に着目して行われることを確保するために、更なる措置が必要であるか否か、引き続き、実務の動向及び裁判所の判断を注視する。

d.金融商品取引法における開示制度では、投資者保護の観点から、企業に有価証券報告書や臨時報告書において主要株主の状況の開示が要求されていることや、一定の基準を超える株式を保有する株主に大量保有報告書による株式の保有状況の開示が要求されていることから、仮に投資判断に重要な影響を及ぼすような株式持合いがあった場合には、これらの開示書類の中で把握できる。これ以上の開示の検討に際しては、投資家に対して信頼性の高い投資情報を適切に提供するという開示制度の趣旨に照らして、具体的なニーズ、便益のみならず、追加開示に伴うコストをも慎重に見極める必要があり、金融庁は、これらの状況を注視していく。

e.2009年6月17日に公表された、金融審議会の我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ報告「上場会社等のコーポレート・ガバナンスの強化に向けて」においては、既に一部の会社においては、持合いの状況についての自主的な開示が行われているところであり、このような開示の一層の促進を図ることが適当であるとされている。また、同報告では、相互に又は多角的に明示・黙示の合意のもとで、株式を持ち合っているような一定の持合い状況の開示について、その要件の制度化に向けて検討されるべきであるともされている。

f.2009年5月、東京証券取引所は、2007年11月の東証の企業行動規範に含まれる買収防衛策の導入に関するいずれか次の4つの尊重すべき事項について、企業が違反した場合、東証が改善や罰則措置(公表措置、上場契約違約金、上場廃止等)を課すことを可能とするという提案についてパブリック・コメント募集の手続きに付した。

(1)買収防衛策に関して必要かつ十分な適時開示を行うこと。

(2)買収防衛策の発動及び廃止の条件が経営者の恣意的な判断に依存するものでないこと。

(3)株式の価格形成を著しく不安定にする要因その他投資者に不測の損害を与える要因を含む買収防衛策でないこと。

(4)株主の権利内容及びその行使に配慮した内容の買収防衛策であること。

 東証は、受領したパブリック・コメントを踏まえ、2009年8月までに、この論点についての規則案をまとめる予定である。

B.コーポレート・ガバナンスの強化{前20文字下線あり}

1.社外取締役の独立性の確保{前12文字下線あり}

a.コーポレート・ガバナンス向上に向けたルールの在り方について検討を行うため、経済産業省において、金融庁、法務省及び東京証券取引所の協力の下、2008年12月に、企業統治研究会が設置され、本年6月に報告書が取りまとめられ公表された。

b.企業統治研究会は、報告書において、社外役員の「独立性」とは、経営陣から独立した立場で、利害関係を経営陣との間で有していないことを意味するとし、1経営陣から著しいコントロールを受け得る場合と、2経営陣に対して著しいコントロールを及ぼし得る場合、の二つのケースでは、独立性を有しているとは言えないとした。その上で、独立性の確保とガバナンスの実効性の確保の両面の要請を勘案して以下のとおり結論を出した。すなわち、最低限、一般株主保護のため、一般株主との利益相反が生じるおそれのない「独立」な役員が存在することを前提として、上場企業に対し、当該企業にとり最適な統治構造が株主との対話の中で合意形成できるよう、上場企業側の考え方につき、開示の充実等を求めることとした。

c.また、企業統治研究会は、報告書において、上場企業に対し、次のいずれかの対応を選択することを求めると結論を出した。

(1)社外取締役を設置し、その役割、機能等について、開示すること。

(2)上記を選択しない場合、当該企業独自の方法で、企業統治体制を整備、実行することについて、開示すること。

d.東京証券取引所は、取引所規則において、全ての上場会社に対して、社外取締役の選任状況等を記載した「コーポレート・ガバナンス報告書」の提出及び開示を求めている。東京証券取引所は、社外取締役の選任については、今後さらに検討していくこととしている。

2.コーポレートガバナンスを強化するための広範な措置の実施{前30文字下線あり}

a.日本国政府は、企業の不正行為の防止及び企業の競争力・収益力を向上させるに当たって、強力かつ効果的なコーポレート・ガバナンスの仕組みが重要であると認識しており、従来より、日本におけるコーポレート・ガバナンスを強化するための施策を講じている。

b.金融庁では、2007年12月21日に策定・公表した「市場強化プラン」に基づき、2008年10月から、金融審議会の「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」において、上場会社等のコーポレート・ガバナンス強化に向けた検討を行っており、その際には、外国産業界、海外の機関投資家、及びその他の市場関係者からも意見陳述をいただき、貴重な参考としている。同スタディグループでは、第三者割当増資への対応など市場における資金調達等をめぐる問題、社外取締役などガバナンス機構をめぐる問題、投資者による議決権行使等をめぐる問題を含む、上場会社等のコーポレート・ガバナンスの在り方について、幅広く議論を行った。同スタディグループは、2009年6月17日に、報告書「上場会社等のコーポレート・ガバナンスの強化に向けて」をとりまとめ、公表を行った。上場会社等におけるコーポレート・ガバナンスの強化や少数株主権の保護に関する同スタディグループの具体的な提言には、以下が含まれている。

(1)上場会社等による第三者割当増資一般について、開示の強化を含む、発行会社の経営陣による株主に対する説明責任の向上。

(2)株主の権利を不当に制限するおそれのあるキャッシュアウトの事例について、取引所による厳正な審査。

(3)取引所において、上場会社に対してガバナンス体制の内容をその体制を選択する理由について十分な開示を求めるといった対応をとること。

(4)取引所において、社外取締役・監査役について、会社との関係についてのより具体的な内容の開示を求めるとともに、当該者の独立性に関する会社の考え方についても開示を求めること。

c.金融庁は、今後も、内部統制報告制度の実施状況のレビューを行い、その結果を踏まえ、必要に応じ、内部統制報告制度に関する基準の見直しや更なる明確化等を検討する。

d.東京証券取引所の上場制度整備懇談会では、2009年4月に、投資者が安心して投資できる環境の整備など、上場会社のコーポレート・ガバナンス向上に向けた提言をとりまとめ、報告書の公表を行った。

 同年5月、東証では、この提言内容等を踏まえ、上場会社のコーポレート・ガバナンスを強化し、少数株主の保護を確保する観点から、以下のような事項等に関する規則改正案についてパブリック・コメント募集の手続きに付した。

(1)第三者割当増資については、

i.希釈化率が300%を超える場合、株主の利益を侵害するおそれが少ないと認められる場合を除き、上場廃止。

ii.支配株主が異動した場合、その後3年以内に支配株主との取引に関する健全性が著しく毀損される場合には上場廃止。

iii.希釈化率が25%以上又は支配株主が異動することになる場合、経営陣から独立した者等による第三者割当の必要性及び相当性に関する意見の入手ないし株主総会の決議等株主の意思確認を求めることとし、これに違反した場合には、公表措置、上場契約違約金、上場廃止等といった措置の対象とする。

(2)株式併合については、株主総会における議決権を失う株主が生じる場合で、株主の利益を侵害するおそれが大きいと認められるときには上場廃止。

 東証は、受領したパブリック・コメントを踏まえ、2009年8月までに、これらの事項についての規則案の改正をまとめる予定である。

3.少数株主の十分な保護の確保{前13文字下線あり}

a.会社法上、会社の利益ひいては少数株主の利益を損なう自己取引を避けるべき義務を含む、会社と契約関係にある取締役の会社に対する善管注意義務が明記されている。

b.支配株主が少数株主の利益を保護すべき注意義務を負うことを立法によって規定することは、両者が直接の契約関係にないことから極めて困難であるが、少数株主は、支配株主が違法に会社の少数株主の利益を侵害する場合には、支配株主に対して不法行為に基づく訴訟を提起することもできる。

c.東京証券取引所においては、2008年10月、社長名で、「著しい希薄化を伴うエクイティファイナンスについて」という文書を上場会社あてに出しており、エクイティファイナンスに際して、流通市場の機能及び株主の権利に十分配慮することを要請している。さらに、上記B.2.d.で述べられた規則案は、上場会社における少数株主保護を強化することになるものである。

4.活発かつ適切な議決権代理行使の促進{前17文字下線あり}

a.2009年5月、東京証券取引所では、同年4月の上場制度整備懇談会の提言内容等を踏まえ、より早期に株主総会の招集通知等にアクセスできる環境を整備するという観点から、上場会社に対して、株主総会の招集通知や議案、すべての委任状資料といった情報を株主へ提供する際に、それらを東証へ提出すること及び東証によるホームページでの公表について同意することを求めるという規則案についてパブリック・コメント募集の手続きに付した。

b.我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループでは、議決権の行使を通じたガバナンスの発揮について検討を行った。2009年6月17日にとりまとめられ、公表されたスタディグループの報告書「上場会社等のコーポレート・ガバナンスの強化に向けて」においては、株主に対する説明責任を果たすという観点から、上場会社等においては、各議案の議決結果について、単に可決か否決かだけでなく、賛否の票数まで公表することが適当であり、法定開示及び取引所ルールにより、ルール化が進められるべきであるとの提案がなされている。

c.金融庁は、投資運用業者を含む機関投資家が受託者責任に基づき、議決権行使を適切に行使し的確な経営監視を行っていくことは重要であると認識している。

 また、投資信託協会及び投資顧問業協会では、会員企業に対して議決権行使ガイドラインを策定するよう指導を行うとともに、会員企業による議決権行使結果に関する調査を実施しており、その結果を公表している。

C.司法制度改革の実現{前11文字下線あり}

1.日本における国際的な法務サービス提供の促進{前22文字下線あり}

a.専門職法人及び支所設置の容認

(1)法務省と日本弁護士連合会が設置した「外国弁護士制度研究会」は、日本において、外国法事務弁護士(以下「外弁」という。)による専門職法人及び外弁及び弁護士が共に構成員となる専門職法人を設立するために必要な措置等について、2009年度中のできる限り早い時期に結論に達するための研究をしてきており、引き続き研究する。

(2)外国弁護士制度研究会は、最終報告前に提言案を公表し、パブリック・コメントにかける。法務省はその最終報告に基づき、適正な措置を検討する。

(3)また、2009年4月、政府の諮問機関である規制改革会議の作業部会は、日本の法律事務所と外弁の法律事務所が法人化することなく支所を設置することを許すべきかについて、外弁から意見を聴取し、追加の情報の提出を求めた。

b.弁護士に対するインターナショナル・リーガル・パートナーシップとの自由な提携の容認

 法務省は、弁護士がインターナショナル・リーガル・パートナーシップのメンバーになることの法的な影響及び法的障害がある場合には、それについて真摯に検討していく。この目的のために、法務省は、2008年、日本で業務を行っている外国法事務弁護士事務所のヒアリングを通じて、インターナショナル・リーガル・パートナーシップの実務について入念な調査を開始した。法務省は、この問題に関し、外国人及び日本人弁護士並びにその他有識者からも、引き続きヒアリングを行う。

c.裁判外紛争解決手続(ADR)の促進

(1)日本国政府は、外国法事務弁護士、外国弁護士及び弁護士資格を有さない者が、準拠法又は紛争の内容にかかわらず、仲裁法に基づく仲裁手続において主宰者となることが認められていることを確認する。

(2)日本国政府は、仲裁以外のADR手続において、その業務が裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律に基づいて法務省によって認証されたときは、外国法事務弁護士、外国弁護士及び弁護士資格を有さない者は、認証された業務にかかるADR手続の主宰者として業務を行うことができることを確認する。

(3)日本国政府は、外国法事務弁護士が、ADR業務について法務省の認証を受けているか否かにかかわらず、外国法事務弁護士の権限の範囲内で、また、外国法事務弁護士の権限の範囲外のADR手続にあってはケース・バイ・ケースで、ADR手続の主宰者となることができることを確認する。

(4)日本国政府は、外国法事務弁護士が、日本で行われるいかなる国際ADR手続においても、少なくともその代理が外弁法と矛盾しない範囲において、当事者を代理することが認められていることを確認する。

(5)法務省は、日本で実施されるあらゆる国際的ADR手続において、外国法事務弁護士が、より高い法的確実性をもって主宰者となることができるための措置、あるいは、当事者を代理することができるための措置を適切に講じることができるかどうかについて調査を続ける。

d.迅速な承認と登録手続の確保

(1)法務省は、外弁申請者のための資格承認及び登録手続が、申請者との協力のもと、可能な限り迅速かつ効率よく完了されるべきであるものと認識している。

(2)この点に関し、法務省は、申請が完全な様式で、十分に説明された資料又は証拠書類とともに提出され得る限りにおいて、そのような申請の結果として、手続の進行が迅速化され、現状が改善されると認識している。

(3)法務省は、申請者のための迅速な手続が促進されるよう、申請者の申請手続に関する理解及び申請準備能力を高めるため、「承認・指定申請の手引」の改訂版を起案し、2009年4月から5月までの間、パブリック・コメントを募集した。

 この手引は、申請者に、どのように申請書を記入するべきか、そして、どのような種別の文書を提出しなければならないかということを正確に理解できるようにするとともに、関連法令に則った適切な申請を容易にすることを目的としている。更に、改訂された手引において、法務省は、申請に係る記載方法や頻繁に使用される証拠書類の参考例についての説明を加えている。

 法務省はパブリック・コメントを精査した上で、2009年中に、改訂された手引を公表することとしている。

(4)法務省は、今後とも、国内法令に従い、承認及び指定の許可について引き続き適切に対処していくこととしている。

 法務省は、改訂された手引が、法務省の指導のもとに、より多くの申請者に最大限に利用されることを含めて、迅速な資格承認及び登録手続に資することを期待している。

2.営業秘密盗用の刑事訴追の促進{前14文字下線あり}

a.2009年2月16日、経済産業省の産業構造審議会は、刑事訴訟における営業秘密の保護を含む、営業秘密の保護についての報告書を公表した。同報告書は、経済産業省及び法務省が、刑事訴訟における営業秘密の保護について、可及的速やかに具体的な成案を得るための更なる検討を行うべきことを提言した。

b.2009年4月、国会は、日本国政府に刑事訴訟における営業秘密の保護について適切な法的措置を講じることを求める、営業秘密保護に関する不正競争防止法の一部を改正する法律の附帯決議を採択した。

c.このような背景を踏まえ、日本国政府は、営業秘密盗用の刑事裁判において営業秘密の内容が公開されないことを確保する新たな手続について、憲法が規定する裁判の公開の原則に十分配慮し、また、被告人の防御権の行使に対する制約のおそれや円滑な訴訟手続の必要性に留意しつつ、慎重に検討しているところである。

Ⅶ.透明性{前5文字囲み線あり}

A.政策策定における民意の反映-審議会等{前20文字下線あり}

1.日本国政府は、審議会等に関する強い透明性基準を策定することにより、日本における審議会等の透明性やアクセスを高めるべきであるとの米国政府の見解を認識しているが、審議会等についてはそれぞれの設置法令や、「審議会等整理合理化に関する基本的計画」(1999年4月閣議決定)、その他の指針・規則に従って、各府省において運営がなされているところである。具体的には以下の取組が行われている。(a)審議会等が設置される際、記者会見を行い、関係資料を公表している。(b)会議についての日時及び開催場所を公開している。(c)1999年の閣議決定に基づき、会議及び議事録を原則として公開するとともに、利害関係者からの意見聴取の機会を設けるよう努め、また、委員の任命に当たっては、意見、学識、経験が公正かつ均衡のとれた構成となるよう留意している。

(d)審議会等のリスト及びそのメンバーリストを、電子政府の総合窓口(http://www.e-gov.go.jp)により、公に入手可能としている。

2.日本国政府と米国政府は、審議会、研究会その他類似の会合の透明性に関するベストプラクティスについて、引き続き情報交換を行う。

B.パブリック・コメント{前14文字下線あり}

 日本国政府は、改正行政手続法に基づく意見公募手続によって、命令等の制定過程における透明性の向上・公正の確保のため、意見提出にとって意義ある機会が効果的に提供されることを確保する必要性を認識している。

1.行政手続法では、各府省庁が一般からの意見提出のための意義のある機会を提供するために原則として30日以上の意見提出期間を設定すること、及び命令等を決定する前に提出された意見を十分に考慮することが規定されている。2007年度における意見公募手続の施行状況調査結果によれば、行政手続法に基づく意見公募案件中、93.1%において30日以上の意見提出期間が設定されている。総務省は、可能な限り30日以上の意見提出期間を設定すること、意見公募手続の対象とする命令等の案については具体的かつ明確なものとすること、可能な限り十分な意見考慮期間を確保すること及び提出された意見について可能な限り効率的に対応すること等をベストプラクティスとして、各府省庁に対し更に奨励する。

2.総務省は、これまでも意見公募手続の実施状況について年次調査を行い公表するとともに、各府省庁に対し同手続が適切に運用されるよう適宜通知を発出してきている。2009年2月には、総務省は、提出意見に関し可能な限り十分な意見考慮期間を確保する必要性及び可能な限り早期の結果公示の実施の必要性についての通知を発出した。総務省は、今後とも、関係各府省庁と密接な連携を図ることによって、必要に応じ本件手続のよりよい実施を奨励・推進していく。総務省は、2008年度分の施行状況調査を実施し、その結果を公表する予定である。

 また、意見公募手続の対象となる案件について、国民にとってそれぞれ関心のある行政分野の案件を検索し易くし、より多くの意見を入手できるよう、電子政府の総合窓口の検索機能の改善を行う予定である。

C.規制及びその執行における透明性{前18文字下線あり}

 日本国政府は、民間部門が、規則について十分な情報を得ること及び法の適用に関する情報や様々な基準を提供することを通じて、法や規則の解釈や解説の容易な入手を確保することの重要性を理解し、この分野における米国政府の要望を引き続き考慮する。

D.政府機能の再編における透明性の促進{前19文字下線あり}

1.日本国政府は、2008年2月、消費者関連政策の一元化について議論するため、内閣総理大臣の下に、諮問機関である「消費者行政推進会議」を設置した。同会議は、経済団体等の様々な機関からの見解のヒアリングを含め、広範な検討を行った。資料や議事要旨は、各会合の後、迅速に公表されている。

2.同会議は、2008年6月13日、「消費者庁」の設置の提言を含む最終報告書を取りまとめて公表した。日本国政府は、2008年6月27日、同報告書に基づき、消費者行政推進基本計画を閣議決定した。同閣議決定は消費者庁設置関連法案の基礎となった。

3.法案は国会で審議され、一部修正のうえ、2009年5月29日、全会一致で可決された。

4.日本国政府は、法案成立後の内閣府令等の規則の策定にあたっては、「行政手続法」に規定された意見公募手続に則り、広く意見を求めていく所存である。また、日本国政府は、その手続が可能な限り意義のあるものとなるように、実質的な意見公募手続を行う予定である。

E.日本法令の外国語訳{前11文字下線あり}

1.2009年3月25日、日本国政府は、内外の有識者の意見も勘案の上、2009年度翻訳整備計画を改定するとともに、2010年度翻訳整備計画を進めることを決定した。

2.2006年度から2010年度までの翻訳整備計画により、約440本の法令が翻訳されることとなっている。日本国政府は、2009年4月末までに約260本の法令を英語に翻訳しており、新たに立ち上げた日本法令外国語訳のウェブサイト(http://www.japaneselawtranslation.go.jp)において、翻訳法令に関する情報提供を開始した。日本国政府は、今後とも継続して、重要な法令を適切な時期に翻訳していく所存である。

Ⅷ.その他の政府慣行{前10文字囲み線あり}

A.農業関連の政府慣行{前11文字下線あり}

1.残留農薬基準{前6文字下線あり}

 輸入品の残留農薬の監視強化について、日米両国政府は、「厚生労働省と米国関係当局間の日本の残留農薬検査に関する文書」で原則として結論に達し、同文書は2009年7月末までに署名によって正式なものとなる。両国政府は同文書のとおり問題を取り扱っていく。

2.有機農産物{前5文字下線あり}

a.有機農産物に使用される農業資材の評価について:日本国政府は、リグニンスルホン酸塩、重炭酸カリウム及びフミン酸について米国政府から提出された科学的データの精査を終了し、重炭酸カリウムと、造粒剤又は固結防止剤としてのリグニンスルホン酸塩の使用のみを許可するという決定を通知した。日本国政府は、フミン酸の再評価のために必要な情報を説明した。日本国政府は、有機生産における浮揚剤としてのリグニンスルホン酸塩の使用に関する米国政府からの要求も受け取ったが、2008年10月10日付の書簡で有機生産における浮揚剤としてのリグニンスルホン酸塩の使用を承認しなかった。日本国政府は、米国における有機生産において、浮揚剤としてのリグニンスルホン酸塩の使用の必要性を説明する十分なデータが米国から提供されれば精査するとの意思を伝達した。

b.有機農産物における使用禁止資材の残留基準の設定について:日本国政府は、農林水産省が、有機農産物、有機加工食品、有機畜産物及び有機飼料のJAS規格改正手続きを開始したことを発表するプレスリリースを2009年4月8日に発表したことを米国政府に知らせた。日本国政府は、「有機生産が、有機食品に残留が全くないということを保証するものではない」とのコーデックス事務局職員の見解を認識し、また、これは2011年における次期有機JAS規格改正において関係者と議論されるべき議題の一つとなり得ることを認識している。

3.食品添加物{前5文字下線あり}

a.日本国政府は、国際的に(例えば、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)によって)安全性が確認され、かつ汎用されている食品添加物46品目及び香料について、指定の検討を進めており、厚生労働省は、2003年以降これまでに、食品添加物26品目及び香料15品目について、食品安全委員会の評価結果を受けて、その使用を認めた。

b.このイニシアティブの第7回報告以降これまでに、ナイシンを含む13品目が新たに食品添加物として指定され、日本での使用が認められた。厚生労働省は、残りの品目についても、すべての食品添加物及び香料の申請について検討プロセスを迅速に進めるために食品安全委員会及び米国政府と引き続き協働していく。

4.世界的に分布する病害虫に関する再検討{前18文字下線あり}

a.2009年4月、日本国政府は、米国政府にとって優先的な関心事項である残る2種の害虫、即ちワタアブラムシ及びマメクロアブラムシの検疫上の位置づけを決定する目的で、国際基準に基づき、病害虫危険度解析(PRA)を終了させるため、米国政府に追加情報の提供を要請した。日本国政府は、検討を促進するため要請した情報を2009年5月22日に受け取った。

b.日本国政府は、世界的に分布する病害虫の分類を国際基準と調和させるための努力を継続する。

5.プレ及びポスト・ハーベスト農薬{前19文字下線あり}

a.日本国政府は、防かび剤のリスク評価については、主たる用途の調査会での調査審議を中心とするなど、調査審議方法を改善することを検討している。

b.米国政府は日本国政府に対し、国際的なコーデックス規格に合わせポスト・ハーベスト防かび剤を農薬として再分類することを要望した。米国政府は日本国政府に対し、米国生産品に適用されるポスト・ハーベスト防かび剤に対する全ての表示要件を廃止することを求めた。日本国政府は、これらの米国政府からの要望についての検討を継続する。

B.風力発電プロジェクト{前14文字下線あり}

 日本国政府は、米国政府による要請を理解する。日本国政府は関連する情報を提供してきており、引き続き提供するとともに、必要に応じて、可能な措置を検討する。

C.構造改革特別区域{前10文字下線あり}

 日本国政府は、2009年4月現在、215項目の構造改革特区提案を実現しており、引き続き制度を推進していく。特区において成功した特例措置については、可能な限り早く全国展開(2009年4月現在、128項目の特例措置が全国展開された)に向けて必要な措置をとり、地方自治体や国内外の企業を含むその他の関係者にも意見を聞きながら、特区制度の拡充を図っていく。また、もし地域活性化への効果が大きいと判断された場合には、その特例措置は継続されることになる(これまで1件のみ)。また、特区制度についての情報は引き続き可能な範囲で英語でも提供される。

D.領事事項{前6文字下線あり}

1.再入国許可制度{前7文字下線あり}

a.日本国政府は、外国人の公正な管理に資することとなる新たな在留管理制度の導入を目的とした出入国管理及び難民認定法の改正法案を2009年3月6日に国会に提出した。

b.改正案は、適法に在留する外国人の利便性を向上させる措置として、旅券及び新たな在留管理制度のもとで発行される在留カードを所持し、適法に在留する外国人については、原則として再入国の許可を受けることなく1年以内の再入国を可能とする規定を含む。

2.家事使用人特定活動ビザ{前13文字下線あり}

 法務省入国管理局は、外国人家事使用人の入国に関する告示の要件の統一的かつ弾力的な運用を図るため、2009年3月11日付けで関係告示の要件の運用について地方入国管理局あて通知した。通知の概要は次のとおりである。

a.事業所等の長又はこれに準ずる地位にある者の範囲については、事業所等における地位の名称・肩書きにとらわれることなく、事業所等の規模、形態及び業種並びに同人の報酬額及び事業所等における権限等を考慮し、事業所等の長又はこれに準ずる地位であるか否か総合的に判断する。

b.病気等により日常の家事に従事することができない配偶者を有するものの範囲については、雇用主の配偶者が日常の家事に従事することができない理由に、当該配偶者の怪我・疾病だけでなく、当該配偶者が日本の企業等で常勤職員として就労していることを含める。通知の内容及び想定される事例を法務省ホームページで公開している

(http://www.moj.go.jp/NYUKAN/nyukan83.html)。

E.共済{前4文字下線あり}

1.少額短期保険業制度については、従来の根拠法のない共済を規制するため2006年4月1日に導入された。

 金融庁は、施行から5年以内(2011年4月まで)に少額短期保険業制度についての検討を行うこととしている。検討を行うにあたり、必要に応じて、検討に関する情報を提供し、外資系保険会社を含む保険会社などの関係者が意見を表明する有意義な機会を提供する予定である。

2.制度共済に関しては、金融庁以外のさまざまな所管省庁によって規制されている共済に関し、民間保険サービス提供者に対する金融庁の監督基準に準拠しているかを判定するため、近いうちに日本国政府が規制と監督の一貫性を評価すべきであり、またそのような評価は、利害関係者が有意義に意見を表明し、交換できるような透明な形で、行われるべきであるとの米国政府の見方について、日米両国政府は議論を行った。

3.日米両国政府は、日本国政府が、さまざまな省庁に規制されている共済に対し(1)民間競合者と同じ税金を支払うこと、(2)破綻が起きた際に契約者を保護するためのセーフティーネットへ資金を拠出すること、(3)準備金積立規制を含め、金融庁に規制されている保険会社に適用されるのと同じ規則と規制が適用されること、(4)金融庁の監督下に置かれること、を求めることで、共済と民間競合者との間の対等な競争条件を確保すべきという米国政府の見方について議論を行った。日米両国政府は規制改革及び競争政策イニシアティブや保険協議において、関連する論点について引き続き議論を行っていく。

F.保険商品の銀行窓販{前11文字下線あり}

1.日本国政府は、2007年12月22日に、銀行等の保険販売の全面解禁を実施した。銀行等の保険販売に関する弊害防止措置については、金融庁により深刻な法令違反が認められておらず、強力な銀行等による保険販売チャネルは、強い消費者保護と整合的であることが示された。銀行等の保険販売は、2001年以降、弊害を見極めつつ段階的に解禁してきた。この過程において、国内外の利害関係者と意見交換等を行い、その過程で表明された幅広い意見等を踏まえ、より一層の消費者等の保護を図るため、関係内閣府令等を改正し同日(2007年12月22日)に施行した。この関係内閣府令には、中小金融機関が販売する第三分野保険商品の限度額に関する見直しも含まれているが、米国政府は、この改正を歓迎している。

 なお、金融庁では、全面解禁後においても、引き続き銀行等の保険募集についてモニタリングを行うとともに、消費者等の保護・利便及び利益の観点から、弊害防止措置等について、概ね3年後に、所要の見直しを行うこととする。

2.日本国政府は、銀行等の保険販売に関する規制が、消費者保護を確保するとともに、特定の商品や販売方法、サービス提供者を優遇することなく公平に実施されることが重要であると考えている。

3.金融庁は、銀行による保険募集の状況のモニタリング及び、市場慣行規則の更なる見直し、制定、実施を行なう過程においては、要望により、保険会社(外国保険会社を含む。)、銀行、その他の幅広い適切な関係者から有意義なヒアリングの機会を確保することとしている。

G.保険契約者保護機構{前11文字下線あり}

1.2008年10月14日、世界的な金融危機が広がり続ける中、日本の金融担当大臣は、金融システムの安定性をより強化するための政策パッケージに関する発表の一部として、日本は保険契約者保護を目的とした生命保険会社のセーフティネットについて、2009年3月31日の期限後も3年間にわたり、政府補助を引き続き可能とする措置を検討すると述べた。

2.効率的で強固に機能するセーフティネットシステムを確保することは、日本の契約者及び生命保険市場にとって最大の利益となるものであると両国政府は合意している。

3.2008年12月に成立した改正保険業法により、保険契約者保護機構(PPC)のスキームにおいて、保険会社が破綻した場合における資金援助の財源に係る政府補助を可能とする期間が延長された。

4.日本国政府と米国政府は、現行制度が再検討される際に、より効率的で持続可能なセーフティネットシステムが作られることを確保することを支援するための事後拠出方式への移行を含め、PPCが最後の手段として使われるべきであるとの米国政府の要望について議論した。

5.改正法は、PPCへの政府補助などについての見直しを3年以内に行うと規定しており、この見直しを行うにあたり、金融庁及び日本国政府の関連審議会等は、外資系保険会社を含む民間の利害関係者に対して、その見直しに関する情報を提供するとともに、法案を準備するための関連審議会の審議において、意見表明や意見交換の有意義かつ時宜を得た機会を提供する。

H.外国保険会社事業の現地法人化{前16文字下線あり}

1.日本国政府と米国政府は支店現地化について議論を行った。日本国政府は、以下について認識している。

a.米国政府の立場は、次のとおりである。日本国政府は、日本において支店方式で営業を行なっている外国保険会社が、日本法人又は別の外国保険会社に事業を移行したい場合、保険契約者、債権者を保護し、途切れのない形で事業を移行できるよう、健全な保険会社間での包括移転にかかる販売停止規定の撤廃を含めた、必要な措置を講ずる。

b.日本国政府は、この問題について対処するため米国政府及び外国会社を含む産業と、更なる協議を引き続き行う。

2.日本国の保険業法の包括移転規定における保険契約販売停止規定は、移転対象契約と同種の保険契約を新たに契約する者の保護を図るとともに、移転対象契約の範囲を明確にするためのものである。

3.また、すべての債権者に対する情報開示、公告及びみなし承認についての法定手続の新設、金融庁の認可と債権者の承認を受けた取引について、譲受会社に、譲渡会社(支店)のすべての資産と債務を承継することを認めることに関して、基本的には、保険会社の組織変更・組織再編の手続についても、日本国の会社法の手続に拠る(準ずる)べきものであると考えられる。

4.「みなし免許」の付与については、譲受会社が譲受前と同一の条件と取引方法を履行できることの証明の検証は新たな免許の審査と同様であり、「みなし免許」を付与する法的意義は少ないものと考えられる。

5.日本国政府は、外国保険会社の現地法人化に関して、具体的に支障があるのであれば、個別に相談に乗ることとする。

I.独立代理店{前7文字下線あり}

 日本国政府と米国政府は保険商品の第三者販売チャネルについて議論した。

Ⅸ.民営化{前5文字囲み線あり}

A.郵便貯金・郵便保険に対する対等な競争条件{前22文字下線あり}

1.日本郵政株式会社、郵便事業株式会社(以下「郵便事業会社」という。)、郵便局株式会社(以下「郵便局会社」という。)、株式会社ゆうちょ銀行(以下「ゆうちょ銀行」という。)及び株式会社かんぽ生命保険(以下「かんぽ生命」という。)の財務情報は、他の民間企業と同様に、会社法、銀行法、保険業法、その他の関係法令を含めた規制の下で開示され、また、公開資本市場において取引される場合は、金融商品取引法の開示規制を受ける。金融庁は、銀行法及び保険業法に基づくゆうちょ銀行及びかんぽ生命に対する監督・検査について唯一の権限を持ち、金融サービス又は保険商品の販売に従事するときを含め、他の銀行や保険会社に適用されるものと同じ基準を適用する責務がある。したがって、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命には、リスク管理条件及び金融庁の完全な監督を含め、民間の金融機関と同様の免許、情報開示、監督の基準に適合するための措置がとられる。2007年10月に郵政民営化プロセスが開始したときに、金融庁は監督局に1名の参事官及び11名の職員による新しい室を設置した。さらに、2008年8月までにゆうちょ銀行及びかんぽ生命に対する監督を強化するため、金融庁は、かんぽ生命の監督を担当する参事官1名、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命の監督を担当する職員4名を従事させた。日本国政府は、金融庁が他の銀行や保険会社に適用されるあらゆる規制の下でゆうちょ銀行及びかんぽ生命を適切に監督し、金融庁及び総務省が郵政民営化関連法の下でゆうちょ銀行及びかんぽ生命を適切に監督することを引き続き確保していく。ゆうちょ銀行、かんぽ生命、日本郵政株式会社及び郵便局会社の相互の取引関係は、アームズ・レングス・ルールを含め、銀行法及び保険業法の義務に服する。銀行法及び保険業法の下での会計規則の適用にあたっては、これらの4会社は、銀行法及び保険業法の「特定関係者」の要件に該当する。

2.郵政民営化を規定している法律上、郵便局会社がゆうちょ銀行以外の民間銀行と銀行代理店契約を締結すること、またかんぽ生命以外の民間保険会社と生命保険募集委託契約を締結することは可能である。郵便局会社のネットワークを利用する点において、日本国政府の立場としては、ゆうちょ銀行と他の民間の銀行及び金融機関との間で、また、かんぽ生命と他の保険会社との間でそれぞれに対等な競争条件は現に確保されている。日本国政府は、郵便局会社とゆうちょ銀行及びかんぽ生命との関係が、アームズ・レングス・ルールやその他の民間企業に適用される規則に則った公正なものとなることを確保する。また、郵便局会社が、銀行代理業者又は保険募集人として預金・貸出・為替・保険商品の販売等の代理又は仲介を行う場合、その職員を含め、他の銀行代理業者又は保険募集人と同様、金融庁の監督を受ける。

3.郵政民営化関連法は、損益が明確にされることを確保し、他の事業により影響を受けるリスクを排するため、郵政金融会社と非金融法人との間の事後的な内部相互補助を防止するように設計されている。郵政民営化関連法により、日本国政府は、旧勘定及び旧契約と2007年10月1日以降の新勘定及び新契約とを分離する観点から、ゆうちょ銀行・かんぽ生命とは別に独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構(公社承継法人)を設立した。ゆうちょ銀行やかんぽ生命が破綻した場合の旧勘定及び旧契約については、預金保険制度及び生命保険契約者保護制度の対象外とされている。預金・再保険の契約については、実施計画の中で定められていた。実施計画については、内閣総理大臣及び総務大臣が認可の段階で内容を審査した上で、両大臣は、郵政民営化委員会の意見を聴取し、財務大臣にも協議を行い認可した。このプロセスにおいて、日本国政府は、預金・再保険契約を通じてゆうちょ銀行・かんぽ生命に対して旧勘定及び旧契約から生じた利益を不当に移転しないことを確認した。民営化関連法は、承継された旧勘定及び旧契約から生じる資産運用は、2007年10月から預金及び再保険契約により、ゆうちょ銀行とかんぽ生命に委託されることを規定している。2007年10月以降、これらの預金及び再保険契約は、銀行法及び保険業法に基づき、金融庁の検査・監督に服することとなっているほか、郵政民営化関連法等に基づき総務省の検査・監督に服することとなっている。独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構は、独立行政法人通則法に基づき、再保険契約の財務結果を含む毎年の財務諸表を、日本の一般会計原則に従い、独立した会計監査人による監査を受けて作成し、公表することとなる。

4.日本郵政公社は、2007年9月30日の財務諸表を独立した会計監査人による監査を受けて作成し、公表した。独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構に承継された資産及び負債は、評価委員会の公正基準による評価を受け、評価委員会の議事録及び会議資料が公開された。子会社間の内部相互補助に関しては、会社法、保険業法及び銀行法の規定に基づき、各子会社において独立して監査委員会と会計監査人、あるいは監査役会と会計監査人が監査業務を行うこととなっている。

5.2007年10月1日以降、ゆうちょ銀行が受け入れる預金及びかんぽ生命が募集を行う生命保険商品には政府保証は付されていない。ゆうちょ銀行及びかんぽ生命は、利用者等に、民営化された郵政金融機関の金融商品に政府保証がない旨を説明してきている。加えて、日本国政府は、政府保証が存在しないことを説明する政府広報を行ってきた。民営化以降、「政府保証がある」といった虚偽のことを告げてそれらの商品を販売する行為は、銀行法及び保険業法において禁止されている。金融庁は、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命による実際の販売方法がこれらの法律を遵守しているかどうかモニタリングしている。日本国政府は、政府保証の存在についての誤解が生じることのないように、必要な取組を行っている。

6.独占禁止法は、他の民間会社に適用されているのと同じ根拠に基づき、また、同じ基準に従って、日本郵政グループ会社(日本郵政株式会社、郵便事業会社、郵便局会社、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命)に対して引き続き適用される。この点において、公正取引委員会は、これら5社の業務を引き続き注意深くモニターしていく。公正取引委員会は、これら5社の運営及び郵政民営化に関連する競争政策の論点について、同委員会としての考え方を、適切なときに引き続き表明していく。

7.日本国政府は、社会・地域貢献基金は、社会・地域にとってその実施が真に必要であるが、民間企業では実施困難なサービスに対して資金を交付するものであり、郵便局会社、郵便事業会社、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命を不当に優遇するものではないことを再確認する。また、地域貢献業務にあたっては、郵便局会社は、実施計画を作成し総務大臣の認可を受けるとともに、認可後遅滞なく当該計画を公表することが義務付けられている。実施計画の認可前におけるパブリック・コメントの機会について考慮すべきであるという米国政府の見解を、日本国政府は知っている。さらに、計画期間の終了後3ヶ月以内に、郵便局会社は、地域貢献業務の実施状況に関する報告書を公表することが義務付けられている。

 上で述べたとおり、日本国政府は、地域貢献業務の適正な実施及び基金の設置・運営の透明性を確保するための措置を講じる。

B.競争条件及び新商品導入{前14文字下線あり}

ゆうちょ銀行及びかんぽ生命は、銀行法及び保険業法等の民間金融機関と同じ法令及び郵政民営化関連法が適用され、移行期間中は郵政民営化法による業務制限が追加的に課されている。ゆうちょ銀行及びかんぽ生命の民営化当初の業務範囲は日本郵政公社と同一のものであった。業務範囲の拡大は、内閣総理大臣(権限は金融庁長官に委任)及び総務大臣が、郵政民営化委員会の意見を聴取した上で、決定するという透明・公正な手続きを経なければならない。ゆうちょ銀行及びかんぽ生命の業務範囲の拡大について主務大臣が決定を行う際は、適正な競争関係及び両社の経営状況が考慮されることとなる。かんぽ生命による新たな又は変更された保険商品の導入、ゆうちょ銀行による新たな元本無保証型商品又は新たな貸付業務の導入は、上記のプロセスを通じて審査されている。ゆうちょ銀行及びかんぽ生命が新商品を販売する際には、リスク管理やコンプライアンス態勢等、民間金融機関と同様の義務や基準に服さなければならない。上で述べられている通り、郵政民営化プロセス全体を通じ、日本国政府により、郵政金融機関と民間金融機関との間の対等な競争条件が確保されている。日本国政府は、郵政金融機関の業務範囲の拡大において、対等な競争条件が常に確保されるべきであると認識している。民営化のプロセスと実施は日本のWTO上の義務、特にGATSの内国民待遇原則に従うべきという考え方を米国政府が有していることを日本国政府は知っている。

C.宅配サービスに対する対等な競争条件{前20文字下線あり}

1.日本国政府は、国際郵便物に係る通関制度について見直しを行い、20万円超の国際郵便物に対して原則として申告納税方式を適用する制度を、2009年2月16日から実施している。また、申告納税制度は、郵便事業株式会社が行う国際物流事業に係る貨物の通関手続きについても、他のエクスプレス貨物輸送業者に対して適用されるのと同様の方法で適用される。

2.2009年3の閣議決定によれば日本国政府は、通関手続等において国際郵便として一般の貨物とは異なる簡易な取扱いを受けるEMSの範囲(重量、価格等)に関する検討に着手し、2010年3月31日までに結論を得ることとなっている。日本国政府は、2008年10月の対日要望書に提起されたEMSに関する米国政府の考え方に加え、この検討過程における透明性の重要性を知っている。

3.会社法は他の民間企業と同様に郵便事業株式会社に適用されている。情報開示については、郵便事業株式会社は他の民間事業者に適用されるのと同じ法律・規制が適用されている。郵政民営化委員会は、2009年3月13日付けの「郵政民営化の進捗状況についての総合的な見直しに関する郵政民営化委員会の意見」において、郵便事業株式会社については「部門ごとの原価構造等に係るデータの整備等」に努めることが求められる、とした。

4.郵政民営化委員会は、郵便事業株式会社の新規業務(国際物流業務)に関する、2008年6月18日付けの「基本的な考え方」において、郵便事業株式会社がこの業務を実施するにあたっては、適正な競争を確保する観点から、アームズ・レングスの原則に従うことが求められる、とした。

 また、郵政民営化委員会は、上述の意見の「フォローアップ」として、総務大臣に対し、この業務が適切に実施されていることを継続的に確認するとともに、その結果について、郵政民営化委員会に対し報告されたい、とした。

D.透明性{前5文字下線あり}

1.郵政民営化推進室、総務省及び金融庁は、民間部門の利害関係者に対し、その要請に基づき、時宜を得た形で、日本郵政グループ各社と民間分野との間の競争条件に関するものを含め、関係職員と意見交換を行う機会を引き続き提供する。

2.日本国政府は、適切な方法により、一般公衆に対し、郵政民営化に関する法律、規則、ガイドライン及びその他の情報を提供することを含む郵政民営化プロセスにおける透明性の確保の重要性を認識している。また、日本国政府は、行政規則、行政決定、行政ガイドライン及びその他の措置の準備及び施行に関し、行政手続法に基づくパブリック・コメント手続の必要に応じた活用及びその他の方法により透明性を確保する。行政手続法については、日本国政府は、パブリック・コメントが行われた場合には、提出された意見を十分に検討し、適切であれば、措置案を最終決定する前にその意見を反映させることを保証する。

3.郵政民営化委員会は、郵政民営化の諸問題に関して利害関係者より意見を聴取する機会を提供してきた。郵政民営化委員会の委員長は、郵政民営化プロセスにおける委員会の審議の透明性の重要性を考慮し、委員会が必要と判断した場合には、引き続き利害関係者より意見を聴取する機会を設ける旨を表明している。

 例えば、郵政民営化法において、郵政民営化委員会は3年ごとに郵政民営化の進捗状況について見直しを行うことが規定されている。2009年3月13日に郵政民営化委員会は、3年ごとの郵政民営化の進捗状況についての総合的な見直しに係る意見書を取りまとめたが、それに当たっても、ヒアリングや意見募集の実施により、利害関係者が意見を述べる機会を確保した。将来の総合的な見直しについても、引き続き、銀行、保険、エクスプレス貨物市場における改革の影響及びこれらの分野における日本郵政グループ各社と民間企業との間の対等な競争条件に関するものを含め、全ての利害関係者が意見を表明する機会を含むべきものであるとの米国政府の見解を、日本国政府は知っている。

 日本国政府は、郵政民営化委員会の独立性を認識しつつも、郵政民営化委員会の透明性の重要性も認識している。

4.郵政民営化委員会議事規則のもと、郵政民営化委員会は、議事要旨及び詳細な議事録を適時に公開してきた。郵政民営化委員会は、これまでの会合ごとに、事前の議題の公開、会合後の記者ブリーフィングを行ってきた。郵政民営化委員会事務局は、郵政民営化についての委員会の議論における透明性を維持するための郵政民営化委員会の努力を引き続き支援する。例えば、郵政民営化委員会事務局は、委員会の各会合前に、会合の議題を引き続き公開する(関係するウェブサイトでの公開を含む。)こととする。

5.両国政府は、規制改革を一層促進する決意を再確認するとともに、いずれか一方の政府の要請に基づき、郵政民営化関連法の施行に伴い発生する諸問題について取り上げるために、双方の都合の良い時期に会合する。

Ⅹ.流通{前4文字囲み線あり}

A.空港着陸料及び使用料{前13文字下線あり}

 日本国政府と米国政府は、日本における空港着陸料及び使用料について意見を交換した。

B.税関手続の効率性向上{前10文字下線あり}

1.輸出後の税関申告{前8文字下線あり}

 日本国政府は、現行の輸出申告制度によって、効率的な通関手続きと貨物セキュティを維持するという二つの目標が達成されると信ずる。日本国政府は、貨物セキュリティを維持しつつ、迅速な通関について引き続き議論していく。

2.申告のための通関事務所の選択の自由{前17文字下線あり}

 日本国政府は、輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS)の利用者が急送貨物の通関申告を行う際、貨物が物理的に蔵置されている場所に限定されるのではなく、便のよい任意の税関官署で行うことが認められるべきとの米国政府の見解に留意する。日本国政府は、通関業者が貨物を確認し、そして貨物を税関に提示するためには、貨物が物理的に蔵置されている場所の近くに通関業者が事務所を設置することが重要であると信ずる。なお、日本国政府は、AEO通関業者のための輸出入申告の提出方法について引き続き検討していく。

米国政府による規制改革及びその他の措置

I.ダンピング防止措置{前14文字囲み線あり}

A.米国政府は、米国のダンピング防止に関する法律、規則及びその他の措置がWTO協定上の義務に整合的なものとなることを確保する。

B.2006年2月8日、継続的ダンピング及び補助金相殺法(バード修正条項)の撤廃を規定する2005年赤字削減法が発効した。2007年10月1日より前に通関した産品に係る税については、バード修正条項が廃止されていないものとして、同条項に基づき分配される。2007年10月1日以降に通関した産品については、最終的に確定した税が、影響を受けた米国製造業者に対し分配されることはない。日米両国政府は、上記のような税の分配に関する問題について協議した。

C.米国政府は、熱延鋼板紛争において問題になっている調査におけるダンピング・マージンの計算に関して、WTOの勧告及び裁定を履行した。米国政府は、この紛争で問題になっている米国法に関して、WTOの勧告及び裁定を履行するために、適当な措置について議会と協力していく。この点に関し、米国政府は、2005年7月20日のDSB会合で検討された、譲許の停止の承認を求める日本の決定に関する二国間了解に留意する。

D.米国政府は、日本製のボールベアリング及びその部品に対するアンチ・ダンピング措置に関するモデル・マッチングの手法に対する日本国政府の見解について、自国の見解を説明した。

Ⅱ.税関・流通{前8文字囲み線あり}

A.海事テロ対策{前6文字下線あり}

 米国土安全保障省(DHS)と日本国政府のカウンターパートは、「安全かつ円滑な貿易」スタディグループにおいて、サプライチェーン・セキュリティ・イニシアティブに関する問題に対処してきている。これらの意見交換には、テレビ会議や世界のサプライチェーンに対する重層的な安全戦略及びリスクマネージメント・アプローチを促進するために複数存在するDHSの安全に関するイニシアティブが如何にして築き上げられているのかについて日本国政府及び産業界に対して説明するための訪問が含まれる。DHSは情報収集及び国際的な協力が、成功裏にサプライチェーンの安全を保つための鍵であることを認識し、「安全かつ円滑な貿易」スタディグループを通じて、それらの問題についての生産的な対話を継続することを期待している。

1.マニフェスト船積24時間前提出規則、「10+2」ルール{前27文字下線あり}

a.日本国政府との協議の中で、DHSは、24時間前提出規則は、事前の貨物申告に関わるのみであって、コンテナ自体の物理的な存在は求めていないということを含め、24時間前提出規則を実施するための義務について、説明してきた(併せて、柔軟な措置として、直前の貨物マニフェストの変更も場合によっては認められる旨説明してきた)。

b.2009年1月26日より米国国土安全保障省税関国境保護局(CBP)の「10+2」ルールの暫定最終規則の実施が開始された。本ルールは米国向けの船舶に関して、貨物の輸入者と海運業者は追加データを電子データでCBPに提出することを要求している。

c.CBPは様々な業界や日本国政府を含む諸外国政府から寄せられた意見を参考に、同ルールに大幅に修正をおこなった。この修正には、データ項目の提出に関して大幅に柔軟性を与えていること、12ヶ月間の遵守猶予期間を設けること、規則のいくつかの面について利害関係者から更なるコメントを受け付けることとしたことが挙げられる。2009年1月に規則が施行されてから、CBPは116万件以上の輸入者セキュリティファイリング(ISF)を受領しており、有望な結果が得られている。柔軟性を付与された6項目については、コメントの正式な提出期限が2009年6月であったが、CBPはその後も引き続き外国政府及び産業界の関係者とこの規則の確立に向けて協力していく。米国政府は、日本国政府が「10+2」ルールによるリードタイムの長期化、物流効率の低下と遵守のためのコストの大幅な上昇といった影響をもたらしかねないと懸念していることを認識しているが、産業界を含む全関係者の利益となるよう、貿易を円滑化しかつ安全性を向上させるような方法で新規則実施への円滑な移行を確保していくとの立場に変わりがないことを強調した。

d.DHSは実施期間中、暫定最終規則に従って提出された全パブリック・コメント及び受け取ったフィードバックを考慮した上、企業が規則を遵守するためにさらに時間を必要としていると考えられる場合は、規則遵守が始まる時期を2010年1月26日よりも更に延期することを検討することもあり得る旨言及した。

2.C‐TPAT{前6文字下線あり}

a.C‐TPATプログラムには、パートナーとして認める輸入者に対して恩恵を与える3段階のシステムがある。この3段階のシステムは、特定のサプライチェーン・セキュリティに関する措置の検証に基づき、輸入者であるパートナーに対して貿易円滑化に関する恩恵を与えるものである。C-TPATの輸入者であるパートナーに対する具体的な恩恵には、以下のものが含まれる。

(1)ターゲティング・スコアが低減される可能性(より少ない検査)。

(2)迅速な検査の可能性(優先的検査)

C‐TPAT認定輸入者には、実現可能な範囲で、全ての輸送形態に対し、「優先的検査」を受けられる特権が与えられている。

(3)サプライチェーン・セキュリティ専門官の任命(税関国境保護局(CBP)内の直接のコンタクトポイント)。

(4)CBPが毎年主催するC-TPATサプライチェーン・セキュリティ・セミナーへの出席と、様々な訓練ワークショップへの参加。

(5)サプライチェーンに混乱が生じた場合に迅速な手続きを享受できる可能性(業務復旧)。

(6)C‐TPAT認定輸入者のために認定された物品を輸送するC-TPAT認定運送業者は、北部及び南部国境においてFAST(FreeandSecureTrade)プログラム専用レーンを使用できる。それにより、国境における待機時間が短縮。

(7)口座ベースの手続(例えば、毎月もしくは2ヶ月に1回の支払)を行う資格及び将来的にCBPプログラムに参加する資格。

(8)C‐TPAT参加企業は自らが米国の安全保障に貢献していると示すことで、企業イメージを向上することが可能になる。またセキュリティの向上は貨物の盗難及び従業員による盗難の減少、保険料の減額、より良い在庫管理、収益の増加といった利点がある。

b.セキュリティは民間企業にとって経費であるがそれは投資でもある。C‐TPATには、米国政府がそうした投資を認識し、SAFEPort法に従って恩恵を与えるメカニズムがある。C‐TPATプログラムでは、引き続き、参加者に与えられる追加的な恩恵の創設に努めるが、認定された恩恵は、同法に従って管理されなければならず、また実施前にはCBPの重層的な戦略と整合性がとれるよう十分に検討されなければならない。

3.米国向けコンテナ貨物100%検査要求{前18文字下線あり}

a.米国政府は、コンテナ貨物100%検査が国際貿易や経済活動に与え得る影響について日本国政府が深刻な懸念を有していることを認める。DHSは、コンテナ貨物100%検査に関する議会の要求を満たすためにも、港湾運営や物流への影響を最小限に留め、海事貨物セキュリティにおける現行のリスクマネージメントと重層的なアプローチと整合的な、現実的で責任ある方法で前進するよう、米国内外の通商パートナーや産業界関係者と緊密に協力する事を約束する。

b.DHSは検査機器を限られた数の追加的な場所に配置していくという絞り込まれた拡大戦略を進めていくこととしており、現在、将来的な配置のための機会を探っている。またDHSは現行の重層的なリスクに基づくアプローチに取って代わるものではなく、それを強化するために検査機器がスキャンしたデータを使用する考えである。

c.米国は、米国向け旅客機に搭載される航空貨物の100%保安検査について、海上貨物と同様に日本国政府が懸念を有していることを認めている。DHSは、この問題に対処するために、諸外国のパートナー及び国際機関と緊密に協力していく考えである。

B.酒類に関する規制{前10文字下線あり}

 米国政府は、カリフォルニア州における日本産しょうちゅうの小売に関する本対話における日本国政府の要望を、カリフォルニア州政府に対して伝えてきており、引き続き適切に伝えていく。

Ⅲ.領事事項{前6文字囲み線あり}

A.査証(ビザ)手続{前12文字下線あり}

1.電子渡航認証システム(ESTA)の円滑な導入{前22文字下線あり}

a.国土安全保障省と国務省は、ビザ免除プログラムによる渡航者に対し、電子渡航認証システム(ESTA)を通じて渡航許可を取得する必要性について周知する積極的な普及活動を行ってきている。こうした実施中の活動は、印刷媒体や渡航に関するウェブサイト、パンフレット等を通じた広報公告が含まれる。

b.ワシントンD.C.からの米国政府職員及び在日米国公館職員はESTAの要求事項について広報するための様々な普及活動を行ってきた。これまで、これらの取組は特に航空会社、旅行代理店、企業、メディアを対象としてきた。これらの取組には、2008年6月から2009年1月までだけでも、日本全国でのおよそ125に及ぶ普及活動が含まれている。米国政府は、ESTAの要求事項について、日本国民に周知する機会を引き続き追求していく。

 日本国政府も米国政府のESTAに関する普及活動を積極的に支援してきた。例えば、日本国政府は、ESTAを特集するラジオ、テレビ番組を主催した他、雑誌や、ウェブサイト、主要な日本の新聞に記事や政府広報を掲載した。

c.2008年8月以来、日本国民からの100万件を超える申請を含む、660万件以上のESTAを通じた渡航申請が処理されており、これらの普及活動が成功していることを示している。日本国民の渡航許可の割合は、99%を超えている。

d.ESTAプログラムの円滑な実施のために、外国人がESTAを通じて申請を行っていた場合、税関・国境警備局(CBP)、事前旅客情報システム(APIS)/「Advance Passenger Information System Quick Query」(AQQ)の体制を通じ、運送者が、適切に外国人の搭乗を許可又は拒否することができるように、運送者に対して、相互伝達システムを通じて情報を伝達する。

e.国土安全保障省は、旅行者のESTAステータスに関連したAPIS上の情報を、運送業者が受領することを可能とするような相互情報伝達能力の開発と実施について、民間航空会社や船舶運航会社と協力している。国土安全保障省は、実際のオペレーションによる影響を最小化すべく、APISを通じた出国前の登録とESTAの要求事項との間の統一性を確保するために、運送業界に積極的な普及活動を行っている。

2.米国国内におけるビザ更新手続きの再開‐ビザ更新手続きの効率化‐{前35文字下線あり}

a.米国国内におけるビザ更新は、2004年7月に安全保障、ロジスティクス及び米国法に関連する理由から停止された。米国政府は、本決定がビザ保持者に与える影響について日本国政府が提起してきている懸念を確認している。米国政府は米国国内においてビザの更新を再開する計画はないが、こうした日本国政府の懸念に対応するためのビザの国内更新以外の手続を提示してきており、また米国の法律及び政策と整合的な形でのビザの申請手続の継続的な改善に関し、日本国政府と議論を続けていく。

i.申請者は、国土安全保障省に対し、滞在延長を申請することにより、ビザの更新をせずに米国内の滞在を延長することが出来る。申請者は米国を発つ場合にのみ、米国外の米国大使館又は総領事館でビザを再申請することが必要となる。米国政府は、この米国法上の要請が、日本国民によるものを含め、ビジネス渡航に影響を与えるおそれがあるとの日本国政府の懸念を確認している。

ii.申請者は、自国において新規ビザを申請することが推奨されるが、ビザの面接を予約すれば、第三国においても申請できる。米国にEビザで滞在している日本人は、人員・場所が利用可能であることを条件に、メキシコにおける米国の公館でビザ再発給の申請をすることができる。

iii.今般、在日米国公館は、国務省の新しい政策を導入した。すなわち、10指すべての指紋採取を終え、普段居住している地域の在日米国公館に申請しているビザ申請適格者に対し、既得ビザの有効期限終了から12ヶ月以内に、既得ビザと同様の移民向けでない種類のビザを申請する場合には、ビザ申請を認定する大使館や総領事館に出向く必要なく新規ビザの申請を認めるという政策である。なお、申請者はビザ更新の書類を提出する際には物理的に日本に滞在していなければならない。

b.米国政府は、米国への非移民ビザを発給している在日米国公館が5公館あるなど、一人あたりにすると日本国民に対して提供されている領事サービスの水準は、世界で最も高いと認識している。在日米国大使館及び総領事館におけるビザ発給手続きは効率的であり、円滑である。東京における非移民ビザ発給のための面接予約の待機時間は、観光ビザ・商用ビザ及び学生ビザいずれの場合も1日から3日である。真に緊急を要する場合の面接予約についても、常に受け付けている。

c.Eビザの申請手続きを迅速化するために、米国政府は、米国内においてEビザ保持者を雇用する日本企業に対して、在日米国大使館に最新かつ正確な情報を提供するよう求める。

d.米国政府は、米国における日本国民に影響を与える問題について引き続き協議することを待望している。

3.ビザ発給及び有効期限について{前17文字下線あり}

a.企業内転勤(L)ビザの有効期限は、法律によって制限されている。L‐1ビザの有効期限は、申請者の予定される就労資格により、5年又は7年まで有効である。H‐1Bビザの有効期限と年間発給上限数は米国議会により制限されている。一般的に、H‐1B非移民ビザ保持者については、法律によって最長6年の滞在に制限されている。米国政府は、議会によってHビザの発給数に上限が付されていること及びHビザの有効期間の開始時期が固定されていることによる就労機会への影響について、日本国政府が懸念を有していることを確認している。

b.国土安全保障省(DHS)は、状況によっては、H‐1Bビザ保持者の6年という資格有効期限を1年追加することができる。

c.企業は、従業員がLビザ乃至はHビザで米国に到着した直後に、従業員を数年間に亘り米国に留めておくことを意図して、移民ビザを請求することが出来る。一般的に、米国法は、外国人が移民ビザの取得を目指しながら非移民ビザで米国において働くことを許容している。米国法は、合法的永住者に帯同し米国に滞在することを希望しているその家族は、米国において合法的滞在者の身分を申請すべきであるとしている。又は、合法的永住者は、滞在資格を放棄し、労働ビザを取得することが出来る。これらの制限は法律及び国土安全保障省規則に定められている。

d.L‐1ビザ申請者が、都合により被用者の氏名、役職名、給与を明記した企業概要を提出しなければならないという要件に対する日本国政府の要請に関し、米国政府は、日本国政府のプライバシー保護についての懸念を認識しており、また、領事官が、申請者が申請しているビザの種類の要件を満たすか否かを決定するために必要な追加的情報のみを要求していることを指摘している。

4.就労許可証(EAD)の有効期間伸長{前17文字下線あり}

a.米国移民局(USCIS)は、米国議会によって設定された期限内に手続きが完了するよう、引き続き可能な限りビザの手続きを迅速化に努力する。

b.今般、USCISは、正式な申請書を提出したにもかかわらず、移民ビザ番号を取得できないためにビザ資格を変更できない申請者に対して、2年間有効なEADの発行を始めた。

c.ビザ資格の変更を申請する外国人は非常に多くの割合で、EADカードが発行されなくとも、就労の継続を許可されている。例えば、L‐1ビザ又はH‐1Bビザを有する非移住者は、ビザ資格の変更申請がUSCISにおいて処理されていない間も、就労を継続するためにEADカードの取得は要求されていない。

d.USCISは、現在のEADカード発行手続きを再検討しており、2009年度末までに全てのケースにおいて手続き期間が6ヶ月以内とすべく努力している。

5.米国トランジットビザ免除措置の復活{前20文字下線あり}

a.2003年8月2日、国土安全保障省と国務省は、本来は米国への渡航であればビザ取得を求められる人々のためのトランジットビザ免除(TWOV)措置及びITIプログラムを停止した。

b.ESTAを通じて渡航許可を取得し、更なる手続を必要としない全てのビザ免除プログラム対象国の有資格者である国民は、ビザなしで米国に入国し、またトランジットすることができる。パスポートを所持している日本国民は、ビザなしで、米国をトランジットすることができるが、ESTA登録は必要となる。

c.ビザ免除プログラム非対象国の国民は、米国をトランジットするためにビザが必要とされ、機械読みとりが可能なビザの発給代金を支払うとともに、ビザ面接の予約をし、生体認証を提出することで、米国をトランジットするための有効なビザを取得しなければならない。

d.領事局は、全てのビザ面接予約の待機時間を30日以内にするとの目標を定めている。全ての米国大使館及び総領事館は、待機時間をオンラインで掲示することで、スケジュール上の便宜を図っている。在日米国公館では、ビザ面接予約の待機時間は1日〜3日であり、緊急のビザ面接予約を行う設備もある。

B.滞在許可証(I-94){前13文字下線あり}

1.米国政府は、滞在許可証(I-94)の有効期限の延長に関する日本国政府の要請を認識している。米国移民局(USCIS)は2006会計年度より、未処理事務除去を優先事項としてきており、未処理事務除去という目標の達成に向けて、大幅な進展を遂げてきている。

2.2003年の設立以降、USCISは、全体の50%分の申請書や給付についての電子ファイルを拡大してきている。USCISはまた、ウェブサイトを通じて、申請者が事案の現状についての情報へアクセスしやすいように改良してきた。USCISはこれらの取組を継続していく。

3.米国政府はまた、E-1とE-2のビザ保持者の大半は頻繁に米国外に渡航し、有効なビザを保持していれば米国への再入国に際し追加的に2年間の滞在期間の延長が認められるという点を指摘している。

C.出入国管理‐US‐VISIT Exit‐{前22文字下線あり}

1.国土安全保障省の米国出入国管理システム(US‐VISIT)は、出国手続きの間に旅行者から生体認証を採取することに関する代案を検証するために、2つの空港出口パイロット事業を行う予定である。US‐VISITは、こうしたパイロット事業を米国税関国境警備局(CBP)や米国運輸保安局(TSA)と調整する予定である。現時点において、民間組織の関与はない。

2.CBPとのパイロット事業は、デトロイト・メトロポリタン空港において2009年5月28日に始められる予定である。CBPは、携帯装置を用いて出発搭乗口において生体認証の出口データを採取する予定である。US‐VISITは、ソフトウェア、ハードウェア、技術、訓練を提供し、パイロット事業は約30日〜35日間行われる予定である。

3.TSAとのパイロット事業もまた、アトランタ国際空港において2009年5月28日に始められる予定である。TSAは、携帯装置を用いて、航空券自動改札機を過ぎたところに設置されたTSAの検問所で生体認証の出口データを採取する予定である。米国出入国管理システムは、ソフトウェア、ハードウェア、技術、訓練を提供し、パイロット事業は約30日〜35日間行われる予定である。

4.パイロットプロジェクトが完了した後、広範囲にわたる評価が完了する。評価の結果は、生体認証を用いた出国管理に関する決定の際に用いられる。最終規則の公表は2010年前半を予定している。米国政府は、この問題に関して、日本国政府と協議を続けていく。

D.運転免許証{前7文字下線あり}

1.Real ID法{前8文字下線あり}

a.米国政府は、Real ID身分証が求められることとなる「公的目的」を真に必要最低限のものに限定するという日本国政府の要請に留意する。議会によって法律に列挙されている、Real ID身分証が求められることとなる公的目的は、連邦政府施設への立ち入り、連邦規則に服する商用航空機への搭乗、原子力発電所への立ち入りに厳格に限定されている。国土安全保障省は、Real ID法の文言を同法の趣旨・目的に沿って解釈していく。

b.2008年1月1日、国土安全保障省は、2005年Real ID法における運転免許証及び身分証明書の要件実施に関する最終規則を発表した。最終規則は、2008年1月29日に官報に掲載された。国土安全保障省は、2007年5月に、Real ID法に関する日本国政府のコメントを受領した。規則制定過程において提出された21,000件のコメント全てが、最終規則起草の際、真剣に考慮された。

c.56の行政管轄区全てが、2009年12月31日までReal ID法適用の延期を認められている。

d.全米知事協会(NGA)は、Real ID法の条項を履行する際に、国土安全保障省に追加的な柔軟性を与える連邦法案を起草しており、日本国政府による懸念に応えることになるかもしれない。本法案は、議会では依然審議されていない。

2.州の運転免許証の取得と国際運転免許証の取扱いについて{前26文字下線あり}

a.米国政府は、米国の幾つかの州において、居住者となると直ぐに運転免許証の取得を求められることが在米日本人に与える影響についての日本国政府の懸念を理解している。米国政府は、国際運転免許証と関係する上記の問題に関して、「道路交通に関する条約」と整合的な形での解決策を模索するために日本国政府と協議を続けていく。米国政府は、こうした懸念を伝達するため、適切な州当局に働きかけていく。

b.米国社会保障庁(SSA)は、米国自動車管理者協会(AAMVA)及び米国運輸省と協力し、運転免許証申請者が社会保障番号(SSN)を取得する資格がない場合には、SSNの取得は運転免許証取得の要件とならないこととなった。

c.州によってはSSNを取得する資格を持つ者に対して、運転免許証申請にSSNを要求し続けている。この要請は個人にとっては煩雑なものであるが、そうした状況においてSSNを要求するか否かは各州に委ねられている。SSAの役割は、SSNの発給手続が効率的であることを確保し、また適格な申請者が短期間で、具体的には運転免許証取得に際し要請されている30〜60日の期間内でSSNを取得できるよう確保することである。

E.社会保障番号(SSN){前13文字下線あり}

1.社会保障番号の迅速な発給{前12文字下線あり}

a.米国社会保障庁(SSA)が適格な申請者にSSNカードを発行する前に、SSAは、国土安全保障省(DHS)に外国人の身分を証明するために提出された、すべての入国に関する書類を確認しなければならない。一般的に、SSAは外国人が米国に入国してから10日間以内に入国のステータスを確認することができている。

b.SSAと国土安全保障省は2009年2月に、状況によっては外国人の身分のより迅速な確認を可能とする、外国人滞在資格証明システム(SAVE)プログラムの強化版の使用を始めた。SSAと国土安全保障省は、引き続きシステムの改善を行っていくので、申請者は、外国人照合手続に要する時間も引き続き改善していくと期待することができる。

2.扶養家族への社会保障番号発給{前14文字下線あり}

a.SSAは、外国人が国土安全保障省の労働許可を有している場合や、労働に従事していないことの正当な理由がある場合には、SSNの取得資格を有すると認識している。標準化された申請処理手続作業及び申請の管理プロセスを確保するため、SSAフィールド・オフィスの職員は、非移民によるSSNカード申請の対処法についての再教育訓練等を引き続き受講していく。

b.場合によっては、個人の就労許可証(EAD)の代わりに、労働許可を受けた者との婚姻関係の証明によることも可能である。日本では、戸籍謄本が婚姻を証明するために用いられる正式な書式であるので、SSAは、日本の戸籍謄本を婚姻関係の証明として受理している。SSAは一般的に、日本の大使館・総領事館において発行される日本の戸籍謄本の翻訳を受理している。

c.SSAが一時的な外国人労働者の扶養児童にSSNを割り当てるかどうかは、かかる扶養家族が国土安全保障省からの労働許可を所持しているかに基づく。E‐1、E‐2及びL‐1の扶養児童は、国土安全保障省の規則により米国において労働することはできない。彼らが、非労働者に与えられるSSNを取得できるのは非常に限られたケースのみである。

Ⅳ.特許制度{前6文字囲み線あり}

 日米両国政府は、効果的かつ実体的な特許法の調和に向け相互に支援することを再確認する。米国政府は、日本国政府との議論を喜んで継続し、この分野における日本側の要望を考慮していく。米国政府は、特許問題に関して米国議会との協力を適切に継続していく。

A.先発明主義{前7文字下線あり}

 米国政府は、自国の先発明主義が独特の制度であることを認識している。先願主義はほとんどの国で採用されているが、米国内では依然として議論がある論点である。米国特許法を先発明主義から先願主義へと変更する法案(H.R.1260、S.515、及びS.610)が、現在米国上下両院で審議されている。上院司法委員会は、S.515の上院本会議における審議を承認した。一方、下院はH.R.1260について公聴会を開催したが、それ以上の行動は行っていない。米国政府は、審議の最新状況につき、日本国政府にとって適切な形で継続的に情報提供を行う。こうした法改正への努力に加え、米国特許商標庁(USPTO)は、日本及び他の世界知的所有権機関(WIPO)の先進国Bグループの国々と、実体特許法条約や先願主義の観点から起草された関連規定草案について、制度調和の議論を続ける姿勢を保つ。

B.早期公開制度{前8文字下線あり}

 現在米国上下両院で審議されている法案(上記で述べたもの)はこの問題を扱っていない。しかし、米国は1999年に、特許出願公開を規定する法律106-113を成立させた。この法律は、特定の条件下において特許出願人に非公開の請求を許容しているものの、全出願の約93%は公開されている。この法律が成立して以降、米国議会はこの公開の例外の削除を検討してきたが、そのような立法の取組は成功していない。米国政府はこの公開の例外に関する日本国政府の懸念を認識し、議論を継続する。

C.再審査制度{前7文字下線あり}

 米国政府は、査定系及び当事者系の再審査では、第三者請求人の参加が制限され、特定の特許無効事由しか適用されないことを認識する。上程されている法案(H.R.1260、S.515、及びS.610)の新条項は、再審査制度の変更と共に、付与後レビューの対象を拡大する付与後異議制度を導入するものである。

D.発明の単一性を満たさないことによる限定要求{前23文字下線あり}

 米国政府は、特許協力条約(PCT)以外の出願に適用される発明の単一性の限定基準が、PCT出願に適用されるものと異なることを認識する。米国政府は、これら基準の相違についての検討を継続するが、米国の限定基準とPCTの単一性基準のいずれかの適用を受けるかに当たり、出願人は、USPTOへの出願を、国内出願とするか、PCT経由にするかの選択肢を有することを付言する。

E.ヒルマー・ドクトリン及び特許法第102(e)条{前27文字下線あり}

 米国政府は、日本国政府がヒルマー・ドクトリン及び特許法第102(e)条に関する懸念を有していることを認識している。また、米国上下両院に上程された法案が、日本国政府の視点から見て好意的にこの問題を扱っていることが留意されるべきである。更に、USPTOは、この問題を、日本及び他のWIPOの先進国Bグループの国々との特許法調和に向けた協議において議論し続ける姿勢を保つ。

F.先行技術の情報開示要求{前13文字下線あり}

 米国政府は、USPTOの情報開示義務(IDS)に関する日本国政府の懸念を認識し、検討を継続する。米国政府は日本国政府の見解に留意し、一方で出願人にIDS義務を課すことと、他方でより高品質、効果的、効率的な審査プロセスを促進することとのバランスの関係から、当該見解についての検討を継続する。

G.植物特許{前6文字下線あり}

 米国政府は、植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV条約)に基づいた新規性要件と、植物特許に関する米国内法に基づいた新規性要件との間の対応について、日本国政府より表明された懸念を認識する。ここ数年の間に、こうした懸念に対応する幾つかの法案が米国上下両院に提出されたが、成立したものはない。現在、米国特許商標庁は、本件に関する審理中の法案があるとは承知していない。米国政府はこの事案について、日本国政府より表明された懸念に留意し、引き続き検討していく。

Ⅴ.政府調達{前6文字囲み線あり}

 米国政府は、WTOの政府調達協定(GPA)の対象となる調達に対しては、1933年連邦バイ・アメリカン法(BAA)を含む、内外差別的な規定の適用を控えている。米国政府は、GPAの対象とならない調達にのみバイ・アメリカンの優先性を適用している。

A.安全で責任のある柔軟かつ効率的な交通標準化法(利用者のためのレガシー){前39文字下線あり}

1.「安全で責任のある柔軟かつ効率的な交通標準化法(利用者のためのレガシー)」(SAFETEA‐LU)は、2005〜2009年の高速道路及び交通機関に関する連邦の陸上運輸計画を承認し、高速道路及び交通機関への補助金に関する一定の制限の適用を継続させた。そのようなプロジェクトがGPAの適用基準額を上回る場合は、GPA締約国の供給業者は、入札に参加することができる。しかしGPAの附属書Iの米国の付表2の注釈5には、「本協定は、大量輸送及び高速道路プロジェクトのための連邦資金に関連した制限には適用されない」と記載されている。したがって米国政府は、それらのプロジェクトのための連邦資金に関連した「バイ・アメリカ」の制限については、その適用を控えることはせず、よって、その制限は引き続き適用されている。米国政府は、GPAが適用される調達において、GPAの義務を引き続き遵守していく。米国政府は、日本国政府が「バイ・アメリカ」に関して懸念を有していること、及び米国の大量輸送プロジェクトへの参入に関心を持ち続けていることに留意する。

2.連邦運輸省公共交通局(FTA)により、公益免除を含む「バイ・アメリカ」制限の免除の要求に応じて発表された免除決定は、以下のウェブサイトから見ることができる(http://www.fta.dot.gov/laws/leg_reg_598.html)。これらの免除の決定は、1999年8月20日から現在に至るまで、SAFETEA‐LU及びそれ以前の法律の下で実施されたものであり、<1>国内で入手が不可能な場合、<2>国産品の使用による経費増が25%を超える場合、及び<3>公益免除に相当する場合、に基づく決定が含まれている。過去にFTAは、例えば、納入日程を早めるため、安全や性能の試験を迅速に行うため、海外において先端的・革新的技術が認められたため、といった理由で、公益免除を適用したことがある。海外企業も含め、関心のあるいかなる者もFTAに対し<3>の公益免除を請願することができる。同様に、<1>の国内で入手が不可能な場合についても、いかなる者も請願可能であるが、<2>のコスト要件については、補助金受領者のみが請願できる。FTAは公益免除に関する決定案について官報に掲載し、最長7日間コメントを受け付けている。関心のあるいかなる者も、以下のウェブサイトに電子的にコメントを提出することが可能になっている(http://www.regulaions.gov)。FTAのウェブサイトに掲載された免除の決定は、過去の免除要求がどのように扱われたかを示している。しかしながら、個々の免除要求は、それぞれの場合に応じて考慮されるため、将来の免除要求が認められるかどうかを確実性を持って予測することはできない。

3.2009年米国再生・再投資法(ARRA)による補助金を使用して高速道路や輸送に係る連邦政府の陸上運輸計画が実施される場合、ARRAのTITleⅩⅡに基づき、ARRAの「バイ・アメリカン」条項ではなく、SAFETEA‐LUの「バイ・アメリカ」条項が適用されることになる。

B.米軍基地建設関連法{前11文字下線あり}

1.国防総省との契約における資材等搬入のための米国船籍使用義務{前29文字下線あり}

a.国防総省との契約における資材等の搬入に米国船籍の使用を義務付ける法令については(DFARS247.572)、国防総省の全ての契約におけるそうした資材等の輸送について、1904年貨物留保法が適用される。

b.米国政府は、日本国政府から提起された懸念を理解する。米国政府は、米国船籍使用の義務は全ての者に対して無差別であり、かつ義務は全ての政府の元請業者が平等な機会を得る形で適用されることを確認する。ここには、米国、日本、WTO政府調達協定加盟国等が含まれる。結果として、米国、日本、WTO政府調達協定加盟国等の業者は、同様に米国船籍の船荷主を利用することができる。

2.履行保証、支払保証義務{前11文字下線あり}

a.連邦調達規則(FAR)は、連邦政府の発注する工事に対する契約履行保証と支払保証のため、受注業者に対して、契約金額の100%を保証(ボンド)として積むことを義務付けている(FAR28.1)。当該義務は、外国の業者を含む全ての受注業者に対して課されるものであり、内外無差別である。この点に関し、州、コロンビア特別区、準州若しくは領土の法律に基づき設立された法人、例えば、日本の保険会社の米国法人子会社等が発行する履行保証については、ボンド発行に関する米国財務基準に基づき、当局から認定されれば、有効である(31CFR223.5)。また、現金、取消不能信用状や米国債は、契約履行保証及び支払保証に代わるものとして、認められている。

b.国防総省は、契約履行保証と支払保証として要求される金額を、契約金額の100%から引き下げるとの日本側の要望を検討した。米国政府は、この義務が企業間の競争を阻害するという兆候はないことを説明し、また、100%の契約履行保証及び支払保証義務は全ての者に対して無差別であることを確認した。

C.公共工事の工事契約における物価変動{前17文字下線あり}

 米国政府は、連邦調達規則(FAR)36.207(c)にあるとおり、プライス・エスカレーション条項は公共事業の契約において利用可能であり、連邦政府はFAR16.203‐1からFAR16.203‐4.の規定に従って、経済価格調整条項を含む固定価格建設契約を結ぶことも可能であることに留意する。米国政府は、日本国政府に対し、プライス・エスカレーション条項を利用する際のプロセス及びその正当性について詳細に説明し、また、契約担当官が市況を勘案するとともに、調達の過程で開催される説明会を通じてしばしば産業界の意見を聴取・勘案していることを説明した。

Ⅳ.輸出関連規制{前8文字囲み線あり}

A.再輸出規制{前7文字下線あり}

1.米国の再輸出規制は全ての国に対して適用されており、同規制の策定と実施を定める米国の法律においては、いかなる特定の国にもその適用除外を認めていない。しかしながら、日本国政府から提起された懸念に応えるため、米国商務省産業安全保障局(以下「BIS」という。)は、引き続きこの分野において協力する方法を模索していくこととしており、現在までに以下のような措置を行っている。

a.BISのウェブサイトにおいて再輸出規制に関するガイダンスを掲載。

b.新しいBISのオンライントレーニングルーム経由でアクセス可能な、再輸出規制に関するウェブサイト上のセミナーを開発。

c.米国再輸出規制に焦点を当てたセミナーを日本において開催。

d.米国からの輸出及び再輸出に係る規制に関する電話又はEメールでの質問に対応する輸出相談員を米国の東海岸及び西海岸に配置。

2.品目の分類に関する情報又は輸出管理品目分類番号(以下「ECCN」という。)を、顧客に対して提供するように米国企業に求める法律は、米国には存在しない。さらに、BISは、その設置法に基づき、個別企業の品目の分類に関する情報を機密として扱わなければならず、これらの情報を公開又は開示することは認められていないとする法律意見書を受領した。したがって、BISは企業の品目の分類に関する情報を公開することは禁止されている。しかしながら、BISとしては、米国法の範囲内において、米国の輸出者が品目の分類に関する情報を共有できる別の方法を確立した。すなわち、

a.BISは、品目の分類に関するウェブページを作成するとともに、自身のHPや輸出管理の接触点からアクセス可能な品目の分類に関する情報を持つ企業に対して、同様の情報をBISのウェブページにも掲載することを要請する文書を発出した。

b.この対応策は、ECCN番号を公開するよりも広域な効果がある。なぜなら、この方法であれば、公開情報の対象が、BISが公式の分類を行った製品だけに限られないし、情報の内容も公式の品目分類のみならず、例えば、輸出管理の接触点等の情報も含められるからである。

c.BISは、米国の輸出者に対し、品目の分類に関する情報を提供するこうした手法に参加するよう推奨していく予定である。

d.BISは、米国の輸出者に対し、良質のカスタマーサービスとして再輸出者に対してECCN番号を提供するよう常に呼びかけている。このため、もし再輸出者が米国輸出者の情報をウェブサイトにおいて発見できないときには、BISは当該再輸出者に対し、直接輸出者に接触して必要な分類情報を要求するように推奨している。

3.米国政府は、日本国政府から提起された問題を、引き続き評価し議論していく。

Ⅶ.基準・規格{前7文字囲み線あり}

A.メートル法{前7文字下線あり}

1.米国国立標準・技術研究所(NIST)は、米国におけるメートル法の使用の重要性を再確認し、継続して努力する意図をもって、米国内の取引及び商業におけるメートル法の自主的な採用及びその利益を積極的に促進する。ウェブサイトやその他のツールを通じた情報提供やアウトリーチ活動を実施するため民間団体である米国メートル法協会、及びその他のパートナーと協力し、NISTは、業界及び国民の啓発を目的として、毎年膨大な数の問い合わせに対応している。

2.米国の州の96%において、自州が管轄する地域における包装にメートル法の単位を使用することが許可されている。その対象の製品としては、自動車用付属品、衣料品、アパレル、及び、家庭用家具等が含まれている。2つの州では、今現在、メートル法のラベル表示が法的に禁止されている。そのうち、ニューヨーク州では、メートル法のラベル表示を認めるための法規制の手続きに取り組んでいる。NISTは、他の団体とともに、残るアラバマ州に対し、メートル法によるラベル表示の法的禁止が解禁されるよう引き続き働きかけていく。

3.連邦公正包装及び表示法(FPLA)の改正は、NISTのメートル法プログラムの優先事項である。メートル法によるラベル表示を認める方向で法律を修正しようとする議会の行動を米国産業界が支持するように、NISTは引き続き努力していく。

4.米国市場に新技術が導入されるのに伴って、メートル法使用の拡大が予想される。例えば、商業用水素測定基準の開発のための米国国家作業部会における燃料仕様小委員会は、商用販売及び道路標識において、メートル単位(キログラム及びパスカル)に基づく水素燃料販売方法を提案した。これが実施された場合、米国のこのやり方は、世界の水素市場と整合的なものとなるだろう。

5.米国の医療機関においては、患者の安全を脅かすミスの確率をより低くし、治療の質を向上させるため、治療においてSI(国際単位系)に統一する動きが拡大している。2008年、共同委員会では、医療ミスを少なくするため、小児患者の体重測定をキログラムで行うよう、加盟団体に対して勧告を出した。

6.NISTは、引き続き、日本国政府と意見及び情報の交換を行っていく所存であり、必要な場合に、また可能な範囲で、個々の問題について日本国政府と協働していく。

B.有機農産物の同等性審査{前13文字下線あり}

 2009年4月15日、米国政府は、日本の有機認定手続きの認証が公式に終了したとする書簡を日本国政府に提出した。米国政府は、日本国政府が有機農産物における化学物質残留のゼロトレランスを公式に廃止した場合、日本の有機JAS規格と米国の有機プログラムとの同等性を認定し得るとの見解を表明した。

C.日本産うんしゅうみかんの検疫条件の緩和{前21文字下線あり}

 日本国政府が輸入条件の緩和を要請していることに関し、米国政府は、条件緩和は現在の日本産うんしゅうみかんに対する病害虫危険度評価の見直しに基づき行われるべきであるとの理解を日本国政府と共有する。米国政府は、現在、病害虫危険度解析を再評価するために受け取った情報及び技術的資料を検討中であり、できるだけすみやかにその結果を日本国政府と共有する。

Ⅷ.州別規制の統一化{前10文字囲み線あり}

A.環境規制{前6文字下線あり}

1.米国環境保護庁(EPA)は、電気製品のリサイクルに関する環境規制の調和についての日本国政府の懸念に留意しており、より一層の努力をする意図をもって他の機関と協力し、以下の措置をとってきている。

2.EPAは、類似する要素が多くあるものの、州毎に統一性なく増加している電気電子機器廃棄物法によりもたらされる問題について認識している。「National Electronics Recycling Infrastructure Clearinghouse」(NERIC)は、電子機器リサイクルの問題に関するいくつかの各州のグループを代表するNGOである「National Centerfor Electronics Recycling」(NCER)の主導によって設立された。今のところ、公式なものとはなっていないが、将来的にはNERICが正式なものとなることを期待して、EPAは初期の資金を提供した。もし正式なものとなれば、NERICは各州のイニシアティブとなり、自発的な参加を形態とする組織となる(つまり、連邦政府の認可が必要とされるというものではない)。

3.環境規制の調和に関して、米国政府は、州政府の担当者が規制の調和に向けて互いに協力するため、2ヶ月毎に会合を開催していることを説明した。

4.全ての州の法律に共通するテーマが浮かび上がってきており、NCERはこれらの要求を標準化する支援をしている。例えば、電子機器製造業者が、電気電子機器廃棄物法を施行している各州に登録する際、中心となる1カ所で行えるよう、NERICを通じて整備されてきている。

5.個別産業の製品の規格や関連する規制の情報を取りまとめることについての日本側の要望に関しては、NERICのウェブサイト(http://www.ecyclingresource.org/ContentPage.aspx?PageID=1)には、多くの情報を掲載しており、さらに参照しやすくするためにそれらの情報を統合していく努力を継続する。例えば、コンプライアンス・カレンダーのリンク

(http://www.ecyclingresource.org/ComplianceCalendar/ndex.aspx)は、州毎に製造業者が要求される義務・条件の実施期限を、わかりやすい一覧表にして提供している。

Ⅸ.域外適用{前6文字囲み線あり}

A.イラン制裁法{前8文字下線あり}

 米国政府は依然として、イラン政府が検証可能な形でのウラン濃縮停止を履行せず、国際義務を遵守せずにいることを懸念している。米国政府は、イラン制裁法(かつてのイラン・リビア制裁法)はイラン石油部門に対する投資に反対する米国の継続的な政策を反映したものであり、また、法の規定は同法の対象とされている活動を行った者に対して適用されるのであり、国籍による区別は無いことを繰り返し述べている。米国政府は、イラン拡散対抗法のような新しい法案が検討されていることに対する日本国政府の懸念を共有する。このような立法は包括的な外交政策を行う大統領の裁量を制限し得るものであり、行政府はその立場を議会に対して明確にしている。同法が米国の国際法上の義務と整合的な形で適用されるべきであるとの問題意識を米国議会が有していることは、同法の立法経緯が示している。米国政府は、日本国政府と引き続き対話を行うことを歓迎する。

B.1996年キューバの自由と民主主義連帯法(ヘルムズ・バートン法){前37文字下線あり}

1.米国政府は、1996年キューバの自由と民主主義連帯法に関する日本国政府の懸念を理解する。日本国政府も言及しているとおり、同法の制定以降、大統領は、同法第3章(没収財産に関する取引を行った者に対し、民事訴訟を提起することを認める)の実施停止が米国の国益にとって必要であり、キューバの民主主義への移行を促進するとの認識に基づき、第3章の規定を実施する権利の停止を6か月ごとに延長してきている。停止期間は同法306条の規定で定められており、一度に6か月を超える停止を行うことはできない。

2.直近では、2009年1月16日に、大統領が同法に則り同法第3章の実施停止期間を2009年2月1日から更に6か月延長する旨の書簡を議会に発出した。

X.競争政策{前6文字囲み線あり}

A.米国連邦反トラスト当局は、米国の消費者の利益のために競争を促進するという観点から、連邦反トラスト法の適用除外・免除の適切な範囲について見解を表明する機会を引き続き求めていく。

B.さらに、米国反トラスト当局は、引き続き、州の機関に対し、適用除外・免除に関する提案など、未実施の州政府措置が競争に与える潜在的な影響について助言を行う。例えば、

1.2009年3月18日、連邦取引委員会の職員は、ミネソタ州議会に対し、書面によってヘルスケアサービス事業者による価格カルテルや同サービスの購入者との取引条件に係る共同交渉等の一定の行為を連邦及び州反トラスト法の適用除外とする法案に反対する意見を提出した。同委員会の職員は、法案には、価格カルテルを適用除外とすることから生ずる有害な効果を阻止することのできる規定がないとコメントしている。さらに、同法案によると、ヘルスケア消費者から反トラスト法による保護と競争による利益が奪われ、患者、雇用者、保険者や連邦、州、地域のヘルスケア・プログラムが、医療により多くの費用を払うこととなる。同委員会のスタッフは、反トラスト法適用除外は、ヘルスケアの質を改善するためには不必要なものであるとも述べている。

2.2008年9月15日、司法省及び連邦取引委員会は、イリノイ州のHealth Planning改革のタスク・フォースに対し、新たな病院の認可に当たって事前に必要性証明書(CON)を要求するイリノイ州の法律に関して、共同意見書を提出した。米国反トラスト当局は、ヘルスケア市場における競争の利益とCONに係る法律が提起する重大な反競争的危険を指摘するとともに、当該法律の廃止の適否について同タスク・フォースが真剣に検討することを勧告した。

3.2009年4月17日、司法省は、モンタナ州最高裁に対し、一定の法律サービスに関して非弁護士が弁護士と競争することを過度に禁止することによりモンタナ州の消費者の支払う対価を増加させ得るような形式で非弁活動を定義する規則案について、意見を提出した。司法省は、モンタナ州最高裁が、特別な法律的技術が必要とされる状況、及び弁護士・依頼者関係が認められる場合に非弁活動を限定することにより、そのような競争に対する不必要な制限を避けるよう勧告した。

ⅩⅠ.司法制度・法律サービス{前15文字囲み線あり}

A.バージニア最高裁判所が採用した外国法律コンサルタント規則は、2009年1月1日に施行された。現在30の管轄区が外国法律コンサルタント規則を採用しており、それらの管轄区を合わせると米国内の法律サービスの総業務の88パーセントを超えている。

B.米国政府は、米国の21の州でいまだ外国法律コンサルタント制度がないことに関する日本国政府の懸念を確認するとともに、引き続き、米国法律家協会(ABA)において、外国法律コンサルタントの資格承認及びその実務のためのABAモデル規則に基づく外国法律コンサルタント制度の採用を全ての州に奨励することを目的として各州の法律家協会及び最高裁判所との間で活発な対話を行っていくことについて、これをABAに奨励するための積極的な措置を講じていく。

XⅡ.海運{前5文字囲み線あり}

A.1920年商船法及び日本の港湾に関する報告要求{前26文字下線あり}

1.日米両国政府は1920年商船法に関して意見交換を行った。米国政府は本件についての日本国政府の懸念に留意するとともに、日本の港湾状況について引き続き懸念を示した。

2.米国政府は、様々な情報源から日本の港湾状況に関する情報を入手することに関心がある旨再度伝えた。このような情報により、連邦海事委員会(FMC)は日米船社に課している報告要求の手続の撤廃又は修正を検討し得ることとなる。例えば、米国政府は、FMCが現在も行っている日本の港湾状況のレビューに関連して日本国政府が2006年に改正された日本の法律の翻訳につき、政府間レベルで提供することを検討したと理解している。米国政府は、現在日本船社に課されているFMCによるレビューのための翻訳資料提供要求に代わり得るものとして、2006年改正法の翻訳のFMCへの提供を期待する。そのような政府間の調整が日本船社に対する報告要求の緩和又は撤廃につながることとなる。

B.1998年外航海運改革法(1920年商船法第19条の改正){前31文字下線あり}

 米国政府は日本国政府に対し、1920年商船法第19条の1998年の改正はFMCに対し既に与えられている権限を明確にしたものであることを説明した。米国政府はこの問題に係る日本国政府の引き続きの懸念に対し留意した。

C.新運航補助制度{前9文字下線あり}

 日米両国政府はこの国家安全保障プログラムに関して意見交換を行った。米国政府は補助対象船舶リスト及びこのプログラムに実質的な影響を与える他の変更について日本国政府に対し引き続き情報提供することにつき再確認した。新運航補助制度は透明性のある制度であり、運航補助制度に関するすべての情報は以下の米国運輸省海運局のウェブサイトで公開されている(http://www.marad.dot.gov/programs/index.html)。

D.各種貨物留保措置{前10文字下線あり}

 日米両国政府は、アラスカ北岸産出原油の輸送を米国籍船のみに認めることとした法律を含む各種貨物留保措置について意見交換を行った。米国政府は、貨物留保等の措置が国際海運市場における自由かつ公正な競争の条件を歪めるおそれがあるとの日本国政府の意見に留意した。米国政府は、当該措置は、外洋航海を伴う米国の対外貿易全体の1パーセントに満たない影響しか及ぼさず、また、米国船隊に留めるためのインセンティブを船舶に与えることにより、米国商船業界に対し有益な効果をもたらしていると説明した。

 アラスカ北岸産出原油輸送を米国籍船のみに認めるとする法律に関しては、米国政府は、2000年4月以降、アラスカ原油の輸出はないと説明した。それ以降は、アラスカ原油は、すべて精製及び国内消費のため米国西海岸市場へ輸送されている。

E.カリフォルニア:コンテナ課徴金制度/Clean Truck Program{前39文字下線あり}

1.コンテナ課徴金制度(Container Fee Program){前32文字下線あり}

 1TEUあたり30ドルの課徴金を課す法案(SB974)は、2008年にカリフォルニア州知事により否認された。現時点でこの法案が再提出される動きはない。

2.Clean Truck Program(CTP){前26文字下線あり}

 米国政府は、ロサンゼルス港及びロングビーチ港におけるClean Truck Programについての日本国政府の懸念を共有する。カリフォルニア中央地区連邦地方裁判所は、アメリカ・トラック協会の提訴により、2009年4月28日に港に対して差し止め命令を出した。この差し止め命令は、特に、港に対し、認可運送会社に雇用運転手を使ったコンテナ運搬を要求することを禁じている。言い換えれば、この差し止め命令は、港のトラック運送業界が引き続き独立自営のトラック運送業者を利用することを認めているということである。FMCは、1984年の米海運法に基づき、コロンビア特別区連邦地方裁判所に対し、雇用運転手使用の強制を禁止するよう、別途行動を始めた。このFMCによる連邦地方裁判所での訴訟はいまだ係争中である。

XⅢ.商品市場{前7文字囲み線あり}

A.商品先物市場の透明性向上{前14文字下線あり}

 2008年10月31日、米国商品先物取引委員会(CFTC)は、日本国経済産業省(METI)及び農林水産省(MAFF)と協力及び協働を強化するための枠組み合意に署名した。本合意によって、商品デリバティブ市場において共通の関心事項となる規制に関する政策及び動向についての情報交換、国境を越えて行われる商品デリバティブ取引について情報交換を行う既存の協力体制の改善、規制に関する政策及び市場問題についての定期協議の実施などを含む、共通の関心事項に関する対話強化のための枠組みが整備される。

XⅣ.金融{前5文字囲み線あり}

A.保険業{前5文字下線あり}

1.保険の州別規制の統一化{前11文字下線あり}

a.米国政府は、米国に拠点を有する日系保険会社に対する保険の州別規制の現在のアプローチが、引き続き日本国政府の懸念の要因となっているとの日本国政府の見解を承知しており、また、日本国政府が連邦監督制度の改革に関する米国政府のイニシアティブに引き続き関心を有しているということを確認している。

b.2009年6月17日に、米国財務省は金融規制・監督の近代化に向けた改革案を発表した。当該金融規制改革案は、柔軟かつ有効であり、金融システムを保護しつつ、金融イノベーションの利益の確保を可能とするような、より安定した規制体制の創設を目指している。本改革案は、全米保険局(Office of National Insurance)を米国財務省内に設置することを求めている。米国政府は、複数の州において営業している日系保険会社の懸念への対応や保険グループに対するプルデンシャル監督の強化のため、本改革案で提案されている新しい規制措置を米国が採用することを日本国政府が期待していることについて留意する。

c.全米保険監督当局協会(NAIC)は、免許と規制のプロセスを調和させることの利点を認識している。州毎の実務を調和させ、規制基準と保険商品のプロセスを合理化するためのNAICの取組は引き続き進展している。保険商品認可に関する州際協定(Compact)は、生命保険のような資産担保型の保険商品の米国内における申請、審査、承認プロセスの効率性と有効性を向上させるための、州別規制近代化に向けた重要なイニシアティブである。協定により新たに合理化されたプロセスは、強力な消費者保護が組み込まれた全国的な商品基準の適用によって統一性を高めることで、保険業界のマーケットアクセスを迅速化する。協定は2007年6月に運用が開始され、2009年5月時点で35の州議会及びプエルトリコが協定を採択している。しかし、米国政府は州際協定が生命保険に限定されており、全ての州及び保険業者の事業のすべての範囲をカバーしていないことを認識している。

2.再保険担保要件{前7文字下線あり}

 米国政府は、再保険担保要件に関して日本国政府が引き続き懸念を有していることについて留意する。全米保険監督当局協会(NAIC)は再保険規制の近代化へ向けた枠組みの導入に向け、前進を続けている。もし当該枠組みが実施された場合、最上位に格付けされた非米国の再保険業者に対する担保要件は免除され、Tier2の非米国の再保険業者については90%、またTier3の非米国の再保険業者については80%担保要件が削減されることが提案されている。プルデンシャル上の理由により、Tier2及びTier3の会社についてはそれぞれ10%又は20%の担保の保持が引き続き必要となる。しかしながら、当該枠組みの一環として、NAICはTier2及びTier3の非米国の再保険業者に対する担保要件に関して実施から2年後の見直しを検討するが、これは米国の管轄外への米国保険会社の市場アクセスの進展について考慮した上で、当該担保要件が適切かどうかを判断するためのものである。米国政府は、米国政府の再保険担保要件及び将来的な改正がWTO上の約束と整合的であることを引き続き確保する。

3.財産信託義務{前6文字下線あり}

 米国政府は、財産信託義務に関する日本国政府の懸念について留意する。NAICは、引き続き、日本損害保険協会と当該問題について議論し、更なる調査を行う。米国政府は、財産信託義務に関するNAICと日本国政府との間の連絡を適切に促進する。

B.サムライ債{前7文字下線あり}

 米国政府は、技術と金融市場の発展を考慮し、米国外向け記名債権に関するルール(FTR制度)の見直しを行った。当該ルールでは一定の条件を満たす場合、国外市場向け記名債券の利子の支払いに対する税の控除及び源泉徴収義務はないと規定している。FTR制度では米国内国歳入庁(IRS)への情報報告又は税務報告がなくても記名式債券の発行が許可されるため、本制度は「適格仲介者」制度において必要とされている書類提出・報告義務の進展とは矛盾していた。その結果、米国政府は2006年以降に発行された債券についてFTR制度を適用しないこととしたが、2007年から2008年までの間に発行された満期日が発行日から10年を超えない一部の債券に対しては、移行期間が適用される。当該移行期間は延長されなかった。

XV.電気通信{前7文字囲み線あり}

A.無線機器の米国輸入時の提出書類の記載要件{前22文字下線あり}

 連邦通信委員会(FCC)は、特定の無線機器を米国に輸入する際に添付しなければならない、様式740の見直しを行っている。FCCは日本の関係者を含む様々な利害関係者からの意見を受け取っており、それらのコメントを考慮し、様式の見直しを行う予定である。

B.商用衛星に係る輸出許可及び技術支援協定等の処理手続{前28文字下線あり}

1.2008年1月22日、米国政府の国防機器、サービス及び技術情報の輸出許可の迅速化及び改善を目的とする一連の改革を実施するための輸出管理令が公布された。この改革は、輸出許可の裁定のための追加的な予算及び資源の増加並びに追加期間を要する強力な理由がない限り米国政府が国防貿易輸出許可の申請について米国政府による判断を60日以内に求める新たなガイドラインを定めることを含む。

2.大統領令は、国務省における輸出許可及び技術支援協定(TAA)申請を裁定するにあたって著しい改善をもたらした。2008年2月以降、輸出許可申請の平均処理期間は、16日平均で安定しており、その前の1年間の平均処理期間から50%以上改善している。許可手続きにおけるその他の技術的及び手続的な改善のための作業は継続している。

3.輸出許可規制に係る全ての変更は官報に掲載されており、主要な変更についてはパブリック・コメントを受け付けている。

4.国務省は、利害関係者が、平均処理期間、直近の規制変更及び他の業務に関連する様々な事項に関する最新情報を入手可能なウェブサイトを以下に開設している(www.pmddtc.state.gov)。

C.ケーブルテレビサービスのためのナビゲーション機器市場における競争{前39文字下線あり}

1.米国政府は、ナビゲーション機器(セットトップボックス)市場における選択を確保する観点から、連邦通信委員会が連邦通信法第629条をどのように執行するのかについて、日本国政府と対話を継続する。FCCは、1998年に、ケーブル事業者が、条件付アクセス及び他の機能の両方を一つの統合機器において実行する新しいナビゲーション機器(例セットトップボックス)をサービスに導入不可とする期日を策定する「統合の禁止」を、また2003年に、片方向デジタルケーブル機器の条件を策定する「プラグアンドプレイオーダー」を採択することにより、本条文の実施を開始した。

2.2007年6月、FCCは、双方向ナビゲーション機器の供給のための競争市場を促進する合理的な技術的条件を定める規則策定を開始した。ケーブルと消費者家電業界との交渉の結果に基づき、2009年5月現在、18の主要なIT・消費者家電企業がナビゲーション機器の双方向適合性のための技術的条件について合意に達した。

3.このような進展に鑑み、FCCは技術的条件を課するための介入をしていないが、第629条に基づき、ナビゲーション機器のための競争的市場の進展を確保するため、市場における進展を引き続き監視していく。

D.高度情報通信インフラの整備に向けた政策課題{前23文字下線あり}

1.2009年2月17日、米国議会は、国家電気通信情報庁(NTIA)の47億ドルのブロードバンド技術機会プログラム(BTOP)の設置など70億ドルを超えるブロードバンドサービス促進のための予算を含んだ米国再生・再投資法を可決した。BTOPの目的には、未提供地域及び既提供地域におけるブロードバンド普及の促進及び雇用創出又は重要な公共の利益を提供するような戦略的機関がブロードバンド接続を確保することを含む。NTIAは2009年秋までにそのプログラムの下で一回目の授与を行うことを想定する。

2.米国再生・再投資法の委員会報告書は、「未提供地域」、「既提供地域」及び「ブロードバンド」の定義について、NTIAはFCCと協議すべきであると述べている。同法はまた、NTIAがFCCと協議の上、補助金交付の契約条件として、少なくともFCCのブロードバンド政策宣言(FCC05-151、2005年8月5日採択)に含まれる原則の遵守を含む、非差別及びネットワークの相互接続義務の詳細を公表することを求めている。

3.2009年3月12日、NTIAは、BTOPプログラムの様々な側面についてコメントを募集する意見募集告示(NOI)を公表した。これまでに1600を超える書面でのコメントを受領した。これらのコメントは、2009年夏の間に公表を予定している補助金の入手可能性に関する告示(補助金申請に関して記載された規則)の起草において考慮される。

4.2009年4月8日、FCCは、全米国民がブロードバンドの利益を享受することを確保するとの目的を達成するためのロードマップを提供するため、国家ブロードバンド計画策定手続を開始する意見募集告示を採択した。委員会は計画を2010年2月までに議会に提出しなければならない。米国再生・再投資法はブロードバンド展開及び利用に係るいくつかの重要要素を調査するための計画を必要としており、FCCは現在これらの要素(以下の要素を含む)について意見を求めている。

a.全米国民へのブロードバンドアクセス確保のための最も効率的で有効な方法

b.ブロードバンド設備及びサービスの入手可能性及び最大限の活用を達成するための戦略

c.関連する補助金計画の進展を含むブロードバンド普及状況の評価

d.消費者福祉、市民参加、公共の安全及び国土安全保障、地域発展、医療、エネルギーの自立及び効率、教育、職業訓練、民間投資、起業活動、雇用創出及び経済成長及びその他の国家目的の進展のためのブロードバンド活用方法

E.ネットワーク中立性{前11文字下線あり}

 2008年8月、FCCは、インターネットのオープン性を維持する連邦の政策に反するコムキャスト社によるブロードバンドインターネットネットワーク管理を認識し、差別的なネットワーク管理を行わないようコムキャスト社に求める命令を採択した。

F.多国間関係{前7文字下線あり}

 日米両国政府は、ITUにおけるネットワーク外部性付加料金に関して、他の国際約束との整合性に留意し、引き続き議論に参加していく。

G.事業者間補償{前8文字下線あり}

 2000年5月の州際アクセスチャージに関するコールズオーダーの採択の後、米国政府は2005年から事業者間補償の様々な形式についての新しい規則を検討している。米国政府は市内相互補償料金、州内アクセスチャージ、州際アクセスチャージという異なるアクセスチャージを維持することに内在する複雑さを認識し、また多数の課金方式を合理化する観点から、統一的な事業者間補償制度の策定に向けて取り組んでいる。

H.ユニバーサルサービス{前14文字下線あり}

 2008年11月、FCCは包括的なユニバーサルサービス制度改革について、採択予定の規則案文を公表したうえで意見を求める、規則制定案告示(NPRM)を公表したが、採択には至らなかった。2009年4月、FCCはブロードバンド普及におけるユニバーサルサービス制度の在り方を含む「国家ブロードバンド計画」の策定に係る情報提供要請(NOI)を採択した。当該要請に係るコメント及びリプライコメントは2009年7月中旬までに受領することが想定されている。

XⅥ.情報技術{前7文字囲み線あり}

A.著作権及び関連する権利の保護{前17文字下線あり}

1.日米両国政府は著作物の保護及びその法執行の重要性について一致した認識を有する。

2.米国政府は生の実演、非固定の著作物及び人格権の保護の重要性を認識する。米国政府は、日本国政府にとってこれらの権利の保護が重要であることを理解する。

a.生の実演及び非固定の著作物の保護

 米国政府は、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)第14条及び実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)第6条は非固定の生の実演の保護を義務付けていることを認識する。米国政府は、非固定の生の実演の保護に関する透明性を確保する。

b.著作者及び実演家の人格権の保護

 米国政府は、連邦法及び州法に基づく人格権の保護に関する透明性を確保する。

c.放送機関の権利

 米国政府は、放送機関の権利についての日本国政府の関心を認識する。米国政府は、日本国政府と情報交換を行うとともに、米国法の下での放送機関の権利について、日本国政府との議論を継続する。

B.デジタル・ネットワーク化への対応{前20文字下線あり}

1.米国政府は、オンラインにおける著作物の効率的な利用の重要性を認識する。米国政府は、著作権の適切な保護を確保しつつ、オンラインにおける著作物の利用を促進するため、立法措置を含めた適切な措置を絶えず検討している。

2.米国政府は、デジタル環境において、複製権、公衆への上演権及び頒布権を含む排他的権利を、著作物の適法な利用を促進する方法によって与えることの重要性を認識する。これらの権利の重畳適用は、オンライン上の著作物の利用が妨げられているという日本国政府の懸念の原因となっており、この点についての対応の第一歩として、2008年11月に、デジタルレコード配信による音楽作品の蓄積及び頒布に対する強制利用許諾について、米国著作権法第115条の適用範囲を明確にする暫定規則が、米国著作権局より公表された。

3.米国政府は、利用可能化権の重要性を認識する。米国政府は、公衆への上演権、展示権、頒布権及び複製権の組合せを通じて利用可能化権を担保している。米国政府は、利用可能化権についての透明性を確保するとともに、日本国政府とこの問題について引き続き議論を行う。

4.米国政府と日本国政府はデジタル・ネットワーク技術の進展に伴う著作権侵害に関する共通の問題を共有している。米国政府と日本国政府はこの問題について、適切で時宜を得た情報の交換を行う。

XⅦ.医療機器・医薬品{前11文字下線あり}

 米国政府と日本国政府は、非公開の試験や医薬品の販売承認取得のために得られたその他の情報の保護に関する日本国政府の要望について、議論を行った。

{<1>は原文ではマル1}