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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約を改正する議定書(略称:日・米租税条約改正議定書,日米租税条約改正議定書)

[場所] 
[年月日] 2013年1月24日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約を改正する議定書



 日本国政府及びアメリカ合衆国政府は、

 二千三年十一月六日にワシントンで署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約(以下「条約」という。)及び条約の不可分の一部を成す二千三年十一月六日にワシントンで署名された議定書(以下「二千三年議定書」という。)を改正することを希望して、

 次のとおり協定した。

   第一条

 条約第一条5を次のように改める。

 5 4の規定は、第九条2及び3、第十七条3、第十八条、第十九条、第二十三条から第二十五条まで並びに第二十八条の規定に基づき一方の締約国により認められる特典に影響を及ぼすものではない。もっとも、第十八条及び第十九条の規定に基づき合衆国により認められる特典については、これを要求する者が合衆国の市民でなく、かつ、合衆国における永住を適法に認められた者でない場合に限り、認められる。

   第二条

 条約第四条4を次のように改める。

 4 1の規定により双方の締約国の居住者に該当する者で個人以外のものは、この条約により認められる特典を要求する上で、いずれの締約国の居住者ともされない。

   第三条

1 条約第十条3(a)中「十二箇月」を「六箇月」に、「五十パーセントを超える株式」を「五十パーセント以上」に改める。

2 条約第十条9中「若しくは2」を削る。

   第四条

 条約第十一条を次のように改める。

   第十一条

 1一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者が受益者である利子に対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。

 2 1の規定にかかわらず、

  (a) 債務者若しくはその関係者の収入、売上げ、所得、利得その他の資金の流出入、債務者若しくはその関係者の有する資産の価値の変動若しくは債務者若しくはその関係者が支払う配当、組合の分配金その他これらに類する支払金を基礎として算定される利子又はこれに類する利子であって、一方の締約国内において生ずるものに対しては、当該利子が生じた一方の締約国において、当該一方の締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該利子の受益者が他方の締約国の居住者である場合には、当該利子の額の十パーセントを超えないものとする。

  (b) 一方の締約国は、不動産により担保された債権又はその他の資産の流動化を行うための団体の持分に関して支払われる利子の額のうち、当該一方の締約国の法令で規定されている比較可能な債券の利子の額を超える部分については、当該一方の締約国の法令に従って租税を課することができる。

 3 利子は、その支払者が一方の締約国の居住者である場合には、当該一方の締約国内において生じたものとされる。ただし、利子の支払者(いずれかの締約国の居住者であるか否かを問わない。)が、その者が居住者とされる国以外の国に恒久的施設を有する場合において、当該利子の支払の基因となった債務が当該恒久的施設について生じ、かつ、当該利子が当該恒久的施設によって負担されるものであるときは、次に定めるところによる。

  (a) 当該恒久的施設が一方の締約国内にある場合には、当該利子は、当該一方の締約国内において生じたものとされる。

  (b) 当該恒久的施設が両締約国以外の国にある場合には、当該利子は、いずれの締約国内においても生じなかったものとされる。

 4 この条において、「利子」とは、全ての種類の信用に係る債権(担保の有無及び債務者の利得の分配を受ける権利の有無を問わない。)から生じた所得、特に、公債、債券又は社債から生じた所得(公債、債券又は社債の割増金及び賞金を含む。)及びその他の所得で当該所得が生じた締約国の租税に関する法令上貸付金から生じた所得と同様に取り扱われるものをいう。前条で取り扱われる所得は、この条約の適用上利子には該当しない。

 5 1及び2の規定は、一方の締約国の居住者である利子の受益者が、当該利子の生じた他方の締約国内において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行う場合において、当該利子の支払の基因となった債権が当該恒久的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条の規定を適用する。

 6 利子の支払の基因となった債権について考慮した場合において、利子の支払者と受益者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、当該利子の額が、その関係がないとしたならば支払者及び受益者が合意したとみられる額を超えるときは、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、支払われた額のうち当該超過分に対しては、当該利子の生じた締約国において当該超過分の額の五パーセントを超えない額の租税を課することができる。

 7 一方の締約国の居住者がある債権に関して他方の締約国の居住者から利子の支払を受ける場合において、次の(a)及び (b)に該当する者が当該債権と同等の債権を当該一方の締約国の居住者に対して有していないとしたならば、当該一方の締約国の居住者が当該利子の支払の基因となる債権を取得することはなかったであろうと認められるときは、当該一方の締約国の居住者は、当該利子の受益者とはされない。

  (a) 当該他方の締約国内において生ずる利子に関し、当該一方の締約国の居住者に対してこの条約により認められる特典と同等の又はそのような特典よりも有利な特典を受ける権利を有しないこと。

  (b) いずれの締約国の居住者でもないこと。

   第五条

 1 条約第十三条2を次のように改める。

  2 この条の規定の適用上、「他方の締約国内に存在する不動産」には、次のものを含む。

   (a) 第六条に規定する不動産

   (b) 当該他方の締約国が日本国である場合には、法人、組合又は信託(その資産の価値が主として第六条に規定する不動産であって日本国内に存在するものにより直接又は間接に構成されるものに限る。)の株式又は持分

   (c)当該他方の締約国が合衆国である場合には、合衆国不動産持分

2 条約第十三条4を次のように改める。

 4 3の規定にかかわらず、一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設の事業用資産を構成する財産(不動産を除く。)の譲渡から生ずる収益(当該恒久的施設の譲渡又は企業全体の譲渡の一部としての当該恒久的施設の譲渡から生ずる収益を含む。)に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

   第六条

 条約第十五条を次のように改める。

   第十五条

 一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の取締役会の構成員の資格で取得する報酬その他これに類する支払金に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

   第七条

 条約第二十条を次のように改める。

   第二十条 削除

   第八条

 条約第二十二条5(b)(i)中「証券取引法」を「金融商品取引法」に改める。

   第九条

 条約第二十三条1を次のように改める。

 1(a) 日本国の居住者がこの条約の規定に従って合衆国において租税を課される所得を合衆国内において取得する場合には、当該所得について納付される合衆国の租税の額は、日本国以外の国において納付される租税を日本国の租税から控除することに関する日本国の法令の規定に従い、当該居住者に対して課される日本国の租税の額から控除する。ただし、控除の額は、当該所得に対応する日本国の租税の額を超えないものとする。この(a)の規定の適用上、日本国の居住者が受益者である所得でこの条約の規定に従って合衆国において租税を課されるものは、合衆国内の源泉から生じたものとみなす。

  (b) 合衆国内において取得される所得が、配当であって、合衆国の居住者である法人により当該法人の発行済株式の十パーセント以上を当該配当の支払義務が確定する日に先立つ六箇月の期間を通じて所有する日本国の居住者である法人に対して支払われるものである場合には、当該配当は、日本国の租税の課税標準から配当を除外することに関する日本国の法令の規定(株式の所有に関する要件に係る規定を除く。)に従い、日本国の租税の課税標準から除外される。

   第十条

1 条約第二十四条3中「第十一条8」を「第十一条6」に改める。

2 条約第二十四条5中「又は第十一条」を削る。

   第十一条

 条約第二十五条4の次に次の5から7までを加える。

 5 この条の規定に従い、一方又は双方の締約国の措置によりある者がこの条約の規定に適合しない課税を受けた事案について、当該者が自己が居住者である締約国(当該事案が前条1の規定の適用に関するものである場合には、自己が国民である締約国)の権限のある当局に対して申立てをし、かつ、両締約国の権限のある当局が当該事案を解決するための合意に達することができない場合において、次の(a)及び(b)に定める要件が満たされるときは、当該事案は、この5、6及び7並びに両締約国の権限のある当局が7(i)の規定に従って合意する規則又は手続に定める方法及び要件に従って行われる仲裁を通じて解決される。

  (a) 当該事案について申立てをした者が、その申立てをした権限のある当局に対し、当該事案の仲裁による解決を要請する書面を提出したこと。

  (b) 全ての関係者及び権限を与えられたその代理人が、仲裁手続の過程においていずれかの締約国の権限のある当局又は仲裁のための委員会から受領した情報(仲裁のための委員会の決定を除く。)を他の関係者以外のいかなる者に対しても開示しない旨を表明した書面を提出したこと。

 6 5の規定にかかわらず、次のいずれかに該当する場合には、事案は仲裁に付託されない。

  (a) 当該事案についていずれかの締約国の裁判所又は行政審判所が既に決定を行った場合

  (b) 両締約国の権限のある当局が、当該事案が仲裁による解決に適しない旨を合意し、かつ、その旨を当該事案について申立てをした者に対して開始日の後二年以内に通知した場合

  (c)当該事案が3の最終文の規定のみの対象である場合

 7 5、6及びこの7の規定の適用上、次の規則及び定義を適用する。

  (a) 「関係者」とは、権限のある当局に対しこの条の規定に基づく検討のために事案について申立てをした者及び当該検討に基づく両締約国の権限のある当局の合意によっていずれかの締約国に対する納税義務が直接に影響を受ける可能性のある他の全ての者をいう。

  (b) ある事案に係る「開始日」とは、両締約国の権限のある当局の合意のための実質的な検討を開始するために必要な情報を両締約国の権限のある当局が受領した最初の日をいう。

  (c) ある事案((d)に規定する事案を除く。)に関するこの条の規定に基づく仲裁手続は、次のいずれか遅い日に開始される。

   (i)当該事案に係る開始日の後二年を経過した日(両締約国の権限のある当局が異なる日とすることについて合意し、かつ、その旨を当該事案について申立てをした者に対して通知した場合は、当該異なる日)

   (ii)5(a)及び5(b)に定める要件が満たされた最初の日

  (d) 事前価格取決めの要請の対象である事案に関するこの条の規定に基づく仲裁手続は、次のいずれか遅い日に開始される。

   (i) いずれかの締約国の税務当局がある関係者に関する事前価格取決めの要請の対象となる取引又は移転の価格の更正について又は当該価格の調整の意図について正式な通知を発出した日の後六箇月を経過した日(両締約国の権限のある当局が異なる日とすることについて合意し、かつ、その旨を当該事案について申立てをした者に対して通知した場合は、当該異なる日)

   (ii) 5(a)及び(b)に定める要件が満たされた最初の日

     ただし、いかなる場合においても、仲裁手続は、事前価格取決めに関する両締約国の権限のある当局の合意のための実質的な検討を開始するために必要な情報を両締約国の権限のある当局が受領した日の後二年を経過するまでは、開始しない。

  (e) 仲裁のための委員会の決定は、事案について申立てをした者が当該決定を受け入れない場合を除くほか、当該申立てをした者が所定の期間内に当該決定を受け入れた時において、この条の規定に基づく両締約国の権限のある当局の合意による当該事案全体の解決とみなされ、かつ、両締約国を拘束する。仲裁のための委員会の決定による解決は、両締約国の法令上のいかなる期間制限又は手続上の制限(当該解決を実施するための手続上の制限を除く。)にもかかわらず、実施されなければならない。

  (f) 5及びこの7の規定に基づく仲裁手続の適用上、仲裁のための委員会の構成員及びそれらの職員は、次条の規定に基づき情報の開示を受けることができる者又は当局とみなされる。

  (g) 仲裁手続に関連する情報(仲裁のための委員会の決定を含む。)は、この条約及び両締約国の法令によって開示することが認められる場合を除くほか、両締約国の権限のある当局によって開示されない。さらに、仲裁手続の過程において作成され、又は仲裁手続に関連する全ての資料は、次条の規定に従って両締約国の権限のある当局の間で交換された情報とみなされる。

  (h) 両締約国の権限のある当局は、仲裁のための委員会の全ての構成員及びそれらの職員が、各締約国の権限のある当局に対して送付する書面により、仲裁手続に関連する情報(仲裁のための委員会の決定を含む。)を開示しないこと並びに次条に規定する秘密及び不開示に関する規定並びにこれに類似する両締約国の関係法令の規定に従うことに合意することを確保する。当該書面は、これらの者が仲裁のための委員会の職務を遂行することを受け入れる旨の記述も含むものでなければならない。この(h)の規定にかかわらず、仲裁のための委員会の構成員又はそれらの職員は、両締約国の権限のある当局に対して仲裁のための委員会の決定を開示する。

  (i) 両締約国の権限のある当局は、最初の仲裁手続が開始される日の前に、次に掲げる事項に関する

5、6及びこの7の規定と整合的な期間及び手続について、書面によって合意する。

   (i) (c)(i)及び(d)(i)の規定に基づき仲裁手続が開始される日が変更された場合において、その変更された日を事案について申立てをした者に対して通知すること。

   (ii) 事前価格取決めに関連する仲裁の適切な適用(事前価格取決めに関して仲裁手続が開始される日に関する規則を含む。)

   (iii) 関係者、権限を与えられたその代理人及び仲裁のための委員会の構成員(それらの職員を含む。)のそれぞれから、5(b)及び7(h)の規定によって求められる不開示に関する表明を取得すること。

   (iv) 仲裁のための委員会の構成員の任命

   (v) 両締約国の権限のある当局による仲裁のための委員会への解決案、意見書及び応答書の提出

   (vi) 事案について申立てをした者が、仲裁のための委員会による検討のために、当該事案についての自己の意見及び分析を記載した書面を提出すること。

   (vii) 仲裁のための委員会による両締約国の権限のある当局への決定の送付

   (viii) 事案について申立てをした者による仲裁のための委員会の決定の受入れ又は拒否

   (ix) 仲裁のための委員会によるその任務の遂行のために必要な追加的な手続の採用

   両締約国の権限のある当局は、5、6及びこの7の規定を効果的かつ適時に実施するために必要な他の規則及び手続について、書面によって合意することができる。

   第十二条

 条約第二十六条を次のように改める。

   第二十六条

1 両締約国の権限のある当局は、この条約の規定の実施又は両締約国が課する全ての種類の租税に関する両締約国の法令(当該法令に基づく課税がこの条約の規定に反しない場合に限る。)の運用若しくは執行に関連する情報を交換する。情報の交換は、第一条1及び第二条の規定による制限を受けない。一方の締約国の権限のある当局から特に要請があった場合には、他方の締約国の権限のある当局は、文書(帳簿、書類、財務諸表、記録、計算書及び書面を含む。)の原本の写しに認証を付した形式で、この条の規定に基づく情報の提供を行う。

2 1の規定に基づき一方の締約国が受領した情報は、当該一方の締約国がその法令に基づいて入手した情報と同様に秘密として取り扱うものとし、1に規定する租税の賦課、徴収若しくは管理、これらの租税に関する執行若しくは訴追、これらの租税に関する不服申立てについての決定又はこれらの監督に関与する者又は当局(裁判所及び行政機関を含む。)に対してのみ、開示される。これらの者又は当局は、当該情報をそのような目的のためにのみ使用する。これらの者又は当局は、当該情報を公開の法廷における審理又は司法上の決定において開示することができる。

3 1及び2の規定は、いかなる場合にも、一方の締約国に対し、次のことを行う義務を課するものと解してはならない。

 (a)当該一方の締約国又は他方の締約国の法令及び行政上の慣行に抵触する行政上の措置をとること。

  (b)当該一方の締約国又は他方の締約国の法令の下において又は行政の通常の運営において入手することができない情報を提供すること。

(c)営業上、事業上、産業上、商業上若しくは職業上の秘密若しくは取引の過程を明らかにするような情報又は公開することが公の秩序に反することとなる情報を提供すること。

 (d)弁護士その他の法律事務代理人がその依頼者との間で行う次のいずれかの通信の内容を明らかにする情報を入手し、又は提供すること。

 (i) 法的な助言を求め、又は提供するために行われる通信

 (ii) その内容を進行中の又は予定される法的な手続において使用するために行われる通信

4 一方の締約国は、他方の締約国がこの条の規定に従って当該一方の締約国に対し情報の提供を要請する場合には、自己の課税目的のために必要でないときであっても、当該情報を入手するために必要な手段を講ずる。一方の締約国がそのような手段を講ずるに当たっては、3に定める制限に従うが、その制限は、いかなる場合にも、当該情報が自己の課税目的のために必要でないことのみを理由としてその提供を拒否することを認めるものと解してはならない。

5 3の規定は、提供を要請された情報が銀行その他の金融機関、名義人、代理人若しくは受託者が有する情報又はある者の所有に関する情報であることのみを理由として、一方の締約国が情報の提供を拒否することを認めるものと解してはならない。

   第十三条

 条約第二十七条を次のように改める。

   第二十七条

1 両締約国は、この条の規定に従い、租税(その課税がこの条約又は両締約国が当事国となっている他の協定の規定に反しない場合に限る。)並びに利子、徴収の費用、当該租税に対する附加税及び当該租税に関連する民事上又は行政上の金銭罰(以下この条において「租税債権」という。)の徴収につき相互に支援を行う。この支援は、第一条1及び第二条の規定による制限を受けない。一方の締約国は、当該一方の締約国の法令によって認められる範囲においてのみ、支援を行う。

2 1に規定する支援は、次に掲げる租税債権の徴収についてのみ行われる。

 (a) 法人に係る租税債権で次のいずれかの場合に該当するもの

  (i) 当該租税債権の決定が第二十五条の規定に従い両締約国の権限のある当局の合意のための手続によって解決される対象とならない場合

  (ii) 当該租税債権の決定について第二十五条の規定に従い両締約国の権限のある当局が合意した場合

  (iii) 当該法人が当該租税債権の決定に関する両締約国の権限のある当局の合意のための手続を終了させた場合

 (b) 個人に係る租税債権。ただし、支援の要請が受領された時において当該個人が支援を要請された締約国(以下「被要請国」という。)の国民である場合には、当該個人又はこれに代わる者が当該租税債権に関し次のいずれかの行為を行ったときに限る。

  (i) 詐欺的な租税の申告又は詐欺的な還付請求

  (ii) 租税を免れるために故意に租税の申告を怠ること。

  (iii) 当該租税債権の徴収の回避を目的とする被要請国への資産の移転

3 2の規定にかかわらず、1に規定する支援は、この条約に基づいて認められる租税の免除又は税率の軽減が、このような特典を受ける権利を有しない者によって享受されることがないようにするために必要な租税債権の徴収について行われる。ただし、被要請国が、特典が不当に付与されたと認定することに同意する場合に限る。

4 この条の規定は、第二条に規定する租税及び次の租税に係る租税債権についてのみ適用する。

 (a) 日本国については、

  (i) 消費税

  (ii) 相続税

  (iii) 贈与税

 (b) 合衆国については、

  (i) 連邦遺産税及び連邦贈与税

  (ii) 外国保険業者の発行した保険証券に対する連邦消費税

  (iii) 民間財団に関する連邦消費税

  (iv) 被用者及び自営業者に関する連邦税

5 租税債権の徴収(3に規定する租税債権の徴収を除く。)における支援の要請には、支援を要請する

締約国(以下「要請国」という。)の法令の下において当該租税債権が最終的に決定されたものであることについての要請国の権限のある当局の証明を付する。この条の規定の適用上、租税債権は、要請国が自国の法令に基づき当該租税債権を徴収する権利を有し、かつ、当該租税債権に関する争訟のために納税者が行使することができる行政上及び司法上の全ての権利が消滅し、又は尽くされた場合に、最終的に決定されたものとする。

6 要請国からの支援の要請がこの条の規定に基づき被要請国によって徴収のために受理された場合には、要請国の租税債権は、被要請国の法令に基づく徴収のために必要な限りにおいて、要請が受領された時において被要請国の法令に基づき確定した租税債権として取り扱われるものとし、被要請国の租税債権の徴収に適用される法令に従い、被要請国の租税債権を徴収する場合と同様に徴収されるものとする。

7 6の規定にかかわらず、支援の要請に従い被要請国がとった徴収のための措置であって、要請国の法令によれば、要請国が当該措置をとった場合に要請国において租税債権の徴収の時効を停止し、又は中断する効果を有することとなるものは、当該租税債権に関して、要請国の法令の下においても同様の効果を有する。被要請国は、当該措置について要請国に通報する。

8 被要請国による支援が行われている租税債権は、被要請国において、被要請国の法令の下で租税債権であるとの理由により適用される時効の対象とされず、かつ、その理由により適用される優先権を与えられない。

9 この条のいかなる規定も、要請国の最終的に決定された租税債権に関し、いずれかの締約国の法令の下において行政上又は司法上の審査を受ける権利が認められているか否かにかかわらず、被要請国においてそのような権利を生じさせ、又は付与するものと解してはならない。

10 この条の規定に基づく支援の要請が実施されている間に、要請国が、自国の法令に基づき、要請の対象である租税債権を徴収する権利を喪失し、又はその徴収を終了する場合には、要請国の権限のある当局は、徴収における支援の要請を速やかに撤回し、被要請国は、当該租税債権の徴収に係る全ての措置を終了する。

11 この条の規定に基づく支援の要請が実施されている間に、要請国が自国の法令に従い要請の対象である租税債権の徴収を停止する場合には、要請国の権限のある当局は、被要請国の権限のある当局に対してその旨を速やかに通報し、被要請国の権限のある当局の選択により当該要請を停止し、又は撤回するものとし、被要請国は、これに従って当該租税債権の徴収に係る全ての措置を停止し、又は終了する。

12 この条の規定に基づき被要請国が徴収した額は、要請国の権限のある当局に送金される。

13 両締約国の権限のある当局が別段の合意をする場合を除くほか、徴収における支援を行うに当たり生じた通常の費用は被要請国が負担し、特別の費用は要請国が負担する。

14 この条の規定は、いかなる場合にも、被要請国に対し、次のことを行う義務を課するものと解してはならない。

 (a) 被要請国又は要請国の法令及び行政上の慣行に抵触する行政上の措置をとること。

 (b) 公の秩序に反することとなる措置をとること。

15 この条の規定は、いかなる場合にも、被要請国に対し、次のいずれかに該当するときに要請国からの要請を受理する義務を課するものと解してはならない。

 (a) 要請国が支援の要請の対象となる租税債権を徴収するために自国の法令又は行政上の慣行の下においてとることができる全ての適当な措置をとっていないとき。

 (b) 要請国が得る利益に比して被要請国の行政上の負担が著しく不均衡であるとき。

16 この条の規定(3の規定を除く。)に基づいて支援が行われる前に、両締約国の権限のある当局は、この条の規定の実施方法(各締約国に対する支援の程度の均衡を確保するための合意を含む。)について合意する。特に、両締約国の権限のある当局は、一方の締約国が特定の年において行うことができる支援の要請の数の上限、支援を要請することができる租税債権の最低金額及びこの条の規定に基づいて徴収された額の送金に関する手続規則について合意する。

   第十四条

1 二千三年議定書1(a)中「合衆国の消費税」を「連邦消費税」に、「当該消費税」を「当該連邦消費税」に改め、二千三年議定書1(b)中「合衆国の消費税」を「連邦消費税」に改める。

2 二千三年議定書9を次のように改める。

  9削除

3 二千三年議定書13の次に次の14及び15を加える。

  14 条約第二十五条5から7までの規定に関し、

   (a) 条約第二十五条5の規定の適用上、租税が支払われ、若しくは租税について賦課その他の決定(例えば、納税義務の更正、決定又は不履行の通知の発出)がなされた場合又は税務当局により納税者に対してその所得のある要素について課税する意図がある旨の正式な通知(例えば、調整案の通知)が発出された場合には、一方又は双方の締約国の措置により課税を受けたものとされることが了解される。

   (b) 仲裁のための委員会は、三人の個人により構成される。任命される構成員は、当該構成員を選定する締約国の税務当局若しくは財務省の職員である者又は仲裁手続が開始する日に先立つ十二箇月の期間内にそれらの職員であった者であってはならない。各締約国の権限のある当局は、仲裁のための委員会の構成員の一人を選定する。一方の締約国の権限のある当局が、条約第二十五条7(i)の規定に基づく両締約国の権限のある当局の合意に定める方法により、かつ、当該合意に定める期間内に仲裁のための委員会の構成員の一人を選定しない場合には、他方の締約国の権限のある当局が仲裁のための委員会の第二の構成員を選定する。そのように選定された二人の構成員は、仲裁のための委員会の長となる第三の構成員を選定する。当該二人の構成員が、同条7(i)の規定に基づく両締約国の権限のある当局の合意に定める方法により、かつ、当該合意に定める期間内に第三の構成員を選定しない場合には、当該二人の構成員は解任され、各締約国の権限のある当局は、仲裁のための委員会の新たな構成員の一人を選定する。仲裁のための委員会の長は、いずれかの締約国の国民又は適法な永住者であってはならない。さらに、任命される構成員は、自らが仲裁のための委員会の構成員となる仲裁手続において問題となる特定の事項に関与したことがあってはならない。

   (c) 仲裁のための委員会がその決定を両締約国の権限のある当局に対して送付するまでにその仲裁に係る事案が次のいずれかに該当することとなる場合には、その事案に関する両締約国の権限のある当局の合意のための手続(仲裁手続を含む。)は終了する。

    (i) 両締約国の権限のある当局が、条約第二十五条の規定に従い、当該事案を解決するための合意に達する場合

    (ii) 当該事案について申立てをした者が仲裁の要請を撤回する場合

    (iii) 仲裁手続中に、当該事案についていずれか一方の締約国の裁判所又は行政審判所が決定を行う場合

    (iv) 当該事案の関係者又は権限を与えられたその代理人のいずれかが、条約第二十五条5(b)の規定により求められる開示しない旨の書面に故意に違反し、かつ、両締約国の権限のある当局が、その違反があったことによって仲裁手続を終了させるべきであることを合意する場合

   (d) 各締約国の権限のある当局は、事案において提起された調整又は類似の事項のそれぞれに対処する解決案を提出することができる。当該解決案は、当該事案全体を解決するものでなければならず、かつ、両締約国の権限のある当局の間で既に合意した当該事案における全ての事項を修正することなく反映するものでなければならない。当該解決案は、当該事案における調整又は類似の事項のそれぞれについて、当該事案に対するこの条約の適用に基づく特定の金額(例えば、所得、利得、収益又は費用の金額)の決定又は条約の規定に従って課される税率の上限の決定に限られる。各締約国の権限のある当局は、また、仲裁のための委員会による検討のために意見書を提出することができる。

   (e) (d)の規定にかかわらず、次のいずれかの事案に関する仲裁手続においては、両締約国の権限のある当局は、(i)から(iii)までに規定する課税の前提となる問題(例えば、恒久的施設が存在するか否かの問題)及び当該問題の解決に応じた決定(例えば、恒久的施設が存在すると決定された場合における当該恒久的施設に帰せられる利得の額の決定)のそれぞれに対処する解決案を提出することができる。

    (i) 個人に対する課税に関し、両締約国の権限のある当局が、当該個人が居住者とされる締約国について合意に達することができなかった事案

    (ii) 企業の事業利得に対する課税に関し、両締約国の権限のある当局が、恒久的施設が存在するか否かについて合意に達することができなかった事案

    (iii) これらに類似する課税の前提となる問題の解決に応じて決定される他の事項に係る事案

   (f) 仲裁手続が、二以上の調整又は類似の事項であって、それぞれについて特定の金額(例えば、所得、利得、収益又は費用の金額)の決定又は条約の規定に従って課される税率の上限の決定が必要なものから成る事案に関するものである場合には、解決案は、当該調整又は類似の事項のそれぞれについての決定を提案するものとすることができる。

   (g) 各締約国の権限のある当局は、他方の締約国の権限のある当局が提出した解決案及び意見書を受領するものとし、仲裁のための委員会に応答書を提出することが認められる。各締約国の権限のある当局は、他方の締約国の権限のある当局の応答書を受領する。

   (h) 事案について申立てをした者は、仲裁のための委員会による検討のために、当該事案についての自己の分析及び意見を記載した書面を提出することが認められる。当該書面は、両締約国の権限のある当局の合意のための手続において事前に両締約国の権限のある当局に提供されなかった情報を含まないものとし、両締約国の権限のある当局が入手することができるものとする。

   (i) 仲裁のための委員会の決定は、調整又は類似の事項及び課税の前提となる問題のそれぞれに関して両締約国の権限のある当局が提出した解決案のうちのいずれかに限られ、当該決定の理由その他の説明を含まない。仲裁のための委員会の決定は、他の事案における条約の適用に関して先例としての価値を有しない。

   (j) 事案について申立てをした者は、両締約国の権限のある当局が期間を延長することについて合意する場合を除くほか、仲裁のための委員会の決定を受領した日の後四十五日以内に、当該事案が申し立てられた締約国の権限のある当局に対し、当該決定を受け入れる旨を書面により通知する。当該申立てをした者が当該権限のある当局に対しその旨を通知しない場合には、当該決定は受け入れられなかったものとする。さらに、当該事案について訴訟又は審査請求が行われている場合において、当該訴訟又は審査請求の当事者であるいずれかの関係者が、第一文に定める期間内に、関連する裁判所又は行政審判所に対し、仲裁手続において解決された全ての事項に関する訴訟又は審査請求を取り下げる旨を通知しないときは、当該決定は当該事案について申立てをした者により受け入れられなかったものとする。当該決定が受け入れられない場合には、当該事案について、両締約国の権限のある当局による更なる検討は行われない。

   (k) 仲裁のための委員会の構成員の報酬及び費用並びに両締約国が実施する手続に関連して生ずる費用については、両締約国が衡平に負担する。

  15 条約第二十七条5の規定に関し、

   (a) 租税債権が最終的に決定されたものであるか否かを判断するに当たり、

    (i) 合衆国については、当該租税債権に関連して納税者が行使することができる行政上又は司法上の権利であって当該租税債権の徴収の後に発生するものは、考慮されない。

    (ii) 日本国については、日本国の行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)第三十六条の規定に従って訴訟を提起する権利は、考慮されない。

   (b) 一方の締約国は、他方の締約国の措置により条約第二十七条に規定する両締約国の間の支援の程度において不均衡が生じたと認める場合には、支援を停止することができる。この場合には、両締約国は、同条の規定に整合的となる支援の程度の均衡を回復するため、協議を行う。

   第十五条

1 この議定書は、批准されなければならない。批准書は、できる限り速やかに交換されるものとする。この議定書は、批准書の交換の日に効力を生ずる。

2 この議定書は、次のものについて適用する。

 (a) 源泉徴収される租税に関しては、この議定書が効力を生ずる日の三箇月後の日の属する月の初日以後に支払われ、又は貸記される額

 (b) その他の租税に関しては、この議定書が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度

3 2の規定にかかわらず、第十一条の規定によって改正される条約第二十五条5から7までの規定は、次のものについて適用する。

 (a) この議定書が効力を生ずる日において両締約国の権限のある当局が検討を行っている事案。当該事案に係る開始日は、この議定書が効力を生ずる日とする。

 (b) この議定書が効力を生ずる日の後に検討が行われる事案

4 2の規定にかかわらず、第十二条の規定によって改正される条約第二十六条及び第十三条の規定によって改正される条約第二十七条の規定は、この議定書が効力を生ずる日から適用する。

5 この議定書の効力発生の時において条約第二十条の規定によって認められる特典を受ける権利を有する個人は、この議定書が効力を生じた後においても、この議定書が効力を生じなかった場合に当該特典を受ける権利を失う時まで当該特典を受ける権利を引き続き有する。

6 この議定書は、条約が有効である限り効力を有する。

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの議定書に署名した。

 二千十三年一月二十四日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。


  日本国政府のために
     佐々江賢一郎


  アメリカ合衆国政府のために
     ニール・S・ウォリン