[文書名] 日米経済調和対話 協議記録
概観
「日米経済調和対話」(Economic Harmonization Initiative : EHI)は,貿易円滑化,ビジネス環境及び個別の問題への対応並びに共通の関心を有する地域の課題における連携推進への取組を調和させるための協力を促進することによって,両国の経済成長に貢献することを目指す。
本対話は,両国政府が共通の関心事項について協力を拡大させ,それぞれの規制その他の事項について調和を促進させるために相互理解を深め,また両国が提起する様々な案件について取り組むための重要な場を提供するものである。日米経済調和対話は,以下の4つのテーマを議題として,多岐にわたる項目を扱った。
1)日米双方の経済・貿易政策に関する情報交換
2)日米二国間経済協力関係の更なる促進
3)地域・グローバル課題への連携
4)貿易円滑化,ビジネス環境の整備,及びその他の個別案件への対応
本協議記録は,二国間協議及びやりとりの全容を要約するものであり,2011年2月から2012年1月までの期間の本件取組の主な成果を確認するものである。両国政府は,2011年2月28日から3月4日(第1回),及び2011年7月18日から22日(第2回)に事務レベル会合を開催した。また,両国政府は,2011年10月3日,西宮伸一日本国外務審議官及びデミトリオス・マランティス米国通商代表部次席代表を議長として上級会合を開催した。さらに,本件対話の取組を進めるため,2011年を通じて,個別案件を扱う追加的なアドホック協議が開催された。
日米両国政府は,本件対話の下でいずれかの政府から提起される関心事項について協議し,関与し続けていく用意がある。
成果の概要
日米双方の経済・貿易政策に関する情報交換
日米両国政府は,多岐にわたる近年の主要な経済・貿易政策の展開に関し,相互に情報提供を行い,最新状況につき説明した。これは,米国の「国家輸出イニシアティブ」及び日本の「新成長戦略」の概観をはじめとするトピックを包含した。
2011年3月11日に発生した東日本大震災以降,日本国政府は,米国政府に対し,震災後の復旧・復興計画の進捗状況について説明するとともに,サプライチェーンの復旧を含む経済状況に関する最新情報を提供した。また,日本国政府は,この機会を捉え,震災発生直後から日本及び日本国民へ差し伸べられた米国からのあらゆる形態の援助と持続的な支援につき,深甚なる謝意を表明した。米国政府は,日本の復興プロセスを支援するとのコミットメントを再確認するとともに,被災地の復興が進む中で,日米が緊密に連絡を取り合うことの重要性を強調した。
両国政府はまた,本件対話の下で,新しい経済・貿易に関する政策や趨勢について,日米経済・貿易
関係に潜在的に影響を与えるという観点から,引き続き情報交換を行っていくことの重要性を認識した。
日米二国間経済協力関係の更なる促進
両国政府は,経済分野における幅広い案件を扱う複数の二国間枠組みの下で近年継続している協力について確認した。これには,レアアース及び他の重要資源についての研究対話も含まれる。両国政府は,こうした協力が両者の経済関係に新たな広がりを与え,二国間により強い経済的繋がりを作ることに資するものであることに勇気付けられている。日本はまた,高速鉄道分野で米国と協力していくことに対する日本側の継続的な関心を表明した。
さらに,本対話の下で,両国政府は,情報通信技術(ICT)に関連する重要な新分野の二国間協力を推し進めてきている。このようなやりとりの結果として,両国政府は,この重要なセクターにおける開かれた市場で我々の共通利益を再確認・推進するための共通の通商原則を共に策定した。
両国政府は,本対話を前進させる中で,引き続きより多くの協力分野を探求することにつき意見を共有した。
地域・グローバル課題への連携
日米両国政府は,天然資源,知的財産,技術移転問題など,多岐にわたる地域及びグローバルの貿易問題及び課題について議論した。両国政府はまた,WTOやアジア太平洋経済協力(APEC)会議を含む多国間・地域経済枠組みにおける協力を含め,貿易円滑化のために二国間協力を更に促進するとのコミットメントを再確認した。日米両国政府は,APECにおいて,プライバシーの分野,特に国境を越えた情報の流通の促進について緊密な協力を継続して行った。
両国政府はまた,知的財産権侵害や地球的規模での模倣品・海賊版の拡散への対策における重要な成果となった,「偽造品の取引の防止に関する協定」(ACTA)が成功裡に妥結,署名されたことについても強調した。ACTAは,知的財産権の効果的な執行という共通の目標を達成するために,日本,米国,その他の締約国がより協働的な方法で共に取組むための新たなメカニズムを提供する。両国政府は,これまでの両国の緊密な協力の重要性を強調し,協定の早期発効及び協定参加国の一層の拡大に向けて引き続き協力していく決意を表明した。
これらの前向きな協力の成果を基礎として,両国政府は,更なる情報交換を通じて,地域・グローバル課題に対応するための新たな協力分野を引き続き探求していくとともに,必要な場合にはその他の措置をとっていく。
貿易円滑化,ビジネス環境の整備,及びその他の個別案件への対応
両国のビジネス界が関心を寄せる幅広い案件について,前向きで生産的な意見交換が行われた。このような取組の中で,両国政府は,両国における通商・ビジネス環境の更なる円滑化を目標として,政策の明確化や新たな政策・アプローチの導入を含む様々な措置をとってきた。両国政府はさらに,この取組が,調和的アプローチ推進の可能性も含め,日米経済貿易関係全体の強化に重要な貢献をするものであるとして,この取組の重要性を確認した。
以下は,本件対話の下で協議された多岐にわたる個別関心事項に関する主要な措置及び成果に関する概要である。
成果及び米国政府による主要な措置の概要
貿易円滑化
税関及び流通:日本国政府及び米国政府は,テロ対策措置の強化の重要性について認識している。米国国土安全保障省(DHS)は,関連する事項について引き続き日本側関係当局と緊密に協議する。
・24時間ルール・10+2ルール:認定事業者(AEO)制度及びC-TPATプログラムは両国で成功裡に実施されている一方,24時間ルール・10+2ルールの緩和については,事前情報の提出に係る別個の米国の制度・規制に基づくものであり,認められていない。DHSの担当者は,両国のAEO制度参加者に提供される共通のベネフィットを拡大する方途を探求し続けることを含め,日本側当局のカウンターパートと引き続き緊密な連絡を維持する意向である。
・海上貨物に対する全量検査:セーフ・ポート法(SAFEPortAct:「全港湾に対する安全確保と説明責任法」)の第232条(9/11委員会法の2007年の実施勧告に基づく)は,特定の法令上の条件を満たし,DHSが期限延長を認める場合を除き,米国向けの海上貨物について,2012年7月までの外国の港で積み込まれる前の全量検査実施を求めている。ジャネット・ナポリターノ国土安全保障長官は,セーフ・ポート法の第232条で求められている海上貨物の全量検査は,運用上,外交上,財政上及び技術上の重大な課題を引き起こしていることについて公の場で複数回にわたり言及している。ナポリターノ長官はDHSが当該義務を放棄する可能性があると示唆した。しかし,DHSは,これまでのところそのような措置を取っておらず,当該措置を行使する最終期限である2012年6月30日が近づくまで待つ可能性がある。DHSは,国内及び日本や他の貿易相手国との緊密な協議を行うとともに,利用可能な技術の問題点を解決するため,また革新的な次世代技術を探求するための研究開発事業を継続していく。
・航空貨物の100%スクリーニングについて:米国運輸保安局(TSA)は,9.11(国土安全保障)法に基づき,米国へ搬入する航空貨物に対し,旅客手荷物に必要とされるものと同等のレベルとなる100%のスクリーニングを要求している。日本は,この新規要求が業界に与える影響について懸念を有している。TSAは,この要求が完全に実行されるためにどのような方法が有効であるかを検討するため,2011年1月に実施したパブリックコメントを含め,利害関係者との広範囲にわたるヒアリングや調整を行ってきた。提案された計画では,この変更によって業界が国際旅客便により搬入される航空貨物に対し2011年12月31日までに,100%スクリーニングを実施できるようにすることであった。しかしながら,利害関係者からの反応を踏まえ,TSAは当該期限を再考した。TSAは,引き続き業界の利害関係者とともに,国際向け貨物データの出発前の収集を含めた現在進行中の作業計画を推進し,TSAの国家貨物保安プログラムの認証手続をとおしてTSAの基準と同等となる外国の航空保安プログラムを承認する予定である。米国政府と日本政府は,航空貨物スクリーニングの進展に係るプログラムを通じ,引き続き情報共有と共同作業を進めていく。
リチウム電池輸送:リチウム電池の安全な輸送を確保するため米国運輸省(DOT)が2010年1月に公表した規制強化案に対して寄せられた貿易相手国や産業界からのものを含むコメントについては,現在米国政府が慎重にレビューを行っているところであり,本規則制定の進捗についての最新情報については,これを日本国政府に継続して提供していく。米国政府はまた,引き続き日本国政府に対し,本規則制定手続における公開意見募集のいかなる追加的機会についても,これを通知していく。
再輸出規制:米国商務省産業安全保障局(BIS)は,輸出管理制度改革イニシアティブの一部である,米国輸出管理規則(EAR)に,新たな許可例外として戦略的貿易許可(Strategic Trade Authorization:STA)を追加した。STA適用の要件においては,米国の輸出者が荷受人に各品目の規制品目識別番号(Export Control Classification Number:ECCN)を提供することが義務付けられる。BISはまた,商品分類(Commodity Classifications)に係る公開情報を見ることができるウェブページを設立した。米国政府は,引き続き,日本政府から提起されるいかなる未解決課題についても議論を行っていく。
ロサンゼルス港におけるクリーントラックプログラム:米国政府は,ロサンゼルス港におけるクリーントラックプログラム及び同プログラムに基づく独立自営のトラック運送業者の扱いに関して,2011年9月26日の第9巡回区連邦控訴審判決についての情報を日本国政府と共有した。米国政府はさらに,ロサンゼルス港がクリーントラックプログラムにおける雇用運転手使用の強制を終了したことを説明した。
米国への無線機器の輸入:米国政府は,連邦通信委員会(FCC)が,製品の最終検査を行った製造者はFCC様式740に掲げる「製造者」であることを受け入れる旨確認した。FCCは,次回のFCC様式740の更新の際に右について明確化することとしている。FCCは,特段の事情がない限り,関連手続が将来変更される場合には,産業界が準備を行う十分な時間を設けた上で規則制定を実施する。
輸出許可(E/L)の申請プロセス:輸出管理制度改革の下,米国政府は,米国軍需リスト(USMunitionsList:USML)の見直しを行っている過程にある。この過程における利益の一つは,米国大統領がもはやUSMLでの管理が妥当でないと決定した多くの軍用品の部分品や構成部品を商品管理リスト(CommerceControlList:CCL)へ移行することである。それらの品目は,米国商務省(DOC)による規制の管轄下となる。USMLからCCLに移るそれらの品目の多くは,許可例外の1つである戦略的貿易許可(StrategicTradeAuthorization:STA)が適用され,日本への輸出の際に許可不要となり,それによって輸出者がコンプライアンス義務果たすためのプロセスが簡素化される。2011年7月15日,DOCは連邦官報において,USMLからCCLへ移行される品目についての規則案を公表した。米国政府は,やがては2つのリストを一本化し1つの担当省庁による管理とするよう,引き続きUSML及びCCLの改訂及び調整を行っていく。
アンチ・ダンピング措置:米国政府は,米国のダンピング防止に関する法律,規則及びその他の措置がWTO協定上の義務に整合的なものとなることを確保する。米国政府は,ゼロイング紛争や熱延鋼板紛争等のWTO紛争解決機関における未解決の案件に関して自国の立場を説明した。また,日米両国政府は,米国の2000年・継続的ダンピング及び補助金相殺法(バード修正条項)による関税の分配の問題についても議論した。
モデル・マッチング及びサンセット・レビュー:米国商務省は,日本政府関係者及び産業界の代表との間で日本製ボール・ベアリング及びその部品に対するアンチ・ダンピング措置に関するモデル・マッチングの手法について意見・情報交換を行った。また,懸案の日本の15製品に対するアンチ・ダンピング課税に係るサンセット・レビューに関する手続を確認した。関係者は,既存の課税措置に係る商務省の行政見直しやサンセット・レビューを要請し参加する機会を持ち続ける。
カリフォルニア州・ニューヨーク州における日本産焼酎の販売業免許の条件緩和:米国政府は,日本国政府の問題提起について,カリフォルニア州とニューヨーク州の関係当局に注意喚起を行った。2011年半ばにニューヨーク州議会が関連法案(A.160-A/S.0424-B)を可決したが,その後,州知事が法案への拒否権を行使した(拒否通知第49号)とのニューヨーク州当局からの報告について,米国政府はこれを日本政府に伝達した。カリフォルニア州及びニューヨーク州当局は,本件が引き続きそれぞれの州議会の管轄下にあることを確認した。米国政府は,日本から提起された問題について,引き続き,両州関係当局に対して適切に注意喚起していく。
ビジネス環境の整備
連邦通信法第310条(b)(4):放送及び公衆通信業務用無線局の免許に係る外資規制:免許人は,公共の利益があると連邦通信委員会(FCC)に請願することによって,同免許人の米国親会社への25%を超える外国による間接投資が可能であり,このことはWTO加盟国の企業に対して通例認められているものであることにつき,米国政府は明確に説明を行った。
小売機器市場における競争:2010年4月FCCは,1ケーブルサービスと消費者電子機器の互換性に関する現在の手法(ケーブルカード)の改善のための規則制定提案公告(NPRM),及び2ビデオ機器の競争とその他関連する事項に関する調査告示(NOI)を発出し,全ての利害関係者からの意見を募集した。2010年10月,連邦通信委員会(FCC)は,制度を改善するためのケーブルカードに関する規則を採択した。さらに2011年4月,FCCは,より一般的なビデオ機器の競争に関する追加情報提供要請(FNOI)を発出し,これについても全ての利害関係者からの意見を募集した。2011年7月,総務省は,FCCとの間で会合を行い,両国のセットトップボックスとゲートウェイ機器の小売市場における競争に関する政策上の関心事項に対応する手法に関する情報交換を行った。
ユニバーサルサービス及びアクセスチャージ:2011年7月,総務省は,連邦通信委員会(FCC)と会合を行い,両国におけるユニバーサルサービスの提供及びアクセスチャージ制度に関する政策上の懸念に対応する手法に関する情報交換を行った。2011年10月,FCCは,ユニバーサルサービス基金を改革し,事業者間の補償制度を統合する規則を発出する,命令(Order)及び規則制定提案追加公告(FNPRM)を採択した。これらの改革は,特に,年間45億ドル以下の予算規模で新しいコネクトアメリカ基金を創設するもので,現在ブロードバンドにアクセスできていない数百万人の米国人に対してブロードバンドインフラを拡張するものである。
国際協力:2012年1月,日本国政府と米国政府は,法的拘束力のない,情報通信技術(ICT)サービスについての貿易に係る原則を共同で策定した。この原則の各項目は,日本国政府と米国政府に広く共有されている,ICT分野における政策や規制に対する手法を示すものであり,両国政府は共に,他国がこれらの原則を採用するよう働きかけていくこととしている。
海外基地建設:米国政府は,日本国政府からの求めに応じ,ジョイント・ベンチャー(JV)による海外基地建設プロジェクト,特に,米国企業と外国企業で構成されるJVが米国企業とみなされるケースについて,説明を行った。今後の入札機会に関心を有する企業のために,国防省は,JVに係る連邦調達規則に関し,同省のウェブサイト(http://www.acq.osd.mil/dpap)で情報提供を行うための追加的措置を取ることとする。
外国法事務弁護士(FLC)としての外国弁護士の受入れ及び地位:米国政府は,アイオワ州最高裁判所が,同州において,FLC免許付与規則を導入したことにより,米国におけるFLC制度を導入した法域の数が31となったことを報告した。この31という法域は,米国における法律サービスのビジネス全体のおよそ90%を占めるものである。また,米国政府は,日本国政府の求めに応じ,FLCによる第三国法の取扱いに関する各州の規則についても明示した。
ジョーンズ法:国土安全保障省(DHS)は日本国政府に対して,ジョーンズ法が米国以外で建造された船に関する全ての内航輸送を禁じている訳ではない旨を説明し,許容される活動の具体例を示した。DHSは,ジョーンズ法に係る規制データベースのウェブ上のリンク及びインフォームド・コンプライアンス・パブリケーション(ICPs)を紹介し,日本側からの追加の質問にも可能な限り対応する用意がある旨表明した。また,DHSは,船主,運航者,借主その他の海上輸送活動の関係者が,当該活動に従事する前に,当該活動のジョーンズ法抵触可能性について予想される法判断を,補強証拠とともに求めることができる旨明らかにした。
1920年商船法(ジョーンズ法)に基づく制裁措置:2011年1月26日,米国連邦海事委員会(FMC)は,1996年に始まった手続及び後続する半年毎の報告要求を停止するとともに,産業界及び海運業界に対して,日米間の海上貿易に影響を与えるような新たな規則や係争が生じた際に報告することを奨励した。日本政府及び米国政府は,1920年商船法について意見交換を継続していく。
温州(うんしゅう)みかん:日本産温州みかんの輸入条件の調和についての日本側要請を受け,これを進展させるため,米国農務省(USDA)と日本国農林水産省は,2011年9月,対象病害虫リストに同意した。また,2011年11月には,USDAから農林水産省に対し,リスク緩和措置案を提出した。両国の当局がこの提案内容に合意し,米国の規制内容が見直され次第,温州みかんはUSDAによる園地検査を受けずに米国への輸出が可能となる見込み。
バイ・アメリカン法(建設資材):連邦調達規則は,建設資材の調達についてバイ・アメリカン条項の適用を規定している。日本国政府からバイ・アメリカン法の手続の明確化を求められたことに対し,米国政府は,バイ・アメリカン法の適用除外について,契約担当官の決定が必要とされる特定の場合を含め,同適用除外のための様々な要件や手段を説明した。米国政府は,日本国政府のために,WTO政府調達協定(GPA)又は他の貿易協定の適用対象とならない調達について,バイ・アメリカン規制を適用除外とする決定がどのように行われるかを説明した。米国政府はまた,WTO・GPA又は他の貿易協定の適用対象となる調達にはバイ・アメリカン法が適用されないことを改めて確認した。
コンゴ産鉱物:米証券取引委員会(SEC)は,ドット・フランク法(金融改革・消費者保護法)1502条に基づく最終規則案の起草を完了していない。SECは,従前の規則案に対する多数のパブリックコメントや意見を考慮に入れ,引き続き,実施のために必要となる多くの規則案について慎重に評価を行っている。2011年10月SECは,規則制定について議論し,政府と利害関係者間の理解を深めるための公開ラウンドテーブルを開催した。SECは,最終規則の公表時期が延期され,2012年1月から6月の間となることを示唆した。
米国政府は現在,「責任ある鉱物貿易のための官民連携(Public-Private Alliance for Responsible Minerals Trade:PPA)」設立の過程にあり,コンゴ民主共和国及び中部アフリカ大湖地域の紛争鉱物の課題に係るサプライチェーンの解決を支援するため,民間セクターや非政府組織(NGO)との協働を続けている。
米国政府は,日本国政府に対し,本件に関する進捗状況を引き続き提供していく。
メディカル・ロス・レシオ規制:米国政府は,医療保険制度改革法におけるメディカル・ロス・レシオ規制の目的や実施状況について,日本政府に対して引き続き新しい情報の提供や内容のクラリフィケーションを行う。
再保険引受けにおける担保要件:2011年,ニューヨーク州,ニュージャージー州,インディアナ州は,関連規制の下で一定の要件を満たしている保険会社について,再保険引受けに要求される担保を減額する新しい規則を制定した。
全米保険監督当局協会(NAIC)は,同年11月,再保険に関するモデル法・モデル規則を改正した。同法・規則が各州で導入されれば,再保険引受けに際して外国保険会社に対して求められる担保が減額され,米国における州による規制の近代化につながることになる。
先行技術についての情報開示義務要件(IDS制度)の緩和:米国特許商標庁(USPTO)の内部ワーキンググループは,引き続きUSPTOの効率性向上と合理化を図るための取組の中で,当該要件の検討を行う。USPTOは,出願人への義務付けと,より質が高く効果的・効率的な審査プロセスの推進とのバランスに関する,利害関係者からの意見を考慮している。
エタノール混合燃料(E15燃料):大気浄化法(クリーン・エアー・アクト)上の条件に基づき,米国環境保護庁(EPA)は,E15燃料の販売許可(waiverrequest:適用除外要請)について通知を出し,全ての利害関係者からのパブリックコメントの機会を設け,2010年10月及び2011年1月に,条件付きでE15燃料を2001モデルイヤー以降の乗用車及び小型トラック用として販売することを認める決定を出した。これらの販売許可は,燃料生産者が燃料の質的要件を満たすとともに,本決定の範囲外の車やエンジンへの誤給油を縮減する能力が条件付けられる。2011年7月,EPAは,燃料供給業者がより容易に燃料を小売用として提供するとともに,本決定範囲外の車両への誤給油を避けるよう支援する規則を出した。EPAは,一般及び利害関係者に対する規則変更の周知について,産業界と協力することにコミットしている。またEPAは,自動車製造業者を含む関係者と共に,E15燃料の円滑な導入のために,対外広報や教育キャンペーンに従事してきた。
査証問題:米国国務省は,査証の発給及び更新手続に関連する諸課題について日本国政府と引き続き取り組むつもりである。米国国務省は,日本国政府が提起した査証の諸費用に係る政策について明らかにした。
米国国土安全保障省関係者は,入国港におけるI-94(滞在許可証)の有効期間の計算方法に関し日本国政府が提起した懸念を認識した。税関国境警備局は,米国移民弁護士協会(AILA)とともに,CBP職員に対し,追加的な現場指導要領や訓練を提供すべく取り組んできている。
単一性を満たさないことによる制限要求:米国政府は,出願人が米国特許商標庁(USPTO)へ出願する際に,米国の制限運用か特許協力条約(PCT)による単一性運用のいずれかを受けるために,米国国内直接出願,または,PCTによる国際出願,の2つの選択肢があることを明示した。さらに,USPTOは,制限運用に関する利害関係者の懸念を解消する方途の一つとして,重複作業や係属出願を減らし,審査を単純化すべく,制限運用の効率化を検討するための内部ワーキンググループを設立した。
秘匿特権の弁理士への拡張:米国政府は2011年5月,世界知的所有権機関(WIPO)の特許法常設委員会(SCP)において,本件についての議論を支持した。米国政府は,WIPO/SCPにおいて引き続き本件の議論を支持し,全ての関係者からの意見を継続して検討する。
社会保障番号(SSN)の迅速な発給:日本国政府から提起された懸念に対し,社会保障庁は,社会保障番号を取得するために必要な手続,平均所用時間及び手続効率化のための取組について説明した。米国政府は,社会保障番号に関連する問題について日本国政府と引き続き協働する。
保険業界における州別規制及び監督:2011年10月,米国財務省連邦保険局(FIO)は,「米国における保険規制システムの近代化と改善の方法」と題する連邦議会への報告書の作成にあたり,パブリックコメントを求める官報告示を行った。FIOは,同報告書を2012年1月に連邦議会へ提出することとなっている。
2010年12月,全米保険監督当局協会(NAIC)のグループ・ソルベンシー問題ワーキンググループは,持株会社に関するモデル法・規則を改正した。州議会で同法・規則が導入された州では,州保険当局によるグループ監督の改善につながることとなる。
2011年に,ニュージャージー州,ネバダ州,アラバマ州及びオレゴン州が,IIPRC(Interstate Insurance Product Regulation Commission)へ加入した。これにより,41の州が保険商品認可に関する州際規定に加わったことになる。これら41の州は,保険料ベースで米国全体の70%に相当する。
バラスト水管理:米国政府は,バラスト水管理のための最適な基準を策定する過程において,パブリックコメントに対し、透明かつ公開された入念な手続を引き続き進めていく。米国環境保護庁(EPA)は新しい基準案を作成するにあたり,科学諮問委員会と国家科学学会という2つの評価の高い諮問委員会に助言を求めた。EPAはその結果を個々の州に対して提示した。EPAは,基準策定に当たり州や沿岸警備隊と協力を継続するとともに,進捗状況を日本国政府に継続して通知する。
環境規制等の州別規制:米国環境保護庁(EPA)と米国運輸省(DOT)は国家計画の一環として2011年7月29日,補足通知(Supplemental NOI)を出し,2017-2025年モデルイヤーの軽量車について厳格な連邦温室効果ガス・燃費基準を提案する計画を発表した。同通知は,EPAと米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が2011年11月16日に共同で署名し,国家計画の主な要素について概説している。同通知は2011年12月1日,連邦官報に告示された。カリフォルニア州,大手自動車メーカー13社及び他の利害関係者は,軽量車の燃費を向上させ温室効果ガスを減らすこの国家計画における次期工程について支持を表明した。このクリーン自動車のための国家計画の取組により,製造業者は,全ての連邦基準のみならずカリフォルニア州及び他州の基準を満たす単一の軽量車の製造を維持することができるようになる。7月29日の通知は,当該基準策定プロセスにおける初期段階の更なるステップであり,関連当局は,この計画案が最終版になる前にパブリックコメントのための十分な期間を提供する。
制度調和
運転免許問題:米国各州は,州の運転免許の発行に関する手続を管理する独占の権限を有する。有効期間について州毎に異なる要件をはじめ,州の運転免許の発行に関し日本国政府が提起した懸念に対し,米国国務省は米国自動車行政当局者協会(AAMVA)と連絡を取った。独立した非政府機関であるAAMVAは,諸課題の可能な解決に向けて,日本国政府と米国の州自動車行政当局との間の意思疎通を支援する用意がある旨説明した。
特許改革:2011年9月,オバマ大統領による署名により特許改革法が成立した。本法は,他国の特許制度と調和させ,特許権に係るより大きな確実性の供与及び特許紛争における高額な訴訟以外の代替手段の提供により特許制度を強化するものである。とりわけ,本法は,先発明主義,再審査制度,ヒルマー・ドクトリンといった日本国政府の諸懸念に対応するものである。米国政府は,特許制度に係るこれらの課題や他の課題に関し,引き続き進捗状況を提供していく。
メートル法:米国国立標準・技術研究所(NIST)は,米国内外の貿易・通商におけるメートル法の使用・便益について積極的に促進する。米国の96%の州においてメートル法の単位を使用することが許可されているが,NISTは残る2つの州(アラバマ州及びニューヨーク州)においてもメートル法によるラベル表示の法的禁止が解除されるよう働きかけ続けている。NISTは,商品の包装についてメートル法によるラベル表示を認めるよう法改正の提案を公表した。またNISTは,消費者がメートル法の単位で価値の比較ができるような陳列棚表示のための単位価格表示ベスト・プラクティス・ガイドを開発している。NISTは引き続き,日本国政府と意見・情報交換を行い,また,必要性や可能性に応じ,個々の問題について協働していく。
成果及び日本政府による主要な措置の概要
情報通信技術
通信
周波数:2011年5月,日本では,総務省による周波数割り当てに際し,新たに参入する事業者が現在周波数を使っている事業者の移行費を負担することを可能にし,またその移行費を周波数割当ての基準にすることができるよう法律が制定された。日本国政府はこの手法を,来る700及び900MHz帯の割当てに導入する予定である。
加えて,総務省の「光の道」構想を推進する一環として,総務省と関連する懇談会は,周波数オークションを導入する電波政策を検討し,2011年12月に報告書を公表した。この報告書を踏まえ,総務省は,2015年までにオークションを導入するために必要な措置を講じることとしている。
支配的事業者規制:2011年5月,日本国国会は,NTT東西それぞれの内部において,設備部門とその他の部門との間の分離を強化する法律を可決した。この法改正は,設備部門とその他の部門との間における従業員や情報の共有に係るファイアーウォールの厳格化を含むものである。
総務省はまた,2012年度について,支配的事業者に対し,固定電話に係る相互接続料を算定するための長期増分費用(LRIC)モデルを継続して適用することを明らかにした。
携帯電話に係る相互接続料:総務省は,全ての携帯電話事業者に対して,携帯電話に係る相互接続料を算定するための新しいガイドラインを踏まえた対応を行うよう奨励していると説明した。このガイドラインは,現在,2010年度から第二種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者にのみ適用されているものである。総務省はまた,2011年5月にNTTドコモが電気通信紛争処理委員会にソフトバンクの携帯電話に係る相互接続料に関するあっせんの申請を行ったという事実に関して情報を提供した。
融合・インターネット対応サービス:米国政府と日本国政府は,現段階では,オーバーザトップ・ビデオサービスが国境を越えて提供されるかどうかによらず,外国資本に対する,同サービスのみに特化した規制は存在しないことを確認する。これは,当該サービスに影響を及ぼすかもしれない他の規制を妨げるものではない。
国際協力:2012年1月,日本国政府と米国政府は,法的拘束力のない,情報通信技術(ICT)サービスについての貿易に係る原則を共同で策定した。この原則の各項目は,日本国政府と米国政府に広く共有されている,ICT分野における政策や規制に対する手法を示すものであ
り,両国政府は共に,他国がこれらの原則を採用するよう働きかけていくこととしている。
情報技術
ICT政府調達:日本国政府は,各府省の情報化統括責任者(CIO)業務の調整を行う政府CIOを設置することとしている。日本国政府の説明によれば,政府CIOの任務とは,行政運営を合理化し,かつ,国民及び事業者の一層の利便性の向上を図るため,情報通信技術(ICT)の活用を推進することである。これまでのIT関連政府投資の費用対効果及び利便性を検証した上で,政府CIOは,改革を実施し,コスト削減に成功した府省の事例を政府全体に展開する。政府CIOは,日本における,クラウドコンピューティングやその他の先端技術の活用を含む,共通IT基盤の整備という目標の達成を支援する。
特にICTの政府調達に関しては,日本国政府は,国際的な技術動向や標準を反映し,かつ技術的中立性や相互運用性の原則に沿った政府全体の政策を実行することなどにより,競争性,透明性や公平性の一層の向上に向けて取り組んでいく。日本国政府は,上記のICTの政府調達の目標及び政策の達成のため,その方策の検討を継続する。
医療IT:日本国政府は,国民が電子的な医療健康情報を利用し,自分に合った医療を日本国内のどこでも受けられるようになり,自己の健康管理を効率的に行うことを可能にする「どこでもMY病院」構想(自己医療・健康情報活用サービス)に基づき,計画の第一段階を2014年3月までに開始する予定であることを説明した。
医療情報技術(医療IT)標準について日米の協力を促進するために医療ITの専門家間の会合を2012年に開催するという,米国政府からの提案につき日米両国政府は議論している。この専門家会合は,国際的に承認され活用される標準に基づいて,かつ技術中立性と相互運用性を促進し,また患者の自己の医療記録へのアクセス拡大を可能とする医療ITの速やかな導入を支援することにより,医療の質と効率を向上させるという目標に向けて前進することを意図している。さらに,米国政府と日本国政府は,医療ITについての二国間協力の増大を見据えて情報交換を継続する。
クラウドコンピューティング:日本国政府は国境を越えた情報の流通が重要であることを認識し,本件及びクラウドコンピューティングの発展に影響を与える政策について米国政府と協力を継続していくこととしている。日本国政府は,2010年5月に「スマートクラウド戦略」を公表し,ジャパン・クラウド・コンソーシアムについて説明した。米国政府と日本国政府は,クラウドコンピューティングに関し情報交換を継続していくこととしている。
プライバシー:日米両国政府は,アジア太平洋経済協力(APEC)会議におけるプライバシーの分野,特に国境を越えた情報の流通の促進について緊密な協力を継続した。日本国政府は,2011年11月のAPEC閣僚会議において,APEC越境プライバシー・ルール・システム(CBPRs)を正式に支持した。日本国政府各省庁はまた,越境プライバシー執行取決め(CPEA)
に加入した。日米両国政府は,CBPRプログラムの設立に向けた取組を行っている。13
知的財産権
技術的保護手段:2011年春,日本国政府は,技術的保護手段の保護を強化する三つの重要な措置を取った。第一に,2011年3月,関税法が改正され,技術的保護手段の回避装置やプログラムの輸出入を違法とし,同年12月から職権によりまたは権利者からの申立てに基づいて,税関当局がそのような回避装置等を差止・没収することができることとされた。第二に,2011年6月,とりわけ,(1)組み立てによって回避装置を容易に製造することができる「部品一式」に対する禁止規定を含み,(2)技術的保護手段(不正競争防止法では技術的制限手段という表現を使用)を回避するための「機能のみ」を備えた装置等に適用を制限する文言を削除することで,規制を受ける対象の範囲を拡大させ,(3)回避装置等の提供に対する刑事上の救済措置を導入するため,不正競争防止法が改正された。第三に,日本国政府はまた,技術的保護手段に係る条項の更なる強化につながる著作権法改正の準備を進めており,進捗状況の最新情報を提供する。
著作権保護期間の延長:日本国政府は,(文化審議会著作権分科会における)以前の著作権及び著作隣接権の保護期間に関する検討は最終結論には至らなかったこと,しかしながら,最近の保護期間延長に係る国際潮流,米国及び他の貿易相手国との意見交換,並びにこの問題に関する国内での議論を考慮した上で,必要に応じて検討を継続すること,についての説明を行った。
オンライン上の海賊行為:総務省は,インターネットサービス・プロバイダ(ISP)や権利保有者,学識経験者が含まれる民間主導のプロバイダ責任制限法のガイドラインに関するスタディグループの作業についてアップデートを支援した。このスタディグループは,いくつかの重要分野におけるガイドラインを改訂し,2012年3月までに英語版を公表する予定である。
保護の例外:2011年7月,文化審議会著作権分科会法制問題小委員会が開催され,著作権法第30条の私的使用目的の複製の権利制限に関する権利者及び他の関係者からのヒアリングが行われた。また,著作権法第30条1項3号に規定されている私的使用目的の複製の権利制限から除外される対象範囲に,録音及び録画以外の他の著作物のカテゴリーも含むべきかなどの,上記ヒアリングで取り上げられた問題の検討を継続する。文化庁は,権利者及び他の関係者からのインプットを得るための有意義な機会の提供を継続する。
文化庁はさらに,著作権法改正の包括的な取組の下,文化審議会において検討されている著作権保護に対する三つの権利制限・例外について説明を行った。同庁は,検討の進捗状況に合わせ,説明を行う。
日米協力:日米両国は,アジア太平洋地域における無差別かつ市場主導のイノベーションモデルを定めた政策を実施するための首脳合意や,映画盗撮に対する取組のためのアジア太平洋経済協力(APEC)会議の効果的な原則に対する各国大臣の支持を得るため,日米両国が緊密に連携したAPEC関連会議の場など,様々な二国間及び多国間フォーラムにおいて知的財産権の保護及び執行の強化に関して緊密な協力を継続して行った。日米はまた,特許審査の際に,重複を減らし,特許庁間での作業分担を目指す,ワークシェアリング・イニシアティブである“特許審査ハイウェイ”を推進するよう,APECにおける協働を継続した。さらに,2011年10月,日米及び他の6カ国は,商業規模による模倣品・海賊版のグローバルな拡散に効果的に対抗するための国際的な法的枠組みを強化する画期的なイニシアティブである「偽造品の取引の防止に関する協定」(ACTA)に署名した。
郵政
郵政:日本国政府は,日本郵政各社と民間競合者の間の対等な競争条件を確保するため,郵政民営化法の規定にあるような措置を引き続き講じていくと説明した。日本国政府はまた,郵政民営化法の施行後10年間の移行期間が終了するまでには,日本郵政株式会社が,一切の特別な法的な例外規定なしに,全面的に民間企業として規制を受ける一方で,日本郵政株式会社法が引き続き適用される旨明言した。
保険商品の販売に係る郵便局ネットワークへのアクセスに関し,2011年10月,郵便局会社は,民間会社による変額年金保険及び法人(経営者)向け生命保険商品の取扱局数を,それぞれ166局から247局,123局から126局に増加させた。これは,郵便局会社の経営判断によるものである。郵便局ネットワークを通じて提供される保険商品の種類や取扱局数に関する特段の規制はない。日本国政府は,民間部門が,商業的に対等な条件にて,より多くの郵便局ネットワークを通じた更なる商品販売に関心を抱いていることを認識している。
規制の執行に関して,郵便貯金・簡易生命保険管理機構及びかんぽ生命保険は,日本郵政公社期間(2003年4月~2007年9月)における保険金の支払い漏れ・過少支払いに係る調査結果を2010年7月に発表した。これを受け,金融庁は,かんぽ生命保険が保険金支払いに関して保険業法に従って活動しているか,また,報告書に記載された保険金の支払い漏れ・過少支払いの再発防止策を順守しているかについてフォローアップを続けてきていると説明した。金融庁は,生命保険業界全体を対象とした調査や監督上の措置を行う際にかんぽ生命保険に同等の扱いをすることを含めて,保険業法の要件をかんぽ生命保険と民間会社に同等に適用する意向を述べた。
日本国政府は,引き続き市場の分析を行うとともに,その分析を踏まえ,他の国際急送便事業者により提供される同種のサービスと比較して,日本郵便の国際スピード郵便(EMS)の扱いに関連する競争政策を検討する可能性があることを明確にした。
日本国政府は,郵政金融機関の業務範囲の拡大において,対等な競争条件が常に確保されるべきであると認識した。
提案された改革について,日本国政府は,郵政改革関連法案の現状及び日本国政府の立場を説明した。日本国政府はまた,今後の法制等の運用においてWTO協定をはじめとする国際約束との整合性を確保していく旨説明した。加えて,日本国政府は,法案策定に当たって内外の利害関係団体・個人から広く意見を聴取する機会を設けたところであり,利害関係者に意見表明の有意義な機会を提供することを含め,引き続き透明性の確保を図っていくことは重要と認識している。
保険
共済:認可特定保険業者は,2005年(保険業法改正時)に行っていた範囲を超える業務範囲を認められることはなく,当分の間の措置である認可特定保険業者制度に係る規制については,施行後5年を目途として検討を行うことになっている旨,日本政府から説明があった。
保険の窓口販売:2007年に行われた保険商品の銀行窓口販売に係る改革に関して,2011年7月,金融庁はその効果のレビュー結果を発表した。金融庁は,銀行窓口販売の自由化が行為規制の面でもたらす効果について,引き続き実態把握を行う。モニタリングを通して得られる保険契約者の意見を踏まえ,また,保険契約者の保護や選択の拡大を目指して,金融庁は必要に応じて新たなレビュー実施を検討する。金融庁は今回の見直し検討に際して,公開ヒアリングやパブリックコメントを含め,外国企業を含む利害関係者に意見表明の機会を与え,透明性の確保に努めた。金融庁は,今後も銀行窓口販売の実態把握を行い,将来の改革を検討していく中で,政策決定プロセスにおいて利害関係者に有意な意見表明の機会を供与し,引き続き透明性を提供していく。
生命保険契約者保護機構:金融庁は,生命保険契約者保護機構に対する政府補助の継続の必要性,及び同機構の資金調達に係る保険会社の負担に係る検討を2012年3月までに行うこととしている。機構に係る諸論点の見直しに際して,金融庁は事後拠出制などの点について利害関係者と情報交換を続けていく。金融庁はまた,利害関係者に有意な意見表明の機会を提供すること等により,検討プロセスを通して透明性の確保に努める。見直しにより得た情報に基づき,金融庁は,同機構のプログラムの適切な変更を検討する。
透明性
パブリックコメント手続(PCP):日本国政府は,各府省においてパブリックコメント手続に関する遵守状況が改善していることを示す2010年12月の調査結果を報告した。2011年2月,総務省は各府省に対し,提出された意見に対して十分な考慮期間を確保することを含む,パブリックコメント手続の適切な運用を求める通知を発出した。総務省は,遵守状況についての実態把握を継続していく。
運輸・流通・エネルギー
自動車先進安全技術ガイドライン:2011年7月20日,国土交通省は,「技術指針には法的拘束力はなく,これにより自動車の市場投入を妨げ,又は不適切に遅らせるものではない」ことを確認する通達を発出した。さらに,国土交通省は,当該新技術又は新機能が人体の健康・安全又は環境に危害を及ぼすことを証明できる場合を除いて,「保安基準がまだ整備されていない新技術又は新機能を搭載した自動車の市場投入を妨げ,又は不適切に遅らせない」ことを当該通達により確認した。国土交通省は,技術指針の策定において,同指針策定の最終的な決定に先立ち十分に,利害関係者に意見を求めることとしている。
税関職員の派遣:財務省は,国際急送貨物を扱う事業者所有の保税地域に,それら事業者の状況,すなわち認定事業者(AEO)であるか否か及び日本税関における現在の限られた人的資源を考慮しつつ,税関職員を定期的かつ継続的に派遣できるようにする措置の導入を真剣に検討し,2012年度中にそのような措置を導入することを目指している。財務省は米国政府関係者と会合し,米国国境取締局による派遣プログラムに関する情報の提供を受けた。財務省はまた,米国企業とも会合し,意見交換を行うと共に,他国における同様の派遣プログラムにつき,情報の提供を受けた。財務省は引き続き,日本における措置導入の準備においては、全ての利害関係者から情報を募る。
農業関連課題
ポスト・ハーベスト農薬:厚生労働省は,2011年9月にフルジオキソニルを指定した。また,ピリメタニルが現在,食品安全委員会により評価されていることを報告した。同様に,厚生労働省はアゾキシストロビンを含むポスト・ハーベスト農薬についての(検討の)進捗状況について情報提供を行うことにしている。厚生労働省は,ポスト・ハーベスト農薬の指定過程について明確化したものを提供すること,また指定過程をより迅速化する方途について米国と議論することに同意した。
残留農薬基準(MRL):厚生労働省は,残留農薬基準設定に関して,米国政府が準備する優先リストについて,2012年に米国と協力して取り組むことに同意した。厚生労働省はまた,関連する残留農薬基準の遵守を確保するため,米国との協力及び協議のレベル向上を継続することに同意した。
食品添加物:厚生労働省と米国政府は,国際汎用添加物の指定をできるだけ早期に終了させるため,引き続き協働していく。
ゼラチン:米国は,厚生労働省による調査・検討に資するよう,米国におけるゼラチン製造用の骨の調達状況を含む,ゼラチンに関する情報を提供した。例えば,関係政府機関間の多くの議論の後,2011年11月,米国の1製造業者が食用ゼラチンの製造工程について厚生労働省と情報交換を行った。
競争政策
執行の有効性:
企業結合規制の見直し:2011年7月,公正取引委員会は,企業結合審査の迅速性,透明性及び予見可能性を一層高める観点から,企業結合規制(審査手続及び審査基準)の見直しを行った。とりわけ,公正取引委員会は,この見直しにおいて,企業結合審査手続の国際的整合性の向上を図る観点から,事前相談制度を廃止するとともに,届出会社と公正取引委員会のコミュニケーションの充実を図ることとした。
企業結合審査における禁止期間の短縮:企業結合規制の見直しの一環として,公正取引委員会は,事前届出制度に基づく禁止期間(届出受理の日から30日を経過するまでの期間)の短縮を認める要件の緩和を行った。公正取引委員会は,書面による申出があった場合であって,独占禁止法上問題がないことが明らかであるときは,禁止期間を短縮することとし,公正取引委員会は禁止期間を短縮することについて合理的な理由を求めないこととした。
裁判官のための独占禁止に関する専門的知識:東京地方裁判所は,公正取引委員会の行政処分に不服がある場合には東京地方裁判所へ直接訴訟を提起する,といった内容を規定する独占禁止法改正案の成立を見込んで,そのような訴えを処理するために必要な独占禁止法に関する専門的知識を裁判官に提供する方途に取り組んでいる。右目的のため,2011年3月,東京地方裁判所裁判官が,米国に出張し,複数の裁判官
自主的な独占禁止法コンプライアンスの導入:公正取引委員会は,独占禁止法に基づき適切な措置を採るに当たって,複数の要素を考慮に入れる場合があることを明らかにした。これら要素の一つとして,独占禁止法違反被疑事業者が公正取引委員会による審査開始前に自主的に違反行為をとりやめたか否かという点が挙げられる。そのような場合であっても,公正取引委員会が特に必要と認める場合においては,公正取引委員会は,関係事業者に対し,当該事業者の行為が終了している旨を明らかにするための措置及びその他当該行為を排除するために必要な措置を採るよう命じる場合があり得る。
手続の公正性:
公正取引委員会の処分前手続における手続の公正性:日本国政府は,手続の公正性の観点から公正取引委員会の処分前手続の見直しを内容とする独占禁止法改正法案を,2010年3月に国会に提出した。本法案には,公正取引委員会の行政処分の名宛人となるべき者(以下「被処分予定者」という。)に対し,公正取引委員会の最終処分に先立ち,被処分予定者の防御として,予定される行政処分の内容の説明を受ける機会,公正取引委員会が依拠する証拠を閲覧・謄写する機会,公正取引委員会の証拠,法的論拠等について公正取引委員会職員に質問する機会,そして公正取引委員会に対して証拠を提出し意見を述べる機会を付与する,といった内容を含んでいる。本法案が成立すれば,公正取引委員会が行う審判制度が廃止されることとなり,また公正取引委員会の行政処分に不服がある場合に,東京地方裁判所への抗告訴訟提起が可能となる。なお,本法案は継続審議となっている。
公正取引委員会の審査手続における手続の公正性:独占禁止法改正法案の附則において,日本国政府は,公正取引委員会の審査手続について,日本における他の行政手続との整合性を確保しつつ手続の公正性を確保する観点から検討を行うものとされている。同附則においては,改正法の公布後一年を目途に結論を得るものとするとされている。
手続の公正性―立入検査の基準:公正取引委員会は,様々な要素を総合的に考慮した後,立入検査を行う必要性があるか否かを決定する,という従来の考え方を説明した。考慮要素としては,例えば,独占禁止法第3条違反であれ同法第19条違反であれ違反被疑行為が独占禁止法違反を構成するという合理的確信が存在するか否か,追加的証拠が違反を構成するのに必要か否か,及び証拠が破棄若しくは隠滅されるかもしれないという合理的な懸念が存在するか否かといった点が挙げられる。
ビジネス法制環境
コーポレート・ガバナンス(コーポレート・ガバナンス制度の強化及び少数株主の保護):
2010年3月、日本国政府は上場会社に対して、コーポレート・ガバナンス体制等に関する開示を義務付け、また、東京証券取引所は一般株主保護の観点から、上場会社に社外取締役又は社外監査役を少なくとも1名確保することを求めるため上場規程を改正した。その後も、日本国政府と東京証券取引所は、日本の会社のコーポレート・ガバナンス体制を向上させる方法を継続的に検討してきた。2011年10月には、東京証券取引所は上場会社のコーポレート・ガバナンス体制を強化するための有効な方策を取っていく旨、発表している。
また,12月,法務省の法制審議会会社法制部会は,日本の会社のコーポレート・ガバナンスや、少数株主の保護を充実させるための方策等に関する会社法の改正に係る中間試案を公表した。法務省は,同中間試案についてパブリックコメントを募集しており,全ての関係者からの意見を受け付けている。
法務サービス(外国法事務弁護士(FLC)のための専門職法人):日本国政府は,FLC(外弁)が専門職法人(法人)を設立することを可能とする法案をできるだけ早期に国会に提出することを目指している旨説明した。当該専門職法人は,日本国内に支店を設置することができることとなる。
医療機器・医薬品
医薬品その他
新薬創出・適応外薬解消等促進加算:2011年を通して,日本国政府は,医薬品開発のための試行的な新薬創出加算の恒久化について業界と意見交換を行った。新たな試行的な新薬創出加算制度は,必要とされる新薬と既存薬への効能追加の両方の開発に多大な貢献を果たしている。2010年に企業に提出された開発要望のうち,44件の申請が承認され,30件の医薬品又は効能の申請が提出され,50製品の治験届が提出されている(2011年8月23日現在)。日本国政府は,長期的に見て,新薬創出加算がドラッグ・ラグの短縮,医薬品の世界同時開発の奨励,日本の患者による世界で最新かつ最も革新的な医薬品へのアクセスの拡大へと更につながってゆくことを検証している過程にある。中央社会保険医療協議会(中医協)は,新たな試行的な新薬創出加算制度について2011年を通して審議しており,また,制度を恒久化するかどうか決定することにしている。
市場拡大再算定:2011年,日米両国政府は,日本の市場拡大再算定制度が持ついくつかの側面について情報交換を行った。この中には,もし制度が撤廃され得ないならば,比較方式により価格設定された製品に本制度を適用しないこと,原価算定方式により価格設定された製品の減額算定方式を変更すること,が含まれていた。日本国政府としては,市場拡大再算定制度は持続可能な公的医療保険制度の必要不可欠な構成要素であると考えていることから,米国政府及び業界の利害関係者からの情報提供等によって,製薬企業が革新的医薬品を日本市場にもたらし続ける能力に対して市場拡大再算定制度が与える不合理な影響を取り除くための方法について引き続き検討していく。
ドラッグ・ラグ:日本国政府によってドラッグ・ラグを短縮するため取られた一連の取組の結果,審査期間が短縮されている。2011年6月28日,医薬品医療機器総合機構は,2010年度の医薬品の通常及び優先審査期間の短縮目標を上回ったと報告した。2009年度との比較において,2010年度には通常品目の審査期間は4.5ヵ月減少して14.7ヵ月,優先品目の審査期間は2.7ヵ月減少して9.2ヵ月になった。加えて,日本国政府は,国際共同治験に関する相談件数についての米国政府及び業界の声明を歓迎するとともに,日本での承認のため得られたデータを引き続きICHガイドラインに従って継続使用していくことに同意した。
行政審査期間:2011年4月,厚生労働省は,医薬品部会及び薬事分科会による二段階の審査手続を合理化することにより,新薬承認手続を加速させるための新しい手続を実施した。以前の仕組みの下では,医薬品部会で認められた新薬は続いて薬事分科会で審査され,その1ヵ月後に承認されていた。新しい仕組みの下では,新薬については医薬品部会のみの承認勧告が求められ,このため,承認に要する合計期間は約1ヵ月短縮されることとなった。
血液製剤:2011年2月,血漿蛋白製剤の製造業者を代表する業界団体である血漿蛋白製剤協会(PPTA)は,厚生労働省により開催された専門家会議に招待され,意見陳述を行った。厚生労働省は,必要に応じて,専門家会議で行われる検討の場において,また,厚生労働省との非公式の面会の場においても,意見陳述の機会を引き続きPPTAに与える。
ワクチン
ワクチンに対するアクセス:日本国政府は予防接種制度の改正を進めているが,厚生労働省は,ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib),肺炎球菌,ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを定期接種の対象に含めることについて十分考慮しつつ,2010年以降実施し,これら三つのワクチンへのアクセスを改善した緊急促進事業を踏まえ,対応していく。
ワクチンに関する意見交換:2011年7月26日,日米両国政府は昨年に続き2年目となる日米ワクチン政策意見交換会を開催し,日米双方のワクチン政策の短期的・長期的目標への理解を深めるための対話を行った。議題には,米国予防接種諮問委員会(ACIP)や,日米両国でのワクチンの安全性に関する論点が含まれた。日米の当局者は,ワクチン政策に係るこのような意見交換を継続することへの関心を共有した。
医療機器
外国平均価格参照(FAP)制度:2011年,日米両国政府はFAPに係るいくつかの側面について情報交換を行った。この中には,本制度が撤廃され得ない場合に,公的医療保険制度において医療機器の適切な価格設定を確保しつつ,外国為替変動の影響を緩和することや,参照国の中に追加国を含めることを控えること等により,FAP算定に用いられる規則・運用において安定性を確保することに関連した論点が含まれていた。両国政府は,日本の医療機器の適時導入と安定的供給にFAP制度が与える影響を考慮しながら,日本の医療機器価格算定ルール全体の一部として,FAP制度の運用について引き続き情報交換を行っていく。
デバイス・ラグ:2011年7月27日,医薬品医療機器総合機構(PMDA)は,優先カテゴリーの新医療機器については15.1ヵ月,標準カテゴリーの新医療機器については16.5ヵ月,臨床試験成績が必要とされる改良型医療機器については15.5ヵ月に承認期間が短縮され,審査目標を達成したことを報告した。後発及び臨床試験成績を必要としない改良型の医療機器については,審査目標は達成されておらず,PMDAは,進展する目標の達成に向けて業界の協力を得つつ引き続き努力を行う。また,日本国政府は,革新的な医療機器が日本で適時に導入されなかったり利用可能にならないデバイス・ラグが存在することを認識して,日本の市場に革新的な医療機器の導入を促進させるための取組を継続する。
企業の規制負担の軽減:米国政府と業界は,異なる調査機関による調査結果の利用と調査単位の一括化を可能とする,QMS(医療機器の製造管理及び品質管理の基準)調査の頻度を軽減するための変更を歓迎する。日本国政府は,医療機器業界への負担を軽減する措置について,業界との間を含め,議論を継続する。
医療機器に関する関連論点(薬事法改正):日本国政府が薬事法改正を進めるに際して,米国政府は,医療機器と体外診断薬の規制環境が改善することを期待する。米国業界を含む業界,学術団体,医療従事者,消費者,患者団体のような利害関係団体が薬事法改正にあたっての提案を行っている。それらは,医薬品/医療機器の安全対策と監視の強化とともに,必要不可欠な医薬品/医療機器の承認の迅速化を提唱している。米国業界は,医療機器が医薬品,医薬部外品及び化粧品との比較において固有に持つ特性への考慮がなされることへの要望を含む,薬事法改正にあたっての提案を行っている。日本国政府は,薬事法改正を行うに際しては,利害関係団体からの意見を考慮する。
化粧品
広告・表示:2011年7月21日,日本国政府は,化粧品の効能表示の56番目を事前承認された効能表示のリストに追加することを承認した。製品が乾燥による小ジワを目立たなくすることを主張する企業は,これより,この情報を消費者に提供することができるようになる。米国政府は,この追加により消費者がより多くの情報を得て判断できるようになることを歓迎する。
化粧品・医薬部外品の輸入:2011年7月22日,日本国政府は,業界による医薬部外品ガイドライン作成を支援することで輸入プロセスを明確化すること,及び輸入変更届申請時の添付書類として輸入届の電子媒体のコピーを受け入れることに関して地方厚生局と協議を開始すること,の必要性を認識した。日本国政府は,輸入プロセスを改善するために取られる継続的な措置について,時宜を得た情報提供を行っていく。
栄養補助食品
規制の対象分野と項目:2011年6月16日,消費者庁は,11種の健康栄養成分に関する機能性評価モデル事業を委託した。消費者庁は,当該事業の進捗状況や,特定保健用食品(FOSHU)及び栄養機能食品(FNFC)制度の改正の可能性の検討についての情報を更新していく予定である。
食品添加物:2011年4月,閣議決定に基づき,厚生労働省は食品安全委員会に対し,イソプロパノールを抽出溶媒として使用する可能性についてのリスク評価を実施するよう依頼した。食品安全委員会からの評価結果で何らかの安全上の懸念が示されない限り,厚生労働省は,評価結果を受領した後,用途拡大のための法律上の手続を進める。厚生労働省は,有機溶媒を含む日本で食品添加物に分類される物質の申請に関する,業界からの相談の要望を引き続き受け入れる。
(了)