データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 菅総理とオバマ大統領の報道陣への発言

[場所] 
[年月日] 2010年11月13日
[出典] 首相官邸
[備考] 日米首脳会談後
[全文]

1 菅総理より、概要以下のとおり述べた。

 まず、オバマ大統領の訪日を心から歓迎します。ちょうど一年前、大統領はアジア歴訪の最初の訪問国として、我が国に来られ、今回は、多くの国、アジアを回られた後、再びこの横浜に来られたことを大変嬉しく思っています。本日は大変実りの多い会談を行いました。

 まず日本と米国がAPECという太平洋を取り囲む国々の会合の中でより協力して対応していこうという点で改めて合意しました。この間、日本が中国やロシアとの関係で色々な問題があった中で、一貫して米国が我々をサポートしていただいたことについてお礼を申し上げたところです。そういう中で、この地域の平和と安全のためには、米国の存在、米軍のプレゼンスがより重要であるとの認識を、私自身も多くの国民やあるいは近隣諸国も持ったということを申し上げました。そういう中で、両国の間の、ホストネイションサポートの問題等色々な課題について合意をしてきているところであり、また、沖縄の問題についても、私としては知事選が終わった段階から改めて私なりに最大の努力をしていきたい、5月28日の日米合意をベースにして最善の努力をしていきたい旨申し上げました。

 また、経済面においても、今回の包括的経済連携の問題で我が国が大きく開国の方向に進んだことを説明し、大統領からも歓迎する旨お話しいただきました。TPPについては、9カ国の参加国がありますが、それぞれの国との間で協議を行いたい、米国との間でも情報収集等を含めた協議を行うことについて大統領にもサポートしていいただけるという発言がありました。

 本当に幅広く話をいたしましたが、国際的な大きな変化の中で、それぞれの国が国際的なルールをしっかりと守りながら進めていくことが必要であり、大統領からは、我が国はそのモデルともいえる国であるとの話もありました。その中で将来の国連安全保障理事会の常任理事国入りについても改めてサポートするという話もありました。

 来年の春頃には自分(総理)に米国に来るようにとの招待もいただきました。そのときには、今年が日米安保条約50周年でしたが、来年の自分(総理)の訪米には共同声明が幅広い形で出せるように、そうした関係の作業をスタートさせたいということで合意しました。大統領は、明日は鎌倉に行かれて昔の思い出を楽しまれるそうですが、日本における大統領の滞在が楽しい思い出が重なるような滞在となるよう心からお祈りします。

2 続いてオバマ大統領より、概要以下のとおり述べた。

 菅総理に対し、暖かく歓迎してくださったことに感謝申し上げます。横浜市民の皆様、この地を訪問できて嬉しく思っています。日本は、自分が昨年大統領として最初に訪問したアジアの国であり、APEC首脳会議のために再び日本に来ることができて嬉しく思います。日本のすべての国民に感謝するとともに、米国民からのご挨拶を申し上げます。

 過去半世紀の間、同盟国として、日米両国間のパートナーシップは、二カ国のみならず地域において、我々の安全保障と繁栄の礎となってきました。このパートナーシップのおかげで、日米両国は世界の二大経済大国となることができ、また日本は米国にとって北米地域を除いて第二の貿易相手国となりました。

 我々は、人々、すなわち、家族、ビジネスマン、学生、旅行者など、日々我々に親密な関係をもたらす人々によって結びつけられています。我々は、アジア、そして世界におけるパートナーです。総理が述べられたように、私は日本が国際的にみて真に模範的な市民であり、また、我々すべてをより豊かにし、より安全にする国際的なルールや規範を支持することについて尽力されている事実に深く感謝します。日本とのパートナーシップに感謝します。

 総理が述べられたとおり、我々は直面している幅広い課題について極めて生産的な議論を行いました。我々は経済関係を深めつつあります。本日発効したオープンスカイ合意は二国間関係における航空産業を拡大させ、両国の人々と両国のビジネスの間の絆を強化するものであり、嬉しく思います。

 我々は将来のクリーンエネルギー経済を目指す新たなパートナーシップを立ち上げます。G20での議論に引き続き、菅総理とAPECにおいて緊密な協力していくことについて議論しました。今回の開催についての準備への日本の大変な努力に感謝します。

 来年ホノルルでAPEC首脳会議を主催することからも、自分は今回の会議の成功について特別の関心があります。

 我々は地域内の貿易と開かれた市場を拡大する必要性について議論しました。貿易自由化及び国内の改革についての総理の関心を歓迎します。菅総理から、これらのステップは日本のTPP参加につながる可能性があるとの説明がありました。自分は日本の関心を強く歓迎します。我々は本件について、今後数ヶ月間、政府間で緊密に協議していくことで一致しました。

 安全保障について、我々は本年50周年を迎えた同盟へのコミットメントを再確認しました。50年の経験が明らかにしていることは、共通の立場をとるときに日米両国はより強くなるということです。両国のチームが、同盟への継続的な資金的投資を含む日本の在日米軍駐留経費負担(HNS)に対する寄与の概要を示す原則的合意に達したことを嬉しく思います。

 菅総理、同盟および地域の平和と安定への重要なコミットメントを示していただいたことについて、感謝を申し上げます。

 米国の日本の防衛に対するコミットメントは揺るぎないものです。我々の同盟、基地及び前方展開は、日本の安全保障に不可欠であるのみならず、総理が述べられたように、我々が北東アジアにおいて安定を確保し、地域の課題に対処することを助けるものです。

 このため、総理と自分は米軍再編についてロードマップを前に進め、日本の防衛ニーズを満たし、基地を有する日本の地域社会のニーズに対応していくことで一致しました。私は、これら両方を実現するべく両国が協力していくことを確信しています。

 グローバルなパートナーとして、核拡散の防止や世界の脆弱な核物質の安全確保における協力を含む、日米両国が直面する安全保障の問題についても取り上げました。アフガニスタンの(復興)の進展についても議論し、自分は、 アフガニスタンの支援・復興・開発への(アメリカに次いで)最大のドナーである日本に謝意を表明しました。国連への貢献を含め、リーダーシップの責任を引き受けることへの日本の決意を高く評価している旨を総理に対して申し上げました。

 総理が述べられたとおり、我々は安保理改革について議論しました。私は、日本は安保理の常任理事国であって欲しい国のモデルであるとの我々の長年の見解を改めて述べました。常任理事国として日本を含むような改革された安保理の実現を楽しみにしています。

 最後に、総理が、来年前半に米国に訪問頂きたいとの私の招待を受諾されたことを嬉しく思います。我々は両政府に対して、同盟を深化・近代化させる努力を加速化するよう指示しました。総理がワシントンを訪問されるまでに、これから今後数十年のパートナーシップを導くような共通のビジョンを得られるよう希望します。

 最後に、総理が言及されたとおり、私は、幼少期に、鎌倉の大仏を訪れたことを含め、日本を訪問した経験があり、明日再び鎌倉を訪れるとともに、素晴らしい日本文化の側面に触れることを楽しみにしています。

 改めて日本側のおもてなし及び友情に感謝を申し上げます。菅総理、今回の首脳会談のみならず、二国間の幅広い課題について、今後緊密に協力していくことを楽しみにしています。